物理(高等学校)

登録日:2021/04/10 (土) 23:47:02
更新日:2021/10/15 Fri 02:29:55
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本項目では、高等学校で学ぶ科目としての物理学について説明する。

理科の科目の1つ(他は化学、生物、地学)。
物理学は主に物体の運動などについて学ぶ。中学の理科の延長線上にあるが、大学で学ぶ物理学の基礎にもなるため、大学で工学部や物理系の学科に行こうとするなら、一生懸命勉強しておきたい。
様々な公式を使いこなしたり、数式の変形を駆使したりするので、数学が苦手だと厳しいかもしれない。
大学受験では理系は化学に次いで履修者が多く、物理・化学の2科目を選択する人が一番多い。物理選択では多くの学科を受験することができ、生物系のことを学ぶ医学部でも物理選択者は多い。
一方、文系では選択者は少なく、大学入試センター試験・共通テストの理科基礎科目の中では物理基礎は一番受験者が少ない。やはり数式の多さが敬遠されているのであろうか。

高校の物理では、力学、電磁気学、波動、熱力学、原子物理などを学ぶことになる。


力学


  • 速度について
速度と速さの概念や、等速直線運動について学ぶ。相対速度や速度の合成についても学ぶ。
ベクトルの概念が登場するので、数学のベクトルについては良く学んでおきたい。

  • 等加速度運動
重力の方向の運動については、速度が一定の割合で上がる等加速度運動となる。等加速度運動における速度や変位についての関係式を使いこなせるようにしよう。
微分・積分と関連性が深く、また等速直線運動と等加速度運動を組み合わせた斜方投射などでは三角関数の扱いも求められる。

  • 力について
力も速度と同様にベクトル量となる。力の合成や分解、力のつり合いや作用・反作用についても学ぶ。剛体に働く力のつり合いについても学ぶ。力のつり合いだけではなく、モーメントも0にならなければならない。

  • 運動方程式
有名な公式ma=Fの登場。物体に生じる加速度は加えられる力に比例し、物体の質量に反比例する。
この公式を利用して様々な問題を解く。抵抗力や摩擦力、張力なども登場。力の単位をニュートン(N)で表すことに慣れておこう。

  • 運動量と力積
物体の運動量(質量と速度の積)は、物体に加えられる力積(力と時間の積)に比例する。
2物体の衝突などでは、衝突の前後で2物体の運動量の和は一定(運動量保存の法則)。はねかえり係数を使って連立方程式を解くのはよくあること。

  • 仕事とエネルギー
物体の持つ運動エネルギーの変化は、物体がされる仕事(力と力の向きに進む距離の積)に等しい。重力や弾性力による位置エネルギーや運動エネルギーなど様々なエネルギーが登場する。有名なエネルギー保存の法則も登場。エネルギーと仕事の関係をしっかり押さえて学んでいきたい。

  • 円運動と単振動
平面上の等速円運動(円の中心向きの加速度が必要)や垂直方向の円運動などについて学ぶ。等速円運動の1方向の成分を取り出すと単振動となる。力や周期の表式はぜひ覚えておきたい。ここでも微分・積分を意識した学習をすると効果的。

  • 万有引力
有名な万有引力の法則によれば、2物体間の万有引力は物体の質量の積に比例し、物体(の重心)間の距離の2乗に反比例する。万有引力による位置エネルギーなども学び、宇宙に飛び出すのに必要な初速度なども求められる。


電磁気学


  • 電荷、電位、電場について
まずは電磁気学の理解に必須なこれらの概念について覚える。
2つの電荷に働くクーロン力は、電荷の絶対値の積に比例し、電荷の距離の2乗に反比例する。電荷が同符号なら反発し、異符号なら引き合う。(力の向きを考慮することを除けば万有引力と似た表式となる。)
点電荷の周囲や極板間の電場や電位についても学ぶ。

  • コンデンサー
電気をためることができる平行な2枚の極板がコンデンサー。蓄積できる電気量の指標となる電気容量は、極板間の誘電率と極板面積の積に比例し、極板の距離に反比例する。蓄積できる電荷は電気容量と電圧の積となる。蓄積されるエネルギーについても学ぶ。

  • 電気抵抗
電流の流れにくさの指標となる電気抵抗。抵抗率による導体、半導体、不導体の分類や、温度による電気抵抗の変化、導線の電気抵抗の表式(電気抵抗は導線の長さに比例し、断面積に反比例する)などについて学ぶ。

  • 直流回路
有名なオームの法則(V=RI、つまり電圧は電気抵抗と電流の積)やキルヒホッフの法則(流れ込む電流の和=流れ出る電流の和、任意の閉回路の起電力の和=電圧降下の和)を使って、様々な直流回路に関する問題を解く。
電気抵抗の接続と合成抵抗(並列接続の合成抵抗の逆数は各抵抗の逆数の和など)、電流の流れないホイートストンブリッジを使って未知の抵抗値を求める、電池や計測機器の内部抵抗の問題など。

  • 磁場について
磁場は電場と違って電荷といった単極子の存在ではなく、電流によって発生する。まずは直線や円形の電流の周りの磁場の強さを学習する。
また、磁場の中の電流は磁場から力を受ける。電流の中の電子1個が磁場から受ける力をローレンツ力という。

  • 電磁誘導
起電力を発生させるには、コイル内の磁束を変化させる必要がある。起電力はコイルの巻数と磁束変化の速さに比例し、これを電磁誘導の法則という(誘導電流は磁場の変化を妨げる向きに流れる)。

  • 交流回路
磁場中でコイルを回転させると、電磁誘導により起電力が発生するが、直流と違って向きや強さが一定でなく、単振動のように三角関数の周期的に変化することとなる。これを交流という。
抵抗、コイル、コンデンサーを含む回路に交流の電圧をかけると直流の場合と電流の挙動が異なり(直流と違ってコンデンサーにも電流が流れ、コイルは電流を妨げる)、電圧と電流の位相のずれもそれぞれ異なる。


波動


  • 波動について
横波と縦波の違いや、2つの波の重ね合わせ(波の重ね合わせの原理として、独立した波の重ね合わせとみなせる。その結果干渉して強め合ったり弱め合ったりする)、波の反射や屈折、回折について学ぶ。固定端と自由端の反射波の位相の違いや、反射波との重ね合わせの結果変化しない定常波になる、屈折率により媒質中の波の波長や速さが変化する、など。
波は三角関数で表される正弦波を基本に学び、時間・位置を変数とした変位のグラフも登場する。

  • 音波
音波の様々な性質について学ぶ。音の3要素である高さ(振動数に関係)・強さ(振幅に関係)・音色(倍音の重ね合わせに関係)や、気温による音速の変化、うなり(振動数の差)などを学ぶ。有名なドップラー効果(波源や観測者の運動による振動数の変化)を学ぶのもここ。弦や気柱の振動も学び、弦楽器や管楽器の音が出るメカニズムが分かるようになる。

  • 光波
光波は媒質がなくても伝わるなど、様々な独特の性質がある(電磁気学と深い関わりがあり、詳細は大学で学ぶ)。光波の反射や屈折といった基本から、全反射や偏光についても学ぶ。
レンズは有名な公式1/f=1/a+1/b(fは焦点距離、aは物体とレンズの距離、bはレンズと像の距離)を利用し、実像、虚像など、さまざまな像について学ぶ。
また、光の干渉についても学ぶ。ヤングの干渉実験(スリット)、回折格子、薄膜、ニュートンリングなど、様々な状況下における光の干渉による強め合いや弱め合いの条件を学ぶ。


熱力学


  • 熱とエネルギーについて
熱がエネルギーの一形態であることを学ぶ。比熱や熱容量などの概念も登場し、水を温めるのに必要な熱量を求めることも。熱エネルギーの単位をジュール(J)で表すことに慣れておこう。

  • 気体の法則
化学でも扱ったボイル・シャルルの法則や理想気体の状態方程式を物理でも学習する。化学は圧力の単位がatm、体積の単位がリットルであったが、物理では基本的にSI単位となるので、気体定数は約0.082(l・atm/K・mol)でなく8.31(J/K・mol)となる。

  • 気体の分子運動
気体分子の運動について、壁への衝突は完全弾性衝突(はね返り係数が1)とする、各成分の二乗平均速度がすべて等しいなどの前提のもとに、気体分子が壁に与える圧力や、気体分子の運動エネルギー、気体の内部エネルギーについて学習する。

  • 気体の状態変化
熱力学第一法則(ΔU=Q+W、気体の内部エネルギーの増加は気体に与えられる熱量と気体がされる仕事の和)を使って、定積変化、定圧変化、等温変化、断熱変化などの様々な変化を学習する。
定積変化は気体がされる仕事W=0、等温変化は内部エネルギー変化ΔU=0、断熱変化は与えられる熱量Q=0、定圧変化における気体がされる仕事Wは-pΔV(ΔVは体積変化)となることなどがポイント。


原子物理


  • 粒子性と波動性
光やX線が波動性だけでなく粒子性も持っていること、電子が粒子性だけでなく波動性も持っていることなどを学ぶ。光電効果やコンプトン効果といった実験なども重要。重要な物理定数としてプランク定数が登場する。粒子のド・ブロイ波長を求めるにはh/mv(h:プランク定数、m:粒子の質量、v:粒子の速さ)で。

  • 原子の構造
電子の粒子性と波動性を用いて、電子の波が干渉して消えない条件から、水素原子の半径やエネルギー準位、発光スペクトルなどを求める。

  • 原子核反応
陽子や中性子といった原子核の構造やそれらを結びつける核力、α崩壊(ヘリウム核の放出)やβ崩壊(電子の放出)といった原子核の崩壊、半減期などについて学ぶ。
有名なE=mc2の式も登場(質量とエネルギーは等価)。核子の結合エネルギーや核分裂、核融合などの反応についても学ぶ。


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最終更新:2021年10月15日 02:29