登録日:2012/03/09 Fri 00:21:21
更新日:2025/03/22 Sat 09:10:39
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流体(A・TELL)
空間を含め、あらゆるものを構成する力を持った因子。かつて四大元素とも呼ばれていた。
(
ゲーム 奏(騒)楽都市OSAKA 公式ガイドブック「
都市シリーズ 人名/用語辞典」より)
川上稔の作品において語られる概念。
同一世界観上の出来事を書きながら関連性の低い同氏の
ライトノベル群において、各シリーズの世界観の繋がりを示す数少ない要素の一つ。
同氏のライトノベルの他、携帯アプリ「
OBSTCLE OVERTURE」にも登場するが、多くは語られないため、ここでは
ライトノベル内で語られる事について主に記す。
□概要
○
都市シリーズ
世界のあらゆるモノを構成する元素。
都市シリーズの舞台となる「都市世界」は、我々の世界とよく似た歴史を歩みながら、しかし我々の世界とは全く異なるモノや事が幾つか存在するが、その最もたるがこの「流体」の存在である。
流体とは、一つが数千億の素詞の二重螺旋配列により構成される最小の物質であり、この「数千億の素詞」の配列仕様によりその流体が「何の」流体になるかを決定する。
「火」の配列を内包した流体があれば、その流体は火に、「水」の配列を内包した流体があれば、その流体は水になるのだ。
また流体が構成するものは火や水、人、動物等の形あるものだけではなく、光や闇、果ては時間や空間といった概念的なものも含めて「全てのもの」を構成しており、例外は無い。
流体が発見されたのは15世紀の半ば、燃素実験中のトラブルにより、ある一定の音律により空間の変異をもたらす因子の存在が仮定された。
この「因子」は発見当初、音律による変化を産んだことから後にこう名付けられることとなる。
A・TELL(ただ語るもの)=流体(エーテル)、と。
○
境界線上のホライゾン
あらゆる矛盾を許容する空間の構成要素。「境界線上のホライゾン」の世界における兵器、術式等の燃料となる万能エネルギー。
都市シリーズ同様「全てのもの」が流体から構成されており、それは人も例外ではない。
作中では、流体がそのものの性質に変化することで「もの」は「有る」と説明されているが、このあたりから恐らく都市シリーズにおける流体と同一のものであると考えられる(詳しくは
遺伝詞の項目を参照の事)。
無――つまり「なにもない」という状態すら「無」の性質を持つ流体により構成された空間であるが、流体すら「無い」状態が最近になって発見されており、各国はそれこそが末世ではないか、と考えている。
○
激突のヘクセンナハト
概念としては「境界線上のホライゾン」での認識に近いが、本作品の世界では全人類が「流体を外から取り込み体内
プール出来る」特性を持っている。
いわば何もしなくても内燃拝気が溜まっているようなものである。
○
神々のいない星で
流体が発見されたばかりの時代を描いているこの作品では、ウェブ版のみ収録の設定解説『小品「神々のいない星で”流体と地脈”」』にて詳細の一端が語られている。
曰く、1990年代時点では「絶対的な物理法則で動くもの」とされていたこの世界が、「
異なる物理法則を持った幾つかの世界との
合流」や「この世界にある
矛盾許容の法則発見」により、
「
低性能な物理法則をベースとしながら、そのまま管理領域をアップデート出来る世界」に変貌、そんな世界において、「術式等で書き換え可能な物理法則」という
OSから世界を形作る
ハードが流体とされている。
□流体を使用した技術
作品の根幹をなす概念の一つだけあって、流体を使用した技術は作品を問わず多く登場している。
ここではその一部について説明する。
◇術式
『神々のいない星で』・『境界線上のホライゾン』・『激突のヘクセンナハト』・『ファン学!! 東京大空洞スクールライフRTA』でメインとなる技術。
流体を加工することで様々な現象を起こす技術…というと他作品の「魔術」等に近いが、
術式は「世界社会全体を管理するシステム」として一般化しており、
例としては一線級の近接戦闘要員が「加速術式」を組んでいたり、インフラ管理が術式で行われている、
『ホライゾン』・『ファン学!! 東京大空洞スクールライフRTA』で「表示枠」・『ヘクセンナハト』で「術式陣」がスマホ替わりに使用されている等が挙げられる。
登場キャラの殆どが神のため、神々が使う権能を体系化した「権術」が存在。
設定解説によると流体干渉法には神々の持つ固有の”型”をそのまま投影する「直接操作」と、”型”に流体を投下し”型”の現象を再現する「間接操作」が存在しており、
権術もまた神々の権能を拡張する専用タイプと誰でも使える汎用型に分かれている。
各教派の「神」が管理する「信仰を基にした術式」が主流で、パッシブ型の「加護」も存在。
他にも計算等をベースにする「魔術(テクノマギ)」や、精霊の力を借りる「精霊術式」が存在する。
神の力を借りる「神術」が主流派術式だが、神より原始的な精霊の力を借りる「精霊術」や
全て自力で賄う分負荷等は大きいが瞬間的な威力・出力は高い「魔術」等も存在する。
攻撃などに使う「アクティブ術式」が女性専用になっており、女性の「術式攻撃兵」が「魔女」と呼ばれている。
「魔女」の様式は多種多様であり、近接型の「カラテカ」魔女なんてのも存在する。
また「『使役体』を媒介に術式と流体で武装を生成する技術」が一般化しており、
「この世界における危機」に対応するため、巨大な武装「マギノフレーム」が開発されている。
「詠唱型魔術」使いや「神術師」という用語が登場しているが、術式がメインの世界にはなっていない(存在はしているが)。
恐らく「風水五行」という「世界そのものに干渉する技術」が発見されたことが主な要因かもしれない。
時系列的には都市シリーズの未来を描いているのだが、ある事情で前の時代の各種勢力が現代に現れた影響からか、少なくとも本編の舞台地域では『ホライゾン』時代に近い術式理論が適用され、一方で横浜等でマギノフレームが動くカオスな時代となっている。
また同時代を描いたウェブ作品『無明の騎士』の設定同人誌では、
矛盾都市TOKYOの一部住民が使える「記動力」も流体技術の一環と解説されている。
○都市シリーズ
流体を使用した技術というよりは流体を使用するための技術。燃料化した流体を貯蔵しており、大きな物は重騎や戦闘機から、小さな物は
ラジオ等まで、実に多くの物の動力となっている。
単一、単二、単三等の区別があり、現代における電池や蓄電池と同じものと考えてよい。
精燃糟の超強化板。名前の通り板状。
自然の流体で作成されたものが一般的であり、出力は元より安定性も高い、問題はもう一つの異族式(グラソラリアン)言詞板の方。
並の機械であれば半永久的に稼動させる事のできる程のパワーを持つが、その精製方法が非人道的。
材料は架空の遺伝詞体の塊である異族という知的生命体(人間、ではないのは「都市シリーズ」には人間と同等の知能を持つ亜人類が存在するため)。
独逸は第二次世界大戦中、異族弾圧(純潔主義からくる人間以外の知的生命体の弾圧)により捕らえた異族を言詞板へと加工していた。
1945年、独逸の敗戦と同時に「ヤルタ会議」において使用禁止(喪失技巧)になったが、思想的活動などにより精製(とそれによる犠牲)は続いてしまっている。だが買い手が居ない為市場ではだぶついているそうな。
そしてゲーム版OSAKAでは、グラソラリアン言詞板使用判明によりバベルが閉鎖されることになる…。
機甲紋章、凌駕紋章等の紋章技術。機甲紋章については
カイザーブルク、凌駕紋章については
重騎の項を参照のこと。
○境界線上のホライゾン
ぶっちゃけ全部。術式や兵器を初め、人間が存在する事ですら流体を消費する。
それでも一部を挙げるならば
等。詳細についてはリンク先を参照のこと。
□その他用語/関連
○用語
境界線上のホライゾンでは流体に関する用語が細かく決められている。それらについて付帯。
都市シリーズにおいてはA・TELL=流体であったが、境界線上のホライゾンにおいては意味が違ってくる。
境界線上のホライゾンにおけるATELLは「流体の最小単位」。
現実世界におけるメートルやリットル等の単位と同様1ATELL単位で表現される。
境界線上のホライゾンにおけるATELL同様、流体の単位を表す。
人間が1時間存在するために必要なATELL量である3600ATELL=1拝気となり、術式等を使う場合、基本的には拝気単位で数えられる。
使う術式が魔術(テクノマギ)の場合のみ、何故か表記が排(廃)気。
流体は、神を信仰したり奉納することで体内に蓄積することが出来る。この「体内に蓄積された流体」の事を内燃拝気と呼ぶ。逆に、流体燃料や符等、「体内以外に蓄積された流体」の事を外燃拝気と呼ぶ。
個人の内燃拝気の総量は30〜50拝気。これは個人の資質や鍛練、年齢により変化する。
Tsirhc信者の場合内燃拝気は全て教譜に徴収され、必要に応じて外燃拝気として配布される。
神道では神に捧げる行動や供物である「代演」を行う事で外燃拝気や加護がプラスされている。
ものや命が流体内に存在したことで形成される「鋳型」ないし「固有パターン」を示す用語。
現象の”型”を流用すればその現象を再現しやすくなり、人が住んでいた後に残る”型”は「残念」として違和感を残し、大規模な”型”は”相”として半自立化し祟りや精霊、果ては神の苗床と化すという。
『境界線上のホライゾンNEXT BOX』では、この”型”発生時同時に誕生する「”型”の設計図」原理の仮称として「遺伝詞」という単語が生まれている。
ちなみに流体法則下における「紋章技術」や「呪文」は、”型”の操作方法の一環として開発されたものである。
流体が流れる経路の内、特に太いもの。一つの国におおよそ一本の割合で存在し、それぞれが各国のライフライン。
かつ「運命」「”型”」等概念的なものの受け皿でもあり、都市世界では「神の遺伝詞」まで内包している。
流体を含む鉱石、液体。流体燃料として使用出来る他、賢鉱石はメモリ替わりとして使われてもいる。
- DPV(デジタル・パンデミック・ウィルス)(無明の騎士)
初出自体はウェブ限定作品(現在は閲覧不可)と同人誌『無明の騎士 Ver.Pilot』なのだが、商業作品『ファン学!! 東京大空洞スクールライフRTA』にも少しだけ用語が登場するためここに記載。
流体の変異により誕生した新種のウィルスで、感染すると周囲の流体を過剰に書き換えて最終的に感染者を消滅させてしまうという脅威の伝染病。
一歩間違えば世界をも崩壊させかねない程の脅威だが、ある日本人がウィルスを比較的無害かつ人類に利用しやすい形で人工変異させた種『DPVC(デジタル・パンデミック・ウィルス・カスタム)』を開発し世界に散布。
DPVC普及によるDPV原種のシェア低下とワクチン開発、及び世界に広まったマスク型の「プロテクト・シール」によってDPVの感染・致死率は低下し、「危険な死病だが流行地域の特定は可能で、多少ならマスクで防護可能。万が一罹患して致命的事態となっても多少の延命は可能」くらいに落ち着いている。…だが、結局DPV自体の根絶は今の所出来ないという訳で…。
またDPVCの副作用として「感染物体は流体加工がしやすくなる」があり、結果DPVCを介した流体加工技術が大きく発達することになる。
○関連
『境界線上のホライゾン』には月が二つ存在する
一つは我々の考える月と同様の物であるが、もう一つは我々の月と同程度は賢鉱石の塊であり、本編ラストで崩壊。続編『NEXT BOX』では普通の月のみとなっている。
第二の月は本来の月同様、宇宙に存在するが、いつ、どうして出来たかは不明。只第二の月崩壊直後一瞬だが「普段とは違う宇宙」が月の跡から垣間見えていた。
『激突のヘクセンナハト』では数こそ一つだが世界の創造主「黒の魔女」が月に住んでおり、昼間でも動かず天頂に存在するが、なぜか潮の満ち引きは普通に存在する。
都市シリーズにおいては月は一つしかないが、なぜか紋章技術で飛ぶ乗り物は月光の光を浴びると専用処置を施さない限り不調をきたしており、
『パンツァーポリス1935』ラストで判明した月の実態は、我々の思う「月」ではなく精霊石(境界線上のホライゾンにおける賢鉱石に相当)の塊。本来の月が、いつ消滅したかは不明。
追記、修正頼みます。
最終更新:2025年03月22日 09:10