神々のいない星で

登録日:2019/09/18 (水曜日) 02:10:19
更新日:2019/10/02 Wed 09:20:04
所要時間:約 19 分で読めます



――我ら来たりて災いを為し
我ら来たりて平定とする


The 1st.EDGE
-At the star without gods-

――じゃあ、ちょっと昔の話をしよう



“すごく楽しいゲームをしている”

舞台は1990年代。
立川の学園都市に通う僕――住良木出見は所属するゲーム部の部室に入り浸ったり入り浸らなかったり、バイトして買った今流行りのVRゲームとか――そう、18歳になるとエロいのが見られるアレだ――をやったりやらなかっ――え?何ですか?巨乳?巨乳の先輩!?巨乳の先輩が僕の寮の隣の部屋に!!?本当ですか!!ヤッターッ!!
とか色々と嬉しい感じのハプニングとかありつつ今話題のVRゲームで先輩と他の先輩達と一緒にテラフォーミング系のゲームとかやったら先に始めてた先輩達は神キャラで僕だけ人間キャラとかイジメですかこれ?
更にはサポートとか担当するAIというか喋る画面が

《この世界は、“こっち”が本物です
あっち側、立川を中心とした世界は、私が作った仮想1990年代の世界です》

とか
はああああああっ!信じられる訳無いんですけどー!そこの画面はもっとちゃんと考えてから喋るべきだと思いまー――え?本当の事なんですか先輩。真実なんですね先輩!なぁんだ!画面もちゃんと最初からそう言ってくれれば良かったのになぁ!おい画面、もっと頑張れよ!

――境界線上のホライゾンで断片的に語られてきた神々の時代――“神代”。

地球を脱し、遥かなる宇宙へと版図を広げた人類はその時代において一体何を為していたのか?神々のいない惑星で、神々による“天地創造”と“政治”の戦いが今始まる。

つまりこれは――“神話再現”だ!



概容

『神々のいない星で』とは川上稔の長編ライトノベル
正式名称は『EGDEシリーズ 神々のいない星で』で主な略称は神無星。既刊1巻。

ファンの方なら大方予想が付いたと思うが、これもまた同氏の作品に共通する一連の世界観――「都市世界」内の出来事を描く作品群の一つである。
時系列的には『連射王』『終わりのクロニクル』はとっても過去の話『境界線上のホライゾン』『激突のヘクセンナハト』『都市シリーズ』はとっても未来の話にあたる。*1

イラストレーターを務めるのは当然のようにさとやす氏。ゴールデンコンビは未だ健在である。
今回はアイコンもとか描いたりNBとの同時進行だったりで相変わらず身体とか大丈夫だろうか……

現在はKADOKAWA系列に連なるweb小説投稿サイト「カクヨム」内で『境界線上のホライゾンNEXTBOX*2と同時進行で連載中。基本的に一週間のスパンで本作と『NEXTBOX』を交互に更新する形を取っている。
単行本に関してはお馴染みの電撃文庫からではなく同レーベルの新書版「電撃の新文芸」から発売中。売り場も(きっと)新書の方に移っているので注意しよう。
新書なので今までより大判で少し割高になるものの内容的にはまぁいつもの川上稔なので終わクロや境ホラ等にハマった人ならばきっとこちらもハマる筈。
後大判化した影響か今回はそこそこ薄いよ!

また今回も境ホラの外伝等と同様にカバー裏にもSS付きなギッシリ仕様。ブックカバーをかける際はその前に確認しておこう。


作風

作者本人は本作に関して、ライトノベルではなくチャットノベル*3を呼称している。
これはその名が示すように、SNSやチャット画面にも似た文章の表記をしており、地の文を抜きにしても「誰が発言したのか」が理解しやすく会話のテンポを損なわないのが特徴。*4
作者のTwitterにおいて、本作は過去作に比べ「戦闘少なめ政治多め」で進行する事が明言されているため会話主体で進められるチャットノベルの形式を取っているのだろう。
そもそも川上氏自体が(閉鎖都市巴里等に代表されるように)文章の表記形式に拘った作品作りをしており、これもまた同氏による先鋭的な表記の一つと言える。
web連載時にはその独特な表記から「書籍化した場合どうなるのか」がカワカミャー達の間で話題になっていたが、無事web連載の雰囲気そのままの書籍化と相成った。
印刷屋とか頭を抱えたんではなかろーか

作品自体の内容としては宇宙へと進出した人類が太陽系外の惑星系を居住可能惑星へと改造する、という所謂テラフォーミングをメインに据えたライトSF。
無論川上稔なのでそれのみではなく、「流体」や「型/相」と言った過去作品でも語られている川上稔的世界観を構成するガジェットや、
現状、地球の人類はその全てがコールドスリープ状態に有り、テラフォーミング自体は人間ではなく地球上の各神話の神々が行っている」という一捻りどころか明後日の方向へぶっ飛んだ設定を縦横に使いこなし、見事に一つの作品へと昇華させている。
また、テラフォームを行う神々も当然ながら一枚岩ではなく、数多の派閥に別れ自身の所属する派閥の利益が可能な限り最大になるよう日夜政治的闘争に明け暮れている。
単純な戦闘による解決のみならず、交渉、会議、暗闘、連盟、時に譲歩や脅しも駆使し利害調整や政治的利権の確保、維持に各勢力が奔走する樣は川上読者には馴染み易いであろう。

川上稔好きのみならず、世界観好き、設定好き、神話好き、SFファンタジー好き、多数の組織による政治的闘争モノ好き達にもきっと満足できるモノであるだろう。出来なくても知らん。

作者が本作の連載を始める際に語ったコンセプト

「神々と一緒にシムアース」
こそが、本作の内容を一言で表していると言える。

更に今回、遠未来の出来事を描くSF的作品でありながら、主な舞台の一つである「神界」が90年代日本をモチーフとした仮想世界であるため、同じ時代を生きた人であれば「あー、そういうの有ったなぁ」的なアレも抱けるのでは無いだろうか。
因みにこれに関連してか各章の章タイトルに関しても主に90年代近辺のレトロゲーのタイトルや用語から取られている。


基礎設定

□テラフォーム

一般的な意味としては地球外の惑星の環境を人為的に改造し、人類の居住が可能な環境とすること。地球環境化。けして寺のリフォームではない
本作においても基本的に同様の意味で使われるが、諸々の事情からその方法はかなり強引かつ歪んだものとなっている。

まず大前提として、本作の舞台となる惑星は元々大規模なテラフォーミングが必要とされる惑星ではないと思われていた。(というか、人類の居住が可能な惑星だったからこそ人類の新たな入植先としてこの惑星が選ばれた)
そのため人類は面倒なテラフォーミングはAIに一任し自身はコールドスリープ。地球環境として完成した惑星に入植することを考えていたのである。ところがこのプランは早々に破綻する。
AIが艦載された機材をもって惑星をテラフォームしようとした時、自らの環境を勝手に破壊し改造せんとする侵略者に対し、惑星自身が牙を剥いたのである。
星は自らの「相」(後述)を統合して作り出した「精霊」――流体により構成された星の防疫機構――を用いテラフォーマー達を攻撃、更には星の環境そのものを人類の生存に適さない戦闘モードに変質させた。
これら星の抵抗によって当初予定されていたテラフォーミングのプランは破棄。
その後色々あって「精霊」に対しては「地球上で信仰されてきた神の力」が有効である事に気付いたAIは、地球の神を再現しテラフォーミングに活用する事となる。

つまりこの惑星上で地球神話における「創世神話」を再現し、神々の力で「精霊」を調伏する事で謂わば「神話的なテラフォーム」を行うと同時に、
神々の奇跡を以てして星の環境を地球化する「物理的なテラフォーム」を行う、というのが二重の面によるテラフォームこそが本作における「テラフォーム」なのである。


□流体

矛盾許容型の空間構成因子。
あらゆるもの――物質的な「もの」のみならず物理法則等に代表される概念的な「もの」をも構成するこの世界の基底的な因子。
もっと詳しくはこちらも参照。


□型/相

流体が「どのようなもの」になるかを決定する要素。
「人間」という「型」に流体が充ちた場合その流体は「人間」という「もの」になり、「火」という「型」に流体が充ちた場合その流体は「火」という「もの」になる。これは物理法則等に関しても同様。
「相」はもっと巨視的な観点における「型」。海や大地と言った惑星の環境等がこれに当てはまる。
『境界線上のホライゾンNB』において「型/相」は「遺伝詞」と同一のものであることが語られたため詳しくはこちらも参照。


□神

その名の通りの神。地球における「神」の「相」を用いて作り出される。人間達が大体眠りこけている本作におけるメインプレイヤー。
地球の神なので当然地球上の神話――日本神話、北欧神話、ギリシャ神話、メソポタミア神話、聖書神話等――に登場する神々がその名と力、姿を持って降臨する。*5

神話に書かれてるように人類同様に喜怒哀楽し、恋したり戦ったり政治したりタマに理不尽したりするが、人間とは圧倒的に基本性能が違う。星によって変質させられた厳環境の中でも余裕で生き延び、溶岩に覆われた灼熱の大地ですらフツーに歩き回る。
更には自らの権能に従った「権術(後述)」と呼ばれる超常的な力も持ち、それらを以てして環境や地形をも変化させる様は正しく「神」を名乗るに相応しい。
基本的に古い神話の神である程格が高く強力な力を持つが、本人(本神?)の研鑽や所持する権能の相性、試行錯誤等によって覆す事は十分可能。

「相」から神を作り上げるには相当な労力と制御が必要であるとの事でできるだけ省エネ化されている。
本来は別の複数の神性を一柱の神として降臨させる「多重降臨」はその一例。ただし多重降臨した本人曰く「多重降臨はレベルが上がりにくい」らしい。

また神々はその顕現度合いから「仮想顕現」と「実在顕現」に分けられる。
仮想顕現は情報体としての顕現――つまり肉体を持たない顕現であり、大きな力を振るうことは出来ず、実世界に対しては干渉できないものの、本編の描写から人格は有るようだ。
実在顕現は仮想顕現より高度な顕現。神として肉体を持ち、「権術」も扱うことが可能。無論実世界にも干渉できる。
現在テラフォームに直接干渉しているのはこの実在顕現以上の状態に有る神に限られている。
ちなみにどんな神でも顕現可能な訳ではなく、かつて「概念の合流と衝突の時代」に「原初レベルで地脈に介入した者」がこの時代では情報的な意味で「既存の神」と同一化しており、
そうした「運命・地脈的にどんな人格の神か確定した存在」は仮想顕現も満足に出来ないらしい*6


□権術

神々の権能を大系化したもので、流体に干渉し、その型を加工する術。大雑把に言うと多くのバトル系作品における魔法や異能力の類い。
+境界線上のホライゾンの既読者向けの説明をすると
境ホラにおける「術式」と基本的には同等のもの。
ただし境ホラの登場人物が「人間」であったため、「神の力を借りる」術式(神術)の使用には代演奉納等の制限が設けられていたのに対しこちらは(自らの権能を振るうにおいて)そういった制限が無い。

神道神の権術に関しては「代演」の概念も示されており、登場人物の言に曰く「神道の神は横の繋がりが強く、他の神の権能を扱うことが出来る。このルールを“代演”と言う」とのこと

また、神が使うものは人間の使う術式より純度が高いらしい。


□啓示盤

神々が通信や権術発動時等に使用するタブレット端末的な画面。神道版は鳥居付き等、神勢力ごとに形状が異なる。
時代的には『境界線上のホライゾン』における「表示枠」の前身にあたる*7

□人類

我々のこと。猿の進化系。
本作においては住良木を除く全人類がコールドスリープ状態であるため主に住良木を指す事も多い。

同氏の他作品のように概念や術式等で強化されている訳ではなく、正真正銘生身の人間であるため神に比べて著しく死にやすい。

反面、神は基本的に人類の信仰によって成り立っているため特定の神を信仰することでその神の大幅なレベルアップが見込める。
また、神話は人が作り出したものであるため人が居ればそこに新たな神話の実在を証明する可能性が有る
特に舞台となる惑星においては未だ神話というものが存在しない事から……。

ちなみに終わクロ終了後なので理論上は「異族」もいるはずだが、現時点で触れられているのは人類・神・精霊の他、バランサーが神界の一般人役として量産している自動人形のみ。


□神界

神々が「テラフォーム以外の日常生活」を送るために作り出された仮想世界。作中における主な舞台の一つである。

1990年の立川市をベースとして作られており、存在する建築物や地理、発売している飲食物やゲームや雑誌、そして科学技術等も基本的には'90年代がベース。きっと東亜プランとかまだ有る。
ただし現実の'90年代とは違っているところも存在し、その最たるが立川全体が巨大な学園都市となっていること。この学園都市には住良木達主人公を始め{テラフォームに関わる多くの神]も在籍している。
また授業に「新開(新開拓産業)」というものが有り、これは海底や地球上の未開拓領域、そして外宇宙といった場所の開拓に関する知識を学ぶ場とされている。作中時期が未だ夏休みであるため明示は出来ないが、恐らくコレが「テラフォームの為の授業」になるのではないだろうか。

日常生活、とは言ったものの有り体にいって「テラフォームの実際の進行」以外のほぼ全ての事柄がこの仮想世界で行われているため、テラフォーム進行の為の会議や、各勢力の利害調整の為の交渉、あるいは相対戦による戦闘までもここで行われる事が多い。

因みに'90年代をベースとしている事にもちゃんと理由が有る。
神々の持つ能力の種類は“神界”の時代をベースとしており、「とある神」が力というか影響力を持ちすぎない為に敢えて90年代で時間が止められている。


□惑星/星系

本作の舞台となる惑星。及びその星系。
外宇宙のどこかに存在し、太陽型の恒星を中心に持つ。
居住可能惑星と居住不可能惑星とが混在しており、その中の幾つかの星で各々の神話が「自らの神話の存在した土地」の環境に合わせたテラフォームを行っている。

星系であるため地球よりも広範な土地を持つものの、星の数自体は有限。
そこで各々の神話勢力は「神話的なテラフォームをその星に施した場合、その“星”はその神話の“相”を持つこと」を利用して、少しでも多くの星を自らの版図と出来るように活動している。

つまり「各々の神話勢力が、やがて来る自らの信者の為に行っている、星々の領土の奪い合い」こそが本作における政治的命題である。


□神委

各神話勢力、及び神々の利害調整を行うための機関。元々は後発の、あるいは弱小の神話勢力を巨大なパワーを持つ神話勢力から守るために作られた機関で有るらしい。
現在では(上記したように)各神話勢力間の利害調整役を担っており、星系全体のテラフォームの進行状況の制御を行っている。

例えばギリシャ神話、北欧神話、聖書神話等の古く強い力を持つ神話勢力はそのパワー故テラフォームに関しても比較的順調に進行させている。
ところが神道神話等のマイナーな、或いは新興だったり勢力の弱い神話に関しては、パワーの弱さ故テラフォームの進行に関しても遅れ気味である事が多い。
そこで強力な神話から弱小の神話に対し「神々」をリースすることで片方のテラフォームの手を緩めると同時に、もう一方のテラフォームを促進させる。
こういった行いの指揮――つまり「君らそっちの神話のテラフォームを行いなさい」というお願いをしているのが神委である。

無論それだけではなく、例えばテラフォームが正常に進行しているかを監査するための監査役を送ったり、進みが遅い神話勢力に関してはそのケツを叩いたり、或いはテラフォームに人類の投入を行うか否かといった重要事項の最終的な決定を行ったりと色々と手広くやってる様子。


登場人物

キャラには皆イラストアイコンが付いており*8、一部キャラには状況に応じたバリエーションが存在している。


□主人公とか

○住良木・出見

神々の運営するこの世界における唯一の“人間”。
まごうことなき一般人類であり猿の進化系なので、神々が派手に戦闘を行う本作に於いては(少なくとも戦闘において)全く何の力も持たない単なる人間。
ただし「人間の死に易さはテラフォームを行うに辺り弊害がある」とのことで。特例として死亡時には神の権能による無限のバックアップ「ロールバック」が行われるという特徴がある。
つまり死亡した場合、ある程度記憶を保持したまま蘇生できるのだ。(無論、幾つかの制限が有るが)
とは言え死に易さそのものは微塵も変わってないので死ぬときはさっくり死ぬ残機無限のスペランカー

巨乳信仰でエロに忠実。思考がダダ漏れ。
そのせいかアイコンの顔もノーマルのみ。
パートナーの神である先輩(と先輩の巨乳)を崇拝しており、信仰によって力を増す先輩とは相性がいい。

基本は賑やかし……というか作品の登場人物紹介でも動くノイズとか言われてるがキメる所はしっかりキメる辺り川上主人公。

またロールバック時の手違いで巨乳女性への性転換を経験しており*9、『僕と先輩の惑星クラフト』上巻では銭湯での水着姿がイラスト化された

+実は…
その正体はテラフォーム用に一部神がバランサーの依頼で創造した「概念によって変質していない時代の人類の模造」であり、先輩やゲーム部と会う前の記憶はバランサーの作った架空のもの
諸事情により眠っている人類はテラフォームに出場させないことになり、かつ「概念による変質した人類」は望ましくなかったのか、型が確立出来た概念開放前の人類を再現させている。
またバランサーが人類創造の型を秘匿し、かつ住良木創造・維持に人類創造可能な神がほぼ全てかかり切りになり人類の無暗な増加による争いを防いでいるため、色々な意味でワンオフかつ激レアな存在となった。




○先輩

住良木と共にテラフォームを行う神。住良木のパートナー神。

黒髪ロングに巨乳とタレ目が特徴的な女性。
基本的におっとり系で被害者枠っぽく見えるが……ところがどっこい。その正体は住良木君が好きすぎてダダ甘というか寧ろストーカー
背景には住良木が自分を選んでくれた喜びと、彼が本編開始時までに11回も死に、蘇生代償に最初の出会いや自分を選んだ理由を忘れてしまったという悲しい事実があるので、こうなってもしょうがないと言えるのだが…。

神道神話の神であるものの神格はかなり低く、本人曰く神話においては「チョイ役」で、家族のおまけで祀られている扱い。
その弱さゆえにあえて人としての名も隠し、その身を守っている。
だが同じく神道勢力の八意は彼女を最強の神と評している。
一見相反して見えるその二つの意味は…………。

+彼女の秘密
その正体は、『境界線上のホライゾン』でのメイン神社『浅間神社』の祭神コノハナサクヤヒメの姉イワナガヒメ
「イワ」だけに岩への干渉にはたけており、星での岩屋づくりにそれは生きている。
本来は「長命」のみを司る神だが、「ニニギノミコトに拒否され彼の末裔たる人類を短命にした」との伝承から「嫌った相手を短命にし、不死の神を嫌えば即死が見える程の短命にしてしまう」という呪詛じみた権能をも望まずして得てしまい、
しかもその神話の示す「イワナガヒメを娶れば長命になる」(=夫神の信者を長命化し、最終的には神格化への可能性をも開いてしまう)という貴重な可能性(天津神から睨まれる等)から争いを避けるため、
あえて「醜いから子もまた醜くなる」宣伝され、自由の代償や権能による被害を避けるため独りを選び長き時を過ごしていた。
ちなみにニニギの拒否理由に関しては単に顔を嫌ったのではなく、「古代の未熟な食糧自給率で人がやたら長生きになったら社会が破綻する」という切実な事情だったのではとされている。

なお『境界線上のホライゾン』10下では浅間・智の母「」の正体がイワナガヒメであると明かされており、そのせいかウェブ版での正体判明後キャララフではホライゾンに浅間の家族扱いされていた。
現時点では先輩と詠が同一存在なのかは不明だが、先輩の語る妹サクヤの性格は境ホラのものと同じであり、詠の嫁いだ浅間父は眼鏡男性だった。




○バランサー

テラフォームのため神や神界を創ったAI。
他者と会話する際は四角い画面にシンプルな目と冷や汗っぽいマークという姿を現している。
「バランサー」の名の通り基本神々の行動やテラフォームに関しては中立を守っており、干渉する場合は余程の事があった時だけらしい。
AIなので感情はないっぽいが、人や神々の感情からくる様々な非効率的行動にはいろいろ想うところがあり、特に住良木は(自身が投入を決断したとはいえ)猿扱い。


□ゲーム部

○雷同・徹

神界において住良木が所属する「ゲーム部」の先輩であり、テラフォームにおいては神道勢力をサポートするため送り込まれた“北欧神話の神”。
その神性は北欧神話における戦いと稲作の神である雷神トール

特徴的な赤い長髪を背で纏めた長身の青年でみんなの兄貴役。戦神だけあってバトル的な側面を受け持ったり。
基本神話通りの装備だが、改良を加えイェールングレイプルをアームガード化し、変身ベルト型メギンギョルズにミョルニルをセットしているため住良木に仮面雷同等と呼ばれたり。

ゲームは好きだがそこまで強くない。

余談だが、『境界線上のホライゾン NEXTBOX』では同世界での北欧神話(17世紀には超弱体化)表示枠にハンマーが記されているとされている。


○紫布・咲

雷同同様にゲーム部の先輩であり神道勢力のサポートを行う北欧神。
神性はトールの妻にして豊穣の神であるシフ、そして同じくトールの妻になるイェールンサクサの二重降臨。

稲穂の如くボリュームの有る金髪に巨乳の女性。皆のカーチャン役。
神話同様に雷同のパートナーであり唐突にダダ甘案件入ったりとか。

戦闘時はかつて刈られた後新しく手に入れた純金の髪「グゥトルハォル」を自在に操り、投射・罠等に使い攻撃している。

ゲームは得意。


○桑尻・壺三

雷同達同様にゲーム部所属の北欧神。ただしこちらは同級生。
神としては北欧神話の知識神であるクヴァシル*10
黒髪ポニテで眼鏡の女性。そして貧乳。よって住良木的には信仰の対象外。知識系で口調キツめ。住良木にイジられたりとか。
一方で神の酒から誕生した存在なため体はアルコール成分で出来ており、そのせいで体重が上下しやすく運転免許を取ることが出来なかったり。
クヴァシルは日本語訳文で男性扱いされることが多いのだが、なぜか思兼や性別不明のクビコ共々女体化扱いされない。

知識系なので知識系ゲームは得意。反射神経使うのは苦手。


○四文字・真正

同じくゲーム部の先輩。ただし北欧神話ではなくこっちは聖書神話の神。つまり唯一神とかそういうアレである。
但し本人曰く、唯一神といっても仲の悪い「弟達」等結構数がいるらしいが。
205cmの長身に禿げ上がった頭、そして色々と顔面のパーツが濃い。
間延びした口調と少々アレなビジュアルでアレだが基本はいい人。……いい人?

唯一神だけあって多神教神話において神々が分散して持つ多くの権能をただ一人に集約しており、神として破格の力を振るうことのできるチート。本編において放たれる台詞

りっふじ~ん
は正しく彼という神の性質を表していると言って良いだろう。

若い頃は色々と凄かった。

なお境ホラ世界の唯一神信仰「Tsirhc」「ムラサイ」における神や、都市世界の『エアリアルシティ』における「倫敦の神」との関連は不明。
もし後者と関連性があった場合、ハゲの来世が気取り屋中年というカオスな事になりかねないが。



□神道勢力

「神頼み」発見の嚆矢となった宗教だが、諸事情により他勢力から睨まれており、そのせいかは不明だが現状純粋な戦闘系神は顕現していない。
かつ本来なら創造を担う原初の「造化三神」と神代七世のクニトコ系が「予約済み」なため仮想顕現も出来ないという不都合を抱えている。

○思兼・八意

神界における神道の代表者。図書委員長。神道神話における知識神、オモイカネの顕現。両肩にフェレットを乗せた黒髪の美女。胸はそこそこ大きい。

神道の代表者だけあって神道勢力の利益が最大になるように色々と裏工作と何とかしたり。
交渉の場に出ることも有るが、その強引かつ屁理屈を押し通す様はどこか誰か(後代のクニトコ系)を彷彿とさせる。


○クビコ・スケアクロウ

神道勢力の神の一柱。金髪眼鏡で巨乳の図書委員。神としては知識と警備の神にして案山子の原型であるクエビコ

クエビコである事を反映してか片足が悪く、常に白木の杖を携えている


○菅原・天満

神道勢力の神の一柱。神としては死後神格化された元人間、菅原・道真。
学問の神、雷神、戦神とマルチな権能を持つ他、生前が政治家だったため権能としてではなく技術としての交渉能力も高い。
菅原・道真本人は男性であるが本作においては女性。生前の経験から女性の方がイロイロな煩わしさが無いとのことで顕現の際に敢えて女性を選んだらしい。

権能フェチで珍しい権能(を持つ神)に会うとテンション上がるタイプ。


□メソポタミア勢力

○ビルガメス

メソポタミア神話における半神半人の王。「すべてをみたひと」とも言われる賢者。ギルガメス、という名の方が有名か。高身長でシャツイン系の生真面目青年。

戦闘においてはDIYしたホワイトスウォード、ガントレット、ジェットブーツ等々……と、どこかで聞いたような武装の数々を召喚して戦う。
しかも神話伝承を拡張した結果どれも自在に巨大化出来、結果巨大籠手を巧みに操りパンチバンカーをかまし、マップ兵器クラスの巨大剣で一刀両断するスタイルに。
時代が違ったら某RPGの武器オタクや電撃文庫でも登場している某サーヴァントの様になっていたのかも知れない。


○木藤・円

ビルガメスのパートナー。神としては――まぁパートナーがパートナーなので大体解ると思うが、神話におけるビルガメスの無二の親友にして同じく半神半人のエンキドゥ
神話においては男性とされるが本作では土生まれを示す色黒肌な巨乳女性。菅原・天満同様に顕現の際に女性を選んだ。本人曰く「ビルに合わせるため」。

ビルガメスからはKIDOUのKIから「カイ」というあだ名で呼ばれるがそれ若干無理が……。まぁ元ネタ的には多分ビルガメスの武装同様にアレであろう。
またアレに感化されたのか、地属性で本来は物理系のはずがファイアボール等を使う術式系神となっている。

一人称は俺。


○シャムハト(社無・鳩子)

メソポタミア神話における娼婦神。
ピンク髪でナイスバディーの女性。娼婦神だけあって服がエロい。しかも仕事で娼婦なため私服の方が露出が減る。

ギルガメシュ叙事詩によれば元は人間であり神殿付きの神聖娼婦。
エロスだけでなくその来歴から「戦争や王の謁見の前に現れる先触れ」としての性質もあわせ持つ。

エロい。


○江下・伊奈々

神委所属のメソポタミア神で、その正体は奔放な女神エシュタル(イナンナ)。ビルとカイの先行を制するため現れたが、ひょんなことからスナック菓子にはまり、カラムーチョをこよなく愛するカラムーチョの神と化した。
金髪で神話からくる加護を得るため夏でも厚着。

かわいい。


その他

○今回は都市世界における大きな時代の区分――即ちFOTHE-AHEAD-EDGE-GENESIS-OBSTACLE-CITYの六つ内、今まで語られる事の無かったEDGEの時代の出来事を描いており、本作により都市世界の全時代がようやく出揃った事になる。

○EDGEシリーズに関しては以前より作者から宇宙時代の物語という事が明示されていたため、ファンからの期待値も高かったが――相も変わらず斜め上にファンの予想を(良い意味で)裏切ってきた。
○書籍版とweb連載版の相違点としては、メガドライブ風の章題追加、プロローグ等の追記修正、さとやす氏による挿絵、及びカラーページの追加、前述したカバー裏SSの追加等が上げられる。
○一方でウェブ版にしかない要素としては、境ホラキャラも登場する設定解説編(流体の詳細説明やキャララフ)が存在するため注意が必要。

○また書籍版の特典として作中のイラストを題材とした「飛び出すAR」のQRコードが帯の折り返しに付属している。デカアァァァァァイ!
作者のTwitterによれば「いずれはコレを使って特典に電子フィギュアとか出来ればいいですね」とのこと。期待しておこう。

○単行本第一巻には「僕と先輩の惑星クラフト」との副題がつけられている。
川上氏の作品にしては珍しく数による巻数表記ではなく副題により巻数の区別がなされているがこれは「あんまり量が多すぎると新規読者が躊躇するのではないか」とのことでこうなったらしい。
どの口が……ッ!どの口が……ッ!

○一巻帯の煽りとして「面白くて読みやすい、新感覚チャットノベル」との見出しが付けられていたが実際「チャットノベル」ということを抜きにしても
  • 種族が違う為かJud.やTes.といった前々作からの合言葉の継承が無い。
  • 巻頭に用語設定集が無く、用語は全て作中で説明されている。
等々、境界線上のホライゾンに比べて読みやすくなっているので「川上稔作品に触れてみたいが、どれから読めば良いか解らない!」という方はこちらから触れてみるのはどうであろうか?


追記・修正よろしくお願いします。

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