タクシー運転手(閃光のハサウェイ)

登録日:2023/06/20 Tue 01:33:10
更新日:2025/08/09 Sat 23:58:21
所要時間:約 8 分で読めます






ケへへへッ……暇なんだね?




タクシー運転手とは、小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』に登場したキャラクター。
小説中では個人名は明かされておらず、「運転手」という名称で登場し、後年に製作された劇場アニメ版でも同様の表記であった。
本記事のインスパイア元となったニコニコ大百科の項目名に倣って、タクシー運転手とする。

CV:本多新也

【概要】

小説『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(上)』、映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』に登場する、ダバオで暮らすアースノイドの男性タクシー運転手。本名は不明。

【作中での描写】

マン・ハンターと不法居住者の銃撃戦から逃れるために飛び込んできたハサウェイ・ノアと出会う。飄々とした態度の裏に、地球連邦政府への不満やマン・ハンターへの嫌悪感を抱いている。しかし、高額な居住権料を上納し例外規定により地球に住むアースノイドに属するため、連邦政府の政策を支持せざるを得ない矛盾を抱えている。

政治的な知識は乏しく、地球の環境問題にも関心が薄い。スペースノイドが熱狂的に支持するマフティー・ナビーユ・エリンに対しては懐疑的であり、彼の立場は連邦政府による「アデレート会議」の差別的な方針を理解していない、多くのアースノイドを象徴している。

【タクシー運転手を含めたアースノイド市民の劇中の顛末】

マフティー敗北後、**「地球帰還に関する特例法案」**が成立。この法案は、彼のような合法的な居住権を持つアースノイド市民からも土地を接収し、特殊警察マン・ハンターの権限をさらに拡大させる危険なものだった。特権階級ではない彼らは、自身の生活がより困難な状況へ向かっていることを理解しないまま、救いのない結末を迎えたことが示唆されている。

【小説版】

劇中では容姿に関する描写はなく、挿絵も存在しない。

マン・ハンターと不法居住者たちの銃撃戦から逃れようとしたハサウェイは、タクシーに乗れるかを運転手に尋ねるが、当初は拒否される。しかし、タクシー乗り場がマン・ハンターに占拠されていたことを知ると、彼を乗せることにした。

道中、ハサウェイと他愛のない雑談を交わす中で、運転手はマフティー・ナビーユ・エリンに対する疑問やマン・ハンターへの不満を語り続ける。客であるハサウェイは実はマフティーのリーダーであり、雑談の中で環境汚染への指摘をやんわりと返すが、運転手は日々の生活実態を引き合いにして否定し続けた。やがてハサウェイが「マフティーは千年先のことを言っている」と大義を口にすると――

ケへへへッ……暇なんだね?その人さ?暮しってそんな先 考えている暇はないやね

そのような日常的な言葉は、ハサウェイにとって衝撃的だったと小説では解説されている。彼はこの発言を受け、タクシー運転手を「経済的・生活的に余裕がなければ明日のことを考えるのが精一杯な庶民の典型」として位置づけ、自らの立場と比較しながら、教義や主義の達成を目的に思考し始めた時点で人はかえって狭い視野に陥ることもあるのだと内省した。

【アニメ版】

映画一作目『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』に登場。今作で初めてビジュアルデザインが描き起こされ、さびしうろあきによる漫画版でもこの映画版デザインが踏襲されている。容姿は多くの歯が欠け、口腔メンテナンスもされていないラフな風貌で、歯の治療費すら回せないのかは不明である。

ハサウェイとの邂逅や会話の内容は小説版とほぼ同じだが、大きく異なるのはその後の描写。映画オリジナルとして、タサダイ・ホテルに戻ったハサウェイが夜、ベッドで天井を見上げながら運転手の言葉を思い返す場面が追加されている。この演出によって、運転手との会話がハサウェイに与えた影響の大きさがより明確に示されている。

演者への印象も強く、アニメ版でハサウェイを演じた小野賢章は『アキバ総研』のインタビューで、キャラクターを掴む上で印象的だったシーンとしてタクシー運転手とのやり取りを挙げた。演技については「あの表情に合わせて台詞をしゃべると素が出てきてしまうけれど、そこをぐっと抑えてハサウェイ・ノアとしてふるまう。個人的に、あの微妙な感じはすごく好きですね。」と振り返っている。

【他のアースノイド】

ハサウェイとアースノイドの交流としてはタクシー運転手の描写が映画ではスポットが当てられているが、小説版では彼以外にも印象的な人物がいる。たとえば、ハサウェイをクルーザーへと送り届けたカヌーの少年は、政治に関する雑談を交わす相手として描かれている(アニメ版ではほぼカット)。
少年は文化に関わる家系を理由に、宇宙移民法の特例(「人種固有の文化を保全維持する人」など)によって地球に正式に居住し続けることが可能だった。彼は地球連邦政府を嫌い、マフティーの行動を理解して賛同する一方で、観光産業の維持は望んでいた。この点は運転手と共通するが、思想には相違もある。連邦政府の要人が自分たちを見下していることを理解しながらも、あえて知らないことは知らないままで生きるという、独特の知性を持つキャラクターだった。


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最終更新:2025年08月09日 23:58