登録日:2023/01/12(木) 23:50:00
更新日:2024/02/12 Mon 16:54:13
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ゆらゆら帝国とは、日本で活動していたスリーピースロックバンドである。
略称は「ゆら帝」。
【概要】
1989年に結成し、1998年にミディからメジャーデビュー。
2005年にレーベルをソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズに移し、2010年に解散した。
インディーズ時代から坂本以外のメンバーはコロコロ変わっており、メジャーデビューする頃にはお馴染みの3人構成となった。
バンド名は特に深い意味はなく、結成時にメンバーが挙げた複数の候補の中から比較的マシだから選んだだけとのこと。「ゆらゆら」で一番マシって…
活動時はテレビ等のメディア露出を殆どしなかったため、当時から一般の知名度はそこまで高くなかった。
しかし、邦ロックファンからは
絶大な人気を誇り、その独特な音楽性はファンのみならず同業者からも高く評価されている。
解散した今でも高い人気を誇り、
サカナクション等実際に
大きく影響を受けたバンドは多い。
また、ライブに定評のあるバンドともされ、当時からチケットは基本的に即ソールドアウトの状況が続いていた。
ライブの際にはメンバー全員演奏に注力しており、
- MCは基本行なわない
- 掛け声・アンコールにも応じない
- サポートメンバーも殆どいない
- 発する台詞は坂本の「どうも」「ありがとう」等と最低限のみ
- 亀川と柴田に至っては全く喋らない
というストロングスタイルが貫かれ、そのストイックさもまた彼らの魅力でもあった。
【音楽性】
ほぼ全てを楽曲が坂本の作詞・メンバー全員の作曲で成り立っている。
解散までにガレージ、サイケ、プログレッシブ、ニューウェーブ、ポップと非常に幅広いジャンルの楽曲を作ってきた。
メジャーデビュー後は、アルバムで分けるとすれば「4th~6th」「8th~10th」「11th」の3つの区間で分けられることが多い。
●4th(3×3×3)~7th(ゆらゆら帝国Ⅲ)
激しい演奏を主体としたガレージロックがメインで、まさしくロックバンドらしい楽曲を多数世に放って行った。
比較的棘の少ないキャッチ―な楽曲も作っていき、
聴きやすい王道な曲調・歌詞が多いため、初心者はこの時期のアルバムかベスト盤から入るのがおすすめ。
●8th(ゆらゆら帝国のしびれ)~10th(Sweet Spot)
7thまでの王道ロック成分は鳴りを潜め、前衛的なサイケデリックロックがメインとなった。
あまりにも作風が変わりすぎたことで、ファンの中でも好き嫌いが大きく分かれたほど。
●11th(空洞です)
ここまで来るとバンドの音楽性は完成されていき、「何を足すか」というより「何を削るか」に重きを置いてるような楽曲が増えてくる。
全体のコード進行は非常にシンプルながら、卓越した演奏技術と坂本による独特な世界観が創り出す奥深い楽曲が特徴。
バンドとしても円熟した時期なため、この時期の作品を最高傑作と挙げるファンも少なくない。
【メンバー】
坂本慎太郎(ボーカル&ギター)
1967年9月9日生まれで、大阪府出身。
バンドのフロントマンで、バンドのほぼ全ての楽曲の作詞を行なっている。
左右に広がるボリュームヘアの見た目はインパクトが高い。
ギターの演奏技術も非常に高く、歌いながらは無理だろと思うような演奏を度々見せている。
作品のジャケットの独特なアートワークも、全て坂本が担当している。
水木しげるの大ファンでもあり、自身が愛用しているギターの裏側には氏のサインが描かれている。
氏の影響は楽曲・ジャケットにも大きく表れており、インディーズ時代は特に顕著。
そのおかげでCDジャケット、告知ポスターのどれもがおどろおどろしくて非常に怖い
解散後は本人名義でソロ活動をしている。2021年には大橋裕之原作のアニメーション映画「音楽」で珍しく声優として出演した。
亀川千代(ベース)
1969年7月29日生まれ。
名前と姫カットのようなロングヘアに非常に良いスタイル持ちから勘違いされやすいが、れっきとした男性である。
こんなナリだが実は
プロレス好き。
演奏の際には、ほぼ動かずに直立でベースを弾く。
基本的に我は出さず、柴田と共にアイコンタクトで坂本の演奏を支える。
解散後は様々なバンドのサポートやセッションに参加している。
柴田一郎(ドラム)
1968年9月2日生まれ。
見た目こそ一番普通でまともそうだが、皇居の前でドラムの練習をする等やはりぶっ飛んでる。
亀川同様我を出さないストイックなドラム裁きを見せ、坂本の演奏を立てている。
解散後は電子音楽家「いちろう」としてソロ活動をしている。
【活動~解散まで】
1988年、坂本が同じ大学の知り合いである元メンバー・吉田敦を誘い結成。
翌年に亀川が加入し、メジャーデビュー前の1997年に柴田も加入。
1998年、結成から10年後に4thアルバム『3×3×3』によりメジャーデビューを果たす。
2005年にはレーベルを移籍し、日本国内のみならずアメリカ、台湾等国外での活動も活発となって行った。
そして、『空洞です』リリースから約2年5か月後の2010年3月31日を以て解散を発表。
解散の理由を坂本は「(『空洞です』によって)バンドは完成してしまった」と語っている。
バンドとしてのゴールに到着してしまい、これ以上の成長を見込めないというある意味バンドマンとしては最高の状態での解散となった。
解散後もメンバーは、それぞれ音楽活動に励んでいる。
【ディスコグラフィ―・主な楽曲】
シングルよりアルバム単位での方が知名度が高いため、ここでは活動中に出したオリジナルアルバムと収録されている代表曲を挙げていく。
()内は発売日。
◆ゆらゆら帝国(1992年4月25日)
◆ゆらゆら帝国Ⅱ(1994年6月10日)
◆Are you ra?(1996年3月25日)
バンドがインディーズ時代にリリースしたアルバム。
1st、2ndは全体的に水木作品へのリスペクトを感じるような、暗い雰囲気の楽曲が多い。
3rd辺りになると、初期のガレージロック路線のような楽曲が現れ始めてくる。
また、3rdの一部楽曲はメジャーデビュー後のアルバムにも収録されている。
残念ながら現在は全て廃盤となっており、配信もされていないため収録曲を聴くのは困難。
プレミアもついていて高値で取引されているため、気軽に手を出すのも難しい。
今から聴くのであれば、動画サイトで探すか諭吉数枚を犠牲にして購入するしかない。
ちなみに当時から坂本がジャケットのデザインを担当していたが、中でも1stアルバムのジャケットが非常に怖い。
気になる方は「ゆらゆら帝国 1st」で検索を(閲覧注意)。
◆3×3×3(1998年4月15日)
通算4枚目。メジャーデビュー後初のアルバム。
インディーズ時代の作品よりはキャッチ―な楽曲も増え、初期らしいガレージロック路線に忠実な楽曲が多め。
シンプルながら王道なロックナンバーの『昆虫ロック』や、
同じく初期路線らしいガレージロックの1stシングル『発光体』等全11曲が収録。
比較的聴きやすいロック調の楽曲が多いため、入門用にもおすすめ。
◆ミーのカー(1999年6月16日)
通算5枚目のアルバム。
総演奏時間は(大体1曲のおかげで)ゆら帝の全アルバム中最長。
イントロこそゆったりしているが、その後すぐにアップテンポなロックンロール調となる『ズックにロック』や、
演奏時間がバンドの楽曲最長の約25分もあるが、歌詞自体は8分辺りで打ち止めとなるためそれ以降はインスト感覚で聴いて問題ない『ミーのカー』等全12曲が収録。
◆太陽の白い粉(1999年11月17日)
前作からわずか5カ月ほどでリリースされたミニアルバム。
全体的に王道なロックナンバーが多めで、
フジテレビ系バラエティ番組「はねるのトびら」のOPテーマにも使われていた『すべるバー』等全5曲が収録されている。
この楽曲以外にも、同番組では深夜時代からゆら帝の楽曲がいくつか主題歌に使われていた。
◆ゆらゆら帝国Ⅲ(2001年2月21日)
通算7枚目の、約7年ぶりのバンド名を冠したアルバム。
シンプルでキャッチーなロックナンバーが多いため、『3×3×3』同様初心者の入門用におすすめ。
ガレージロックのお手本のようなガチャガチャした演奏とバイきんぐ小峠のツッコミみたいと一部では話題の冒頭のシャウトが特徴的な楽曲『ゆらゆら帝国で考え中』や、
急に演奏が止まる特徴的なイントロがカッチョいい『ラメのパンタロン』等全10曲が収録。
◆ゆらゆら帝国のしびれ(2003年2月26日)
バンドの転換期にもなった、後述の
『ゆらゆら帝国のめまい』と同時発売となった姉妹アルバムの一つ。
大量に貼られた
緑色の顔のジャケットが特徴。
今作を一言で表すなら
「実験作」と言えるような内容。
これまでのガレージロックは鳴りを潜め、サイケデリック路線な楽曲が多数収録されている。
今まで使わなかった女性ボーカル、無機質なサウンド、キーボードの打ち込み等を積極的に使われ、不気味ささえ感じる作品となった。
全体的にサイケ路線の楽曲が大半を占める中、
阿波踊りとロックを調和させ、PVでひょっとこお面を被った3人(メンバーではない)が体幹が良い阿波踊りをする
『夜行性の生き物3匹』や、
「!!」が付いてる割には穏やかなサウンドで、ライブだと全く異なるロックアレンジが高い人気を誇る
『無い!!』等全9曲が収録。
前者はぼっち・ざ・ろっく!扉絵の元ネタにもなった
聴き手を
「しびれ」で浸食してしていくような、歴代アルバムの中でもかなりアクの強いアルバムとなっている。
◆ゆらゆら帝国のめまい(2003年2月26日)
前述の『ゆらゆら帝国のしびれ』と同時発売。朱色のパッケージが特徴。
此方は打って変わって全体的にポップでノスタルジックな要素が強めで、所謂「歌モノ」楽曲が多い。
そのため、しびれと比べると比較的聴きやすい内容にはなっている。
とは言ってもこれまでのガレージ路線とは大きく違う、楽曲に女性ボーカルや子供のコーラスも取り入れた、これまた「実験作」と言えるような作品でもある。
のっけからどう聴いても坂本ではない女性声のボーカルに度肝を抜く『バンドをやってる友達』や、
ゆら帝の楽曲の中ではかなりキャッチーな歌詞・サウンドをしている『冷たいギフト』等全9曲が収録。
◆Sweet Spot(2005年5月18日)
どことなくクトゥルー神話を彷彿とさせるジャケットが特徴的なアルバム。
『ゆらゆら帝国のしびれ』からさらに洗練されたサイケデリックロックを楽しめる。
初見ではハマらなくても、何回も聴いてるうちにハマっていくスルメ曲が多め。
タコの擬人化(?)のような全身タイツの人間が動き回る珍妙なPVが特徴な『タコ物語』や、
サイケには留まらない美しいギターサウンドの表題曲『スイート・スポット』等全10曲が収録。
◆空洞です(2007年10月10日)
バンドのオリジナルアルバムとしては最後の作品。
数本の土管空洞が描かれているジャケットは有名で、バンドを知らなくても見たことある人もいるのではないだろうか。
これまでより気合を入れて制作されたとのことで、「空っぽな感覚」をテーマにした無機質ながら浮遊感のある演奏の楽曲で構成され、3人でしか表現できない世界観の極みを生み出した。
歌詞はクソクソ言ってるがタイトル通り美しいサウンドが持ち味のPVが食事中の方は閲覧非推奨なほど癖の強い『美しい』、
シンプルなコード進行ながらどこかノスタルジーを感じ、心地良さすら感じる表題曲にしてバンドの代表曲『空洞です』等全10曲が収録。
バンドの集大成とも言えるアルバムで、ファンからも最高傑作と名高い名盤。
実際に坂本をして「過去最高の完成度」と言わせたアルバムでもある。
その完成度からバンド内どころか邦楽史に残る名盤とさえ言われており、
各所の《邦楽名盤ランキング》でははっぴいえんどの『風街ろまん』やYMOの『SOLID STATE SURVIVOR』等と並ぶ常連アルバムと化している。
だが、このアルバムを以てゆらゆら帝国は完全に出来上がってしまい、発売後の全国ツアーを最後に解散した。
追記・修正は空洞を開けられた方がお願いします。
- ゆら帝の曲を採用したことがはねトび唯一の評価点だと思っている -- 名無し (2023-01-27 21:51:02)
最終更新:2024年02月12日 16:54