登録日:2024/01/21 Sun 11:06:28
更新日:2024/10/22 Tue 23:03:24
所要時間:約 6 分で読めます
メタタイトルは「思い出プライスレス」。
概要
オブジェクトクラスはSafe…からのNeutralized。
現在は異常性を失ったものとして扱われている。
SCP-1125-JPが何かと言うと、10代前半の日本人女性。
いわゆる人型SCPだが、こいつの異常性は彼女自身に由来するものではない (後述)。
特別収容プロトコルはシンプルで、サイト-8181内の標準的な人型実体収容房に収容しておくこと。
ただし、テレビ及びインターネットの利用は制限されている。
…だったが、ある事案を経て、現在では完全に無力化された。
異常性
SCP-1125-JPは、基本的には普通の人間と変わらず、後述のインタビュー記録を見る限り、感性も一般人のそれ。
そんな彼女の異常性は、何らかの媒体で ハートマークを視認した際に発現する。
彼女はハートマーク を見ると、その瞬間に異空間にワープする。
「SCP-1125-JP-A」とされているこの異空間には草原が広がっており、各所に滑り台などの遊具が存在する。要するに公園。
そして転移してからおよそ5分後、SCP-1125-JP-Bと呼ばれる実体…自称 「はぁとちゃん」 が出現する。
この 「はぁとちゃん」 は心臓をモチーフとした「子供向けキャラクター」のような外見をしており、
本人は「はぁとの国」から地球に訪れたと言ってるらしい。
「はぁとの国」の詳細は不明。まあマスコットってそういうもんよね。
この 「はぁとちゃん」 はSCP-1125-JPに友好的で、「一緒に遊ぼう」と誘ってくる。
遊びの内容は至って普通で、公園の遊具や「鬼ごっこ」「隠れんぼ」など他愛ない子供の遊び。
SCP-1125-JPが OKすると一時間ほど遊び、時間が来ると、SCP-1125-JPは元の世界に再出現する。
まとめると、ハートマークを見ることで、一時間だけ不思議なマスコットと遊べる能力を持った人型SCPということ。
インタビュー記録
財団は彼女の身柄を抑えた後、例によってインタビューをおこなっている。
対象: SCP-1125-JP
インタビュアー: ██博士
<録音開始>
██博士: それではまず、自身の異常性に気づいた経緯からお聞かせ願います。
SCP-1125-JP: はい。私がこの力に気づいたのは、3歳の頃でした。その頃、親はいつも外出していて私は家に一人きりだったので、パソコンで動画を見ていたです。
そうしたらある日、変なサイトに迷い込んだと思ったら、いきなり異世界に連れていかれて。そこには「はぁとちゃん」っていう子が私の前に現れて「遊ぼうよ!」って言ってきたんです。
それから、はぁとちゃんと隠れんぼをしたり、鬼ごっこをしたり、滑り台をしたり……とにかく、たくさん遊びました。今思えば、とても楽しい経験でした。
発現のきっかけは不明瞭だが、3歳の頃に変なサイトにアクセスしたのが始まりだったらしい。
両親が留守の時に、謎世界に飛ばされ、不思議なキャラと一緒に楽しく遊んだ。
██博士: なるほど。現在でもそのような事をするのでしょうか?
SCP-1125-JP: 今では、そういうことはしなくなりました。しないというか、できなくなっちゃったんです。親に携帯を没収されてしまって。それからその事は気にせず過ごしていたんです。でもある日偶然街にいるとき広告でハートマークを見てしまって、あの世界に移動したんです。そして帰ってきたら、そちらの方々に捕まって、ここまで運ばれてきました。
██博士: 手荒な方法を取ってしまい申し訳ありません。
SCP-1125-JP: ああ、いえいえ。良いんですよ。むしろ、日常から逃げ出せた、くらいに思っていますから。
██博士: そうですか。
SCP-1125-JP: あの、私これからどうなるんでしょうか?人体実験とかそう言った類のことをされたりとか……。
██博士: いえ。倫理委員会からの申し立てもあり、基本的にはむやみに苦痛を与えることはしません。
SCP-1125-JP: そうですか。[ため息]ようやく、安心できるところに来れました。
██博士: 安心できるところ、ですか?
SCP-1125-JP: ええ。私、辛い子供生活を過ごしていたので。
不思議な体験のことも忘れた頃に、ある日、偶然ハートマークを目撃して異常性が再発現。そこを財団に捕捉されたようだ。
突然わけのわからん連中に捕まって、変な実験でもされるのかと心配したり、感性は常識的と言える。
██博士: そうですか。一応お話いただけますでしょうか?
SCP-1125-JP: 3歳になった頃から、家がだんだん貧乏になってきたんです。だんだんご飯が貧相になってきて、毎年行っていた伊豆旅行ができなくなったり、新しいゲームを買ってくれなくなったり。
子供の頃だからよくは覚えていないですが、多分お父さんがクビになったんだと思います。
それから、次第に両親も険悪になってきて、私に暴力を振るうこともありました。今思えば、あの時、この能力があったからこそ私は生きていけたんだと思います。あの1時間が、私にとってかけがえのないものでした。
██博士: お話いただきありがとうございます。質問は以上ですね。それでは、インタビューを終了します。
<録音終了>
当時の彼女の家は暮らしに困るようになっていた。
そんな彼女にとって「はぁとちゃん」と過ごす一時間は大切な思い出だった。
実験
これまた当然ながら財団は異常性の詳細を知るべく実験を開始。
とりあえず SCP-1125-JPにビデオカメラを持たせて、「はぁとちゃん」や「公園」の様子を撮影させようとした。
GPS?役に立つわけねえだろ!
だが、その実験でいきなり事件は発生した。
事件記録: 内部の映像を記録する実験において、SCP-1125-JPに関する事件が発生しました。以下は、ビデオカメラに内蔵されたチップからの映像記録です。
<録音開始>
SCP-1125-JP: えーっと、こうでいいのかな………それじゃあ、記録開始、と。
SCP-1125-JP: ……周りの風景は、こんな感じですね。
[カメラが周囲の風景を映す]
SCP-1125-JP: 多分、いつも通りなら5分くらいではぁとちゃんが来るので、それまで待機しますね。あ、カメラはテーブルの上あたりに置いておきます。
[8分経過]
(SCP-1125-JP-Bが出現する)
SCP-1125-JP-B: お待たせ〜!
SCP-1125-JP: あっ、はぁとちゃーん!
SCP-1125-JP-B: それじゃあさっそく遊びを始めようか!今日はいっしょに滑り台をしようね!
SCP-1125-JP: はい!
<17:56 SCP-1125-JPとSCP-1125-JP-Bは出現した滑り台を使って遊んでいる。>
[重要度が低いため省略]
…省略されちゃったが、「はぁとちゃん」と「公園」で遊んでいると思われる。
彼女は10代前半らしいが、子供の頃の友達と再会して滑り台で遊ぶのも楽しいことだろう。
…が、彼女が転移してから30分後に事件発生。
<30:00 突如、SCP-1125-JP-Bが消失する。>
SCP-1125-JP: えっ?
[カメラが暗転する。おそらく光源が消失したことによるものと考えられる]
SCP-1125-JP: く、暗い……は、はぁとちゃん、どこ?
SCP-1125-JP: ………こ、こわい………
[SCP-1125-JPはパニック障害を起こし、その場にうずくまる]
[重要度が低いため省略]
<60:00 転移現象が発生し、SCP-1125-JPがSCP-1125-JP-Aから脱出する。>
<録音終了>
…また省略されちゃったが、真っ暗な空間に30分間放置されていたと思われる。
肉体は無事だったようだが、再出現したSCP-1125-JPは
PTSDの兆候が見られた。
そりゃ、10代の少女がどこだかわからない真っ暗闇の異世界にいきなり一人ぼっちで放り出されたのだ。
結果的に帰還できたが、30分間ずっとどうなるかもわからない恐怖と不安に蝕まれていたのは想像に難くない。
トラウマにもなるわそんなもん。
財団は彼女のケアのため、カウンセラーを派遣。
精神治療を行っていたのだが……
事件
ある日、病室のSCP-1125-JPは不審な行動を開始。
即座にエージェントが駆け付けたが、すでに病室はもぬけの空だった。
監視映像によってSCP-1125-JPは自身の爪を剥がし、手の甲に血でハートマークを描いたことが発覚。
彼女は再び「はぁとちゃん」に会おうとしたのだ。
自分の身に起きたことを尋ねたかったのか、あるいは もう一度「はぁとちゃん」と一緒に遊びたかったのか。
しかし、今回会いに行った彼女は無事には戻ってこれなかった。
60分後、彼女は異世界から帰還したものの、再出現した彼女はすでに事切れていた。
解剖調査の結果、SCP-1125-JPの心臓が消失していたことが判明。
さらに、無くなった心臓の代わりに、彼女の体内には短いメモが置かれていた。
一体、彼女の身に何が起こったのか? 「はぁとちゃん」は彼女に何をしたのか?
全ての答えはこのメモに記されていた……
はぁとちゃんといっしょ 1時間 750000円
はぁとのくにのはぁとちゃんといっしょに、たのしいじかんをすごそう!
※料金は自動的に回収されます。
※料金が不足している場合、「はぁとちゃんのごはん」を回収する場合がございます。あらかじめご了承ください。
…………。
改めて彼女のインタビューを見返してみよう。
- 3歳のある日 変なサイトにアクセスした
- それ以来、不思議なマスコット「はぁとちゃん」と時々遊べるようになった
- 一方でなぜか生活に余裕がなくなり、家族関係も険悪になった
- そんな彼女の支えが「はぁとちゃん」と過ごす時間だった
…………。
SCP-1125-JP 思い出プライスレス
思い出はお金で買えないけれど、思い出はお金で出来ている。
わかってしまえばシンプルな代物だが、よく考えると想像を掻き立てる部分も多い。
さすがに相手がこんな謎の代物とは思わないにせよ、娘がネット経由で利用していたサービスで金を取られていることに気付いていたのかは気になるところ。
携帯を取り上げたのは、単に生活の苦しさなのか、娘が変なサービスを使っていると感じたからなのか。
もっとも、ハートマークを見ることで発現するから携帯とりあげたくらいじゃ止められないのだが。
さすがに当時3歳の子供に規約をちゃんと読めというのは酷だが、両親がいわゆる「子供向けのセキュリティ」を利用したりしなかったのかという疑問。
さらに言うと、当時はともかく成長した後も気付かなかったかという点は引っかかる。
とはいえ、そもそも異常存在にそんな当たり前のセーフティが効くのか?という話でもあるし、
この規約のメモが発見されたのは彼女の死後。
極論すれば「サービス利用前に利用規約・料金が明示されていたのか」すら曖昧なのである。
少なくとも、インタビューや映像記録を見る限り「遊び」の際に「はぁとちゃん」が利用者に規約を明示している様子は一切ない。
そもそも論として、異常性の大本は利用者の少女ではなく、「はぁとちゃん」のサイトないしその運営なのは明らか。
彼女自身はすでに犠牲となって何の異常性もないが、このサイトの運営の正体や活動実態は一切不明。
もしかしたら、今この瞬間にも新しい誰かが「はぁとちゃん」と遊んでいるのかもしれない……
SCP-1125-JP - 思い出プライスレス
by chuukunn
- はあとちゃんが「ハート型」ではなく「心臓型」という時点で嫌な予感はしてたが…ご両親が臓器売買とかに関わっていなくてよかった…だがその後があまりにも… -- 名無しさん (2024-01-21 11:27:10)
- 救いはないんですか!? -- 名無しさん (2024-01-21 12:35:01)
- 例の博士は関わってない…よね?ヤツっぽい悪趣味さがあるがお約束の文章がないから違うんだろうけど -- 名無しさん (2024-01-21 14:19:09)
- この少女がscp扱いされてるけど他にも事例が見つかればscp-1とかになりそうだな -- 名無しさん (2024-01-21 20:56:59)
- 原因のサイトの方を調査しないのは違和感 -- 名無しさん (2024-01-22 13:43:44)
- 規約の説明がされてる様子が一切なかったり料金が自動的に回収されたり要所要所に悪意を感じる………。 -- 名無しさん (2024-01-23 00:33:44)
- メタタイトルでなんとなくオチはよめたけどscpらしい理不尽さだよな -- 名無しさん (2024-01-27 10:21:10)
最終更新:2024年10月22日 23:03