爬虫類(ペット)

登録日:2023/02/13 Mon 12:38:00
更新日:2025/10/04 Sat 21:41:43
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ここではペットとしての爬虫類飼育一般について述べる。


概要


古来よりミズガメを池で飼ったりする文化はあっただろうが、現在のような爬虫類飼育趣味の歴史が始まったのは戦後である。

その嚆矢となったのは、1960年代のミドリガメブームである。
お菓子メーカーが懸賞で生きた外国産のカメをプレゼントするという企画を行ったところ人気を呼び、外国産カメの飼育者が一気に増加したのだ。
「外国産の爬虫類を飼育する」という趣味がこの時始まったと言えるだろう。

1980年代になると、テレビCMをきっかけとするエリマキトカゲブームが起こる。
ほぼ同時期に人気になったアホロートル(いわゆるウーパールーパー)と共に、爬虫類・両生類飼育文化の定着に一役買った。

一方でこの時代において外国産動物の販売・飼育は現代では考えられないモラルで行われていた。まず輸入する側も碌な知識がないまま輸入して、獣医や相談機関が十分な知識を得る事もできていない状況だった。
ミドリガメやウーパールーパー・エリマキトカゲ等はペットとしての販売目的で乱獲・密輸されて激減し、そうしたものを高値で買っても飼いきれなくなって捨てる・・・という後ろめたい意識すらなく
「手狭な水槽で飼い続けるのはかわいそう」「だから広い自然でのびのび生きて欲しい」と動物のためという意識で野に放つことも珍しくなかった。
しかし言うまでもなく彼らの帰るべき自然は近所の山や川ではないし、水槽が手狭なのも後先考えずに買ったからである。
こうして野に放たれた動物の多くは合わない環境で野垂れ死に、適応できたらできたて侵略的外来種になってしまっている。

1990年代から2000年代にかけては、レオパードゲッコー(ヒョウモントカゲモドキ、レオパ)、コーンスネーク、ボールパイソンといったスター級の種が出そろい、エサとなる冷凍マウスやコオロギ*1の普及や飼育器具の開発・改良によって、飼育のハードルが一気に下がり、初心者にも参入しやすくなった。
また、この頃に乱獲や密輸、あるいは野山に捨てる行為に対する法整備も進んだ。
買って捨てるのではなく本当の意味で飼う、現在に至る爬虫類飼育趣味文化が確立したのはこの頃だと言えるだろう。

2020年前後には、新型コロナウイルス感染症の影響で外出自粛が叫ばれたこともあり、改めて省スペースで飼育できる爬虫類にスポットがあたり、即売会イベントの充実もあって新たなブームと言える動きが起こっている。


爬虫類飼育の注意点


爬虫類飼育の楽しみ方は人それぞれであり、

  • レイアウトケージに生息地の環境を再現して、生態や仕草を見て楽しむ
  • 個性的なモルフ(品種)や近縁種をコレクション的に集める
  • 繁殖に成功する(できる位に体調管理を達成する)
  • 他の生き物と同じように、純粋に愛玩動物(ペット)として飼う

などがある。好きな楽しみ方ができる点が爬虫類の魅力の一つだろう。

但し、ペットとして飼う場合は、「爬虫類の特性は哺乳類や鳥と多少異なるという点をまず知っておく必要がある。

まず、爬虫類は人に「慣れる」が「なつく」ことは基本的に難しいものと思っておこう。
簡単に言えば、飼い主でも体にペタペタと触られることを嫌がるのだ。
例えば、好かれたとしても愛情表現として飼い主にすり寄ることはしないし、「撫でて」とごろんして催促するわけでもない。

そもそも「なつく」というのは、群れの仲間や家族といった形態を持っている哺乳類や鳥だから発達した習性であり、野生下では一生涯をほぼ単独で過ごすか、群れで協力ということをあまりやらない爬虫類は「親しい相手になつく」という概念が薄いのである。

といっても、先に断ったように信頼関係を築いた結果「慣れる」ことはできる。
これは爬虫類が飼い主を敵や不愉快なものではなく、触られたり近寄られても警戒する必要のない、自分にとって安全な相手として信頼している状態。
要するに「ご主人様温かい…もっと撫でて…zzz」みたいな無警戒なべったりは好まず
「ご主人様は怖くない、大丈夫。……ひぇっ!動いたからびっくりしたぁ…」的に一歩引いて馴れ合う感じ。こんな距離感でも爬虫類基準なら十分好かれている方だろう。
動画共有サイトなどで見られる、いわゆる「べた慣れ」の個体は、実際にはこの状態である。
特にフトアゴヒゲトカゲなんかはかなり人間に慣れやすいし、リクガメやイグアナ、モニター(オオトカゲ)などは知能が高いため、飼い主とそれ以外の人間を識別したり、名前を呼べば反応するくらいにはなる場合がある*2


また、基本的に長時間触ることは好ましくない
これは、慣れていない個体であれば多大なストレスになることに加え*3、変温動物である爬虫類は、人間に長時間触れていると人間の体温が伝わってやけどや熱中症になる恐れがあるためである。

愛玩動物でも、適度な距離感を保つのが、爬虫類飼育では重要である。


ちなみに、即売会イベントなどでは生体がプリンカップと呼ばれる小さくて透明なケースに入れられて販売されることが多い。
これを一見して「狭くてかわいそう」と言う人も多いが、爬虫類は原則狭いところが好きで、身体が何かに触れていると落ち着くため、実際には爬虫類の習性に配慮した販売方法である。
飼育する際も、落ち着ける場所としてシェルターを入れてあげよう。


WCとCB


品種改良がされていない為、販売されている爬虫類は、大きくわけてWC(ワイルドコート)CB(キャプティブブリード)に分けられる。
WCは野生個体を捕獲したもの、CBは飼育下で繁殖させて得られた個体である。
もう一つFH(ファームハッチ)というものもあり、これは持ち腹のWCが産んだり、採集した卵が孵化したりしたものを人為的に育てたもの。
つまり、遺伝的にはWC、育ちはCBである。

WCは野性味溢れる姿や習性が魅力であり、また一般的にCBより安い。
種によってはほとんど人為繁殖がなされていないため、WCしか出回らないものもある。
デメリットは病気や寄生虫、ダニの存在。特に既に飼っているところに新規個体を導入する際は注意したほうがいい。
また、野生では当然の如く捕食者として立ち回っていた個体ということになり、餌付けの難易度はCBより高い。活餌にしか興味を示してくれない場合はペットと共にゴキブリやネズミとの同居(各自で餌用に繁殖させる必要性が出るケースもある)を余儀なくされる覚悟が必要。
また、WCはその種がサイテス(後述)入りしたり、生息地が保護されたり産出国が輸出を止めたりすると一気に出回らなくなる。
近年における例がタンザニアで、かつてはここから多くのWCの爬虫類が輸出されていたのだが、突然タンザニア政府が野生動物の輸出を止めたため、ここから来ていたアフリカ産爬虫類は一気に高騰した。

CBは何といっても、WCよりも圧倒的に育てやすい。
寄生虫などの心配もまずないので、初めて爬虫類を飼うならCBから始めるのがいいだろう。
「野生動物を捕まえて飼っている」という後ろめたさとも無縁であるし、ブリーダーさえいれば安定して供給されるのもいい点である。
但し、CBもブリーダーが引退したり種親が枯れたりして、突然市場から消えることはある。

現在では日本でもかなりの数の爬虫類が繁殖されている他、海外ではアメリカやドイツなどが繁殖が盛んな国である。
特にドイツでは、「こんなの殖やしている人がいるのか!?」と言いたくなるようなマニアックな種が殖やされている。

なお、オーストラリアは自国の野生動物の輸出を、種を問わず一切認めていない。
そのため、オーストラリア産の爬虫類は必然的に全てCBであり、世界中で増やされまくっているフトアゴヒゲトカゲを例外として、軒並み高価である。

また、南アフリカ、フィリピン、インド、メキシコ、ブラジルなども、野生爬虫類の輸出にはかなり厳しく、これらの地域に生息している種はCBがメインである。
たまにWCが入荷すると、界隈が大騒ぎになる。


関連する条約・法令


爬虫類を飼育するに当たっては、関連する条約や法規も知っておこう。

条約では、何より重要なのは「CITES(サイテス)」、通称ワシントン条約である。
これは、野生動物の国際取引を制御することを目的とした条約である。
しばしば誤解されるが、取引を禁じることを目的としたものではなく、野生動物の持続的な資源活用を目指すための取り決めである。
そのため、商業流通することが想定されていない種は、希少であっても登録されていない。

この条約に登録されている動物は、1類・2類・3類に分けられる。
1類は「商業目的での国際取引は原則禁止、但しサイテス事務局に認定された繁殖施設で殖やされたものについては、ちゃんとそれを証明する書類がそろっていれば可」。
爬虫類ではビルマホシガメ、オオアタマガメ、アオマルメヤモリなど。
このグループには、日本国内では「種の保存法」が適用される。
ちゃんと書類が揃っていれば購入・飼育は可能なのだが、登録票やマイクロチップなどが必要なので、どうしてみ1類の種を飼いたい人は信頼できるショップで手続きを教えてもらおう。

注意すべきは、自分の飼っている種が新たに1類になった場合。
この場合、実は飼育を継続するに当たっては何の手続も必要ない。
が、登録票が無いと売買や譲渡ができないという落とし穴がある。
なので飼い主が病気になるなどした場合、他の飼い主に譲るということができなくなるし、飼い主がペットを残して亡くなってしまうと遺族にもどうしようもなくなって詰む
なので極力登録票を取得しておこう。

2類と3類の場合は、「輸出国と輸入国の書類が揃っていれば商業取引可能」なので、1類よりもかなり緩い。
が、例えばアメリカなどは、2類であっても原則一切の輸出を認めていない*4
これで界隈が騒然となったのは、アメリカハコガメ属が2類に登録された時である。
アメリカからの新規個体の輸入は絶望的になり、もう日本では飼えなくなるかと思われたのだが、この時には日本国内のマニアが結集して繁殖に尽力し、それが成功して現在でも安定して流通している。
この例でも分かるように、とにかくどんな種でも国内で殖やしておくのが大事なのである。

また、完全に輸入を止めはしないまでも、やはり面倒な手続きはどこの国も避けたがるものなので、国内で殖えていない種が2類になると、多くの場合流通数は減って価格が高騰する。
2022年11月のサイテス会議では、ドロガメ属・ニオイガメ属・ハラガケガメ・アメリカヤマガメ属・インドシナウォータードラゴンなど、飼育趣味界隈でなじみ深い種が多く2類に登録された*5

なお、サイテスの存在を忘れて、アメリカの即売会イベントなんかで対象の種を買ってしまうと、日本に持ち帰れないという事態になるので注意(後述する特定外来生物・特定動物も同様)。


日本の国内法では、まず特定外来生物法がある。
これに指定されている種は、外来生物の被害や生態系への侵略を防ぐ観点から、無許可での飼育・販売・輸入・生きたままの移動・繁殖・譲渡などが一切禁止されている
なら許可を取ればいいと考える方もいるかもしれないが、指定前から飼育していた場合*6を除いて、個人の愛玩目的で許可が下りることは無い
野生にいるものを捕獲して飼育したり、生息地から移動させることも違反なので気を付けよう。
爬虫類ではカミツキガメ・ハナガメ・グリーンアノール*7が当てはまる。

2023年6月からは、ミシシッピアカミミガメも「条件付き」特定外来生物に指定されることになった。
これは輸入・販売は禁止だが、現在飼育している個体の継続飼育や、野生化の個体を捕獲して飼育することは可というもの。


そして動物愛護法
爬虫類飼育趣味に関係が深いものとしては、この法律によって対面販売が義務付けられたことが挙げられる。
要するに生体の通販の禁止である。
これについては、「犬・猫の悪徳ブリーダーを規制するための法律」という側面が大きく、爬虫類については若干とばっちりに近い規制のされ方とも言われている。

多くの爬虫類は輸入業者やブリーダーのもとからショップまで普通に宅配で移動されており、ショップから消費者までの間だけで宅配を禁止する意味が果たしてあるのか…と、疑問視する声も上がっている。

というのも、確かに宅配便で送るというのは基本的にペット自身にとっても危険な行為であるが、爬虫類の場合は狭い冷暗所というのは寧ろ寝心地がいい場所であり、余程変な温度にされたり揺れるなどしなければ体調を崩さないように宅配も十分可能であるため(魚類や昆虫についても同様)。
勿論、他の積荷との兼ね合いや動物を扱える担当者の都合も限られてくるし、念の為という意味では飼い主が直接確認して連れて帰るに越したこともないのはその通りだが。

一方、この規制の影響によって即売会イベントが一気に発展することになった。
地方在住のマニアにとっては、対面が必須となる以上、現実的な距離で直接出向ける地方開催のイベントは非常に重要である。

また、この法律では「特定動物」というものも指定されている。
これは「一般人が趣味で飼うには危険すぎる動物だから飼育は禁止」というもの。
以前は「飼育設備を整えて、自治体から許可を得れば飼育可能」だったのだが、現在では愛玩目的の新規飼育は一切禁止となっている
爬虫類ではアナコンダ・アフリカニシキヘビ・アミメニシキヘビ・ボアコンストリクターなどの大蛇、毒蛇、ドクトカゲ、ハナブトオオトカゲ*8、ワニガメ、ワニが指定されている。
「まあ、禁止は仕方ないよね」というものも多いが、マニアに言わせれば「そこまで危険でもないのでは?」という種も含んでいるため、こちらもしばしば議論になる。
特に話題に挙がるのがボアコンストリクターというヘビ。かつては非常に飼いやすいヘビとして人気があり、現在でも海外ではごく普通に販売・飼育されているヘビだったが、脱走した個体を通行人が誤って踏んでしまい、ヘビに噛み付かれてしまうという事故がきっかけで規制されてしまった。
実際に怪我をさせてしまったとはいえ、「そりゃ誰かに踏まれたら怒るだろ」と規制を疑問視する声も挙がってはいる*9

爬虫類の中には生きた餌を好む者がおり、やむを得ず「生き餌」を用意しなければならないというケースもあるだろう。
…で、こんなことをちょっと悩んだことはないだろうか。
「生きたままの餌をペットに食べさせるのは果たして(餌となる動物に対する)虐待に入らないのか」と。
結論から言うと、飼育に不可欠かつ、常識的な範囲ならOK。

  • 無意味に与える(多くの爬虫類は頻繁に餌を食べない)
  • 明らかに非常識・非効率な生き物を餌に選ぶ
  • 餌だからといって世話をサボる(特にネズミや鳥)
  • ペットから餌に「降格」させる
  • 管理しきれないほど繁殖させたり、飼育しきれないからと廃棄する
  • 無意味に生きたまま切り刻むなどの猟奇的な行為をする
  • 無能な手下を食わせる

…みたいなことをしなければ大丈夫だろう。
ただ、「食べる好み=常識の範疇」とは限らないので悪しからず。まあ、自家繁殖したゴキブリ(デュビア)がメジャーな餌の時点で察してくれ。
飼育のイメージダウン防止のためにも、周囲には引かれないか事前に調べておこう。


ちなみに法令とは違うが、うっかり脱走してしまうと近所は大騒ぎになりかねない。大型の種類が脱走しニュースになってしまった例もある。
特にヘビ全般壁は上れるし体も細いし足音も立てないので脱走は大得意。まさにスネークなのでくれぐれも注意されたし。
なお、現代ペットとして飼育される爬虫類は一般のイメージよりは大人しく、人にいきなり襲い掛かることは滅多にない。
といっても知らない人から見ればヤモリやカメならともかく、オオトカゲやニシキヘビとなると「おーよしよし、迷いペットかな?」どころか「ヘ、ヘビ!?だ、誰か助けてくれえぇ!」的な反応もやむなしなのだ。
それに、大人しいとは言っても、爬虫類自身が身を守るために近隣の住民や他の動物などを怪我させてしまったりする可能性は否定できない。
また、爬虫類を脱走させると、「軽犯罪法」「動物愛護法」に違反する恐れもあり、ヘビを脱走させてしまった飼い主が罰金刑を命じられた例もある*10
また、その種が特定動物に指定されたり、逃げた動物がやむを得ず殺処分されたり、交通事故などに合う可能性も否定できない。


飼育に必要な器具


ケージやエサを別として、爬虫類飼育に重要な三大器具は保温器具・バスキングライト・紫外線ライトである。
ヤモリやヘビ、夜行性のトカゲについては、このうちの保温器具だけで飼える。

保温器具はパネルヒーターやブルーライトの発熱灯など、「ケージ内の最低温度を一定以上に維持する」ための器具で、原則つけっぱなしである。
何匹も飼うのであれば、エアコンを24時間つけっぱなしにしたほうが早い。
一方のバスキングライトと紫外線ライトはいわば「太陽の代わり」であり、原則日中だけ付ける。
紫外線ライトは徐々に紫外線を出さなくなるので、半年を目途に買い替えること。
このワット数がいいか、温度は何度にすればいいかは、種によっても違う他、飼育する家の環境にも左右されるため、自分で色々試行錯誤してベストなものをみつけよう。

……もうお気づきだろうが、爬虫類を何匹も飼っていると、電気代がそれはえらいことになる


価格について


上述の法令についてや流通についての記載等を読んだ読者の中にはお察しの方もいるだろうが、爬虫類の価格は基本的に水ものである
WCしか流通していない種や国内で繁殖されていない種はあっという間に価格が乱高下してしまうし、CBが流通している個体であっても結局はブリーダーからの供給次第なので値段が安定する事は無い。
メジャー種であるフトアゴヒゲトカゲ、レオパードゲッコー、コーンスネーク等は比較的安定しているがそれでも価格変動自体は避けられない。

その為、ネットの飼育記事や一般の本屋に流通する飼育書に書かれている販売価格は基本的に「執筆当時の相場」であり、参考価格に留めるのが吉
実際の価格は自らショップに赴いたり即売会に参加して自分の目で確かめるしかない。


各グループについて


トカゲ


爬虫類飼育趣味界で「トカゲ」と言った場合は、ヤモリ以外のトカゲを指す。
紫外線や温度勾配・湿度など、飼育環境を整えるのが非常に重要なグループであり、爬虫類を代表するグループながらどちらかというと上級者向け

何といっても代表格はフトアゴヒゲトカゲであろう。
100%CB個体ということもあって、とても飼いやすい上に人間にも慣れやすく、わりとコミュニケーションも取れる。

それ以外では、丈夫で飼いやすいトカゲの2台巨頭とも言えるアオジタトカゲとオニプレートトカゲ、大型種が良ければサバンナモニターやテグー、樹上性種からインドシナウォータードラゴンあたりから始めるのがいいだろう。

おそらく最も一般に知名度が高いのはグリーンイグアナだろう。
丈夫で頭も良く、確かに根強い愛好家も多い魅力的なトカゲである。
が、なんといっても大きくなりすぎる
最大なら180センチ、メスで小さくても120センチは覚悟していたほうがいい。
市販のケージでは終生飼育は無理なので、自作かオーダーメイドで巨大ケージを作るか、放し飼いにするしかない。
さらに力も強く、慣らせるのに失敗してしまった場合、うかつに近寄ることすらできなくなる。
尻尾を振ればガラスくらいは余裕で割れるのだ。
慣らせることに成功すればとてもいいペットになるのは間違いないのだが、根気よく付き合っていく覚悟があり、広い飼育スペースが取れる人にしかオススメはできない。飼育の手軽さ、で言えば恐らく小型犬や猫の方が遥かに楽だろう。

このグループでも特に飼育難易度が高いとされるのがカメレオンの仲間である。
エボシカメレオンとCBのパンサーカメレオンは比較的飼いやすいとされるが、他の種は上級者向け。


ヤモリ


分類上はヤモリはトカゲの一部なのだが、爬虫類飼育趣界では他のトカゲとは別枠で扱われることが多い。
というのも、飼い方が大きく違うからである。
夜行性ゆえにバスキングライトと紫外線ライトがいらないのが最大のメリット。
小型種ならプラケースでも飼える。
設備もいらず場所も取らないため、一匹飼いだすとどんどん増えていき、気が付けば部屋中ケージだらけ……ということになりがちなグループでもある。

後述する餌問題も蛇と比べると比較的受け入れやすい。代表種向けの人工飼料も多く販売されている為、餌付いている個体であればフード飼育が出来るのは大きな魅力と言えるだろう*11

代表格はなんといってもレオパードゲッコークレステッドゲッコーだろう。
それぞれ地上性ヤモリと樹上性ヤモリの代表格である。
モルフも豊富なので、自分の好きな色・模様の個体を選ぶこともできる。
この2種はヤモリの代表というより、ペット爬虫類の代表と言えるだろう。

他にも飼いやすい種が非常に多いため、「とにかくなんでもいいから爬虫類を飼いたい」という人にはオススメのグループである。

混同している人も多いが、名前の似ているイモリは両生類であり全く別の生物である。


ヘビ


世間一般的には非常に好き嫌いの分かれるグループだが、爬虫類飼育趣味においては真の花形とも言えるグループである。
実のところ、多くの種は非常に飼いやすい。
ヤモリと同じくバスキングライトと紫外線ライトがいらず、ケージも体長のわりには小さめで十分飼える。
霧吹による保湿や水換えは基本的に毎日するのが望ましいものの、餌は小型種でも1週間に1回、大型種にもなると数週間~1ヶ月に1回でも問題ない為、飼育の手間がとにかく小さく、1匹あたりにかかる飼育の時間は非常に少ない。そんなところも沼ってしまいやすく気が付いたら飼育個体数が増えてしまう原因なのだが
ヤモリに並んで初心者向けのグループであり、同時に「沼」にハマるとえらいことになるグループでもある。
一番の難点はエサは冷凍のマウスやラットというところか*12

特にコーンスネーク、カリフォルニアキングスネーク、ボールパイソンなどは、極めてモルフが豊富で、100%CB個体なのでとても飼いやすい*13
自分で繁殖に挑戦して、自分だけの模様・色の個体を生み出すという楽しみ方もある。

一方、ヘビ飼育には「変態ヘビ」というもう一つの世界もある。
これは主に「マウス以外を餌にするヘビ」の総称である。
カエルしか食べない・魚しか食べない・卵しか食べない、なんてのはまだマシなほうで、脱皮したばかりのザリガニしか食べない・ムカデしか食べない・カタツムリしか食べないなど、「どうやって飼うんだ!?」と言いたくなるようなのがゴロゴロいる。
そんなんでもちゃんと飼ってる人がいるというのが、この界隈の恐ろしいところである。

ヘビごとの詳しい飼い方や種類については個別項目があるのでそっちを参照。


ミズガメ


昔からペットとして飼われてきたグループだが、昨今の爬虫類ブームからは置き去りにされている感がある。
結構飼育スペースが必要なのと、水替えという手間がかかるところが、「省スペースで手軽に飼える」という昨今の爬虫類飼育の売り文句に逆行しているのが原因だろうか。
初心者向けとされる種はミシシッピニオイガメ・ニシキマゲクビガメなど。

実は昨今、世界的に値段が高騰しているグループである。
これは、世界的にWCからCBに切り替えていこうという流れがある中で、カメ類は繁殖を軌道に載せるまでに非常に時間がかかるという事情があるため。
野生個体は軒並みサイテスに登録されるなどWCには年々規制が強化される中で、CBもなかなか出回らないため、世界規模で取り合いになっているのである。
わずかな間に値段が高騰して、庶民にはとても飼えない存在になってしまうということはザラ。

その一方でミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)やクサガメ、イシガメといった日本にありふれている種類は日本の気候に対応しているため場合によっては一年中外飼いでも問題ない上に保温器具などの初期投資が必要なく、手間やスペースがかかるのとは裏腹にある意味最も飼いやすいグループであるとも言えるだろう。
しかし、かつては手軽さゆえに軽々しく飼われ、なまじ生命力が高いためにゆっくりと飼い殺されるといった例や捨てられた個体が繁殖を行い、昨今のミシシッピアカミミガメをはじめとする外来種問題の引き金となった例などで飼い手のモラルが求められてきたグループでもある
カメ類は飼育の手軽さと裏腹に寿命は飼育下でさえ30年ほどと、ペット全体を見ても長命である。
ミシシッピアカミミガメはあまりに手軽に手に入る*14割に丈夫で長く生き大きくなることから「買って捨てる」がもっとも多く行われてきた動物のひとつ。
そんなミシシッピアカミミガメは、2023年には条件付特定外来生物に指定され、無許可での放流・輸入・販売・頒布・購入などが出来なくなった。
現在飼育されている個体は届け出不要だが、逃がしたりすると罰則があるので注意が必要。
また昨今ではワニガメやカミツキガメといった危険な種類すらもしばしば池や川で見つかり騒ぎになる。

これは爬虫類全体、あるいはそれ以外の動物すべてにも言えることだが、飼育を始めるなら自分自身とペットの数十年後の姿を想像したうえではじめ、今飼っている人は最後まで大事にしてやろう。


リクガメ


ミズガメとは打って変わって、昨今の爬虫類人気の一翼を担っているグループ
だが、全体的には上級者向けのグループである。
温度・湿度・紫外線といった環境設定が難しいのに加え、飼育スペースを非常にとるという問題もある。
これは、リクガメは基本的に立体活動ができないため。
樹上性のトカゲなどなら、背の高いケージを用意してやれば、結構底面積は狭くても飼えるのだが、リクガメはそうはいかないので、飼い主の生活空間を大幅に割譲する覚悟が必要なのだ。本気で飼い込むならば部屋一室渡すくらいの覚悟は欲しいところ。

加えて、図鑑などに載っているようなキレイな形の甲羅に育て上げるのは、実はかなり難しい
一度歪んでしまうと修正は困難である。
そしてものすごい長生き(30年~50年)という点からしても、気軽に飼える爬虫類ではないと言えるだろう。

初心者向けなのは、ヘルマンリクガメ・ギリシャリクガメ・ロシアリクガメの地中海リクガメ御三家。
一方、知名度が高いのはケヅメリクガメだろう。
このリクガメはとても丈夫で育てやすく、人にもよく慣れ、確かにいいペットではある。
が、めっちゃでかくなる
普通に飼っていればマックス50センチといったところだが、同じ大きさのトカゲなどに比べ、リクガメの50センチは相当にでかい
幅も体高も体重もあるのだ。
直径50センチのボーリングの球が歩き回っているようなものである。
力も強いため、安易に部屋の中に放し飼いにすると、壁も家具もめちゃくちゃにされる。
庭付きの家に住んでいるか、ケヅメリクガメ専用の部屋を用意できない人にはなかなかおススメできない。
大きさを別にすればとてもいい亀なのは間違いないのだが。

詳しくはリクガメ(ペット)の項目を参照。


ワニ


現在では全種が特定動物に指定されているため、愛玩目的の新規飼育は不可能
規制前は結構色んな種類が販売されており、一時期はナイルワニのベビーが数千円で、しかも普通のペットショップで売られていたりと、今思えばとんでもない時代があった(イメージとしてはライオンのライオンのベビーを数千円で売っていたようなもの)。


爬虫類飼育をテーマにした作品



  • となりの爬虫類くん


二次元世界で爬虫類を飼っているキャラ

キャラ名 作品名 爬虫類の種類 備考
ラプンツェル 塔の上のラプンツェル カメレオン
我那覇響 THE IDOLM@STER ヘビ
ワニ
古賀小春 アイドルマスターシンデレラガールズ イグアナ(おそらくグリーンイグアナ
田中摩美々 アイドルマスターシャイニーカラーズ レオパードゲッコー
カメレオン(おそらくエボシカメレオン)
忍足謙也 テニスの王子様 イグアナ(おそらくグリーンイグアナ)
フランソワ パウ・パトロール ワニ(クロコダイル)
リクガメ
ヘビ
カメレオン
お香 鬼灯の冷徹 ヘビ
伊賀崎孫兵 落第忍者乱太郎/忍たま乱太郎 ヘビ
サー・クロコダイル ONE PIECE ワニ(「バナナワニ」という架空の種)
伊黒小芭内 鬼滅の刃 ヘビ 伊黒戦死後はカナヲに引き取られた。
ヴォルデモート卿 ハリー・ポッターシリーズ 毒ヘビ(雌)
斎藤道三 信長の忍び外伝 尾張統一記 ヘビ(シマヘビ)
中野梓ほか けいおん! スッポンモドキ アニメ版オリジナルで原作にはいない。
山園学園生物部 じょしもん ヘビ
カメレオン
カメ
姫小路蒼葉 金田一少年の事件簿白蛇蔵殺人事件 毒ヘビ(アルビノ


最後に


飼っている爬虫類を、事情によってどうしても手放さなければいけなくなった場合は、まず買った店に相談しよう。
大抵は引き取ってくれる。



追記・修正はムカシトカゲの繁殖に成功した人がお願いします。

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最終更新:2025年10月04日 21:41

*1 餌コオロギの普及には、1990年代初頭のアロワナブームの恩恵を受けた面が大きい。

*2 ちなみに、ヘビは空気中の音が聞こえないため、名前を呼ぶのは完全に飼い主の自己満足になる

*3 全く触られ慣れていない個体に育ててしまうと、ケージの掃除や引っ越しの時に困るので、ある程度は慣らせたほうがいい

*4 これがアメリカ国内で繁殖された個体も同様なので、「アメリカ内で殖えまくっているのに国外に売れない」という種が結構あり、日本人マニアなら喉から手が出るほど欲しい幻の種がアメリカではかなり安く売られていたりする

*5 カメは日本国内で結構殖やされているのだが、インドシナウォータードラゴンは世界的に見てもブリーダーがほとんどないため、今後価格が高騰する可能性が高い

*6 現在飼育している動物が特定外来生物に指定された場合は改めて許可を得る必要がある

*7 これの煽りを受けたのがカメレオンモドキ。分類には諸説あるグループなのだが、輸出国が「アノール属」として登録してしまったため、日本国内での扱いが非常にややこしいことになり、輸入されることが無くなってしまった。飼いやすくて人気のあった樹上性トカゲなのだが

*8 コモドオオトカゲも指定されているが、商業流通することはまず考えられない。

*9 もっと大きくなるパプアンパイソンやオリーブパイソンは何の規制も無い。

*10 この事例では略式命令であったが、この場合も前科が付いてしまう。

*11 とはいえヤモリに限らず爬虫類の食嗜好は割と気紛れなので、拒食対策に虫を与えねばならない場面が起きる事も少なくない。虫餌を受け入れられない人にも飼える、というわけでは断じてない。

*12 セイブシシバナヘビなどは人工飼料のみでもいけるという報告もある。

*13 ボールパイソンはたまにWC・FHも来るが、これは上級者向け。

*14 かつては縁日の金魚すくいなどでも販売されていた。