消し炭

登録日:2023/02/25 Sat 19:35:57
更新日:2025/01/06 Mon 19:37:55
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消し炭とは、

1) 炭の一種。本来の「消し炭」。
2) 啖呵等で言及される比喩表現。
3) 料理に関する比喩表現。


以下、順番に解説する。


▽目次

本来の「消し炭」

薪木を燃やして作る炭の一種。
特に薪や炭の火を途中で消す事で作られる軟質な炭を指す。
炭を半分燃やして止めることで小さな孔が表面に増え、表面積が増えるほか酸素が炭の内部に行き届きやすくなる。いうなれば即席の活性炭。
薪木や普通の炭よりも着火が非常に早い利点があり、火種の繋ぎとしてよく利用されていた。

ガスや電気コンロ、給湯器などがない時代、薪や炭は暖を取るための生活インフラとして重宝されていた。
マッチが貴重品…というかそもそもマッチがない時代なら尚の事焚き付けも大変だったと思われ、「消し炭」の活用も重要な生活の知恵であった。
炭焼き小屋の炭焼き窯で作られる本格的な炭と違い、かまどや囲炉裏、焚き火などの、要するに燃え残りである「消し炭」は、薪がある家庭なら手軽に確保できたのも利点。
ガスや電熱機器が普及した現代でも、バーベキューの火起こし、消臭剤、除湿剤、土壌改良材として重宝されている。

作り方は以下の通り。
  1. 薪木や炭を火にかけます
  2. 炭になって赤々と燃える位まで火を焚きます
  3. 全てが灰になる(炭素が全て酸素と結びつく)前に火を消します
  4. 密閉できる火消し壺に入れて空気(酸素)を遮断し、十分鎮火させればこれで完成
    火消し壺に入れてもしばらく熱々なので、この後しっかり冷えるまでは火事や火傷にご用心
    だからいって水をかけると湿気ってしまうので、火種の消し炭を作るのなら気長に冷まそう

消し炭を使用する際は、ほぼ普通の炭として他の焚き付け(新聞紙や薪木など)と一緒に火起こし器に入れて、通常通り火をつけるだけでOK。
さほど時間をかけず消し炭なら引火してくれるため、着火剤も手間もかからない。


火種目的で保存する際は、湿気を吸わない場所で保存すること。
密閉した袋に入れる、消し炭と一緒に乾燥剤も容器内に入れるなどの方法が必要になる。
不安であれば、消し炭を使用する前日に天日干しして湿気を除去しておくなども有効。


ちなみに、黒に近い茶色を指す「消炭色」という色が存在するが語源はこちらである。



啖呵における「消し炭」



「テメェなんか消し炭にしてやるぜぇぇぇ!!!」

ファンタジーおよび能力バトルの物語にて、火属性/炎属性の使い手が上記の様に啖呵を切る様はご存知の方も多いことだろう。
まるで「跡形も残さず燃やし尽くす」と言いたげに"消し炭"という単語を用いるため、そういう意味だと認知している方も多いはず。
その影響範囲は広く、多くの炎属性ボスキャラ格、果ては一介の雑魚ウイルスにすら浸透している。

ところが本来の消し炭とは、燃え尽きる前に火を消しまだ燃える余地を残しているからこそなので、上記の用法は厳密には誤りである。
黒焦げになっている時点で大惨事(というかヒトであればオーバーキル状態)であり、わざわざ消し炭という単語を使う必要性は薄い。
この場合は「燃えカスにしてやるぜぇぇぇ!!!」が日本語として適切になる。

「消」という否定的な字を含んでいる事、単に文字のリズムが良い事、消し炭という道具自体が流行らなくなり馴染みが薄くなった=単語の意味を知らない人が増えた、など
「消し炭」が広まった要因はいくつか推測はできる。

また、消し炭自体は薪木を燃やした結果に出来上がるものであることには違いないため、燃やしてやるというニュアンスとしてこの例えを使っていること自体に間違いはない。
確かに跡形もなく消し去るつもりならば出来上がるのは消し炭ではなく燃えカスになるはずだが、きっと「テメェなんか消し炭にしてやるぜぇぇぇ!!!」と叫ぶ炎属性諸兄は「テメェなんか燃やして、燃え尽きる前に適切に処理して燃料として再利用できるよう加工してやるぜぇぇぇ!!!」という意図を持っているのだろう、きっと。
そう考えれば木属性/植物属性の使い手が言うところの森の肥やしになるがいい」みたいなものとも考えられる。
……なんて炎属性持ちを煽ったら、それこそ消し炭にされるから気をつけられたし。


なお、もともと「消し炭」という比喩表現自体は女学生の間で使われていたスラングであり(つまり古式ゆかしいJK言葉)「短気な先生」を指していたという。
こちらは「すぐに火がつく」というちゃんと消し炭本来の特性になぞらえた秀逸な例えであったようだが……

いまでは燃えカス的な意味も広く浸透してしまったので、「消し炭の使い方が違う」と目くじらを立てるのも控えめにしておこう。



料理に関する「消し炭」

料理の産物のうち、黒焦げになったものを「消し炭」と表現する事がある。
要するに失敗作。
ウェルダンなんて生易しいものではなく、芯まできっちり火を通し、焦がし上げているレベル。
黒色からの連想なのか「ダークマター(暗黒物質)」等と形容される事も。

いかにも食用に適さない事がひと目で判り易いからか、料理下手な人物による(半ばギャグ的な)調理失敗の結果として採用される事が多い。




追記・修正は火の始末をしてからお願いします。

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最終更新:2025年01月06日 19:37