シャークトレード(TCG)

登録日:2021/06/24 Thu 22:50:00
更新日:2024/06/27 Thu 20:40:22
所要時間:約 4 分で読めます




実行すると詐欺罪等に問われる恐れがあります!

シャークトレードとは、主にトレーディングカードゲーム(TCG)において、不平等なトレードによって利益を得る行為である。「鮫トレ」とも。
ちなみに「シャーク」は高利貸しや悪徳金融の俗称。被害者の事は「グッピー」と呼ぶ事がある。
「シャークトレード」という言葉自体は『Magic the Gathering』の本「Learn Magic Cards」にて紹介されたものであり、日本語訳された際に日本でも使われるようになったものと思われる。

後述するが、詐欺罪などに該当する恐れもあるため、絶対に手を出してはいけない。


概要

TCGには、手に入れたカードを使って他のプレイヤーとゲームをするという楽しみ方と並んで、
名前に「トレーディング」と付いているように、入手したが自分は使わないカード同士、あるいはお互いの欲しいカード同士を交換(トレード)するという楽しみ方もある。

ただ、ゲームに関しては主催者から対戦やデッキ構成に関するルールが定められているが、トレードに関しては主催者にはルールも何も定めようがないため、
互いに欲しいカードを相手に提供する時以外は、「相手が提示したカードと同格以上のレアリティのカードを提示する」等の暗黙のルールがプレイヤー間で存在する。

基本的に、たとえ初対面であってもトレードするとなれば互いに損をしないよう計らうのがカードゲームプレイヤー、もしくはカードコレクターの嗜みであるが、
一部の心無いプレイヤーの中には、自分だけが得しようとカードの価値が分からない初心者プレイヤーを口八丁手八丁で騙し、
相手の高レアリティのカードをそれに全く釣り合っていない低レアリティのカードと、あるいは有用性の高いカードを低いカードと交換しようとする者がいる。


では、世界初のTCGであり、プレイ人口も世界最大級の『Magic the Gathering』のカードを用いて、有名なシャークトレードの例を挙げよう。

「君のその0/1の鳥(極楽鳥)と私の7/6の甲鱗のワームを交換してあげよう。その鳥は1マナ払って出しても殴れず、マナを作るだけだ。甲鱗のワームは7/6で殴りに行ける。」

これだけ聞くと、確かに「甲鱗のワーム」の方がパワーやタフネスが高いため、貧弱な「極楽鳥」よりもバトルにおいて有用で、良心的なトレードを持ちかけているように聞こえる。
しかし、実際には「甲鱗のワーム」はコストが重い上に、何の能力も持たない、所謂「バニラ」であるのに対し、
「極楽鳥」は殴れない…というかパワーが0であり、パワーを上げない限り殴っても意味はないのだが、さも弱い能力のように言っている「マナを作るだけ」という効果はゲームにおいてデッキの潤滑油となる強力な効果であり、
少しでも実際にゲームをプレイしたことがある者であれば、このトレードは初心者を騙そうとしている悪質なシャークトレードだとすぐさま理解できるものである。

また、レアリティの観点からしても、「甲鱗のワーム」は一番低いレアリティの「コモン」なのに対し、「極楽鳥」は2つ上の「レア」である。
この二つのカードは有用性、レアリティのどちらの観点からしても釣り合っているとは到底言えないのだ。


ただ、レアリティ的に上位のカードを騙し取ることについては、実際のカードやパックに封入されているカードリストにきちんとレアリティも表記してあるケースがほとんどな上、
高レアリティのものはキラキラと輝くホロ仕様にされていたり、文字が銀や金の箔押しになっていたりと、見た目だけでも「レア」と分かる加工がされているため、
たとえ初心者であっても、(レアリティの観点から)自分のカードと見合っていないものを提示されていると直感できるだろう。

なお、『MtG』ではどのレアリティも見た目は変わらない*1が、エキスパンションシンボルの色を見ればすぐに分かる……のは、カードセット「エクソダス」以降の話。
甲鱗のワームが初めて収録された「第5版」では色分けがされていない。シャークトレードの代表例として挙げられるには理由があるのだ。


現在で実際に気を付けるべきは、「レアリティ的には同じ、あるいは得をしているように見えるが、実際には損をしている」という例である。
基本的に高いレアリティのものは、その希少価値に見合った強力な効果を有しているものが多いが、中には有用性に乏しいものも存在し、
対照的に、レアリティは低くとも、有用性が抜群に高いが故にカードショップなどで高値で取引されているカードが存在する。
また『Magic the Gathering』のカードを用いて、このシャークトレードの例を挙げると、例えばこの様なものがある。

「君のそのレアの「魂の洞窟」と、私の神話レアの「悪鬼の血脈、ティボルト」を交換してあげよう。なに、初心者に強くなってほしいからさ。」

ティボルトは『Magic the Gathering』においては最高レアリティの「神話レア」であり、レアの「魂の洞窟」よりもレアリティの面では上回っている。
そのため、一見すると高価値のカードを初心者プレイヤーを応援する意味で熟練プレイヤーがトレード対象として提示してくれており、相手からすると損になるトレードのように思える。

しかし実際には、ティボルトはプレインズウォーカーであるがために神話レアに制定されているだけで、カードパワーも市場価値も低いカードである一方、
「魂の洞窟」はレアリティこそティボルトに劣るものの、強力な能力を持つ有用で高価な土地である。
ただカードをコレクションしたいというのならばともかく、実際にゲームをプレイするのであれば、このトレードはまさしく相手の方が得をするシャークトレードとなるのだ。
しかもこのトレード、初心者にしてみれば、魂の洞窟側は何かよく分からない能力のついたただの土地にしか見えない一方、
ティボルトはたくさん能力を持っている特別なカードタイプなので強そうに見えるという側面もあり、そういう意味でもタチの悪いシャークトレードである。

また、レアリティが同価値以上、かつカードパワーも高いカードを提示された場合でも油断してはならない。
相手から要求されたカードが「カードパワーは低いが希少価値がある限定カード」である場合、たとえカードパワーが低くとも、市場価値に雲泥の差がある事があるからだ。
また、スターターセットに封入されたカードなど一見レアリティやカードパワーが高く見えても市場価値は殆ど無い物もあるので注意が必要。

この様なトレードはカードの実際の価値を知らなければ騙される可能性が非常に高いため、熟練者と思われるプレイヤーからトレードを呼びかけられた時には、
たとえ相手の提示したカードの方が交換を持ち掛けられている自分のカードより高レアリティであっても、すぐさま飛びつかずに一旦落ち着いて考えよう。
昔ならともかく、今ではスマホなど手軽な情報端末が存在するので、それで実際の市場価値を調べてもいいし、カードショップであれば店員を捕まえて聞いてみてもいい
本当に良心的なトレードを持ち掛けてくれている相手であれば、「一応調べてみてもいいですか?」と尋ねても快諾してくれるであろうし、
逆にそれを嫌がったり、強引にトレードを成立させようとしてくるならば、その時点で疑惑が確定したと言っても過言ではない。


この様なシャークトレードによるトラブルがあるためか、多くのカードショップではカードのトレード自体が禁止されていることもある。
何のために「トレーディング」とあるのかとツッコミたいが、実際にトレードしているところが見つかると注意されるか、最悪出禁をくらうためルールは見ておくべきだろう。

カードショップに限らず、店の責任者には「犯罪を防ぐ」という管理責任があり、立派な「詐欺」にあたるシャークトレードを防ぐ責任がある。
逐一確認して回る手間を考えると、最初からトレード禁止にした方が早いのである。*2

ちなみに、「シャークトレードによって一儲けしよう!」と考えている人のために言っておくが、立派な詐欺という犯罪行為であり、通報されれば逮捕される可能性があるため絶対にやめよう。
wiki篭りの中にこの様な考え方をしている人はいないと思うが。いないよな?


前述したように昨今では、スマートフォン等によって手軽に市場価値が分かるため、シャークトレードは減少傾向にある。
が、いまだに初心者や子供を狙ったシャークたちがいないわけではない。もしもカードショップで損なシャークを見つけたら、店員に相談しよう。

また、半ば恫喝のように無理やりトレードさせるという事例もあるようだが、それはもはや詐欺ではなくカードゲームアニメの悪役がやる様な「カード強盗」である
一応交換という体を取っているが、自分だけが利益を得るために対象に一方的、かつ強引に損失を被らせているという点では強盗と変わりない。
直接的に脅しつけていなくとも、自分の身内で相手を囲み、威圧感を与えた上でトレードを持ち掛け、断りにくい雰囲気を作るというのもこのテの輩がよく使う手法である。

そして注意が必要だが、「一見シャークトレードに見えても、実は双方が価値を理解して同意している」例がある。
例えば、自分が使わない高価値のカードと、相手が持っている自分が欲しい(自分のカードよりも)低価値のカードをトレードする、
「ゲームでは使いにくいがイラストが好みだから」とそのカードよりも高価値な自分のカードをトレード対象として提示するなど、
傍目から見れば不釣り合いなトレードに見えても、損失を被る側がそれを理解した上でトレードしているのであれば、不当なトレードには該当しない。
前者であれば、「確かに自分のカードの方が価値が高いが、売却してもトレードしたいカードは買えないから」と多少の損に目を瞑ってトレードを持ち掛ける、
後者であれば、ポケモンカードゲーム等でスタン落ちしてゲームでは使えなくとも関係なく、カードそのものに価値を見出しているからトレードしてほしい、三国志大戦シリーズで使っているカードが消耗してきた*3のでトレードなど、
互いに対等な立場で、両者に利益があるトレードであるのならば、傍から見れば不釣り合いなトレードでも、正当なトレードなのである。
また、完全に善意で初心者の雑魚カードと自身の強力なカードを交換する、というプレイヤーもいなかったわけではない……のだが、
シャークトレードの被害が有名になったことと、単純に譲渡する方が手っ取り早いので、現在ではトレードではなくプレゼントの形をとることが圧倒的に多い。
あとはカスレアを好んでコレクションしている物好きな人達くらいか。

単に低価値なカードと高価値なカードを交換することは「シャークトレード」とは言えない。相手に噓をつき騙し取ってこそ「シャークトレード」となるのである。




「君のその「追記」と私の「修正」を交換してあげよう。その追記は自分で新しい文章を考えなければならず、使いづらいだけだ。修正は直すだけでいいから扱いやすい。」

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最終更新:2024年06月27日 20:40

*1 レアリティに関わらずほとんどのカードに光る仕様と光らない仕様があり、カードが光らなくとも高レアリティという事はざらである。

*2 実際はそれだけではなく、トレードによって欲しかったカードを手に入れられると、店で買う必要が無くなり売り上げに直結するという事情もある。トレード禁止の理由としてこの2つを両方とも挙げる店舗は少なくない。

*3 三国志大戦シリーズはカードを筐体に激しくこすりつけるTCGなので、読み込みが悪くなるからとスリーブを好まない人もいる