歪んだ世界/Warp World

登録日:2023/09/24 Sun 09:03:10
更新日:2024/03/22 Fri 11:09:40
所要時間:約 10分で読めます



あなたは今、限りなくピンチに陥っている。

ああ、相手のの忌々しいパーマネントがなければ……

ああ、自分のトークン達がデッキの中のファッティ達なら……

ああ、そもそもこの物量差が逆ならば……


そんな状況、逆転できるかもしれませんよ?


《歪んだ世界/Warp World》とは、『マジック:ザ・ギャザリング』のイカれたカードのひとつである。
初出は「ラヴニカ:ギルドの都(RAV)」。こんなイカれた効果にもかかわらず基本セット系列に2回も再録されてる模範的なイカれた呪文でもある。



性能

Warp World / 歪んだ世界 (5)(赤)(赤)(赤)
ソーサリー
各プレイヤーは自分がオーナーであるすべてのパーマネントを自分のライブラリーに加えて切り直し、その後自分のライブラリーのカードを上から同じ枚数だけ公開する。各プレイヤーはこれにより公開されたすべてのアーティファクト・カード、クリーチャー・カード、土地カードを戦場に出す。その後、エンチャント・カードについても同様に行う。その後、これにより公開され戦場に出されなかったカードを自分のライブラリーの一番下に望む順番で置く。

テキストの意味がわからない?
ざっくり言うとこんな感じ。

  1. 各プレイヤーは盤面の自分が持ち主であるパーマネントを数えます。
  2. そいつらを全部持ち主のデッキに放り込みます。
  3. 混ぜます。
  4. デッキトップを同じ枚数めくります。
  5. めくれたアーティファクト・クリーチャー・土地・エンチャント*1がこんにちは☆
  6. それ以外のめくれたカードはデッキの底へさようなら☆

一言で表すなら盤面全部ランダムとっかえ呪文。唱えられるまでの盤面は過去のものとなり、相手の強カードもこっちの雑魚もさようなら。
そもそもデッキ内のパーマネントが少ない相手なら盤面がさっぱり空っぽになってくれることも。
上手くいけば冒頭のような状況ですら、文字通りひっくり返せる。

ただし、解決後の盤面がどうなるかは完全な。対戦相手のデッキに何が入ってるかなんてゲーム開始まで知る由もないので、これまた
解決したら相手最強こっち土地のみとかもあり得る。
モダンで【双子コンボ】相手に撃ったら相手の双子コンボが揃って投了などという事態は普通に起きる。二組揃えられたというエピソードすら存在する。


だが、それがいい……


とはいえ、完全なギャンブルを8マナかけてやるのはそれこそマジキチ。所詮一部のギャンブラーが好き好んで使う趣味カードに終わるかと思われた。
しかし何の因果か大真面目にこのカードに向き合い、実戦級の専用デッキを構築する変態プレイヤーが現れた
そうして生まれたデッキがまんまワープワールド】である。



【ワープワールド】のスタンダードでの活躍

ラヴニカ・ブロック期

歪んだ世界、爆誕

2色からなる10つのギルドが鎬を削り合い、当時の常識を塗り替えたコストパフォーマンスの高い達が飛び交う「ラヴニカ・ブロック」。
そんな中《歪んだ世界》はトリプルシンボルの単色8マナ呪文というあまりにも空気の読めないカオス呪文としてこの世に生を受けた。
彼が最初に相棒としたのは、これまたぶっ飛んだ1体のトロールだった。

Hunted Troll / 狩り立てられたトロール (2)(緑)(緑)
クリーチャー — トロール(Troll) 戦士(Warrior)
狩り立てられたトロールが戦場に出たとき、対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーは、飛行を持つ青の1/1のフェアリー(Faerie)・クリーチャー・トークンを4体生成する。
(緑):狩り立てられたトロールを再生する。
8/4

見ての通り、出たら対戦相手に妖精さんを4体プレゼントするカードである。
コストに見合わぬパワーとはいえ、回避能力も持たず相手にアドバンテージを与えるトロールなんて普通は敬遠されてカスレアストレージ行きである。
しかし当時のルールではこの妖精さん達は使うのは対戦相手だが持ち主は自分扱いだったので、これ一枚でとっかえ先のカウント5つ分として働いたのだ。

そうして大量のカウントを増やしてワープしてどうするのか?
もう一回……いや、もう何回でもワープしてやればいい。

Anarchist / 無政府主義者 (4)(赤)
クリーチャー — 人間(Human) ウィザード(Wizard)
無政府主義者が戦場に出たとき、あなたの墓地にあるソーサリー・カード1枚を対象とする。あなたは、それをあなたの手札に戻してもよい。
2/2

《歪んだ世界》を唱える。
→墓地の《歪んだ世界》を出てきた《無政府主義者》で回収。
→出し直されてアンタップ状態の土地から回収した《歪んだ世界》を唱える。
……を繰り返し続ける。
そして出た時にダメージを与えるパーマネントも一緒に出し続けることで世界とシャッフルに付き合わされる対戦相手の顔を歪み尽くして勝利するのだ。

環境初期は《感電の弧炎》を7枚めくっていたが、環境後期でスタンダードの最後まで付き合うパートナーと出会うことになる。

Bogardan Hellkite / ボガーダンのヘルカイト (6)(赤)(赤)
クリーチャー — ドラゴン(Dragon)
瞬速
飛行
ボガーダンのヘルカイトが戦場に出たとき、好きな数のクリーチャーとプレイヤーとプレインズウォーカーの組み合わせを対象とする。ボガーダンのヘルカイトはそれらに、5点のダメージを望むように割り振って与える。
5/5

当時世界最強と言われたドラゴンが4回舞い降りれば試合終了である。
一切素出しできないという程重くもないため、最悪《歪んだ世界》を引くまでの時間稼ぎとして運用することもできる。

一方トロールはこの辺でルール変更によって対戦相手の場に出る妖精さんが名実共に対戦相手のものになってしまった。
よって残念ながら現在ではコンビは解消されている。


時のらせんブロック+ローウィン=シャドウムーア・ブロック期

歪んだ世界、復活

何故か「第10版(10E)」再録でこの世に復活した《歪んだ世界》だったが、そこには《ボガーダンのヘルカイト》以外の相棒の姿は無かった。
特に《歪んだ世界》を回収する《無政府主義者》のいない世界での連続ワープは難しい。

じゃあどうするか?一発で仕留めればいい。

Cloudgoat Ranger / 雲山羊のレインジャー (3)(白)(白)
クリーチャー — 巨人(Giant) 戦士(Warrior) レインジャー(Ranger)
雲山羊のレインジャーが戦場に出たとき、白の1/1のキスキン(Kithkin)・兵士(Soldier)クリーチャー・トークンを3体生成する。
あなたがコントロールするアンタップ状態のキスキンを3体タップする:ターン終了時まで、雲山羊のレインジャーは+2/+0の修整を受けるとともに飛行を得る。
3/3
Windbrisk Heights / 風立ての高地
土地
秘匿4(この土地が戦場に出たとき、あなたのライブラリーの一番上にあるカード4枚を見て、そのうち1枚を裏向きに追放し、その後残りを一番下に無作為の順番で置く。)
風立ての高地はタップ状態で戦場に出る。
(T):(白)を加える。
(白),(T):このターン、あなたが3体以上のクリーチャーで攻撃していたなら、あなたはその追放されたカードをそのマナ・コストを支払うことなくプレイしてもよい。

大量のトークンによるビートダウンでライフを詰め、トドメにワープからの物量差で圧倒する新型として生まれ変わったのだ!
さらに、8マナものマナを待たずとも《風立ての高地》の秘匿からいきなり奇襲的にワープすることも出来るようになった。
よりめんどくさいトリッキーな動きも採用されるようになり、結果この時期のワープは正攻法・奇襲・強襲をバランスよく扱えるデッキとなった。

……と思ってたら

Nucklavee / ナックラヴィー (4)(/)(/)
クリーチャー — ビースト(Beast)
ナックラヴィーが戦場に出たとき、あなたはあなたの墓地にある赤のソーサリー・カード1枚を対象とする。あなたはそれをあなたの手札に戻してもよい。
ナックラヴィーが戦場に出たとき、あなたはあなたの墓地にある青のインスタント・カード1枚を対象とする。あなたはそれをあなたの手札に戻してもよい。
4/4

最後の最後に《無政府主義者》の後継者が現れ、世界と対戦相手の顔は再び無限に歪むこととなった。


アラーラの断片ブロック+ゼンディカー・ブロック期

歪んだ世界、続投

ホントなんでかまたまた「基本セット2010(M10)」再録で続投が決まったが、「アラーラの断片ブロック」の到来当初は目立った活躍を見せなかった*2
しかし「ゼンディカー(ZEN)」が発売されると状況は一変。《歪んだ世界》と抜群の相性を持つ能力が登場した。上陸である。

Rampaging Baloths / 猛り狂うベイロス (4)(緑)(緑)
クリーチャー — ビースト(Beast)
トランプル
上陸 ― 土地が1つあなたのコントロール下で戦場に出るたび、あなたは緑の4/4のビースト(Beast)・クリーチャー・トークンを1体生成してもよい。
6/6
Avenger of Zendikar / ゼンディカーの報復者 (5)(緑)(緑)
クリーチャー — エレメンタル(Elemental)
ゼンディカーの報復者が戦場に出たとき、あなたがコントロールする土地1つにつき緑の0/1の植物(Plant)クリーチャー・トークンを1体生成する。
上陸 ― 土地が1つあなたのコントロール下で戦場に出るたび、あなたはあなたがコントロールする各植物クリーチャーの上に+1/+1カウンターを1個置いてもよい。
5/5

これまでは無限ワープでないならめくれてもあまり嬉しくなかった土地が、途端にフィニッシャーと大きなシナジーのあるカードに変化したのだ。
特に《ゼンディカーの報復者》はカウントの増加とフィニッシャーを同時に担える、めちゃくちゃ噛み合うやべー奴だった。
この時期から上記2枚の含まれている緑はメインカラーとして外せないものとなる。
当時だと更に好みで白の《エメリアの天使》や黒の《堕ちたる者、オブ・ニクシリス》あたりが採用された。
通常【ワープワールド】には《歪んだ世界》以外のインスタントやソーサリーは入らないのだが、この頃に限っては上陸用に《砕土》が入ってたりした。

そして環境末期、ほんの僅かな期間だったが《歪んだ世界》はその後のエターナル環境においてまで戦いを共にする終生の相棒と手を組んだ。

Primeval Titan / 原始のタイタン (4)(緑)(緑)
クリーチャー — 巨人(Giant)
トランプル
原始のタイタンが戦場に出るか攻撃するたび、あなたは「あなたのライブラリーから土地カードを最大2枚まで探し、それらをタップ状態で戦場に出し、その後ライブラリーを切り直す。」を選んでもよい。
6/6

6マナから8マナへのジャンプ、上陸の誘発、フィニッシャーとして申し分ないスタッツ。
エターナルでしか使えなくなった《歪んだ世界》を未だに助けてくれる素晴らしい相棒である。
また、その基本骨子は後にスタンダードからエターナルまで一世を風靡する【タイタンヴァラクート】へと引き継がれていくことになる。


その後「基本セット2011(M11)」では《歪んだ世界》は再録されず、スタンダードから姿を消す。
以降は基本セット系列はおろか、拡張セットや特殊セットを合わせて一度も新たに印刷されていない。



人気

上記の通り、スタンダードに登場した際は決まってデッキが作られるカードである。
……が、同時に撃ったら自爆もままあるため、スパイク*3からの評価はあまり高くない。
逆にデカブツ大好きなティミー、特にド派手なプレイを好むアドレナリンゲーマーからは絶大な支持を得ている。
であれば競技だとダメなカードかと言うとそうではなく、ぶち込まれればガチデッキでも無事では済まないため使用者もそこそこ存在する。
モダン以降でも幸運の女神が大爆笑した勝利者が度々現れる。
公式サイトや各種ショップサイトのコラムでもこれらのデッキが紹介されている事があるので、気になった人はチェックしてみよう。



関連カード

こんなカオスな呪文、唯一無二だろう……と、思いきや結構な数の亜種というか調整版が作られている。
いずれも癖の強いカードなので、ご利用は計画的に。

Chaos Warp / 混沌のねじれ (2)(赤)
インスタント
パーマネント1つを対象とする。それのオーナーはそれを自分のライブラリーに加えて切り直し、その後、自分のライブラリーの一番上のカードを公開する。それがパーマネント・カードである場合、そのプレイヤーはそれを戦場に出す。

「統率者(CMD)」で初登場。
やることは同じだが、盤面全体から任意のパーマネント1つに変わり除去としての性質が強くなった。
多少のギャンブル性はあるが赤には珍しくあらゆるパーマネントに触れるので、赤単デッキが採用していることがある。
逆に自分のカードに使用することはほとんどない。
……が、統率者戦で本当にピンチの時、逆転の目がデッキに眠っている時には是非とも自分のパーマネントにぶち込んでみよう……!

Glimpse of Tomorrow / 明日の瞥見
〔赤〕 ソーサリー
待機3 ― (赤)(赤)
あなたがオーナーであるすべてのパーマネントをライブラリーに加えて切り直し、その後、あなたのライブラリーの一番上からその数に等しい枚数のカードを公開する。これにより公開されてオーラ(Aura)でないすべてのパーマネント・カードを戦場に出し、その後、オーラ・カードについても同様に行い、その後、残りをあなたのライブラリーの一番下に無作為の順番で置く。

「モダンホライゾン2(MH2)」で初登場。
マナコストを持たない待機専用呪文の1枚で、自分限定となった代わりにあらゆるパーマネントが出せるようになったリメイクカード。
特殊な手段を用いなければ待機経由以外で唱えられないため、回収を繰り返して1ターンで連打するようなコンボは不可能となった。
しかしプレインズウォーカーなどにも対応したので、デッキに組み込めるカードは増えていると言える。
他の待機専用呪文のご多分にもれず、続唱呪文を悪用すれば即座に唱えることが出来る。
これを利用したデッキがモダンで結構人気があり、それらも【ワープワールド】と呼ばれることも。

Over the Top / やり過ぎ (5)(赤)(赤)
ソーサリー
各プレイヤーはそれぞれ、自分のライブラリーの一番上にある、自分がコントロールしていて土地でないパーマネントの数の等しい枚数のカードを公開し、これにより自分が公開したすべてのパーマネント・カードを戦場に出し、残りを自分の墓地に置く。

「兄弟戦争(BRO)」で初登場。
パーマネントの総入れ替えではなく、パーマネントの追加出しになった調整版。現行のスタンダードで使用可能な唯一の亜種である。
土地をカウントしない、既存の盤面に触れないなどイカれ度合いが低下した落ち着いたデザインとなった。
というか、やり過ぎてるのはむしろ《歪んだ世界》の方では感が強まった。
全プレイヤーが単純にアドバンテージ増するので、相手の返しを待たずにこのカード1枚で決め切りたいところ。
パイオニアの【赤単信心】あたりに入れておけば面白いかも。

The Great Aurora / 大オーロラ (6)(緑)(緑)(緑)
ソーサリー
各プレイヤーはそれぞれ、自分の手札にあるすべてのカードと自分がオーナーであるすべてのパーマネントを自分のライブラリーに加えて切り直し、その後それらの枚数に等しい枚数のカードを引く。各プレイヤーはそれぞれ、自分の手札から望む枚数の土地カードを戦場に出してもよい。大オーロラを追放する。

「マジックオリジン(ORI)」で初登場。
なんとびっくり、混沌のではなく自然と力ののカードである。
戦場だけでなく手札もカウントするが、戻した後はデッキをめくることなくカウント分ドローし、土地以外は手札に留まる。
結果としてパーマネントで無いソーサリーやプレインズウォーカーなどのとも組み合わせやすくなった。
スタンダードの【黒緑コントロール】で採用されたこともあるなど、一族の中ではだいぶ非専用構築寄りである。

Morphic Tide / 変異の潮流
現象
あなたが変異の潮流に遭遇したとき、各プレイヤーは自分がオーナーであるすべてのパーマネントを自分のライブラリーに加えて切り直し、その後自分のライブラリーの一番上からその総数に等しい枚数のカードを公開する。 各プレイヤーは、これにより公開されたすべてのアーティファクト・カードとクリーチャー・カードと土地カードとプレインズウォーカー・カードを戦場に出し、その後、エンチャント・カードも同様に行い、その後、これにより公開されて戦場に出されなかったすべてのカードを自分のライブラリーの一番下に望む順番で置く。 (その後、この現象からプレインズウォークする。)

……何このカード?と思った方も多かろうが、これは「プレインチェイス2012(PC2)」初登場の現象カード。プレインチェイス戦で使用する。
プレインチェイス戦のプレインズウォークでこれが捲れると《歪んだ世界》が発動s……プレインズウォーカーに対応してる!?
そう言う意味ではマイナーながら《歪んだ世界》ファンの中では重要なカードと言えるかもしれない。バトルに未対応?時期を考えろ!



余談

エンチャントだけ他のパーマネントに一歩遅れて場に出るのは、付ける先が必要なエンチャント(オーラ)の都合と思われる。
ついでに言えば《歪んだ世界》の登場当初はオーラというサブタイプが無かったことも理由だろう。
実際リメイク版の《明日の瞥見》では後出しするのがオーラだけになっている。

あるプレイヤーがグランプリ京都16のサイドイベントに【ワープワールド】を持ちこんだ際、とあるエピソードがあったらしい。
なんでもWotC社員に「《歪んだ世界》をスタンダード再録して欲しい」と何気なく言ったら「馬鹿いっちゃいけないよ(意訳)」と返されたそうな。
《歪んだ世界》の未来はどっちだ……



追記・修正はワープしたら相手の即死コンボがそろっちゃって投了したことがある人のみお願いします。

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最終更新:2024年03月22日 11:09

*1 これら以外のタイプのパーマネント、例えばプレインズウォーカーやバトルは出せない。《歪んだ世界》が登場した当初は「パーマネント」という記述形式がなかったため、当時未登場のカードタイプはサポート外になっている。

*2 建主がこの時期引退気味だったので、詳しい方の追記求む。

*3 いわゆる競技プレイヤー。