アーモンドアイ(競走馬)

登録日:2025/03/10 Mon 00:44:00
更新日:2025/06/20 Fri 00:14:44
所要時間:約 40 分…ですが頑張れば2分20秒6で読めます


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10億超え 18年クラシック世代 2分20秒6 G19勝会 G1馬 アロンズロッド アーモンドアイ ウマ娘ネタ元項目 オイルマネー奪取 オークス馬 クリストフ・ルメール シャドーロール シルクレーシング ジャパンカップ ドバイターフ ニューヒロイン リアルチート ルメール最愛の相棒 レコードホルダー ロードカナロア産駒 ロードカナロア自慢の娘 ヴィクトリアマイル 三冠牝馬 中距離無敗 九冠の絶対女王 九冠馬 国枝栄 天皇賞馬 女傑 平成最後の三冠牝馬 年度代表馬 戸崎圭太 最優秀3歳牝馬 最優秀4歳以上牝馬 桜花賞馬 牝馬 牝馬版ナリタブライアン 秋華賞馬 競走馬 競馬 繁殖牝馬 負けず嫌い 顕彰馬 鹿毛 🥒



瞳に夢を。

人馬を結ぶ、揺るぎない信頼で、
女王の座へと駆け上がる。
勝利に愛された、澄んだ瞳。
まっすぐに、はるかな頂点を見つめて。


アーモンドアイ(Almond Eye)とは、日本の元競走馬、現繫殖牝馬。
なお、1985年生まれのファバージ産駒でも同名の馬がいるが、本記事では2代目となる2015年生まれのロードカナロア産駒の方を取り扱う。かつて香港スプリント2連覇を成し遂げ日本競馬史上最強短距離馬の1頭に数えられたロードカナロアの初年度産駒にして、日本競馬史上最多の中央芝GⅠ8勝とドバイターフを制した九冠馬


+ 目次

【データ】

誕生:2015年3月10日
父:ロードカナロア
母:フサイチパンドラ
母父:サンデーサイレンス
調教師:国枝 栄(美浦)
主戦騎手:クリストフ・ルメール*1
馬主:シルクレーシング
生産者:ノーザンファーム
産地:安平町
通算成績:15戦11勝(海外1戦1勝) [11-2-1-1]
獲得賞金:19億1526万3900円(2025年2月現在 日本調教馬歴代4位)*2
     (国内)15億1956万3000円
     (海外)360万USドル(当時の日本円で3億9570万900円)
主な勝鞍:
'18 牝馬三冠ジャパンカップ(GⅠ)シンザン記念(GⅢ)
'19 ドバイターフ(GⅠ)天皇賞・秋(GⅠ)
'20 ヴィクトリアマイル(GⅠ)天皇賞・秋(GⅠ)ジャパンカップ(GⅠ)
主な表彰歴:
顕彰馬
'18 JRA賞年度代表馬(満票)・最優秀3歳牝馬(満票)
'20 JRA賞年度代表馬・最優秀4歳以上牝馬
'21 H・H・シェイク・モハメド競馬優秀賞 最優秀競走馬*3
特記事項:
'20 安田記念(GⅠ)2着 '19 安田記念(GⅠ)3着*4
'18桜花賞(GⅠ)、'18ジャパンカップ(GⅠ)でレコード勝ち

誕生

2015年3月10日、日本サラブレッド界最大の産地、北海道のノーザンファームで誕生。
父は香港スプリント2勝、スプリンターズステークス2勝などGⅠ6勝を達成し日本競馬史上最強スプリンターの1頭に数えられる世界の龍王、ロードカナロア。
母は2006年エリザベス女王杯覇者*5フサイチパンドラ。アーモンドアイが生まれるまでに6頭の産駒がいたが、いずれも未勝利~1勝クラス止まりの馬しかいなかった。
母父は日本や米国の競馬ファンなら一度は名前を目にしたであろう大種牡馬サンデーサイレンス

オーナーは一口馬主クラブのシルクレーシング。当時の代表馬としては97'有馬記念覇者のシルクジャスティス、00'オークス覇者シルクプリマドンナ、12'阪神ジュベナイルフィリーズ覇者のローブティサージュがいたが、彼女の登場以降、大躍進を遂げることとなる。募集金額は一口6万円×500口(計3,000万円)。
シルクレーシングの紹介資料でも記載されているが、身体のバランスが非常に取れ、澄んだ瞳を持つ美しい馬であった。その美しい出で立ちから、出資者から名前は「美人とされる顔の瞳の形」を表すアーモンドアイ(Almond Eye)と名付けられた。

厩舎は美浦の国枝栄厩舎。ブラックホーク、マツリダゴッホ、三冠牝馬アパパネなどの名馬を手掛けた強豪厩舎である。デビュー前の追い切りでは古馬に先着を許さない強さを見せ、ロードカナロア産駒の有力馬として早くも期待が集まっていた。

彼女自身のチャームポイントとなる白いシャドーロールも付けられた。本来は物見を防止したり、影に怖がる馬を怖がらせないといった使い方をするための馬具なのだが、アーモンドアイが付けている理由は「うち(国枝厩舎)の馬だとすぐわかるから」との事*6

2歳

デビュー戦~未勝利戦

17年8月、その追い切りや馬体が評価され各紙がこぞって本命とし、いきなり単勝1.3倍の人気を背負い新潟1400mでデビュー。騎手は2年前にJRA騎手免許に合格したクリストフ・ルメール騎手で、以後引退まで15戦中14戦は彼が手綱を握ることとなる。

直線に入った時は17頭立ての11番目と後方に位置するが、そこから他馬を置き去りにする末脚を見せ差し切り勝利…とはならずニシノウララ*7の2着に惜敗。とはいえ、ニシノウララより3kg重く斤量を背負って*8の2着であり、負けて強しの内容との評価だった。

次の10月の東京1600mの未勝利戦では単勝1.2倍の人気を背負い出走している。そしてレースは中団で進め、直線に入ると持ったまま上がり33秒5の末脚を見せ圧勝する。

なお、この頃は右トモが弱めだったので、装蹄師の牛丸氏は削蹄して角度を調整しバランスを取っていたという。

3歳春

シンザン記念-その瞳が開くとき-

3歳の初戦は京都1600mの重賞、シンザン記念となった。ルメール騎手が騎乗停止となっていたため、戸崎圭太騎手に乗り替わりとなった。当日の京都が雨で稍重の馬場であることや乗り替わりが懸念されるも、前走の圧倒的な強さ、戸崎騎手が前日まで重賞を連勝していた事から単勝2.9倍の一番人気に推される。

レースがスタートすると、まさかの超出遅れ。何とか挽回するも後方2番手。雨の影響で半マイル49秒かかるタフなレース。そしてカシアスが先頭で直線に入るが、アーモンドアイは直線に入ってもまだ最後方。ぬかるんだ芝、こんな位置では届くわけがない。観客達がそう思ったのもつかの間──

「一気に来たぞ!アーモンドアイが、凄い脚で伸びて来た!」

「これは恐ろしい馬だ!アーモンドアイ!新星現る!」

関テレ 岡安アナ

アーモンドアイの末脚が爆発した。先行したツヅミモン、カシアス以下順位が殆ど変わらない前残りの展開で、他馬が止まったように一頭だけ別次元の末脚*9を出して完勝。前年10月27日にこの世を去った母フサイチパンドラに産駒初の重賞勝利を捧げた。なお、戸崎騎手はJRAで初となる3日連続重賞制覇*10となった。

ロードカナロア産駒初の重賞勝利となったこのレース、まるでレース名を冠したあの神馬を思い出させてくれるような末脚に、怪物誕生の予感が広まった。

桜花賞-ニューヒロイン誕生-

前走を圧勝したアーモンドアイであったが、蹄が欠損してしまう課題があったため、蹄をエクイロックスと呼ばれる充填剤で補修していた。この蹄の課題は競走生活で度々現れることとなる。蹄を補修したアーモンドアイは、復帰したクリストフ・ルメール騎手を背に桜花賞に出走した。

アーモンドアイは単勝オッズ3.9倍の2番人気。…ネタバレになるが、実はこれが生涯唯一の2番人気以下である。では1番人気はというと、前年度阪神ジュベナイルフィリーズ覇者であるオルフェーヴル産駒のラッキーライラック。前走チューリップ賞でも3番手から上がり最速で抜けて勝つなどその勢いは留まる事を知らず、単勝1.8倍の圧倒的人気を背負った。

そしてレースがスタートすると、ラッキーライラックが絶好のスタートを決め完璧なポジションにつける一方で、アーモンドアイはあまりスタートが決まらず後方2番手。
直線に入ると、先頭に立つツヅミモンをラッキーライラックとリリーノーブル*11が交わそうとした。桜花賞は前残りしやすいレースであり、この時点でラッキーライラックの勝利を確信した人も多かった。だが──

残り300mを切ろうとした瞬間

集団最後方、本来であれば絶対届くはずもない距離から、

白いシャドーロールの怪物はギアを入れ、その力を解放した

他馬の時が止まったかのように全てを薙ぎ払い、2歳女王すらも並ぶ間もなく置き去りにした

「ニューヒロインだ!アーモンドアイ!」

関テレ 川島アナ

勝ちタイムは国枝厩舎の先輩アパパネが記録した桜花賞レコードを塗り替える1分33秒2。さらに上がり3Fは33秒2で、これは2位と1秒差の桁外れの末脚だった。ラッキーライラックも上がり34秒5と2位と0.3秒差しかなく、はっきり言って前残りの展開で、例年ならラッキーライラックが勝ってたレースだった。鞍上の石橋騎手も「勝った馬が強かったですね」と完全にお手上げ状態。

ルメール騎手は「今日はライバルはいませんでした。アーモンドアイだけのレースでした」「三冠を考えてしまいますね」と語っており、早くも三冠牝馬候補として期待が高まった。

オークス-その瞳に映るものは-

二冠目を目指し、アーモンドアイはオークスへ出走する。父がスプリンター故の距離不安、前走でもあった蹄の課題はあったものの、レース前の調教ではダービー出走予定の同厩舎の牡馬コズミックフォースが全くかなわない圧倒ぶりで、単勝1.7倍の圧倒的人気を背負う。

アーモンドアイがどんな末脚を見せるのかとファンがワクワクする中、レースはサヤカチャン*12が大逃げ戦法を取っていく。ラッキーライラックが3番手、そしてアーモンドアイはなんと先行4番手につく。

直線に入るとリリーノーブルが先に抜け出すが、残り400mあたりでアーモンドアイにギアが入り、リリーノーブルをあっという間に抜き去る。

「アーモンドアイ、満を持して早くも先頭!」

「その眼に二冠は見えたのか!?確信したのか!?二冠のロードが切り開けたか!?」

フジテレビ 倉田アナ

後続馬をどんどん千切っていくアーモンドアイ。リリーノーブルが食い下がり、ラッキーライラックが3番手から内に切り込むが、その差は広がるばかりであった。

「これは強い!アーモンドアイ!今年のオークスを伝説に変えた!!」

勝タイムは2分23秒8。そして上がり3Fは桜花賞と同じ33秒22400mのレースで4番手から桜花賞と同じ末脚を出して勝ったのである距離が伸びても変わらず、いやむしろ距離が伸びるほど怪物的なパフォーマンスを見せていくアーモンドアイ。この先、彼女を阻む馬は果たしているのか。様々な期待や思いをファン達が持ちながら春は終わった。

そしてこの翌週、日本ダービーが開催され、福永祐一騎手が19回目の挑戦にして悲願のダービー制覇を果たすのだが、その3着に入ったのはアーモンドアイが調教で圧倒していたコズミックフォースだった。これを見た国枝調教師は「アーモンドアイはこっちだったか…」と漏らしたとか。

3歳秋

秋華賞-新たな歴史が誕生する瞬間-

秋始動戦は三冠を目指し、いきなり秋華賞直行となった。夏を経て馬体は大きく成長、特に後肢の成長が著しかったが、ここで再び蹄に問題が起きた。成長した後肢が走行中に前肢にぶつかる程深く食い込んでいたのである。【2020年11月28日スポニチ【ジャパンC】アーモンドアイ・牛丸装蹄師、試作を重ね生まれたゴム入りの蹄鉄より】保護材を付けていても出血が出るほどであり、牛丸蹄鉄師は対応に苦慮した結果、前肢の蹄に師オリジナルのゴム入り蹄鉄を採用することとした。さらに追い切りのコースを当初予定していたウッドチップコースから歩幅がより小さい坂路に切り替えられた。…これらは全て彼女が振り幅の大きなフットワークで走るためであり、調教でルメール騎手が軽い追い切りで馬なりで走るだけで好タイムを出すなど、彼女の計り知れないパフォーマンスがうかがえた。

そして迎えた秋華賞本番。単勝オッズは1.3倍、もはやアーモンドアイが勝つのかではなく、どんな勝ち方をするのかと競馬ファンの中では持ち切りだった。当日は相当イレ込んだ状態だったが、レース前には落ち着きを取り戻した。が、ここではあまり行き脚がつかずやや中団後方に控える。

ミッキーチャームが前半59秒台の平均的ペースを作り、アーモンドアイは4角に入るあたりで他馬と接触して大外を回され、ロスの大きいぶん回し勝負を仕掛けざるを得なくなった。直線に入り、ミッキーチャームが必死に粘るが、アーモンドアイは大外ぶん回しからの上がり33秒6の末脚で他馬をごぼう抜きにしていく…

「そして外から、三度、白いシャドーロールが飛んできた!」

「アーモンドアイ、一気に来た!まとめて交わすか!ミッキーチャーム先頭だ!」

「一気に来たぞ!アーモンドアイが交わす交わす!」

「これが、新たな歴史を創る馬!」

「平成最後の三冠牝馬ー!」

関テレ 川島アナ

ここに平成最後となる第5代目三冠牝馬が誕生した
決して後方有利な展開ではなかった。ラップタイムは後半全て11秒台で収まっており、むしろ先行馬が有利な展開だったが、けた違いの末脚で強引にこじ開け1馬身半差で勝利したのである。

無敗での達成はならなかったが、三冠レース全てに1馬身差以上を付けて勝利した三冠牝馬は2024年度まででアーモンドアイのみ*13。その衝撃的パフォーマンスは三冠牝馬のみならず歴代の三冠馬にも負けず劣らずのもので、平成の最後に現れた怪物に歓喜が沸いた。そして、ここまでで唯一彼女に土をつけたニシノウララを称賛する声もチラホラ

アーモンドアイは母に産駒初の重賞勝利を捧げるどころか、母が現役中一度も勝利出来なかった牝馬三冠の勝利全てまで捧げたである。天から見ていたであろう母もきっと喜んでいたに違いない。
余談だが、平成最後となる第5代目三冠牝馬となったアーモンドアイはシャドーロールが特徴の馬であるが、奇しくも平成最初に生まれた第5代目三冠馬も同じくシャドーロールが特徴的なナリタブライアンであった。

そして関テレの川島アナはアーモンドアイのゴール直後、後世に残る名実況を放っている。

この馬には

三冠すらも

通過点!!

川島アナがそう言い切ってしまうほどの強いレースをやってのけたアーモンドアイ。そしてその言葉通り、本当に三冠すらも通過点だった事を競馬ファンは思い知らされることになる

なおGⅠ勝利なので口取り写真の撮影後の表彰式と合わせて、優勝馬服でドレスアップされてスタンド前でお披露目される予定だったが、口取り写真撮影後にアーモンドアイ自身がフラフラしていたため、お披露目は中止しすぐ馬房へ引き上げた。熱中症に近い症状を起こしていたようで、実はオークス勝利後も似たような症状に見舞われていた。その圧倒的強さの裏には、レースの度にケアが必要という身体的な課題が付きまとっていた

ジャパンカップ-世界を変えるのに、3分もいらない

三冠牝馬となった彼女が次に照準を合わせたのは、ジャパンカップであった。競馬界の新ヒロインがいよいよ古馬相手に戦いを挑むこととなる。この年のジャパンカップは有力馬の回避が相次ぎ、少数の14頭立て。
しかしアーモンドアイ以外のGⅠ馬達は全て4歳以上の牡馬であるため57kg背負うのに対し、アーモンドアイは当時の3歳牝馬の斤量規定で53kg。さらに調教タイムも凄まじく、これまでも牝馬という枠を超えた走りを見せて来たアーモンドアイ一強という見方が強く、単勝支持率53.4%*14、単勝オッズ1.4倍の圧倒的人気を背負う。
しかし引いた枠は最内1枠1番。距離のロスが小さくなるという有利はあるものの、アーモンドアイはこれまで何度もスタートで出遅れており、下手すると内に包み込まれて前が壁になる危険もあった。

この日の府中競馬場は2勝クラスの芝1800mで1分44秒7*15が出るなどかなりの高速馬場、しかも逃げ想定されたキセキは前走の天皇賞(秋)で逃げて1分57秒0を記録しており、もしかすると2005年にアルカセット*16が記録したJCレコード(2分22秒1)を更新するのでは?と予想する声まで一部のファンから出た。
そしてレースが始まると、キセキが逃げていき、アーモンドアイはやや出遅れかと思いきや二の足でガンガン加速しなんと今度は先行2番手につけた。1000m通過は59.9秒と2400mとしてはやや流れているペース。

1000mを切った所からキセキがロングスパートを仕掛けた。鞍上の川田将雅騎手はキセキのスタミナならここからロングスパートしても足りると踏んで仕掛けたのである。さらに言えば川田騎手はこの年の桜花賞とオークスでリリーノーブル、秋華賞でミッキーチャームに騎乗しており、アーモンドアイに何度も苦汁をなめさせられていた。

レースが進むにつれてキセキは超高速ラップを刻んでいき、2000m通過が1分57秒2。これは2008年にウオッカダイワスカーレットにハナ差2cmで勝利したあの秋天と同じという凄まじいタイム。こんなラップでもキセキの脚はまだ止まらない。川田騎手が渾身の右鞭を入れて振り切りにかかる。
…しかし、逃げ馬を完璧にマークしていた女王には乾坤一擲の逃げすら通用しなかった。アーモンドアイはこの超高速ラップの中、2番手から上がり2位の末脚で襲い掛かってきたのである。キセキとの差は一完歩毎にどんどん縮まっていき、3番手スワーヴリチャードとの差はどんどん離れていく。残り150mでついにキセキを捉え、そのまま1馬身半差をつけてゴール板を通過した

歴戦の古馬達すら、まるで赤子の手をひねるようにねじ伏せてしまった。末恐ろしい女王の姿に観客達から大きな歓声があがった。

だが次の瞬間、府中の観客達は衝撃で凍り付いた電光掲示板にこの世のものとは思えない数字が並んでいたのである


レ コード

2.20.6


「なんというタイム!?2分…20秒…6!?」

フジテレビ 福原アナ

アルカセットのコースレコードを1秒半も縮めた衝撃のレコードが記録されたそれどころかこの2分20秒6,当時の芝2400mのワールドレコードだった*17
さらに言えば2着から6着まで従来のレコードを更新している。4着のシュヴァルグランは勝利した前年度より1.8秒も速く走っており、サトノダイヤモンドはアルカセットより0.3秒も速く走っているのに掲示板にすら入れない。キセキに至ってはアーモンドアイがいなければ逃げ切って世界レコード更新という大偉業を達成する所だった*18つくづく他馬から見れば時代が悪かったと言いたくなる。
しかし、かつて平成最初の年にワールドレコード2分22秒2という事件を起こした牝馬がいたが、平成最後に2分20秒6という事件を起こしたのもまた牝馬であったのは何の偶然だろうか。

一体この馬はどこまで行くのか。どこまで勝ち続けるのか。日本競馬はいったいどこに向かうのか。
競馬ファン達が衝撃から覚める間もないまま、アーモンドアイの3歳シーズンは幕を閉じた。

そしてこの年、満票で年度代表馬最優秀3歳牝馬に選出された。
満票で年度代表馬に選出されるのは牝馬では初。

4歳

ドバイターフ-世界で轟く日本の女王達-

4歳となったアーモンドアイの始動戦はドバイターフ(メイダン芝1800m)となった。
国内で無双していた彼女の目線の先が海外となるのは必然であった。
日本での活躍ぶりは海外でも話題で、地元ドバイのテレビ局が密着取材を行っていた。
流石は1着賞金360万ドル(当時の日本円で約3.9億円)の大レースであり、国内外のGⅠ馬が集結したが、このメンバーをもってしてもアーモンドアイは国内オッズで1.2倍、海外オッズも2.25倍と殆ど1強に近い人気を集めていた。
レースがスタートすると、アーモンドアイは上手くスタートしたものの無理に行かず中団へ控え、逃げるセンチュリードリームをウートンが追走する中を7番手くらいで走り、その後ろにヴィブロス、ディアドラが追走するといった形となった。
直線に入る所でセンチュリードリームら先行勢が必死に鞭を入れて追い出すが、手ごたえが無い。その一方で、外からアーモンドアイがぐんぐん伸びて並んできた。

…持ったままで

アーモンドアイが残り200mで難なく先頭に立つと、ルメール騎手が後ろを振り返る余裕っぷりを見せ、軽く鞭を入れて後続馬を置き去りにしていく。ヴィブロス達が追い上げるが差は一向に詰まらない。

The Japanese knew it,(日本人は知っていた、)
the world suspected it, tonight she confirms it!(世界は疑っていたが、今宵、彼女自身が証明した!)

Almond Eye is an equine masterpiece!(アーモンドアイが傑物であることを!)
現地実況 Craig Evans

勝ちタイム1分46秒78を記録し堂々の勝利。世界の舞台でもアーモンドアイが最強を証明してみせた。
国枝調教師が「これで90点のパフォーマンス」と語っていたというのだから恐ろしい。

さらに2着にヴィブロス、4着にディアドラが入線日本の女王達がドバイの夜空の下、輝きを見せたのだった

なお、ドバイターフ前には凱旋門賞へ向かうプランも発表されていたが、レース後のダメージが大きく馬体への負担が大きい凱旋門賞は危険であることと、マイル~2000mが適性であると判断し、凱旋門賞出走は白紙となった。…こんなに強いのにと残念がるファンも当然ながら多かったが、結果論で言えばこの年の凱旋門賞は不良というのも生ぬるい極悪田んぼ馬場であったため、出走していたら競走生活に悪影響が出ていたかもしれない。

安田記念-シルクレーシングの傑物は女王のみにあらず-

かくしてマイル~2000mのレースを中心に走る事となったアーモンドアイが次走に選んだのは安田記念だった。
国内のマイル界を代表するメンバーが府中に揃った。しかし世界の舞台で勝ったアーモンドアイが日本のマイラー相手に負けるはずがないと、ここでも単勝1.7倍の圧勝ムードで本番を迎える。

が、スタートはダノンプレミアム、ステルヴィオら人気馬と揃って出遅れ。さらに大外枠のロジクライが発走後に大きく内に斜行し進路を塞がれ、後方からの競馬になってしまった。
レースはアエロリットが軽快に飛ばしていく縦長の展開で、アーモンドアイは後方のまま直線に向かう。

直線に入ってもインディチャンプらが壁となり中々抜け出せない。残り400m切ってようやく前が空き、末脚を爆発して一気にアエロリットらを強襲するが…先に抜けたインディチャンプや逃げたアエロリットに届かず3着に終わった。新馬戦以来1年10ヶ月ぶりの敗北を喫してしまった。

しかし、実はアーモンドアイ、このレースでとんでもない記録を樹立した。それは上がり3Fである。そのタイムとは…

32秒4

これがどれほどのタイムかと言うと、過去安田記念に出走した全ての馬…ではなく、2025年1月現在、JRA歴代全GⅠの全出走馬の中でなんと最速の上がりタイムなのである*19。スプリンターですら出せないその豪脚は神の末脚という他ないが、インディチャンプ含め上がり3F32秒台が6頭もいるこの馬場では届かず、流石に出遅れが痛すぎたとしか言えなかった。

なお、勝利したインディチャンプはこの年マイルCSを制し、翌年以降も引退までほぼ全てのマイルレースで掲示板入りをするなど名マイラーとして名を馳せた。同世代で三冠牝馬とマイル王者、さらに有馬記念覇者ブラストワンピースまで所持していたシルクレーシングはまさに絶頂期であった。

天皇賞・秋-現役最強の証明-

宣言通り凱旋門賞には行かず、秋初戦は天皇賞・秋となった。しかし、この年の天皇賞・秋はかなり豪華なメンバーが揃っていた。
アーモンドアイを含めるとGⅠ馬だけで実に10頭の超豪華メンバーである
しかし前走負けたとは言え、府中であの末脚を見せたアーモンドアイはこのメンバー相手でもオッズ1.6倍と1強状態を崩せずにいた。

内枠2番に入ったアーモンドアイ、今度は上手くゲートを出ていく。安田記念に続き対決となったアエロリットが予想通りに逃げていき、サートゥルナーリアが3番手を進むとアーモンドはそのサートゥルナーリアを見る形で進んでいく。

前走では前が壁になって敗北したアーモンドアイ、今回も内枠を進むためロスは少なくなるが、逆に包み込まれる危険もあるため、どこかで外に持ち出すか隙間を縫って抜け出さなければならない。
しかし直線に入るが、アエロリットとサートゥルナーリアがアーモンドアイに蓋をしてきた。残り400m近くなってもまだ前は空かない。ピンチかと思われた、その瞬間…!

「クリストフ・ルメール、アーモンドアイ!なんと最内選択!?」

フジテレビ 倉田アナ

アエロリットと内ラチの間が僅かに空いているのをルメール騎手は見逃さなかった1頭分ギリギリの隙間を突き抜けて来たのだ。アーモンドアイ、アエロリット、サートゥルナーリア、ダノンプレミアムと4頭の人気馬が横並びとなり、府中に詰め寄った観客達の興奮は最高潮に達する。しかし、アーモンドアイはその中でも末脚の違いを見せ完全に抜き去ると、もうそこからは彼女の独壇場。食い下がるアエロリットや迫るダノンプレミアムらを突き放す。ルメール騎手も最後はゴール前にガッツポーズをする余裕を見せていた。

「この馬に抗う者はなし!」

「やりました!安田記念の雪辱を果たしたアーモンドアイ!」

ついにGⅠ6勝目を達成。加速し始めてからのスピードはルメール騎手すら驚くほどの圧倒的パフォーマンスを見せつけた。

「おっかないな、すごいな、と思いました」

余りの強さに国枝調教師はレース後に狼狽えるようなコメントをしていた。GⅠ7勝目も目前…いや、皇帝が持つGⅠ7勝を超えるかもしれない。そんな予感を感じされた勝利であった。

ただ今回も全力疾走の余り発熱が凄まじく、少し歩様を乱すほどであったため、口取り撮影は実施されなかった。

なお、勝タイムはあのトーセンジョーダンのレコードと0.1秒差の1分56秒2。逆にアーモンドアイですらレコードを超えられないという事実を受け、トーセンジョーダンの記録はもう不滅では?とファンからは思われていたが…

半月後、京都競馬場でエリザベス女王杯が開催され、2歳女王が復活の雄たけびを挙げていた。その馬こそ、かつてアーモンドアイに辛酸をなめさせられていたラッキーライラックであり、実に1年8か月ぶりの勝利をつかみ取ったのだ。

有馬記念-史上最大のグランプリ、そして史上最大の屈辱-

2000m前後のレースを主戦場とするアーモンドアイ。その彼女が年度の最後に選んだのは2000m世界最高峰のレースの一つ、香港カップとなった。シャティンへの出発に向け順調に調整していった国枝厩舎であったが、出国前日、微熱を発症してしまう。検温で38度6分と平熱より4分程度高いだけという微熱であり翌日には熱が下がったが、輸送中にぶり返す可能性も否定できないため、香港カップを回避することにした。

そしてしばらく様子を見ていたが、8日、有馬記念への特別登録を実施。そして10日、ついに有馬記念への正式参戦が発表された
元々多数の強豪馬が出走を表明している中、アーモンドアイの参戦により、この年の有馬記念は史上最大と言っても過言ではない超豪華メンバーが揃った。


出走馬16頭中11頭がGⅠ馬。まさに当時の日本競馬界における中長距離のスターホース全てが集結した一大決戦であった。
現役最強の称号を手にしていたアーモンドアイの参戦に盛り上がりを見せた一方、熱発で回避してからの有馬記念という急な動きに調整が間に合うのか?という不安もファンの中で流れた。また、彼女はこれが初めての中山のレースであり、さらに2500m以上のレースも初だった*20。…とはいえ、出走馬の大半には先着経験があり、海外を含むGⅠ6勝、2400mレコードホルダーである。普段競馬をやらないがこのレースだけは馬券を購入するという人も非常に多い有馬記念だが、アーモンドアイはそうした人からの支持も多く集めこの超豪華メンバーを前にしても単勝1.5倍の圧倒的人気と冬のボーナスを背負った。

一方、予想家の中にはアーモンドアイに勝てる馬がいると考える人も多かった。特にリスグラシューは前走コックスプレートで2着馬より7.5kg多く斤量を背負い、かつ直線が200mしかないムーニーバレー競馬場で大外ぶん回しで差し切るというとんでもない勝ち方をしており*21、アーモンドアイに勝つなら彼女しかいないと思っていた人も多数いた。ただリスグラシューはこのレースでの引退が決まっており、繁殖に向けてそこまで仕上げて来ないだろうという予想家も結構いたりしたが。さらに言えば、リスグラシュー本命の人でも対抗や紐でアーモンドアイがいたりするが

かくして超満員の中山競馬場で決戦の火蓋は切って落とされた。レースはアエロリット、クロコスミア、スティフェリオが熾烈な先行争いをする中、アーモンドアイは無理には行かず、フィエールマンやリスグラシューより少し後方に位置する形。最終的にアエロリットがハナを取り、大歓声が上がるスタンド前に入る。

が、ここでアーモンドアイは大歓声に反応してスイッチが入ってしまい、いきなりペースを上げ始め、リスグラシューら数頭を抜き中団前目に位置してしまった

逃げるアエロリットは1000m通過58秒5とこの距離としては超ハイペースで行き、そのまま後続に10馬身近く離して大逃げ態勢を取る。アーモンドアイは向こう正面から順位を徐々に上げていき、3コーナーに入る頃には5番手あたりについていた。
するとアエロリットが逆噴射を始め、後続との差が詰まっていきアルアインが捕まえに行くと、その後ろから一気にアーモンドアイ達後続馬が差を詰めてきた。直線に入りここでアーモンドアイはフィエールマン・サートゥルナーリアと直線上に並ぶ。さぁここからいつものように後続を千切りにかかるのか!?とファン達のボルテージが最高潮に達した…!ところが…

さあ最後の直線へ向かって!アーモンドアイ来ている!サートゥルナーリア!サートゥルナーリア!さらに外からは!?
フジテレビ アオシマバクシンオー青嶋アナ

アーモンドアイ、一向に伸びて来ずフィエールマンやサートゥルナーリアを交わせない。スタミナが限界に近づき内にヨレ始めるアーモンドアイ。その外から、一頭だけ脚色が違う緑色の勝負服が襲ってくる…

リスグラシュー!一気に捉えた!

内でアーモンドアイ…苦しい!!!

アーモンドアイは坂にかかるところで力尽きてしまった。かつて自身が負かした数多の馬達に続々と抜かれ、9着惨敗。この大舞台で生涯初の掲示板外に終わってしまった。
最後の直線でこれまでにないような悲鳴が上がったり、レース後に武蔵野線が人身事故で止まったりと、中山競馬場内外がとんでもなくカオスな雰囲気に包まれたのであった。何しろこのレースで購入されたアーモンドアイ関連の馬券は約200億円。GⅠレースで入線した馬達の中で最も馬券を飛ばした馬として、彼女はその悪名を語り継がれてしまうことになった*22斜行して140億円とばしたりゲートで立ち上がって120億円を紙屑にした先輩達に比べると普通にレースして負けた分、相対的に地味なのは否めないが

大敗北を喫したアーモンドアイの敗因は今でも競馬ファンの間で議論になっている。国枝調教師は「1周目のスタンド前で他の馬が動いたこととファンの歓声に反応してしまい、ポンと外へ出てしまいました。そこから1周スイッチが入ったままになってしまい、ガス欠になりました。」、ルメール騎手は「スタンド前で冷静さを欠いてしまいました。2500mではリラックスしていないと疲れてしまいます…」と語った。2週回るコースが未経験だったアーモンドアイにとって、一度目の大歓声で掛かってしまったのが大きな敗因と分析していた。他にも月間優駿の記事では「フィエールマンと併せ馬の形になって嫌気が差したのかもしれない」と考察され、ファンからは「中山が超苦手だった」「ロードカナロア産駒に2500mは長い」といった意見が多い*23

一方、リスグラシューは2着に5馬身差を付け完勝。さらにこの年の年度代表馬と最優秀4歳以上牝馬に輝いたのであった。あまりにも強すぎる勝ち方なため、レーン騎手は「これが引退レースとは残念です。」とコメントしていた。

なお、アーモンドアイの方は最優秀4歳以上牝馬こそリスグラシューに渡してしまったものの、この年のドバイターフの勝ちぶりからドバイのH・H・シェイク・モハメド競馬優秀賞*24で最優秀競走馬に選出された*25

5歳~引退

前走で大敗を喫したアーモンドアイであったが、ドバイワールドカップデーのドバイターフに選出され出走を表明。女王の威厳を取り戻すべく気を取り直して調整を進めていった。

しかし、時は2020年3月22日。アーモンドアイ達が既にドバイへ渡航済みだった矢先、ドバイワールドカップデーの中止が発表された。未曾有のウイルス、新型コロナウイルスの爆発的な感染が世界中で拡大。競走馬や関係者達を守るため、断念せざるを得ないと主催者側は判断したのだ。ドバイでの復活も叶わぬままアーモンドアイ達は帰国した。

日本でも既に新型コロナウイルスの感染は広がり続けており、JRAは当面無観客でのレース開催を決定した。誰もいないスタンド、スタッフ達がマスクを付けながらの実施という異様な雰囲気の中、アーモンドアイの5歳シーズンは幕を開けた。

ヴィクトリアマイル~安田記念-声援無きターフの中でも-

紆余曲折を経て始動戦となったのは、4歳以上牝馬限定GⅠヴィクトリアマイル。
出走メンバーで他にGⅠホースだったのは前年度にレースレコードを更新して勝利したノームコア、1つ下のオークス馬ラヴズオンリーユーしかおらず、前者は始動戦の高松宮記念で惨敗、後者は距離不安があったため、アーモンドアイは前走9着だったにも関わらず単勝オッズ1.4倍のぶっちぎりの人気。

好スタートで前目につけて、そのまま直線に入る。ノームコアやラヴズオンリーユーはアーモンドアイより後方。安田記念や天皇賞・秋とは違い絶好の位置を取った彼女を遮る馬はいない。そしてアーモンドアイは加速する。…持ったままで。他の馬の騎手が必死にしごいているのに、ルメール騎手だけがただ手綱を持ったまま抜き去っていく。

GⅠレースなのに、その光景は最早15頭併せの公開調教だった

現役最強馬、アーモンドアイ!ここにあり!!
ラジオNIKKEI 小林アナ

ロクに鞭を入れてないのに、勝タイムはノームコアのレコードと0.1秒差の1分30秒6。上がり3Fはメンバー中最速の32秒9で、4番手だったにも関わらず2位のノームコアより0.3秒速い。他馬からしたら無理ゲーにも程がある。

これでGⅠ7勝目を達成。あの皇帝シンボリルドルフや常識破りの女帝ウオッカらと並んだ。ヴィクトリアマイルで公開調教みたいなレースをする所もウオッカとそっくりである。しかも先代達が軒並み引退が迫った秋での達成だったのに対し、アーモンドアイは5月での7勝達成。これまで数多の名馬達でも超えられなかったGⅠ8勝目の壁を今、稀代の名牝が破ろうとしていた*26

期待を背負い、次走は昨年3着だった安田記念。リベンジをかけて挑戦するが、
打倒アーモンドアイと言わんばかりに府中に集結した日本国内の短距離・マイル戦線の精鋭達であった。また当時、ヴィクトリアマイル→安田記念の連勝は勝利事例が2009年のウオッカしかない鬼門であるなど、不安要素は決して少なくなかった。そのため、1番人気であったが彼女のオッズは…1.3倍。前走があまりにも衝撃的な勝ち方だったため、秋華賞並に人気が集中していたのである。

そしてレースが始まったが、昨年度に続きまた出遅れ。中団後方に控えての競馬となった。直線に向かいやや前が壁になるも今回は上手く外に持ち出すと、上がり33秒9の豪脚で先頭を捕まえにいく。

しかし、アーモンドアイより前で、アーモンドアイより速い上がり33秒7の末脚を出した赤い勝負服が一頭抜け出していた…グランアレグリアである。後にスプリンターズステークスでも次元が違う末脚を見せつけ、短・マイル路線を制圧する新たな女王がその才を開花していた。牝馬最強は私!!
アーモンドアイは及ばず2着。さらに言えばグランアレグリアは前走阪神カップまではルメール騎手が騎乗していた馬であり、乗り替わった池添謙一騎手に一杯食わされた形となってしまった。

天皇賞・秋-ついに乗り越えた

秋になり引退が噂される中、アーモンドアイは史上最多のGⅠ8勝目をかけ、11月1日の天皇賞・秋からの始動となった。
このレースはメンバー総数こそ少数12頭立てであったが、4度目の対決となるダノンプレミアムや3度目の対決のキセキ、同世代のシルク所属有馬記念馬ブラストワンピースと菊花賞並びに春天連覇を達成したフィエールマンの他、宝塚記念を六馬身差圧勝した一つ下の葦毛の女傑クロノジェネシスらが参戦していた。ちなみにこれでアーモンドアイはグランアレグリア、ラヴズオンリーユー、クロノジェネシスと19世代の牝馬三冠組全員と対決したことになる。

オッズは1.4倍と不動の1強。レースは今度は上手く出て、逃げるダノンプレミアムを見ながら4番手でレースを進める。直線に入ると楽な手ごたえで進んでいく。

この走りを皆さん瞳に焼き付けてください!
フジテレビ 倉田アナ

残り200mで手前を変え、一気に加速。後方からクロノジェネシスとフィエールマンが強襲していくるが、先行4番手から上がり33秒1の末脚を出す怪物牝馬を捕まえる事は困難だった。

ここでルメール、トップギア!ここでルメール、トップギア!!
現在7番クロノジェネシスが2番手争いに上がってくる!さらにはフィエールマンも上がってくるが!?

アーモンドアイ!アーモンドアイ!なんとアーモンドアイ!

ルドルフの壁を超えたあああ!

アーモンドアイが、新たな歴史を作った瞬間だった。ついに皇帝ルドルフ以来超えられなかったGⅠ7勝の壁をこの怪物牝馬が超えたのである。さらに言えば天皇賞・秋の連覇はシンボリクリスエス以来の偉業である。何の偶然か、シンボリ冠繋がりの大記録を同時に樹立していた。

「あまりしゃべれない」

ルメール騎手はレース後、涙を浮かべながらこう語った。騎乗する度に多大なプレッシャーを感じていた彼は、本心からGⅠ8勝目を取りたいと思っていた。まるで肩の荷が下りたようにインタビューを受けていた。

みんな、これから20年間、アーモンドアイのGⅠ8勝を忘れないと思う。特別な馬です
牝馬三冠とジャパンカップと、海外でも勝ちました。

ラブストーリーでした。でも、今年でストーリーは終わります。
月間優駿 20年12月号

彼女とルメール騎手の絆、それは騎手と馬という関係を超えた一つの愛の物語まで大きくなっていた
そして、アーモンドアイとルメール騎手との物語、大記録樹立と共にその第一部の終わりが迫っていた。

ジャパンカップ-空前絶後の最終決戦-

前人未踏のGⅠ8勝を挙げたアーモンドアイ。しかし新型コロナウイルスの影響で依然海外遠征ができない状況が続き、また海外馬が日本に来ることもままならない状況であった。そうすると残るレースは中3週間のジャパンカップか、コースの相性が悪い有馬記念しか残っていなかった。このため、もう引退した方がよいのでは?というファンの声も聞かれた。

しかしその一方、競馬界では歴史的な出来事が立て続けに起きていた。10月18日にはデアリングタクトが史上初の無敗での牝馬三冠を達成し、翌週25日にはコントレイルが史上3頭目の無敗での三冠を達成したのである。そしてこの両頭はジャパンカップへの出走を表明していた。…とすれば、残る三冠牝馬であるアーモンドアイとの対決が熱望されるのも当然の流れであった。一方でこれまで蹄や熱発などの症状に悩まされた彼女にとって中3週間での出走はリスクがあり、引退も迫る中無理はしない方がよいという声もまた多かった。

そして11月12日、ついに国枝調教師がシルクレーシングのホームページで発表した。

状態は良さそうですし、予定通りジャパンカップへ行きたいと思います。
これだけの馬を無事に繁殖へ上げることも調教師の使命

アーモンドアイのラストランはジャパンカップで決定した。それはGⅠ9勝目を賭けた相手に無敗三冠馬、無敗三冠牝馬を選んだことを意味していたのである

三冠馬の共演だ!
フジテレビ 福原アナ

このレースでアーモンドアイは1番人気であったものの単勝オッズ2.2倍。桜花賞以来の国内単勝オッズ2倍超えとなった。そしてそのレースの詳細は2020年第40回ジャパンカップの項目を参照。
結果としてアーモンドアイは史上最多のGⅠ9勝目を達成。有終の美で現役生活に幕を閉じたのであった。


ありがとう、そしてさようなら!お疲れ様アーモンドアイ!
最後まで、アーモンドアイは強かった!

女王は女王のまま、その座を譲ることなくターフに別れを告げます!

ニッポン放送 日曜競馬ニッポン


絶対に日本で一番強い馬です。それが嬉しいです。」

引退式

2020年12月19日、アーモンドアイの引退式が行われた。
現地で引退式を見られたのは事前の指定席購入者のみで、コロナ禍の中決して多くはない人数であったものの、ファンは中山で、テレビで、そして配信で彼女の引退を見届けた。

引退式にはシルクレーシングの米山代表、国枝調教師や椎本調教助手、根岸調教助手といった国枝厩舎のメンバー、ノーザンファームの中島場長、主戦を務めたルメール騎手に加え、シンザン記念で騎乗した戸崎圭太騎手、さらには調教で騎乗した三浦皇成騎手も出席した。

今日私たちは、日本競馬界の歴史を塗り替えた素晴らしい馬を祝うためにここにいます。

ルメール騎手が自筆の手紙を広げ、この言葉と共に引退式は始まり、彼が持っていた様々な思いが語られた。
初めから特別な存在であったこと、その佇まいや姿、闘志や能力によって日本だけでなく世界のファンを魅了したことなどが語られた。

アーモンドアイは、馬だけでなく、人とのストーリーです。

アーモンドアイが、ここまで馬と競馬に、愛と情熱を捧げる人たちによって大切にされてきたと語った。アーモンドアイへの愛の言葉を連ね、「彼女の引退後の生活が穏やかであることを祈ります」とルメール騎手はコメントを締めくくった。
それはさながら、アーモンドアイへのラブレターだった。

また、戸崎騎手はシンザン記念での思い出を語った他、「見る度に成長しているな」「顔を見るたびにかわいい綺麗な馬だ、だけどレースでは負けたくないという気持ちで挑みました」とその後の彼女との思い出を振り返っていた。

「今も先ほど撫でていらっしゃいましたけど、かわいい馬ということですね」
戸崎騎手「そうですね、綺麗ですね」

三浦騎手は「跨った時からオーラのある馬だった」「本当に僕の財産になっています」と調教で追い切りに騎乗した立場からも彼女の規格外さをうかがえるコメントをしていた。

そして三人の騎手に大きな拍手が送られると、アーモンドアイはまるで今から走り出すようなポーズをしていた。やっぱり観客の拍手がスイッチなのだろうか。

国枝調教師は一番思い出に残ったレースとして'18ジャパンカップを挙げ、厩舎ではスイッチのオンオフが出来ていて、普段はこんなにきれいな馬がいるのかと感心していたのだと。一方でレースになると戦闘モードになり、特に最初の頃は馬場に出たり鞍を置くだけで凄いエネルギーを出していて苦労していたという。

アーモンドアイ、お疲れさん。本当にここまで凄い成績を残してくれて、楽しい思い出をありがとう。
子供が産まれて無事に来たら、私の厩舎でやりたいと思いますので、良い仔を産んでください。

椎本調教助手や根岸調教助手からも最後の日で少し別れを惜しむ声があり、一番思い出に残るレースも同じく'18ジャパンカップを挙げていた。ノーザンファームの中島場長も毎レース、牧場スタッフに感動を与えてくれたと語った。

最後にシルクレーシングの米山代表の言葉で引退式が締めくくられた。

思い起こせばいつも美しく強いアーモンドアイだったこと、3歳の頃はレース後に必ずケアが必要だったり香港直前の熱発やコロナ禍での出走断念だったりとその馬生は決して順風満帆ではなかったこと、その中でも国枝厩舎や美浦トレーニングセンター、ノーザンファーム、そして主戦のクリストフ・ルメール騎手など多くの方々が一丸となって掴んだGⅠ9勝であると米山代表は語った。


そしてアーモンドアイ、ありがとう
Merci,Almond Eye.


引退後

引退後は生まれ故郷のノーザンファームで繁殖入りとなった。

2022年には初年度産駒アロンズロッド(父エピファネイア)が誕生し、2024年10月に母と同じ国枝厩舎、クリストフ・ルメール騎手のタッグでデビュー、2025年2月に初勝利を挙げている。
さらに同年2月28日には、あの世界最強馬イクイノックスとの子が誕生。ルメール専用機夢の配合も実現した。

彼女の第二の馬生はまだまだこれから。今後どのような仔が走るのか、ファンは楽しみに待っている。

競走馬として


どんなポジションからも競馬が出来るし、スピードも瞬発力もスタミナもある。
みんなが望むものを全て持っている。

'18ジャパンカップ終了後にルメール騎手はアーモンドアイをこう評している。
有馬記念であの英雄を屈服させたハーツクライや、お祭り男に競り勝ったサトノダイヤモンド、17'ダービー馬レイデオロといった数多の強豪馬の背中を知るルメール騎手をして完全無欠に近い馬と評価しているのである。追い切りで騎乗した時は「フェラーリみたいな乗り味」、すなわちアクセルを少し踏んだだけで一気にトップスピードに達する凄まじい加速を持つと評していた。実際、調教でも全力全開で疾走する傾向があり、オークス時の追い切り時では残り300mからずっと加速し続けていたという。

初めは出遅れも多く後方競馬が多かったが、逆にそれが翻って上がり32秒台の凄まじい末脚を出しており、安田記念ではJRAGⅠ歴代全出走馬最速の上がり3Fというとんでもない記録まで塗り替えてしまった
後年は出遅れも少なくなるにつれ、先行からの王道押し切りで相手を真っ向から潰していくスタイルを武器にしていた。

彼女が負かした相手も、同期にしてエリザベス女王杯連覇を含むGⅠ4勝を成し遂げたラッキーライラックを筆頭に、無敗三冠馬コントレイル、無敗三冠牝馬デアリングタクト、グランプリ三連覇を果たすクロノジェネシス、世界を翔る樫の女王ラヴズオンリーユー、同期の長距離王者フィエールマン、無敗皐月賞馬サートゥルナーリア、1600mレコードホルダーノームコア、その他サトノダイヤモンド、シュヴァルグラン、ヴィブロスディアドラ、スワーヴリチャード、キセキ、ダノンプレミアムなどGⅠ戦線で上位を駆けた馬達が勢ぞろい。さらに彼女に勝利した馬には年度代表馬のリスグラシュー、短マイル界の女王グランアレグリア、最優秀短距離馬インディチャンプと、偉大な功績を修めた名馬達が並んでいる。
ところで、ここに挙げた馬達を見ると牝馬が非常に多いことがうかがえる。彼女が主に対決した16世代~19世代はGⅠ級の牡馬を打ち倒す程の強力な牝馬が群雄割拠していた世代であった。

操縦性も極めて良く、騎手が手前を変えると直ぐ反応し爆発的な加速を見せていく。またジャパンカップの超高速タイムから高速馬場専用かと思いきや、シンザン記念では末脚が鈍りやすい重馬場に近い稍重の馬場で最後方追込というとんでもないレースをするなど、実は馬場も選ばない。

一方でその輝かしい成績や能力の一方、米山代表がインタビューで話した通り、その競争生活には苦難があった
3歳の時は蹄が欠損したり、レースをするたびに全力疾走の余り発熱してフラついてしまい、口取り式後のお披露目が中止となった事もあった。秋になると前肢の蹄が激しく傷み、再発防止のための特注の蹄が用意されていた。
4歳でもレース後の発熱で天皇賞・秋の口取り式が取りやめ、香港カップ前にも発熱、有馬では大歓声でスイッチが入りペースが乱れて撃沈…と様々な課題があった。良くも悪くもレースに対し全力を出し過ぎる面もあり、時折悪い方向に向かってしまうこともあった。
5歳になると身体の課題は解決されていったが、今度はコロナ禍の影響でレース選択を大きく狭めざるを得なくなった。

また、GⅠ9勝のうち、6勝が東京競馬場、1勝がメイダンと直線が非常に長いコースでの勝鞍が多くを占める。このため、府中中距離では最強クラスの馬として真っ先に話題が挙がってくる馬である。一方で、三冠牝馬なのだから阪神や京都のGⅠも当然勝っている。それなのに「府中以外では勝てない」と揶揄される声が上がるのは、牝馬三冠以降の勝ちっぷりがあまりにも強烈過ぎたがゆえに、彼女が三冠牝馬だということを忘れられてしまうことがあるからなのだ

文字通り三冠すらも通過点
それがアーモンドアイである

牡馬を蹴散らす牝馬、府中での勝鞍が多いなど、何かとウオッカと類似する点が多い。あちらもルメール騎手でジャパンカップを勝った馬である。
同じく牝馬三冠に輝き、国内外で鮮烈な勝ち方を見せたジェンティルドンナとともに「国内最強牝馬」議論になるとこの3頭が筆頭としてよくあげられる。


と、ここまで競走能力の高さを記載したが、しかし彼女には忘れてはならない大きな特徴がある。それは…

カワイイのである。

カワイイのである。

もう一度思い出してみよう、彼女の名前の由来を。そう、美人とされる顔の瞳の形である。その名前の通り、まるで見る者が吸い込まれそうなほどの非常に美しい瞳を持つべっぴんさんなのである。

根本調教助手からは「普段はとても人懐っこい子」と語り、シルクレーシングの募集文では「澄んだ瞳を持つ凛とした顔立ちは、まさにダイヤの原石を思わせます。」と書かれており、それ以外にも引退式で戸崎騎手が語ったようにカワイイ馬と評する関係者・ファンは非常に多い。

創作作品への登場


馬なり1ハロン劇場・馬なり1ハロン!NEO・馬なり de show

シンザン記念回で初登場し、同話収録の『2018春』でラッキーライラックと表紙を担当。レース前落ち込んでいた時に亡き母から届いた「箱」を開け、「シンザン記念から活躍を始めた名牝達」の励ましを聞いた事で覚醒。
桜花賞編では事前調教時に関東馬代表として同期達からちょっとした支援?を受け、オークス編ではニシノウララも少しだけ登場。秋華賞時には先輩アパパネの次男でやる気をなくしていた同期ジナンボー(後に天皇賞(秋)で対戦)にその雄姿で意欲を与えた。
ジャパンカップ前には凱旋門賞馬エネイブルとの対戦を夢見るようになり彼女と対戦した馬達から話を聞き、最終話直前のドバイターフではシュヴァルグラン・ヴィブロス兄妹と会話していた。
続く『NEO』の時代にもその強さを見せてその裏で後に早逝した末の半弟サトノエスペランサがプレッシャーに耐えかねていたが、『馬なり de show』の有馬編ではあまりの不甲斐なさにキレたリスグラシューとキャットファイトに…。
なおその陰で、ラッキーライラックがリスグラシューや国枝厩舎のフロンテアクイーンがいる集団「ブロコレ倶楽部」入りしていたのは別の話。
それら苦難を乗り越え八冠を達成した後、冠に残る「敗北」という名の汚れを打ち消すようにラストランに挑み花嫁へと転身。その後はエピファネイアとの出産祝いやイクイノックスとの交流が描かれている。
ちなみに頭部馬装や毛の色の都合上、同じ国枝厩舎のフロンテアクイーン・カレンブーケドールと似た顔なのはご愛敬

ウマ娘 プリティーダービー

前人未踏の9冠という強さに加え、容姿・性格双方で擬人化として非常に期待される要素満載、更に彼女が活躍していた2018年にはアニメ版の1期が放映されていたこともあり、アーモンドアイがウマ娘化されることへの期待は非常に高かった。
時を経た2024年には、アプリ版で配信されたメインストーリー第2部の冒頭にてどう見てもあのジャパンカップであると思しきシーンが登場し、第2部中篇では史実での母フサイチパンドラも登場。同年11月には同じシルクレーシング所属馬の同期ブラストワンピースがウマ娘化したりと追い風が吹いたこともあり、この期待はさらに膨れ上がった。

そして2025年2月22日、ついにウマ娘化が発表
しかもライバルのラッキーライラック、及び彼女とも鎬を削った19世代の牝馬たちと共にトゥインクルシリーズのターフに舞い降りる形となったのである
一人称は「アイ」で、マチカネフクキタルマーベラスサンデーと同じような目がしいたけとか完璧で9極なウマドルのような十字に輝く瞳を持つ。キャラクター紹介には「『超』が9個ほどつくレベルの『負けず嫌い』」「体力以上の無茶をしがち」などニヤリとさせる要素が盛り込まれている。
24日に実装されたサポカ内のイベントでは、「超でかいマグロを捌く」という謎シチュも。そしてこのサポカ自体がトップレベルの高性能でありトレーナー達が挙って入手したため、皆が育成のたびに毎回「アイ、捌きます!」を見ることに。

さらに同日実装のシナリオ「The Twinkle Legends」ではある条件を満たすと、『超話題のあのウマ娘』としてシナリオの最後に開催されるレースに驚異的なステータスで出走してくる。
過去のシナリオでいうモンジューに相当する実質的なラスボスポジションであり、初見育成でヴィクトリアマイルよろしく公開調教を見せられる羽目になったトレーナーも多いだろう。だが、育成に慣れればレンタルデッキでも彼女に勝利することは十分可能。トレーナーとしての腕の見せ所である。
しかし、モンジューが育成・サポートのいずれにおいても実装されず、あくまで「L'arcシナリオ上での強敵」としてのみの登場となるゲストキャラであるのに対し、アーモンドアイはサポカ実装と同時に今回の仕様での登場となったため、もし仮にアーモンドアイが育成ウマ娘として実装された場合は誰がラスボスポジションとして立ちはだかってくるのかが気になるところ。

余談

  • その圧倒的な走りから「速いもの」の象徴として用いられることもあり、2019年には福岡ソフトバンクホークスの「ギータ」こと柳田悠岐選手*27が俊足で有名なチームの後輩・周東右京選手の脚を「アーモンドアイより速い」と絶賛している。なお、当の周東自身は当時あまり競馬をやっておらず、その例えがあまりピンとこなかったとか。

  • 国内外で圧倒的な強さを見せたアーモンドアイだが、実は同時期の世界には、GⅠ25勝&33連勝という馬の形をした別の何かと言われるオーストラリアの化け物ウィンクス凱旋門賞2連覇&BCターフ優勝という大記録を達成した英国の優駿エネイブルがおり、世界最強馬になることは出来なかった。アーモンドアイと同時代に生まれた他の馬が不運だったと言われるが、アーモンドアイ自身もまた世界の化け物と同時代という不運があった。ちなみにアーモンドアイもウィンクスもエネイブルも全員牝馬である。

  • 2023年に得票率96.6%の圧倒的支持で顕彰馬に選定された。なお、その前年から彼女に投票可能だったが、その時は何故か数票足らず逃していた。

  • ファンからの愛称は「アモアイ」「アイちゃん」が多い。中には九冠馬のイントネーションが「cucumber」に似ていることから「きゅうり」と呼んでいる人も

  • 2025年1月4日、JRAが運営する競馬情報サービス『JRA-VAN』が「なかやまきんに君*28がアーモンドアイと追い切りをする」という内容のCMを投稿して話題に。もちろんこれは全力疾走するきんに君とアーモンドアイの追い切り映像を合成しているものなので、決してアーモンドアイを呼んで撮影した訳ではない。JRAではよくあること。

  • 2024年3月~6月に開催された『月刊優駿』によるファン投票「未来に語り継ぎたい名馬BEST100*29」では第5位にランクイン。牝馬では堂々の第1位となった。10代、20代といった若い世代からの人気が非常に高く、過去の偉大な名馬達に匹敵する衝撃を与えていたことが読み取れる。


美しき瞳

かつてないほど難しい仕事を
これまで以上の注目を浴びながら
やり遂げたというのに君は
「たいしたことじゃないわ」と
涼しい顔を決め込む

それでも少し自慢げなのは
この日の結果だけではなく
自分を愛してくれる人たちと
ともに重ねてきた一歩一歩が
きっと誇らしかったのだろう

情熱に支えられ走り続ける
君の瞳はいつも美しくて
その輝きを大切にしてきたから
誰も辿り着いたことのない地平に
いま君は立っているのだろう

名馬の肖像 2024年10月

追記修正は、三冠すら通過点な方にお願いします。
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最終更新:2025年06月20日 00:14

*1 シンザン記念のみ戸崎圭太騎手、それ以外の現役中全レース騎乗

*2 現役時は日本調教馬歴代1位

*3 受賞日は2021年3月30日だが、19年度のドバイワールドカップデーに出走した競走馬が審査対象。これは元々授賞式を実施予定であった20年度のドバイワールドカップデーが開催中止になったため

*4 さらに上がり3Fは歴代GⅠレース最速の32秒4

*5 ただし実際はカワカミプリンセスの降着による繰り上げだが。

*6 なので先輩のマツリダゴッホやアパパネもシャドーロールを付けていた。

*7 リーチザクラウン産駒。勝鞍は3歳以上500万以下。2025年2月現在は繫殖牝馬。馬主はニシノフラワー、セイウンスカイ、ニシノデイジーなどで有名な西山茂行氏。

*8 通常、斤量差は成績や馬齢で決まる事が多い。新馬戦で斤量差がつくのは南半球産など誕生日が離れている場合か、女性騎手・見習騎手・障害競走新規騎乗騎手が騎乗する場合が多い。ニシノウララは後者。

*9 上がりは34秒4と上がり2位に0.7秒差

*10 中山金杯をセダブリランテスで、フェアリーステークスをプリモシーンで勝利していた。

*11 ルーラーシップ産駒。勝鞍は白菊賞(500万以下特別)のみながらもGⅠ3戦全て3着以内に入っている。

*12 リーチザクラウン産駒の逃げ馬で、戦績は未勝利勝利。25年2月現在繫殖牝馬。ちなみに現役時の彼女を応援する横断幕には「奇跡も魔法も逃げ切りもあるんだよ」というどっかで聞いたことがあるようなフレーズのものがある。

*13 メジロラモーヌはエリザベス女王杯で1/2馬身、スティルインラヴは秋華賞で3/4馬身、アパパネはオークスで同着、ジェンティルドンナは秋華賞でハナ差、デアリングタクトはオークスで1/2馬身、リバティアイランドは桜花賞で3/4馬身である。

*14 当時、06年ディープインパクト(61.2%)に次ぐジャパンカップ歴代2位。

*15 翌年にコントレイルが記録する2歳コースレコードとほぼ同じ。

*16 キングマンボ産駒の英国馬で、戦績は他に05年仏GⅠサンクルー大賞。ジャパンカップで世界的名手L・デットーリが騎乗しレコード勝利、そのまま日本で種牡馬入りした。

*17 各国の計測システムが違うため公式の世界記録はないが、1999年にアルゼンチンのカルロスペレグリーニ国際大賞でアシデロが記録した2分21秒98がそれまでの世界レコードとされていた。

*18 実際、よほど会心の騎乗だったのか、鞍上の川田騎手はゴール直後に背後を振り返り、後続を突き放していたことを確認している。

*19 GⅠ勝馬に限定すれば2024年の天皇賞(秋)でドウデュースが記録した32秒5が最速。ちなみにGⅠに限定しなければ、2022年にリバティアイランドが新馬戦で出した31秒4が最速。

*20 牝馬三冠に中山のレースが無いため、アーモンドアイのようにGⅠしか走らない牝馬は初中山が有馬という事がある。

*21 さらに言えば、このレースだけで豪州の年度代表馬になりかけたこともある。

*22 ちなみに入線出来なかった馬を含めると、とある年の天皇賞・秋で220億円を飛ばした例があるが、理由が理由であるため馬券関係で話題にされることは全くない。

*23 前者については3歳以降のダノンザキッドなど、中山競馬場だけ極端に苦手な馬は実際にいる。後者に関してはキングオブコージが目黒記念(GⅡ,東京2500m)で勝利しているが、有馬記念については本競走で2着だったサートゥルナーリアが2024年12月現在での最高着順。

*24 ドバイの首長でアラブ首長国連邦の副大統領および首相を兼務するH.H. シェイク・モハメド殿下が2017年に創設した年間表彰。ドバイ版のJRA賞とでも言うべき賞。

*25 なお、授賞は2021年度。これは後述のとおり2020年にドバイワールドカップデーが開催できなかったため。

*26 当時の日本調教馬では、ダートGⅠ・GⅠ級を8勝以上した馬は何頭かいたがが、芝GⅠはまだいなかった。ちなみに障害ではこの時点であの絶対王者がJGⅠ7勝目を達成していた。

*27 自分の車を「ダイワメジャー」と呼んだり、騎手の名言が書かれたTシャツを着用しながら練習するほどの競馬好きで、それが高じ2023年から馬主としても活動している。

*28 2024年から同サービスの公式イメージキャラクターとして起用されている。

*29 2010年、2015年に続いて3回目の開催。