だれのものでもないチェレ

登録日:2022/05/17 (火) 02:35:35
更新日:2022/05/18 Wed 22:49:49
所要時間:約 5 分で読めます




1976年公開のハンガリー映画。日本国内では78年に上映され、2010年にニュープリントで再上映されている。
上映時間は90分ほど。
日本ではVHSビデオカセットは発売されていたが、2015年に至るまでDVD化はされずじまいだった。

概要

1930年代の独裁政権時代のハンガリーを舞台としたドキュメンタリー。
原題は「Árvácsk(アールヴァーチカ*1)」であり、
作家のジグモンド・モーリツが1936年に自殺未遂を起こした当時19歳の女性から聞いた話を纏め上げ、1940年に中編小説として発表した作品を原作としている。

映画冒頭からいきなり素っ裸の幼女が現れる上に前半30分(全体の3分の1)ほど全裸のまま過ごしている上に制作年が70年代と古いこともあってか一切のボカシもない。そりゃDVD化が進まないわけだ

…こう書くとロリコンホイホイのように思えるが、問題はそのストーリー。
主人公の幼女は孤児であり、映画の初めから終わりに至るまで大人たちに虐げられ、救いが描かれないまま映画は終わっていく。
(そもそも全裸なのも養親に衣服すら与えられていないからである)
これは当時のハンガリーでは孤児を引き取ると給付金として養育費が貰える事もあり、
貧困の影響もあってか給付金と労働力目当てで孤児を引き取ることがほとんどだったためである。
幼女の裸目当てで軽い気持ちで視聴するようなら、まず間違いなく後悔するので見るときは覚悟を持とう。

そのストーリー展開や描写、時代背景などから『おしん』を彷彿とする意見も見られている。制作はこっちの方が先なのだが。


ストーリー

1930年代初頭のハンガリーの農村。みなしごのチェレは農家である養親の元で牛の世話をしていた。
しかし、チェレは孤児という事で露骨な差別といった虐待を日々受けていた。
とうとう家出をしたチェレは孤児院へ戻され、別の親へ引き取られていくが、そこでの日々も変わらないままだった。
最終的にすべてに絶望したチェレはクリスマスの日に馬小屋の中で藁に火を灯し…

登場人物


  • チェレ(演:ジュジャ・ツィンコーツィ)
主人公。孤児である7歳の少女。
引き取り先の家で牛のボリスの世話をしていたが学校に通わせてもらえない上に、衣服すらも与えられず裸のまま過ごすなど奴隷のように扱われていた。
やがて過酷な環境に耐え兼ね家出をするも、次に引き取られた家でも(服は着せてもらえたものの*2)奴隷扱いは変わらず。
冒頭で変質者に襲われ養親たちからは酷い扱いを受けるなどピンからキリに至るまでとにかく悲惨としか言いようがない。
産みの親に会いたいと願っていたが…。

ちなみにチェレはあだ名のようなものであり、本名は最後まで明かされじまいだった。

  • 最初の養親たち
両親と3,4人ほどの子供で構成された一家。チェレを疎ましいと感じ労働力としてこき使い、父親の方は盗み食いの罰とはいえ焼けた石を握らせた程。
流石に母親の方はこの折檻にはドン引きし治療を行ったが、チェレに対する扱いは終始変わらなかった。
「お前がこの世に持っているのは一つだけ。その体だけだ」という台詞にチェレ(及び当時の孤児たちへの扱い)が集約されている。

  • ジャバマーリ(演:マリアン・モール)
2件目の引き取り先の母親。赤ん坊に対する愛情は深いが、事あるごとにチェレに八つ当たりをするなど、かなりヒステリックな性格。
後述のおじいさんの資産を奪った過去を持つ上、チェレに対して殺意すらも抱き上記の養親たちが可愛く見えるほどの所業を行うなど、本作きっての悪役。

  • おじいさん(演:ヨージェフ・ビハリ )
ジャバマーリ夫妻の馬小屋で過ごす使用人の老人。チェレに唯一優しく接していた。
夫妻に土地を奪われた被害者であり、憲兵たちと話をしていた場面をジャバマーリに見られた事で告げ口をしていたと勘違いされてしまい…。
チェレに「若さがあれば必ず生き抜いていける。何にでも耐えられる。そしていいことも必ず起きる」と説く。






冥殿、多数のwiki籠りたち―

どうかあなたの国に―

私を迎え入れて―


この項目が面白かったなら……\ポチッと/

最終更新:2022年05月18日 22:49

*1 日本語ですみれ、パンジー。意訳で「みなし児」を意味する。

*2 服と言っても下着はなく簡素な肌着一枚で裸足のままではある。これは他の子どもも同様だが。