登録日:2024/01/11 Thu 21:11:17
更新日:2024/08/27 Tue 20:55:13
所要時間:約 12 分で読めます
『勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録』とは、電撃の新文芸から刊行されている
ライトノベル。
レーベル:電撃の新文芸
著者:ロケット商会
イラスト:めふぃすと
【概要】
カクヨムで連載されていた作品を書籍化したものであり、2024年8月現在6巻、コミカライズ2巻まで刊行されている。
「勇者」という職業を「刑罰」として再定義し、「懲罰部隊」としての軍事行動と無謀な作戦を描いた作品であり、読み口は戦記物にも近い。
作者の他作品(勇者のクズ)同様最悪のクズの人格破綻者が味方陣営に多数登場することが特徴。
【あらすじ】
勇者刑とは、最も重大な刑罰である。
その罰とは、突如として魔王軍を発生させる魔王現象の最前線で、殺されようとも蘇生され戦い続けなければならないというもの。
数百年戦いを止めぬ狂戦士、史上最悪のコソ泥、詐欺師の政治犯、自称・国王のテロリスト、成功率ゼロの暗殺者―――
全員が性格破綻者で構成される懲罰勇者部隊。
彼らのリーダーであり、《女神殺し》の罪で自身も勇者刑に処された元・聖騎士団長のザイロ・フォルバーツは、
戦の最中に存在を秘匿されていた《剣の女神》テオリッタと出会う。
二人が契約を交わすとき、絶望に覆われた世界を変える、儚くも熾烈な英雄の物語が幕を挙げる。
【用語】
この物語の核となる刑罰。『何度でも蘇り』『魔王討伐のために』『少人数で無謀な戦いを強いられる』という勇者のテンプレートを逆手に取った『死刑すら生ぬるい極悪犯罪者への刑罰』である。
首に刻まれた聖印により「懲罰勇者同士の通信」と「命令違反した際の起爆」が可能。
重篤なダメージを負ったり死亡した場合も「修理場」で回復、蘇生が可能だが、蘇生の場合記憶と人格が失われてしまうし、失敗すれば傷や肉体の欠損が残ることもある。
太古の昔に生み出された、超兵器にして生体兵器。その機能は『門』であり、その女神と結びつけられた『何か』を召喚する能力を持つ。
疲労を蓄積するたび目の輝きが強くなり、髪からは火花が散るようになる。
性質上「人に奉仕する」性質があり、自己の能力の仕様限界を無視する傾向、ありていに言えば「身体を壊すまで頑張りすぎる」性質がある。
文字通り魔王という現象。
核となる『魔王』と、その周辺の生物・物体が変化した異形(フェアリー)からなる。
汚染された生物・物体という性質上その姿かたちには大きく幅があり、大半は意思疎通が不可能だが人間に近い思考能力・言語能力を持つ者すら存在する。
人類の版図の半分以上を汚染し奪っていった人類種の敵。人格を持つものをはじめ、意図的に人類と敵対する性質すらある。
【登場人物】
罪状:対神暴行致死、軍務背任
職業:元・聖騎士、雷撃兵
懲罰勇者であり、本作の主人公。『女神殺し』によって勇者刑に処された殺神犯。
元・第五聖騎士団長であり、『建造物』を召喚する第五の女神セネルヴァの元契約者。
浅黒い肌の荒々しい青年であり、性格も見た目同様に荒く、すぐに手が出る。
だが、聖騎士としての能力・人格的には非常に優秀な部類であり、頭も非常に回る。
本来物体に刻む「聖印」という魔法陣を人体に刻む技術により圧倒的な戦闘力を有する。
これは危険が伴う発想であり、全盛期に宿した10以上という数はイカれ過ぎていて未だ誰も真似していない。
勇者刑に処されたことで10以上の聖印のうち2つを除き封印されたが、それでも強力。
残されたものは物体、特に投げナイフを爆弾に変える「ザッテ・フィンデ」とごく短時間飛翔に近い跳躍を可能とする「飛翔印サカラ」。
フォルバーツ家という貴族の出だが魔王現象によって両親を失い、南方異民族「夜鬼」の大貴族マスティボルト家に育てられた。
召喚対象:剣
第十三の女神。十二しか存在しないとされていた女神の、最近発掘された十三番目。
第十三聖騎士団が発掘、運搬していたところ、棺ごとドッタに手癖でスられたことでザイロの手に渡り、起動。ザイロを契約者、女神の騎士として承認する。
一応はヒロイン枠なのだろうが、実質は甘えん坊の幼女。
一見すると「兵器」を召喚する第十の女神の下位互換(あちらも剣を生み出せる)であるが、本来は「存在する」「存在しうる」範囲の物体しか召喚できないはずの
女神でありながら、「存在そのものを両断する剣」という明らかに存在しえないシロモノである「聖剣」を召喚する、女神の性質からも逸脱した奥の手を持つ。
罪状:窃盗
職業:泥棒、偵察兵
懲罰勇者。
ピンク髪のかわいらしいショタだが20代前半の成人男性。
大泥棒、というよりは天才的な盗みの腕と異常な盗癖を持つ少年であり、万引きの感覚で巨大な棺や大量のワインを盗み出せるが盗めそうなものは理由も必要性もなく盗んでしまうという生粋のクレプトマニア。史上最悪のコソ泥。
最終的には王宮のドラゴンを盗み出そうとしたことと、その他数百の窃盗容疑で勇者刑に処された。
死刑より重い勇者刑にあって、「窃盗」単品という罪状は別の意味で異常。
懲罰勇者部隊においては「なんでも盗む」ことによる事実上無尽蔵の兵站確保が可能であり、勇者部隊の作戦の要とも言える存在。
また、小物で気弱でありながら「異常な目の良さ」「逃げ足の速さ」「潜入能力」「壁を這い登れるほどの身体能力」「高い発想力」を兼ね備えており、偵察兵としてもサボったり逃げ出したりしなければ非常に優秀な存在。
罪状:詐欺、横領、聖権侵害、内乱予備
職業:詐欺師、指揮官
懲罰勇者。懲罰勇者部隊の立ち上げ初期メンバー。他2人が罪状を持たないタツヤとライノーなので、懲罰勇者としては最古の生き残り。
ならず者の勇者部隊を纏め上げるカリスマ指揮官……だということになっているが、実態は対外的にそう言うことにしているだけの詐欺師。
頭は良くないが『言い逃れをする』『辻褄を合わせる』ことに対して異常な才能を有しており、虚言癖で考え無しの嘘をつくが最終的には話を自分の思い通りにするというあまりにも碌でもない人物。
質が悪いことに詐欺師でありながらなんの主義主張もなければ儲けるつもりもない。自分がノリでついた嘘のつじつまを合わせようとした結果嘘が膨れ上がって詐欺師になっていたらしい。
最終的には王宮をサーカス団に売り飛ばしたことで勇者刑に処された。「聖権侵害」と「内乱予備」はこれによるもの。
本名はベネティム・ヴァークル。聖印から新聞、人身売買まで行う大企業ヴァークル開拓公社の直系の息子だったが、一族の恥として追放された経歴を持つ。「レオ
プール」は3つほど持つ偽造戸籍のひとつ。
懲罰勇者部隊においては主に「命令の偽造」を担当する。本来であれば不可能である難題を申し付けられる懲罰勇者部隊において、「難題の方を口先三寸で変える」という手法を取れるイレギュラー。
また、書類偽造や詐欺によりドッタ同様にほぼ無尽蔵の兵站確保が可能であり、これでも勇者部隊の作戦の要となる存在。
罪状:放火、殺人、建造物侵害、王室侮辱
職業:聖印技師、工兵
懲罰勇者。自分のことを国王だと思い込んだ狂人であり、王室でのテロを引き起こした結果勇者となった。
愛称は陛下。というかそう呼ばないと怒る。
賢人ホルドーの最後の弟子であり、元は神殿の学士会では天才聖印技師として知られた存在だったが、何らかの理由により発狂したと思わしい。
自分のことを国王だと思い込んでいることを除けば善良な人物であり、その魂にはノブレス・オブリージュが刻み込まれている。
さらにカリスマ性を持ち、頭脳も明晰。画期的な政治思想も有し為政者としての腕も抜群と、本物の国王ではないにもかかわらず国王を自称している異常者のテロリストであることさえ除けばだいぶ理想的な国王。
聖印技師、工兵としては文句なしの超一流であり、そのあたりの木片に聖印を刻むことで、軍事的に実用水準の兵器を片手間で作り上げることができる。
陣地作成・武器作成のエキスパートであり、個人で工兵部隊として機能する。
罪状:記録なし
職業:歩兵
勇者。ただし発狂済み。懲罰勇者としてのシステムが生まれるより前の最古参であり、数百年前に女神によって召喚された異世界人。明言はされていないがおそらくは現代日本人。
度重なる「死」と「修理」によってもはや自我というものは失われており、命令にのみ忠実に動く
ロボットのような状態になり果てている。
また、その容姿は
ゾンビ同然であり、猫背で涎を垂らし、後頭部は失われ、飛び出る中身を鉄兜で覆ってカバーしている。
だがその近接戦闘能力は最強の歩兵と称されるほどで、パワー、機動力、技量に至るまで最高峰のバーサーカー。
唸り声しか上げないので意思疎通不可能……と思われているが、どうやらこの世界の言語体系でないため理解されないだけの様子。
罪状:殺人、死体遺棄・損壊
職業:暗殺者、狙撃手
懲罰勇者。暗殺教団モーサ=グエンに育てられた暗殺者。
暗殺対象に感情移入してしまい誰も殺すことができなかった優しい人物……だと自認しているが、
感情移入した暗殺対象の代わりにその辺の見知らぬ市民を拉致・替え玉として殺害することを繰り返す生粋のサイコパス。
明るく陽気でチャラいが、倫理観がサイコ過ぎて潤滑油とかムードメーカーには絶対にならないタイプ。
狙撃手としての腕は一流であり、暗殺者として近接戦闘にも長ける。
罪状:麻薬売買、反乱
職業:竜騎兵
懲罰勇者。ドラゴンに育てられた孤児であり、後に遊牧民の長にして貴族であるパーチラクト家に拾われる。
彼の中ではドラゴンが仲間、人間は異種族であり、基本的に人間を見下している。
中央政府がドラゴンを特攻兵器に仕立て上げる作戦を仕立て上げた際には多くのドラゴンを率いて反乱を起こし、一時は王都すら陥落しかけた。結果として勇者刑に処された。
罪状の「麻薬売買」の方は、ドラゴンの健康を促進する薬を栽培・売買しており、それが人間の尺度では麻薬だったため。
基本的に同僚の懲罰勇者も人間なので嫌っているが、王宮のドラゴンを盗みかけたというドッタは奴隷解放者のように捉えていて唯一下手に出る相手。
生まれつき『共律』の聖痕を有しており、ドラゴンと会話ができる。動物や異形、魔王の言葉もわかるにはわかる。タツヤの言葉もわかる。
相棒、というか恋人として青いドラゴンのニーリィと行動を共にする。
最強の
竜騎兵であり、懲罰勇者でありながら勇者部隊とは別の任務に「秘密兵器」として駆り出されていることが多い。
罪状:なし(志願兵)
職業:砲兵
勇者。死刑より重い勇者刑への、唯一の志願兵。
「人類の幸福のために戦いたい」と嘯くもその実「人類」をあまり理解しておらず、ツァーヴが霞んで見えるほどに倫理観がない。
結果として懲罰房に入れられることも非常に多いという危険人物。
高い身体能力と技量を持ち、重鎧と大型の砲を装備したうえで機敏に動く。
さらに、受けたダメージをその場で再生するという人間らしからぬ性質すら持つ。
砲兵という兵科自体が希少であることもあり、ジェイス同様勇者部隊とは別の任務に駆り出されることも多い。
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その正体は |
魔王。寄生型。
「魔王現象の裏切り者」であり、その性質は同族殺しに快感を覚える異常魔王。
……とはいえ、「人間の基準だとありがちな殺人嗜好者」でしかないらしい。
宿主となっているのは《這い鮫の》ライノー・モルチェトという冒険者の死体。
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第十三聖騎士団長。本来のテオリッタの契約者。長い黒髪の女性。
輸送中のテオリッタをドッタに盗まれた挙句ザイロに勝手に契約されてしまったことで、勇者たちを敵視していた。
正義感が強く生真面目で杓子定規と、聖騎士らしい聖騎士であるが、ややポンコツ。
戦いを共にするにつれ懲罰勇者への認識を改め、またザイロには異性として惹かれていく。
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ネタバレ注意 |
罪状:殺人、内乱予備
職業:元・聖騎士、騎兵
2巻終盤で懲罰勇者へと転落。
罪状は、伯父である大司祭マーレン・キヴィアの殺害。
魔王陣営に与していたマーレンを暗殺したら、今度は自分が「魔王陣営に加担した」と濡れ衣を着せられた形。
諸事情により勇者刑の最後の定員。本来は「勇者刑」に処されるには戦闘能力などが不足していたが、本人の志願もあって勇者刑に処された。
「新入り」としての能力は他メンバーと比べ一段落ちるが、「真面目に言うことを聞き作戦行動をとれる」時点で最上と言っていい。
勇者刑に処されてもなお「元・第十三聖騎士団員」達からの信頼が厚く、懲罰勇者に欠如する「数」を動員する能力に優れる。
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罪状:追記・修正
アニヲタを勇者刑に処す。
- なにこれ面白そう -- 名無しさん (2024-01-11 21:58:41)
- ドッタが挿絵付くまで作者のイメージはただのモブ顔だったというのは結構面白かった -- 名無しさん (2024-01-12 05:34:04)
- 説明読む限り登場人物にまともな奴一人もいなくて草 -- 名無しさん (2024-01-13 00:35:32)
- 状況もまともじゃないから釣り合いはとれてる -- 名無しさん (2024-01-13 00:55:07)
- この記事読むまでそもそも勇者刑部隊自体が勇者テンプレートに則っていることに気づいてなかった -- 名無しさん (2024-01-13 06:39:47)
- タツヤに関しては、あいつ一人だけ自分のステータスオープンしてスキル操作してる描写があるんだよな -- 名無しさん (2024-01-15 09:52:11)
- 今年の伝説の勇者かな? -- 名無しさん (2024-01-15 20:28:53)
- ↑色んな意味でそんなかわいいものではないも… -- 名無しさん (2024-08-27 20:55:13)
最終更新:2024年08月27日 20:55