ヘビ(ペット)

登録日:2023/12/15 Fri 16:22:00
更新日:2024/04/05 Fri 01:06:56
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このページでは「ペットとしてのヘビ飼育」について解説する。
トカゲやカメ、イグアナ等、ヘビに限らない爬虫類ペットに関してはこちらの項目を参照。

好き嫌いの分かれる爬虫類の中でも、特に一般的には嫌われ者であるヘビ。
見るのもおぞましいという人も少なくないだろう。
その一方で、(危険性はさておき)普段のマイペースな振る舞いや、よく見るともちもちしていることからヘビをかわいいという人も結構存在する。
飼育趣味界隈では古くから馴染み深いグループであり、一部のものは完全に養殖されていて、多くのモルフ(品種)が生み出されている。
愛好家も多く、飼育技術や文化も発展しており、一般に思われているよりも遥かにペットとしての歴史と深みを持つグループなのである。

ヤモリと並んで最も飼いやすい陸生の爬虫類でもあり、爬虫類飼育における花形の一つと言ってもいい。
そんな初心者向けな顔を持つ一方で、繁殖や変態ヘビなどにハマりこむと、そうそう抜け出せなくなってしまう危なさも持つ。
苦手な人は仕方ないが、一度足を踏み入れると沼から出られなくなる……それがヘビ飼育の世界である。


基本的な飼い方


上でも述べたように、ヘビはヤモリと並んで最も飼いやすい爬虫類とされる。
基本的に、必要なものはケージ・床材・水入れ・シェルター・保温器具(パネルヒーターなど)。以上。
半水生種なら水場を広くするとか、樹上性種ならケージを高くして登り木を入れるとか、地中性種なら床材を厚めに敷くとか、種に応じた工夫は必要だが、コーンスネークやボールパイソンなどのメジャー種は完全に上の設備だけで飼えてしまう。
昼行性トカゲやリクガメの飼育に不可欠である、バスキングライトや紫外線ライトが一切いらないのが最大の利点。
爬虫類初心者が躓きやすいのがバスキングなので、それが必要ないというだけでもいかに飼いやすいかがわかるだろう。

ケージの広さは種にもよるが、一般に「ヘビがトグロを巻いた時の面積の3~6倍」あれば十分とされる。
なので、コーンスネークやカリフォルニアキングスネークなどは、大きめのプラケースだけで終生飼育が可能。
ボールパイソンでもオスならプラケースで飼える場合もあり、専用ケージを用意する場合でも45センチサイズもあれば十分である。

ただし、これはどちらかというとブリーダーやコレクター向きの飼い方であり、一匹一匹をじっくり観察したいのであればやはり広めのケージにして、登り木などでレイアウトしてあげるのがオススメ。
何の変哲もないコーンスネークでも、広めのレイアウトケージに入れてあげると、驚くほど立体的な活動を見せてくれたりする。

なお、ヘビ飼育で最も注意すべきなのはとにかく逃がさないということである
特に屋外への脱走は絶対に避けたい。
普通に流通・飼育されているヘビに危険なものはほとんどいないが、「ヘビが逃げた」というだけで大騒ぎになってしまうのが現実であり、そうなった場合迷惑を被るのは、近隣住民と適切に飼育している他の飼育者である。
また、ヘビが事故に巻き込まれたり、他の動物に襲われるなどの可能性も否定できない。
何しろヘビは脱走名人である。ヘビを飼育している部屋は基本的に窓などを開けない、くらいに対策を取っておいてちょうどいい。

エサやりやケージの掃除の時などに、屋内に脱走されることもある。
この場合、家具の隙間などに逃げ込まれると厄介で、特に幼体や小型種だと発見は至難の業。
慌てて探そうとすると、その物音に余計に警戒して出てこなくなるので、いったん落ち着いて静かに待ち構えて、「もう大丈夫かなー」と出てきたところを捕まえよう。
特に冬場だと、発見が遅れると衰弱死させる危険があるので気を付けたい。

このようなことを避けるためには、とにかく普段から油断しないことである。
餌やりやケージ掃除の際にはヘビから目を離さず、蓋を閉めたかどうかを毎回しっかり確認しよう。
また、できれば朝晩、飼っているヘビがちゃんとケージにいるかどうかを確認しておくといい。

なお、ヘビに名前を付けるのは自由だが、ヘビは聴覚が無いので自分の名前を認識することはできない
そもそも爬虫類は、過度なスキンシップを求めて飼う動物ではない
そこはちゃんとわきまえておこう。


エサ


「ヘビを飼ってみようかな」と思った人の前に、まず立ちふさがるのが餌の問題であろう。
基本的に、ヘビのエサは冷凍のマウス・ラットである。
残念ながら人工飼料はほとんど出回っていないし、高価である。
なので、最寄りの爬虫類ショップか通販で冷凍ネズミを買うのが必須となる。

それがどうしても耐えられない人は、魚などを食べるヘビを飼うしかないだろう。
後述するが、冷凍ネズミが嫌だからって昆虫やタマゴを専食とするヘビに安易に手を出すのは絶対にお勧めしない

正直言って、最初は抵抗感があっても、大抵の飼い主は慣れるものである。
なお、冷凍マウス・ラットは国内の業者によって安定的に生産されているので安心しよう。
ちなみに、ヘビは生きた餌しか食べられないと誤解する人がいるが別にそんなことはない。仮に事実ならヘビ用に冷凍ネズミが大小出回る意味がないので安心してほしい。
ヘビは目や鼻に加えて温かさを感知する能力がある(「ピット器官」という鼻の穴みたいな部分)為、おそらくは餌が体温より冷たいと食べないのを生きていないと食べないと誇張されて広まってしまったのだと思われる。
つまり、きちんと温めれば冷凍でも大抵気にせず食べてくれる。これでも食べないのは餌が傷んでしまっているか、他の原因で食欲がないというパターンを疑おう。

飼育しているヘビが増えて、月々のネズミ代がバカにならなくなってくると、自分でネズミを繁殖させようと考える人も出てくるかもしれない。
実際に自分で餌用のネズミを殖やしている人もいる。
しかし、基本的に哺乳類は爬虫類よりも遥かに飼育の手間がかかるので、これをやりだすとヘビを飼っているんだかネズミを飼っているんだかわからなくなる
また、ラットなんかはかなり人に懐くので、「情が移っちまってエサにできねえ…」となる可能性も大。
実際、これがきっかけで、ヘビ飼育兼齧歯類飼育というさらなる沼にハマる人も少なくない。
コスト的にも、ネズミの餌代に世話の手間も加味すると、結局大して節約にならないというオチになることが多い。
よほどたくさんのヘビを飼っている人でなければうまみが無いだろう。


ハンドリング


ハンドリングとは、爬虫類などの小動物を手に持って扱うこと。
まず覚えておくべきは、飼い主に触られて喜ぶ爬虫類はまずいない
用もないのにペタペタ触るのは基本的に飼い主の自己満足なのである。

しかし、触ることによって痩せ具合や健康状態を把握できるというメリットもあるし、全く触られ慣れていない個体に育ててしまうと、ケージの掃除や引っ越し、動物病院に連れていく時などに困ることになってしまう。
なので、少しはヘビの方も触られることに慣れさせておくほうがいいし、飼い主も最低限ストレスを与えない触り方・持ち方は覚えておいたほうがいい。

慣れさせ方は至極単純で、「とにかく幼い頃から定期的にハンドリングすること」である。
ただしエサをやった直後は避け(吐き戻す恐れがある)、一回のハンドリング時間も短めにしておこう。
上手い持ち方は、上手い人の動画などを参考にしながら、ある程度自分で覚えていくしかない。
感覚的には「手で押さえつける」のではなく、「手と腕の範囲の中で、ヘビに自由に動いてもらう」というイメージである。

なお、ツリーボアやグリーンパイソンのように、どうやっても慣れない、ハンドリングに向かないヘビもいる。
こういうのは観賞用だと割り切ろう。


繁殖


ヘビを眺めたり、たまにハンドリングしたり……それだけではだんだん飽き足らなくなってくるのではないだろうか?
そう、次のステップは繁殖である。

そもそもコーンスネークやカリフォルニアキングスネーク、ボールパイソンなどは、「個人で繁殖を愉しむ」のが前提となっている飼育種である。
一部の金魚や錦鯉みたいなもんだと思ってもらえばいいだろう。

繁殖の楽しさは、「どのような親を掛け合わせるかによって、どのような子供が生まれてくるかが異なる」ことにある。
なので、自分の生み出したい色・模様の個体を思い描きながら、親になってくれそうな個体を探して繁殖にチャレンジするのである。

繁殖には独特の用語が多く、まずはこれらを頭に入れておかないといけない。
例えば店頭では「50パーセントヘテロアザン」などという名前で売られているのだ
(この場合は、この個体同士を掛け合わせると50パーセントの確率で「アザンティック」という色変個体が得られる、という意味)。
専門誌などを読んで、知識を十分に身に着けた上でチャレンジしよう。
また、そのように親候補を探している過程で、「なんかちょっと模様が変わってるな」というような個体を見つけることも多々ある。
こういうのに遺伝性があるかどうかを検証するというのも楽しみ方の一つである。

繁殖の具体的な手順は種によるが、コーンスネークやカリフォルニアキングスネーク・アオダイショウなどは一度冬眠をさせて、春先に暖かくなり冬眠明けする辺りが繁殖期となる。
なお、冬眠をさせたほうがさせないよりも長生きすると言われているので、繁殖をさせない場合でもこれらの種は冬眠させたほうがいいだろう(そもそも、温帯のヘビは冬に冬眠するほうが普通の状態なのである)。
ボールパイソンなどは比較的一年中交尾可能とされているが、やはり春先を狙うのが基本。

なお、繁殖の注意点として、殖やした子をどうするかは先によく考えておこう
コーンスネークなどは、多ければ一回に30個も卵を産む。
これらの子をブリーダーマーケットで売ったりショップに卸したりするには、現在の日本では「動物取扱業登録」が必要。
これは実務経験などが必要で、他の仕事をしながら趣味で飼育している人が取得するのは非現実的である。

一回くらいならなじみのショップに引き取ってもらってもいいが、たとえ無償であっても、繰り返し定期的にショップに引き取ってもらうとなるとやはり業登録が必要。

なので現状、一般人だと、
「増やした個体は全部自分で育てる」
か、
「自力で里親を見つける」
しかない。

なにぶんヘビはヘビなので、好きな里親が見つかれば良いが他のペットほどの期待はできないのが現状。
無計画に繁殖させると誰も幸せにならないのはどんなペットも一緒なのである。
いらない子は他の飼育動物の餌にする?何の餌にするんだ?


変態ヘビ


さて、ここまで主にコーンスネークやボールパイソンといったメジャーなヘビの飼育について見てきた。
が、ヘビ飼育にはもう一つの禁断の世界がある。
それが変態ヘビの世界である。

もともとこの言葉は某ショップが発祥で、「変態的なショップ店主が仕入れるようなヘビ」という意味だったと言われる。
それがだんだん「変態が飼うようなヘビ」という意味になり、さらには「変態的なヘビ」という意味合いで使われるようになった。

この名前で呼ばれるヘビは、一般的なヘビ飼育のノウハウが通用しないことが多い。
その多くはマウス・ラット以外を常食とするのが特徴。
カエル・魚・ミミズ・昆虫・卵など、様々なものを主食としている例があるが、中にはムカデしか食べないとか脱皮したばかりのザリガニしか食べないといった、妙な偏食だなぁ…と言いたくなるような例もある。

これらのヘビは基本的に上級者向けで、種によっては長期飼育そのものが難しい。
そんなヘビを、少しでも長く状態よく飼うために研究に研究を重ね、心身を削り、毎日の様子を確認して一喜一憂する……そんなまさに変態のためのヘビたちである。
ハマれば後戻りできないとされる、ヘビ飼育界のもう一つのディープワールドである。


代表的な飼育種


初心者向け


  • コーンスネーク

もっともポピュラーなペットスネークである。
飼うのはとても簡単で、特に書くことがないくらい。
多数のモルフが存在し、中には日本で生まれた「フジムラサキ」というモルフもある。
繁殖させやすいヘビだが、一回の産卵数が多いため、くれぐれも計画的に。
全部でどれだけのモルフが生まれているのかはもはや把握困難。
初心者向けと侮るなかれ、これ一種で一生楽しめるほど奥深いヘビである。

  • カリフォルニアキングスネーク

コーンと並び称されるビキナー向けヘビ。通称カリキン。
立体活動をほどんどせず、人によってはこっちのほうがコーンよりも向いているかもしれない。
注意点は性格。決して荒いわけではないのだが、空腹モードに入ると見境なく何にでも噛みつこうとする。

コーンほどではないがモルフも豊富。コーンがカラーバリエーションが多いのに比べて、こちらは模様のバリエーションが豊かである。
繁殖は容易で、産卵数はコーンより少ないので孵化後の世話は楽だが、狙った個体が出る確率が下がるので一長一短か。

なお、「キング」の名は、野生化ではガラガラヘビさえも食べるところから来ている。
そう、もともとヘビを食べるヘビなのだ。
ヘビはそもそもどんな種でも単独飼育が基本だが、本種は特に、絶対に同種他種問わず他のヘビと一緒にしてはいけない。
繁殖させる際も気を付けないと、オスとメスを同じケージに入れて、ちょっと目を話して戻ってくると、「あれ、オスがいない……」ということも……


  • ボールパイソン

コーン、カリキンと並ぶポピュラーヘビで、現在の爬虫類飼育人気の基礎を築いた種の一つである。
本種も繁殖させやすく、様々なモルフが作出されている。
90年代には、アメリカを中心に、一部のモルフにとんでもない値段がつく「ボールバブル」という現象が起きた。
どれほどかというと、最高では1000万円に届くこともあったほど。
しかし、粗悪なブリーダーが大量に流入したこともあって値崩れを起こし、バブルは崩壊。
現在では誰でも気軽に繫殖を愉しめる存在となったので、むしろ一般飼育者としては良かったというべきだろう。
現在でも高額なモルフは数十万~百万円以上の値が付けられる。
欲しいけど手が出ない? なら自分で繁殖させて生み出そう!!
ということで、「繁殖を愉しむヘビ」の代表格となっている。

繁殖は難しくないのだが、一回の産卵数は8個ほど。
なので、遺伝的に出る可能性のある個体でも、運が悪いと出ないことも多い。
狙った個体を出すためには、複数のペアを用意して、年単位でトライする覚悟が必要。
というわけで、本種にハマると数十~数百匹の個体と同居する羽目になることになります。
くれぐれも繁殖は計画的に。

なお、飼育者が多いこともあって、定期的に遺棄・脱走がニュースになってしまうヘビでもある。
とても大人しいヘビで、飼育者でもまず噛まれることはない上に、最大でも130センチほどにしかならない、全く危険性はないヘビである。
しかし、世の中には「ニシキヘビが逃げた」と聞いただけでパニックになってしまう人が多いのが実情。
くれぐれも逃がさないように。


  • セイブシシバナヘビ

コーン・カリキン・ボールに次ぐ初心者向け4番手として、近年人気を伸ばしているヘビ。
特徴は「ヘビっぽくない」こと。
他のヘビのように蛇行せず、芋虫のように動くのである。
非常に小型なのも特徴で、マウスに餌付いてさえいれば飼いやすい。
本種もモルフが多いが、もともとカエルを食べる種であるため、ベビーの餌付けが非常に高難易度であり、繁殖は上級者向け。

注意しないといけないのは、本種は弱毒種であるということ。
人が死ぬほどの毒は無いし、ちょっと噛まれるくらいなら問題ないのだが、がっぷり噛まれて引きはがすのが遅れたりすると、腕全体が倍近くに腫れあがったりする。
そんな事故が報道されて規制対象になってしまったりしたら他の飼育者に大迷惑なので、ハンドリング時には気を付けよう。


  • コロンビアレインボーボア

通称コロ虹。ボア類の中では最も飼いやすいとされ、値段も手ごろである。
一見すると地味なヘビだが、その名の通り、光の下で見ると鱗が虹色に光る。
あまり注目されることがないが、コアなファンの多い地味渋ヘビである。


中級者以上向け


  • カーペットパイソン

コーン、カリキン、ボールでヘビ飼育の基本を身に着けたら、ぜひ次にトライしてほしい種。
こちらも様々なモルフがいるが、これは人為的に作出されたものではなく、生息地による違いである。
中でも鮮やかな黄色と黒のコントラスト模様の「ジャガーカーペット」の美しさは、筆舌に尽くしがたい。
また、最近独立種とされた「セントラルパイソン」は、滅多に拒食をしないヘビなので、一匹いてくれると他のヘビの食べ残しの処理に役立つ。
産地ごとの細かい違いにハマると、「カーペット沼」まで一直線。
ハンドリングしてよし、眺めてよし、コレクションしてよしの良ヘビである。


  • アオダイショウ

日本を代表するヘビだが、飼育種としても人気があり、人為的に繁殖もされている。
海外でも「クナシリラットスネーク」の名前で人気がある。よりによって国後かあ……
産地ごとに系統立てて殖やされており、特に独特の青みがある北海道産(通称エゾブルー)や、他地域よりも大きくなるとされる伊豆大島産が人気がある。
ワイルドとCBとでは飼い方がかなり違うので、安価に売られているワイルド個体を買う時にはよく考えよう。


  • グリーンパイソン

これまた沼にハマるとえらいことになるヘビ。
やはり産地ごとに独特の特徴があるのだが、結構「これはどこ産だ?それとも混血か?」というような個体が混じっている。
そういうところがむしろマニア心をくすぐる。
中でも「ブルーコンドロ」と呼ばれるモルフは最高級とされ、100万円近い値が付く。
性格は荒く、ハンドリングにはあまり向かない。
産地別にコレクションしてズラっと並べて達成感を味わうという楽しみ方がいいだろう。


  • ガータースネーク

半水生で、主に魚を常食とするというところが珍しい種。
いくつもの種類があり、原産国であるアメリカでは結構人気があるヘビなのだが、
日本ではエサが魚で、マウス食いのヘビよりもこまめに与えないとだめで糞が臭い、という理由からかイマイチ人気が無い。
ちょっと変わったヘビが飼いたい、という人にはオススメ。

  • ミズヘビ
名前の通り主に水中を生息地としている種。
生息環境故にマウスなど哺乳類はあまり食べず、上記のガータースネークと同じく魚を好んで食べる。
紫外線も他の種に比べてそれほど依存しないので飼いやすいと言えば飼いやすいが半面水質に気を使う必要も。
変態ヘビとまで行かずとも面白い生態のヘビを飼いたい人に向いているかもしれない。


  • ジャワヤスリヘビ

こちらは完全水生の種。
名前の通りヤスリのような質感のヘビで別名をゾウバナヘビともいう。
主に魚を捕食するが大きさが大きさなので金魚では足りず、コイなど大きな魚を必要とする意味では大変。
ちなみに多くのヘビと違ってタマゴではなく直接子ヘビを出産する繁殖方法なので増やすのは意外に簡単だとか。
上記のミズヘビで満足しなくなったりより大きな水槽を用意できるなど広い飼育スペースが確保できる人にオススメ。

大型種


生半可な覚悟では飼えないヘビたちである。
この辺になると、エサもラットでは足りなくなり、最終的にウサギやコブタになる。
また、野外へ脱走などの事故が起こると個人の問題では済まなくなる可能性もあるので、きちんとした環境で飼育できる人向け。

  • イエローアナコンダ

いわゆる「アナコンダ」であるオオアナコンダは、現在では特定動物に指定されていて個人の新規飼育は不可能。
一方、こっちのイエローアナコンダ(キイロアナコンダとも)は現在でも飼育可能である。

本種は、おそらく現在合法的に飼えるヘビで最も危険なヘビと言っていい。
大人の大きさは4メートルを超えることがある上、太くて力も強い。
巻き付かれると一人で外すのは困難であるため、一人で扱ってはいけないとされるほど。

ベビーは比較的安価に買えるヘビだが、安易な気持ちで飼育しては絶対にいけない!!
万一の場合には本種と心中するくらいの覚悟で、できれば2人以上で世話できる人だけがどうぞ。


  • オリーブパイソン

2.5~4メートルほどになるヘビ。
性格は大人しく、かつ丈夫で、大型種の中では比較的飼いやすいとされる種である。


  • パプアンパイソン

最長だと5メートルと、イエローアナコンダすら上回ることのある種。
しかし、かなり細身であるため、数値ほどの迫力はない。
やはり大型種としては飼いやすいとされるが、気を付けないといけないのは、本種は他の爬虫類を食べるということ。
なので屋内脱走された場合、他のヘビや飼育爬虫類を食い尽くされるという、ある意味屋外に逃げられる以上の悲劇に見舞われる可能性がある・


  • ボアコンストリクター(飼育不可種)

この種は、海外では非常にポピュラーで人気のあるペットスネークである。
ボールほどではないにしろ、多くのモルフも生み出されているし、地域変異も多い。
日本でも、かつては非常に人気があって広く飼われている種だった。

だが、現在では特定動物入りしてしまっており、愛玩目的の新規飼育は不可能。
その原因は、2000年に脱走事故が起こり、その時に本種を踏んづけた人を噛んで怪我をさせたからである。
逃がした飼い主ェ……
この事故でメジャーな品種を一発規制してしまった日本の行政ェ……
ただ、この前にも海外では度々飼い主が襲われる事故が起きており、ヘビの中でも比較的気の荒い部類だったことは否めない。
しかし踏まれて怒るのは流石にこのヘビだけに限った話とも言えず、
気の荒い一部の大型犬*1などより扱いが厳しいのはやり過ぎだと異議を唱える愛好家も多い。関連法律の見直しの度にもこのヘビがしばしば議論になっている。


変態ヘビ


  • カラバリア

少し前までは「ジムグリパイソン」と呼ばれていたが、そもそもパイソンではないということで、現在ではこの名前で呼ばれることが多い。
その見た目と丸まりやすい習性から、ウ〇コヘビというあんまりなあだ名で呼ばれる。

ある程度ヘビ飼育に慣れて、「そろそろちょっと変わったヘビが欲しいな」と考えだした人に選ばれることが多いヘビ。
だが、本種は完全に地中性という特性がある。
基本的に地上には全く出てこない。
そのため、ヘビを飼っているんだか土を飼っているんだかわからなくなる
常人であれば飽きること請け合い。
夜中などに地表に出てきたところを偶然に目撃してニヤニヤする、というマニアックな楽しみ方ができる人にしかオススメしない。


  • ラフグリーンスネーク

ラフアオヘビとも呼ばれる。
数あるヘビの中でも「昆虫食」という、極めて珍しい性質を持つ。
値段が安価なのもあって、「ヘビが飼いたいけど冷凍ネズミはイヤだ……え、虫を食べるヘビ?これならいいじゃん!!」という感じで初心者にも飼われがちなヘビ。

しかし、本種は長期飼育が極めて難しい上級者向けのヘビである。
数年も飼えれば成功という部類なのだ。
餌を入手しやすいコオロギにすると、高い確率で糞詰まりを起こして死ぬ。
なのでシルクワームあたりを与えるのがいいだろう。
その上で、広めで通気性のいいケージで飼うのが長期飼育の秘訣と言われる。
ヘビというよりは、カメレオンや樹上性トカゲに近い。

腕に覚えがあり、あえて困難に挑戦したいという人だけどうぞ。


  • タマゴヘビ

その名の通り、タマゴしか食べないヘビ。
なので「ヘビが飼いたいけど冷凍ネズミはイヤだ……え、タマゴしか食べないヘビ?なにそれめっちゃいいじゃん!!」という感じで、やはり初心者に安易に飼われがちなヘビ。

実際、本種はタマゴしか食べない。
それも、年に数回しか食事をしない
それ以外は、水を換えるくらいしか世話をすることがない。
なので、上記のような安直な動機で飼い始めた人は間違いなく飽きる。というか存在自体を忘れる。

このヘビは、「俺はタマゴヘビが好きなんだ。誰が何と言おうとタマゴヘビを飼いたいんだ」と本気で思う人だけが飼うべきであろう。

なお、ニワトリやウズラの卵だけではどうも足りない栄養素があるらしく、長期飼育の例があまりない。
そういう意味でもマニア向け。


  • ジムシヘビ

世の中に変態ヘビと呼ばれるヘビは数あれど、本種は究極の変態ヘビであろう。
なにしろ、ムカデしか食べないのである。
なので、飼うならエサをどう調達するかが一番の課題になる。
本種を仕入れているような変態店であれば、大抵餌用のムカデも売っているだろうが、店が遠方にしかない場合は自分でムカデを採集してくることも検討しないといけないだろう。
なんでこんなヘビを飼う人がいるのか、常人には理解の範疇外であろうが、長年にわたってコンスタントに飼われ続けているヘビであるのも事実である。


  • ブラーミニメクラヘビ

日本を含めてほぼ世界中に生息している、世界最小のヘビ。
完全に地中性で、名前の通り目が退化している。
あまりに小さいため、一般的にヘビの餌とされるものは全く食べることができない。
何を餌にするかというと、「昆虫の卵」である。
餌用のコオロギなどを繁殖させて卵を産ませ、それを与えるといいだろう。

地中性なので、飼っていても観察できる機会もほとんどない。
「なんで俺はこんな動物を飼っているんだろうか」と思わなくなったら、あなたも立派な変態ヘビニストである。


余談:世界の歴史とヘビ飼育

世界最古のヘビ飼育の記録については、流石にはっきりしたものは残されていない。

エジプト

一説によると古代エジプトのファラオ(王)がヘビを飼育していた可能性があるらしい。
そもそも古代エジプトではヘビは主権の象徴であり、王族の装束には蛇のモチーフのものが多かった。ツタンカーメンのマスクの額にヘビが鎮座していることはあまりにも有名。
その延長線上として、実物のヘビを飼育していたのではないか、という説があるのである。

ただ、2023年現在では「壁画の一解釈」「ミイラと一緒に埋葬されていたから」程度の根拠の話。
残念ながら、実際にファラオが手元でヘビを可愛がっていたという決定的な証拠は挙がっていないのだそうだ。

中国

中国の歴史的文献の中でも、かなり古来からヘビ飼育を行っていたという根拠となる説が散見されている。

中国の歴史上、動物収集を積極的に行っていた皇帝が何人も存在しているのだが、その皇帝が収集していた動物一覧の中に蛇の記載があるものもあるらしい。
ただ、この手の資料には誤り(悪く言えば誇張や捏造)があることも多いので丸呑み鵜呑みにはできないのが惜しい所。
なにしろ、化蛇(翼のある蛇)のような架空生物の記載がしれっとあったりするらしいので……

西洋

アジアに比べ、西洋の歴史上ではヘビ飼育はかなり消極的な部類であるという説が有力。
なぜかというと聖書で邪悪の化身とかいう根も葉も手も足もないイチャモンをつけられているため。
呪術の媒体として生きたヘビを用意している、などの話はずいぶん古くからあるらしいが、さすがに飼育とは目的が異なるのでこの話は割愛。

日本

残念ながら、日本の歴史的文献の中にはヘビ飼育にまつわる有力なものは見つかっていないらしい。
ただし、日本人とヘビとの友好的な付き合いの歴史は長かったとされている。ネズミなどの害虫を食べてくれる益虫であることが理由。
もしかしたら、米や野菜の収蔵倉でアオダイショウを飼っていた、なんていう人は日本史の陰にたくさんいるかもしれない。




追記・修正はボールパイソンの新モルフを生み出した人がお願いします。



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最終更新:2024年04月05日 01:06

*1 意図的に品種改良された動物である為、特定動物にならないという事情もあるが。ただあまりに凶暴すぎて飼育が規制されている品種はある。