ワニワニパニック

登録日:2024/11/10 Sun 19:26:00
更新日:2025/03/21 Fri 23:24:34
所要時間:約 13 分で読めます






でてきたワニをたたくだけ!
めざせ!本日のスゴウデ

食べちゃうぞ〜!


ワニワニニッとは、ナムコ(現・バンダイナムコアミューズメント)のアーケードゲーム(エレメカゲームマシン)である。


【概要】

昭和末期・平成初期に誕生したナムコを代表するエレメカのひとつ。
「出てきたワニを素早く叩いていく」というシンプルながらつい熱中してしまうゲーム性から、老若男女や世代を問わず幅広い層からの支持を集めており、現在も多くのゲームセンターで稼働中の長寿シリーズである。

2020年まで、派生作品を含め多くのシリーズがリリースされてきた他、その人気や知名度からTVゲーム・携帯ゲームや子供向けのおもちゃ、パチンコ機種など幅広い商品展開もなされている。

※以下に記述する各シリーズの仕様はデフォルトの設定に準拠した内容です。アーケードゲームの性質上、設置店舗によっては設定が変更されている場合があります。


【開発】

初代『ワニワニパニック』は1989年にナムコ開発二部に属していた石川祝男*1が企画・開発を手掛けた。企画には三枝芳宏と藪下達久らが参加した。

もぐらたたきゲームから連想し、「動物が地面からではなく正面から襲ってくるというゲームはどうか」というアイデアを思いついたのが開発のきっかけとなった。襲ってくる敵キャラの候補にはゴキブリやサメなどもいたが、ワニに決まる。なお、没になったサメは後に『サメサメパニック』で日の目を見た。ゴキブリはお察しください。

企画立案当初は、「もぐら退治の二番煎じではないか」となかなか上司からの承認が得られず、最終的には石川が作ったスリッパとダンボールからなる試作品でプレゼンを行い、やっとのことで製品化に漕ぎ着けたという逸話が残っている。「もぐら叩きとは一風変わった、敵がこちらに迫って来るスリルを味わえる」という斬新なアピールポイントが好評を得たとのこと。

開発当時は、ワニのかみつき動作を表現する際の口を開く構造に対し危険性や耐久性が懸念されていたが、叩かれた時の衝撃を吸収するために「舌」のパーツを分厚く作るなどで解決された。

名称については「(もぐら退治に対抗する意味で)『ワニ退治』にしろ」と指示されたが、石川はあくまで恐怖を味わえるコンセプトに拘っていたことから「パニック」という言葉を入れるかどうかで社長と数度直談判。根負けさせた末に「ワニワニパニック」と命名した。

当時、業務用ゲーム機は一般的に500台程度売れればヒットと見なされていたが、『ワニワニパニック』はそのノルマを遥かに上回る10000台の大ヒットを記録。その人気は本家もぐら叩きこと『モグラ退治』のメーカーであるトーゴから「売れ過ぎだ」と苦情が寄せられたほど。


【遊び方】

基本的なルールは、冒頭文の通り穴から飛び出して来たワニをひたすら叩いていく。それだけ。
1匹叩くごとに「なぐったワニ」として1点が加算される。一度叩いたワニはその時点で穴へ戻って行く。
ワニが一定ラインまで出て来た状態で叩かないとプレイヤーへのダメージとして「かまれた回数」がカウントされ減点に(この時『ガブッ!』というボイスが流れる)。時間経過とスコアに応じてワニの出現頻度・同時出現数は徐々に増加。他のワニに気を取られるがあまり隙を突かれないスピード感が求められる。

もう、怒ったぞ〜!

時間内に一定スコア以上を獲得した場合、10秒の延長戦へと移り、より高速かつ多数のワニたちが襲いかかる。ハイスコアを目指すならここが踏ん張りどころ。

ゲーム終了時点で「なぐったワニ」から「かまれた回数」を差し引いた「とくてん」に応じてその腕前を評価される。
付属の「ハンマー」で叩くことになっているが、センサーはハンマーではなくワニ側にあるため、手で叩いても判定される。
エレメカ全般に言えることだが、許容範囲外の力で叩くのは故障の原因にもなりかねないため、なるべくハンマーでやさしく叩くようにしよう。本気でボコり過ぎてセンサーがイカれた結果、復旧の目処が立たず不死身と化したゾンビワニも各地に出没している。

かつてちびっ子だった頃、ハンマーを持ってないほうの手も使って所謂二刀流をやったり、お友達と分担して叩きまくった遊びをした人もいるかもしれないが、ハンマー片手かつ一人で挑戦するのが基本的な遊び方である。


【歴代シリーズ】

●ワニワニパニック
記念すべき第一作。
「アマゾンのジャングルに迷い込んだプレイヤーが、ハンマーを片手に野生の凶暴なワニたちに挑む」という設定がある。
初期型と後期型が存在し、初期型はスコア表示が2桁でパーフェクトスコアが98点、後期型はスコア表示が3桁でパーフェクトスコアは117点と言われているが、巷ではそれらを遥かに上回るスコアを叩き出したツワモノの存在が噂されている。
通常制限時間は50秒、延長戦突入ノルマのスコアは40点。

評価は以下の5段階。
まいったスゴイ!!
あぶなかった~
こんなもんでしょ。
まだまだあまい!
やーいざまあみろ
その日のハイスコアは本日スゴウデと称して画面に表示される。

最初期型はハンマーの色が赤だったが、ワニのボディに色移りし痛々しく見えてしまうのを防ぐため、程なくして黄色へ置き換わった。
発売数が多かったため、現在でも地方のショッピングセンターの一角など、都市部から外れた場所のゲームコーナーで稼働中の筐体を見かけることがある。先述のようにゾンビワニに注意。

ワニの声は渡辺久美子が担当。

●ワニワニパニック2
1996年3月稼働開始。新たに「FUNKY GATERS」というサブタイトルが付いた。
筐体に描かれているワニたちが副題通りファンキーな格好をしていたり、BGMがヒップホップ調、ナレーションがDJ口調であるなど、当時の流行を取り入れたのだろう、雰囲気は前作より大幅に一新されている。

ルールは初代と同じだが、ワニたちの挙動がBGMに合わせたものになっており、リズムゲー的な要素も含まれている。いずれにせよ出て来たら即叩くのみなので聴き入る必要はそんなにないのだが。
ノルマを達成した時の延長戦は本作でも用意されており*2、さらにハイスコアを記録するとリプレイが獲得できる。リプレイを遊んだ場合は2ゲームのうちスコアの高い方がランキング及びハイスコアに登録される。

スコア画面はLCDドットマトリクスディスプレイを採用。前作は本日のスゴウデ(ハイスコア)のみの表示だったが、10位までの各スコア・マイナス点をデモ中に表示できるようになった。
ワニたちの声は渡辺のものから1匹ごとに異なるボイスへ差し替えられている。

●ワニワニパニック3
2007年稼働開始。
新たな刺客として、他のワニより一回り大きい「ボスワニ」が参戦。
こちらのワニは体力制で、一定の回数以上叩かなければならない。ボスワニのかみつきを喰らってしまうとその時点でボスを叩いた回数分減点されてしまう。
また、ボスワニ出現中にも普通のワニは通常通り出現するため、倒すのに気を取られてかまれないよう注意。普通のワニを連打しても意味ないので間違えないように。
延長戦突入のノルマは大きく引き下げ。その代わりさらに好成績を記録するともう一段階延長される。

筐体のデザインは、やたらイケイケだった2から一転し初代に近いコミカルな雰囲気に戻っている。また、2で廃止された「なぐったワニ」「かまれた回数」、ゲーム開始時にワニが言う「食べちゃうぞ~!」などの表現も復活している。BGMも穏やかな雰囲気に。

ディスプレイは本体奥側と手前側の2基搭載されており、手前はボスワニを叩いた回数(それ以外はワニのアニメーション)が表示される。

本作からハンマーが2個に増設され、正規ルールに基づいた2人協力プレイが可能になった。

●ワニワニパニックR
2020年6月16日稼働開始。
満を持して登場した、初代ワニワニパニックのリメイク版。タイトルの「R」には「リターン」「リボーン」「令和」などの意味が込められている。
ゲームシステムはもちろん、ワニの配置や筐体のデザインまで初代を忠実に再現。電光掲示板はボード部分も含めて全面が液晶ディスプレイによる表示に刷新され、デモ時やゲームの進行に応じてユニークな画面演出が加わるようになった。
3と同様、ハンマーは2個に増設。

◆番外

★は海外で展開している筐体。

●Wacky Gator
1990年稼働開始。
『ワニワニパニック』の海外版。ワニのデザインは本家と同一だが、筐体のデザインは大きく異なりアマゾン川を彷彿とさせる。ワニのイラストもややリアルに描かれている。
あとワニの声が妙にゴツいおっさんに変わっている。
I'll get you!

●ワニワニパニックGRANDPRIX
1991年10月稼働開始。
初代をベースに最大8人同士の通信対戦機能を搭載した筐体。

●Dino Bonk
1996年稼働開始。『ワニワニパニック』のワニが恐竜に差し替えられている。

●ワニワニパニックRT
2003年発売。
初代ワニワニパニックを高齢者・身体障害者福祉仕様にアレンジしたリハビリテインメントマシン。
付属のハンマーが握力の弱い人でも持ちやすい設計で、ヘッドも円筒形になっているためどのような持ち方でも叩きやすくなっている。
また、車椅子のままでも遊べるよう筐体下部に大きなスペースが設けられている。老人ホームやリハビリ施設への導入を前提としているため、スタートボタンを押せばいつでも気軽にプレイが可能。
「『お年寄りだから速度を落とす』などの配慮はゲームの面白さを変えてしまうから」との理由から、難易度やゲームスピードなどシステム面の変更は加えられていない。

バンダイナムコアミューズメントはナムコ時代から「遊び」と「福祉」の融合を経営方針の一つに据えており、アーケードゲームの技術はノウハウを福祉事業にも役立てている。
こうした福祉目的で開発されたナムコの業務用ゲームには、他に『太鼓の達人RT~日本の心~』*3『ドキドキへび退治RT』*4などがある。


【派生作品】

●おかし大作戦
1981年稼働開始。ワニワニパニック以前にナムコが開発したもぐら叩き系ゲーム。
ノルマ達成による延長戦システム、5段階評価とそれに応じたメッセージ表示など、ワニワニパニックシリーズの原型とも呼べる要素が多く見られる。

●カニカニパニック
1991年2月稼働開始。
敵キャラをワニからイタズラ好きな悪ガニ軍団に差し替えた姉妹作。
横歩きするカニにちなんで敵は水平移動式なのが大きな特徴。
ターゲットの数は4匹に減っており、上段の2匹は中央に隠れ場所のトンネルを持つ
ワニと異なり叩き損ねても減点はないものの、カニたちの動きはかなり速いためワニワニパニック以上のスピード感と反射神経が求められる。対処の遅れは気にせずひたすら点を稼ぐことに集中したい。
ワニワニパニックと異なり敵の出現ポイントに高低差や奥行きがあるため、小さい子供に配慮して踏み台を設置する店舗が多い。

●サメサメパニック
1994年6月稼働開始。
こちらの敵は5匹のサメ。ワニと同じく5匹が横並びで出現する。『ジョーズ』のように波間から背びれを出した状態で、斜め上へ飛びかかるようにして飛び出す、サメらしい演出が光る。

●たこいかぱにっく
1995年1月稼働開始。
派生作品では唯一水平式ではなく垂直型のもぐら叩き形式を採用。6箇所の穴から「たこ」「いか」のいずれか*5が上方向に顔を出すが、アナウンスによる指示に従って正しい方を叩くというルール。「たこ」と言ったらたこを、「いか」と言ったらいかを叩かなければならない。間違えると1ポイント減点。
他のシリーズよりコミカル要素が強い。また、ミス時や低スコアプレイヤーに対する当たりも強い。


【余談】

  • 初代、RT、Rの筐体に描かれている、マッチョな男性のキャラクターの名前は「シュワルツくん」。恐らくモデルは某カリフォルニア州知事と思われる。ハンマーを持っていることからこの人が主人公(プレイヤーキャラ)という位置付けなのかもしれない。

  • 小学館の知育雑誌『幼稚園』2020年4月号では、紙工作と電池駆動によって本家を忠実に再現したミニサイズの『ワニワニパニック』が付録として収録された。モーターで動くワニを叩くと筐体のカウンターも自動できちんとカウントされるなど、付録にしておくには勿体なさ過ぎるレベルのクオリティの高さが話題を呼んだ。
    ちなみにこの付録は当時公開を控えていた『映画ドラえもん のび太の新恐竜』とのコラボという名目で企画されたもので、ドラえもんたちのイラストが描かれワニ退治ならぬ恐竜退治が遊べる「新恐竜パニック」バージョンも同時収録されている。
    • ↑とは別に電子玩具版のワニワニパニックも発売されている。こちらもアーケードのバージョンが更新される度に玩具もそれに合わせた物がリリースされている。

  • 俗に『ワニワニパニック』と名称が混同されるケースが多い玩具に、大きく口を開けたワニの歯を押していきランダムで設定される特定の歯を押すと噛みつかれる『ちっちゃくたってイタイワニー』が存在する。どちらも「ワニに噛まれる」という共通点を持つため混同を招きやすいと思われる。


まいった、降参だー!

追記・修正は、ワニワニパニックで100点以上を記録してからお願いします(もちろん片手で)。



この項目が面白かったなら、かみつかれる前に……\イデッ!/

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最終更新:2025年03月21日 23:24

*1 他にはプライズ機『スウィートランド』…ベルトコンベアがくるくる回ってるのをバケットで掬ってゲットするあれ…などを開発。アニヲタwiki内で知られている作品だと『THE IDOLM@STER』(初代アケマス)のエグゼクティブプロデューサーを務めた方。後にナムコ社長

*2 「2ndステージ」と称されている。

*3 収録曲は日本の民謡や童謡など20曲。車椅子のプレイヤーに配慮し太鼓の位置が低く設定されている。

*4 穴から出て来るへびを足で踏みつけて倒す。下肢筋と脳を鍛える効果が期待される。

*5 同一のターゲットを半分に塗り分けており、ランダムで向きが変わる。