DimentioMsk HDLCに関する騒動(街へいこうよ どうぶつの森)

登録日:2024/11/25 Mon 13:44:53
更新日:2025/04/10 Thu 12:08:21
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まず、「DimentioMsk HDLC」とはWiiで発売された『街へいこうよ どうぶつの森』で入手できてしまったアイテムである。
…なぜ「できてしまった」という表現なのかと言うと、このアイテムは公式アイテムではなく改造アイテムだからである。
一介の改造アイテムではあるが「感染」によって多くのプレイヤーの目に触れることとなり、当時のプレイヤーの間に騒動と混乱を巻き起こした。この項目では当時起こった騒動の経過や影響について解説する。



【「DimentioMsk HDLC」の概要】

名前の通り『スーパーペーパーマリオ』に登場する“Dimentio”(日本語版ではディメーン)の顔を模したアクセサリー。そのため「ディメーンマスク」と呼ばれることも。
正規アイテムである「どうけしのかめん」に似ており、比べると目や口に相違点がある。
アイテム名に含まれる「HDLC」は「Hacked DownLoad Contents」の頭文字を取ったものだと言われている。



【流行・騒動化】

前提として、『どうぶつの森』シリーズに改造アイテムが存在すること自体はそれほど珍しいことではない。事実、この『街へいこうよ どうぶつの森』においても、当時の2chの海外通信スレを見るに、「DimentioMsk HDLC」以前にライトセーバーやピクミンの帽子といった改造アイテムがそこそこ流行していたことが確認できる。
では、なぜ「DimentioMsk HDLC」に限って騒動となったのか。まずは当時の2chでの書き込みを引用しつつ流行の経緯について追っていこう。

そもそもの発端は2009年4月に海外の改造データ紹介サイトへの書き込みなようだが、残念ながらログは確認できなかった。
いずれにせよ、2chの『街へいこうよ どうぶつの森』の関連スレにおける最古の言及は以下の物であると思われる。

「DimentioMsk HDLC」という仮面がエイブルに売っていたのですが、これは何でしょうか?
攻略本には載っておらず、検索しても海外のサイトが1件ヒットするのみです

何なのか気になってます。
既出でしたらすみませんがご存じの方おねがいします。

この書き込みに付随し「ROMが国内版であること」「海外との通信を行っていないこと」が明かされたものの、この時点ではこの人物しか書き込みがなかったため単に何かの間違いで改造アイテムに触ってしまっただけなのでは、とあまり話題にならなかった。
しかし翌日、別の人物によって

今朝私の村のエイブルシスターズにもそのマスクが
売り出されていました。道化師の仮面を改造したようなアイテムでしたね。
Dimentio MSK HDLC とありました。これは改造家具だと思います。
私自身北英版を持っていないので、海外の方と通信した事は一度もありませんし、
コード交換も慎重に行って来たのになぜか改造家具に出会ってしまいました。

という書き込みがされる。その後も

うちの村でも今日Dimentio MSK HDLCが並んでました。
ログを読んでみると、海外配信アイテムを受け取ったときに,
一括してデータが書き換えられたみたいですね…。
海外と通信してるフレンドがいるのでそれ経由で感染って感じでしょうか…。

DimentioMSK HDLCと言うアイテムがエイブルに並んでいたのを訪問先で見つけた時、
その時は訪問先の方がリセットしてくれたものの心配になり、カタログと手持ちのどうけしのかめんをチェックしました。
わたしの場合はカタログ、手持ち共にどうけしのかめんは無事で、書き換えは起こっていませんでした。

ここに書込むのは初めて。
うちも今日初めてエイブルにその仮面が並んだよ…
勿論、通信先で見たとか触ったとか一切無い。
いつ感染したのか皆目わからずショックだorz

など出現報告が相次ぐように。

ここで先ほど「前提」として述べた他の改造アイテムについて述べておくと、それらのアイテムは改造しているプレイヤーとの直接の通信プレイ、もしくはその改造アイテムにゲーム内で触ってしまったことによる流行であった。
しかし、書き込みから分かる様にこの「DimentioMsk HDLC」は改造プレイヤーどころかほとんど通信プレイをしていない一般プレイヤーの元にすら出現したのだ。
また、「エイブルシスターズに並んだ」という報告も見逃せない。これも先述の他の改造アイテムはそのようなことはなく、入手経路は基本的にプレイヤー間での受け渡しのみである。だが、「DimentioMsk HDLC」は改造アイテムであるにもかかわらず、ゲーム内での購入が可能だったのである。


要するに、「DimentioMsk HDLC」は
  • 改造と縁がない一般プレイヤーに対して流行した。
  • ゲーム内でさも正規アイテムかのように扱われている。
という2点を以て騒動と混乱を巻き起こしたのである。



【感染経路】

ではなぜこれほどまでに流行してしまったのか。それは以下の2つの仕様によるものとされている。

1.WiiConnect24
Wii本体に搭載されている、電源を落とした状態でもインターネットへ接続して自動でデータの送受信を行うことができる機能。
『街へいこうよ どうぶつの森』もこの機能に対応しており、「ともだちリスト」に登録されたプレイヤーと自動で通信し合うことで新たに引っ越して来た住民が「○○村から来た」と挨拶するなど、一緒に遊んでいる友達との繋がりがより感じられるようになっていた。

2.『街へいこうよ どうぶつの森』におけるアイテムのデータの仕様
『街へいこうよ どうぶつの森』では他プレイヤーと通信を行った際、お互いのアイテムのデータを参照して補完し合うという仕様が存在する。
どういうことかというと、例えばプレイヤー甲が持っている配信アイテムのデータをプレイヤー乙が持っていない場合、甲と乙が通信した場合に乙のセーブデータにもその配信アイテムのデータが書き込まれるということである。


…それぞれはただの便利な機能なのだが、この2つの機能に改造アイテムの「DimentioMsk HDLC」を掛け合わせると

①:とあるプレイヤーが「DimentioMsk HDLC」の改造データを入手してしまう。
②:そのプレイヤーの「ともだちリスト」にいるプレイヤーのセーブデータに「DimentioMsk HDLC」のデータが「WiiConnect24」を介して書き込まれる。
③:②で入手したプレイヤーの「ともだちリスト」にいるプレイヤーのセーブデータに「DimentioMsk HDLC」のデータが「WiiConnect24」を介して書き込まれる。
(以下繰り返し)

というネズミ講と同じ流れが生まれてしまう。更には「WiiConnect24」は24時間自動で通信を行うというおまけつき。
こうして猛烈な勢いでプレイヤーへの「感染」が広まっていった。
一説には当時のオンラインプレイヤーのほとんどが「DimentioMsk HDLC」に「感染」したとも言われるほど。


加えて、「DimentioMsk HDLC」が騒動になった要因に関わる仕様として、「エイブルシスターズにおける夏の商品に設定されていた」という点も挙げられる。
『街へいこうよ どうぶつの森』のエイブルシスターズは季節によって販売される商品が異なるのだが、夏の商品の場合は6月から販売される設定となっている。
…これはつまり、「DimentioMsk HDLC」は4月に「感染」のループが開始した後、ゲーム内で表面化するまでに最長2カ月の開きがあったことを意味する。このような本物のウイルスさながらの潜伏期間によりプレイヤーは「感染」していることに気付けず、長期間に渡って無防備な状態であったことも「感染」に一役買ったであろうことは想像に難くない。
前述のように、6月に入って雨後の筍の如く報告が相次いだのもこれが原因である。



【対処法】

上記の通り自動で通信を行って広まるため、Wii本体をネットワークから遮断しない限り完全な防御は不可能。
一応、お互いに自分と相手しか「ともだちリスト」に存在しないという完全に閉じたネットワーク内なら通信しても問題ないようだが。
但し、真偽は不明ながら当時の2chには「ともだちリスト」に誰も登録していない状態での感染報告が挙がっているため、最低でも「WiiConnect24」をOFFにするのは必須と見られている。
データを入手してしまった後で「DimentioMsk HDLC」の存在を削除したい場合、『街へいこうよ どうぶつの森』のセーブデータを削除する以外に方法がないので要注意である*1

また、データの削除までは行かなくともゲーム内のアイテムカタログへの掲載は避けたい、というパターンもあるだろう。
この場合、自分からアイテムを購入しないのは当然として、住民から渡されるなど不可抗力で受け取ってしまった*2らセーブせずにゲームを終了することで回避できる。



【その後の経過】

不幸中の幸いと言うべきか、「DimentioMsk HDLC」には該当アイテムが出現するようになる以外でゲームに及ぼす影響はなかった(と言われている)。
そのためか、当時任天堂に問い合わせたプレイヤーは入手してしまった場合の対応としてゲーム内で処分すればよいという回答を案内されたらしい。
そういうわけで、意外にも2chではこの話題は長続きせず、発端となったスレでも7月に入る頃にはほとんど言及されなくなっていた。

…だが、これはあくまで2chにおいてはそうだった、というだけである。



【影響】

当時のプレイヤーのブログや『街へいこうよ どうぶつの森』の攻略wikiのコメント欄を見ると6月以降も話題に上がっていることが確認できる。中には一度「感染」してしまうと自らも他者に「感染」を広める加害者になりかねないために「感染」の確認により他プレイヤーとの交流を断絶する旨や「感染」したプレイヤーとの通信を断る旨が記載されているブログもあり、『街へいこうよ どうぶつの森』でのプレイヤー間の交流に影響を及ぼしていたことが窺える。
これは、『どうぶつの森』シリーズは公称ジャンルが「コミュニケーション」となっているなど他者との交流を前提に作られている節があることを踏まえると、「DimentioMsk HDLC」の存在自体がゲームの楽しみを大きく損なわせていると言える。

感染経路も大問題である。
改造は場合によっては法律に違反し得るリスクの高い行為なので、仮にやるとしてもあくまで自己責任で、自分もしくはごく狭いコミュニティの中だけで楽しむというのが鉄則である。
しかし、先述の通り「DimentioMsk HDLC」の場合Wii本体がインターネットに接続しているだけでプレイヤーに被害が発生してしまう。
つまり、本来広まるべきではない改造データが普通に遊んでいるだけの不特定多数のプレイヤーのセーブデータ内にいつの間にか押し付けられているという前代未聞の事態が発生していたのである。

そして、そもそもこんな異質な名前のアイテムがゲーム内にさも当然のように登場すること自体が不気味であることも忘れてはならない*3
情報が錯綜しており詳しい仕様が不明だった当時なら尚更である。これも当時のプレイヤーのブログからになるが、「DimentioMsk HDLC」の異質さ・不気味さを理由に『街へいこうよ どうぶつの森』の全データの削除に踏み切ったプレイヤーが複数人存在している。


総合すると、いくらアイテム自体に実害はなかったとは言え、「DimentioMsk HDLC」がプレイヤーに悪影響を及ぼしていたことは事実であり、ある意味ではそれが「実害」と言えるだろう。



【余談】

  • 「ゲームカタログ@Wiki」では『街へいこうよ どうぶつの森』の問題点の1つとしてこの「DimentioMsk HDLC」が名指しで挙げられている。
  • とびだせ どうぶつの森』で大きな話題を呼んだアイカ村*4の後継として『あつまれ どうぶつの森』で制作されたアイカ島では島に関する裏設定が作者によって公開されているのだが、その一部にこの「DimentioMsk HDLC」にまつわる騒動が取り入れられている。




TsuikiShuusei HDLC

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最終更新:2025年04月10日 12:08

*1 当時の報告にはセーブデータを削除した直後に再び出現した、というなんともやるせない気持ちになるものも存在したようだが…。

*2 ちなみに、住民から渡されてしまうのも「DimentioMsk HDLC」がエイブルシスターズでの販売商品に設定されているのが原因。

*3 おまけに元々ディメーン自体がまあまあ不気味なデザインである。

*4 『どうぶつの森』の世界観を上手く利用して作られたホラーな雰囲気の村で、本作から導入された「夢見の館」によって噂が広まり、後に作者は『ニンドリ』のインタビューを受けるなどしている。