トーセンジョーダン(競走馬)

登録日:2023/06/28 Wed 05:59:14
更新日:2024/11/07 Thu 00:52:29
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そして極限へ

資質に満ちて
心身とも絶好
さらに剛腕を迎え
かさねて気強いのは
滔々たる戦いの流れ

それらすべてが
最良のバランスで
絡み合ったとき
極限の爆発力は生まれ
雄叫びが響き渡る

───名馬の肖像 2020年 天皇賞(秋)



トーセンジョーダン(Tosen Jordan)とは日本の元競走馬

メディアミックス作品『ウマ娘 プリティーダービー』にも登場しているが、そちらでの扱いは当該項目参照。
トーセンジョーダン(ウマ娘 プリティーダービー)


目次

【データ】

誕生:2006年2月4日
父:ジャングルポケット*1
母:エヴリウィスパー
母父:ノーザンテースト
調教師:池江泰寿 (栗東)
馬主:島川隆哉
生産者:ノーザンファーム
産地:早来町
セリ取引価格:1億7,850万円 *2
獲得賞金:7億506万円 (中央)
通算成績:30戦9勝 [9-4-2-15]
主な勝鞍:11'天皇賞(秋)

【誕生】

2006年2月4日生まれの鹿毛の牡馬。
ジャングルポケット、母エヴリウィスパーの間に生まれた良血。
競馬に詳しいアニヲタ民にとってこれがどれだけすごい血筋かは一目瞭然であろう。
その血統が評価され2007年の1歳馬セレクトセールにて1億7000万という高額で取引された。

【現役時代】

初戦となる2008年の新馬戦では振るわず6着に終わるものの、その2週間後に福島芝2000mにて初勝利。*3それを皮切りに中山での連戦となった葉牡丹賞、当時はまだオープンだったホープフルステークスで勝利を飾る。
このころから芝2000mでの強さの一端は垣間見えていた。

翌2009年、初戦として挑んだ初重賞のG3共同通信杯では2着となったが、1/2馬身と惜敗だったこともあってかクラシック路線への挑戦に陣営は意気込んでいた。
しかし、裂蹄によりそれはかなわず、半年以上を棒に振ることになってしまう。
血統的にクラシックでの活躍が大いに期待できたために、非常に残念でならない。*4

アンドロメダ杯、中日新聞杯に掲示板入りするも、再び半年の休養を取ったため準オープンへと降格させられたが、漁火ステークスで勝利を挙げ再びオープン馬へ。
続くアイルランドトロフィーで連勝すると、初の長距離となるG2アルゼンチン共和国杯でも差しきり重賞初制覇を遂げる。
これはいけるのでは?と陣営はG1有馬記念への出走を決める。逃げの戦法で先頭をキープするも、1年下の皐月賞馬ヴィクトワールピサ、同期の牝馬二冠馬ブエナビスタ*5の追い込みには勝てず、5着が精一杯だった。

5歳になった2011年の初戦となるアメリカジョッキークラブカップでは1番人気に支持され、中段で様子をうかがいながら徐々に進出。最後には差しきり重賞2勝目をあげる。
しかし、右肩にハ行が見られたため本来なら出走予定だった阪神大賞典を取り消し。治療に専念することとなる。
復帰はG1宝塚記念。ゲートの中で力んでしまっていたのか出遅れ、後方2番手からの追い込みを仕掛けたが、全体的に速いペースに追いつくことができず、9着に終わる。
2ヶ月の休養のあとにG2札幌記念。先行策を取り、3頭がゴール前までもつれ込む展開となったが、最後に根性の伸びを見せ、レッドディザイア、アクシオンを差しきり重賞3勝目。
なんとここまであげた7勝のうち、実に5勝が芝2000mでのレース。トーセンジョーダンの走りは今まさに最高潮を迎えつつあった。

そして迎えた天皇賞秋当日、鞍上には宝塚記念でも走ったニコラ・ピンナ騎手。
7番人気ながらもトーセンジョーダン自身の調子もバッチリ。
出走表にはエイシンフラッシュ、ペルーサ、トゥザグローリー、ブエナビスタ、ダークシャドウと強豪揃い。
舞台は整った。後は全てを出し切るのみ。

スタートはまずまず。シルポートがハナを取り、逃げを打つ。
その後ろはビッグウィーク、アーネストリー、エイシンフラッシュと続き、トーセンジョーダンはペルーサ、ブエナビスタのやや後方、11番手から様子をうかがう。

シルポートが引っ張るような形で以上にハイペースなレースとなり、
最終コーナーまでに先頭から最後方まで実に25馬身以上の差が開いたまま大ケヤキを越える。
ここでシルポートの勢いが徐々に弱まっていく。明らかなスタミナ切れだ。最終直線でまったく伸びない。
ビッグウィーク、アーネストリーもそれに飲まれる形で後方に沈んでいく。
残り300m、ここからが勝負。トーセンジョーダンに鞭が入る。大外から一気に内をつき、じわりじわりと前へ詰める。
しかし、内からはブエナビスタとダークシャドウ、外からはペルーサも迫ってくる。
エイシンフラッシュ、トゥザグローリーもラストスパートをかけるが、前4頭の段違いの伸びについていけない。

ここでトーセンジョーダンがペルーサの前に立つ。迫る影、ダークシャドウも抜き返そうと競り合いにもつれ込む。最内からブエナビスタ、大外からはペルーサ。誰が勝ってもおかしくない。
ここまできたら最後に勝つのは―――根性のあるもの。今日のトーセンジョーダンは一味違った。
俺こそが先頭だ、といわんばかりにハナを進む。ダークシャドウも譲らないが、じりじりと下がっていく。ペルーサも、速さは勝っていたが仕掛けるのが遅かった。

先頭トーセンジョーダン!ダークシャドウ来ている!
ダークシャドウ来ている!!ダークシャドウ来ている!!!
並びかける!!内か!?外か!?粘る!!

トーセンジョーダン勝ったーー!!!

(フジテレビ 青嶋達也アナウンサー)

数ある人気馬を押しのけ、トーセンジョーダンは1/2馬身差でゴール板を駆け抜けた。
光る才能はあれど、どうしても取れなかったG1の栄冠をついに勝ち取った。
この勝利はオーナーである島川隆哉氏にとっても、そして鞍上のピンナ騎手にとっても初のG1制覇であった。
そして、このときの勝ち時計1分56秒1という記録はそれまでウオッカが記録した2008年同大会の1分57秒2を大幅に上回る。*6
さらに国内の芝2000m全ての大会においても日本レコード新記録となった。
2019年の天皇賞(秋)を制した九冠の女王アーモンドアイですら、この記録に0.1秒届かなかったといえばその壮絶な記録がわかるだろう。
この記録は2023年天皇賞(秋)イクイノックスが1分55秒2の驚異的なタイム*7で更新されるまで12年もの間君臨し続けた。

しかし、この後は勝ちに恵まれなかった。
ジャパンカップではブエナビスタにリベンジを決められ2着。続く有馬記念でもこの年のクラシック三冠馬オルフェーヴルに圧倒的な実力の違いを見せ付けられ5着に沈む。

翌年の大阪杯*8で3着、天皇賞春で2着、さらに翌年のジャパンカップでは3着に入るなど時々好走を見せていたが、それ以外では掲示板外。
そして、2014年のジャパンカップの14着を最後に7年の現役生活をそのまま終えることになった。
通産30戦9勝(9-4-2-15)、獲得賞金7億506万円。
実働7年。年数の割には低い賞金かもしれないが、その蹄跡は確かに刻まれるものだった。

【引退後】

引退後は父と同じブリーダーズ・スタリオン・ステーションズにて種牡馬となったが、今や存亡の危機にあるトニービン系サイアーライン維持に期待が掛るも繁殖入り時期を逃した感が否めず、
2020年代になってやっとセシールが盛岡の地方重賞OROオータムティアラを勝利したくらいで、残念な事に種牡馬としての成績はあまりよろしくないようだ。種牡馬として成功しそうな要素が揃っていてトニービン系存続のために期待されていたが、あまりにも悪すぎて逆に有名になってしまう程である
現在は島川オーナーが所有するエスティファームにて繋養されている。

【創作作品での登場】

初登場した共同通信杯時は同父同期のシェーンヴァルトと共に父ジャングルポケットから指導を受けるも父が同じレースに出走するブレイクランアウトに感情移入してしまっており、
2011年AJCC回は前年・前々年度覇者ネヴァブションがメインとなったため目立たなかったが、
続く天皇賞(秋)では同期同厩舎なオルフェーヴルの雄姿に気おされる後輩アルジェンタムを、オルフェーヴルの菊花賞に続いて2週連続で厩舎にG1をもたらす自らの勝利によって励ました。
…が、2012年の正月には1歳後輩のトゥザグローリーと共に2011年有馬記念で引退したブエナビスタの姿に想いを馳せ、有馬で勝った(ブエナビスタとは同じクラブの)オルフェーヴルが不思議がっていた。

一見軽薄そうだが純粋無垢でおバカな愛すべきギャル。ネイルアートが趣味で、その技術はプロ顔負けとか。
蹄が脆い→爪を気にする→ネイルアートという連想ゲームからギャルキャラになったのだろうという推測が有力。
「爪が脆い」こと自体も設定として反映されている。
ギャルキャラがやたら多いウマ娘の中でも「おバカなギャル」担当で、そのおバカぶりはちょっと救い難い域なことが掘り下げと共に判明。
しかしアプリの育成シナリオはそうした部分を深刻な悩みとして描いて、所謂ビリギャル系の要素を持った熱血物語に昇華している。


【余談】

名前のジョーダンの由来だが、登録上はあのバスケットボールの神様マイケル・ジョーダンからだが、それ以外にもカリフォルニア産のワインの銘柄から来ている*9



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  • 元日本芝2000mレコードホルダー
  • 主戦騎手不在
最終更新:2024年11月07日 00:52

*1 父トニービン。アグネスタキオン、マンハッタンカフェ、クロフネと同期のダービー・ジャパンカップ馬。

*2 2007年 セレクトセール

*3 福島競馬場での2歳芝2000mは初開催

*4 父ジャングルポケット、並びに父父であるトニービンの産駒はいずれもクラシック級や古馬でのG1馬を数多く輩出。特にトニービン系列産駒は東京競馬場に滅法強いことで有名

*5 父スペシャルウィーク。最終的にG1競走6勝を挙げている。

*6 なお、トーセンジョーダン以外でも上位7頭が今までのレコードタイムを上回っている

*7 ちなみに世界芝2000mレコードは1999年9月26日にチリのナシオナルリカルドリオン賞(GI)でクリスタルハウスが記録した1分55秒4であり、それすらも更新している(さらにちなむと鞍上のC.ルメールは2018年JCにてアーモンドアイで2:20.6の2400m世界レコードも保持している)。

*8 当時はGⅡ産経大阪杯

*9 登録上は冠名(トーセン)+人名(ジョーダン)になっている