登録日:2025/02/28 Fri 00:33:57
更新日:2025/04/11 Fri 16:33:58
所要時間:約 7 分で読めます
概要
大きな白い綿シーツをすっぽり被った人型……と推測されている実体。
表面を分析した結果、身長1.55m、体重約48kgで、大体子供くらいの体格と判明しているが、シーツを剝いで正体を確かめる試みは成功していない。
普段は大人しく従順。傷付ける事は誰にもできないのでおとなしく収容されているが、周期的に活発化する。
一旦活発化すると地球上の全人口の中から無作為に「標的」として定めた人間に向かって移動し、「標的」をシーツに引きずり込んで殺害するという行動を取る。
何を目的にそんな事をするのかは全く不明。ただ「標的」の死体はシーツの下から消えてなくなるため、SCP-6096自身にとって全く無意味なわけではないようだ。
活動中のSCP-6096の影響を受けた人物は、「SCP-6096の望みを叶えなくては」という衝動に駆られ、正気のまま得体の知れない化物が「標的」を殺すための支援をする。これは「標的」の家族や身内であっても例外ではない。
また奇妙な事に、SCP-6096の姿を見た人間は「標的」の居場所や身元が瞬時に分かるらしい。
標的を殺し終えると大人しくなるが、こちらが
- SCP-6096を攻撃しようとする。
- 他者にSCP-6096への攻撃を命じようとする。
- 他者を欺き、それと知らずにSCP-6096を攻撃させようとする。
- SCP-6096に対する罠を仕掛けようとする。
など、SCP-6096を「能動的」に殺傷する行動を取る事は一切出来ない。銃を突き付けるまでは出来ても、引き金を引く指が動かなくなるようだ。
間接的なものであっても「SCP-6096を害しよう」とした時点でアウト。さらに自身で手を下さなくとも、
- 他者にSCP-6096に対する罠の配備を命じようとする。
- 他者を欺き、それと知らずにSCP-6096に対する罠を仕掛けさせようとする。
- 自動でSCP-6096に危害を及ぼす装置を作成しようとする。
- SCP-6096の傍を離れるとSCP-6096が危害に晒されるような状況下で、離れようとする。
- SCP-6096に悪影響を及ぼすような自己終了を試みる。
- SCP-6096のシーツを除去しようとする。
この辺りも不可能。……どれだけSCP-6096に嫌悪や殺意を抱いても、実行に移す事が出来ない。
なお上記の影響は「標的」本人には通じないようで、SCP-6096に対し抵抗する事も一応可能。
……もっともその事実が何かの救いになるわけでは全く無く、むしろ、自分を殺しに来るシーツを被った化け物から誰も助けてくれないどころか、周囲の人間がその化け物を手助けすらしているという絶望の中で死んで行くだけなのだが。
経緯
財団がSCP-6096の存在を初めて知ったのは2018年12月9日の事だった。
ニューメキシコ州ダーナムの町にそいつは現れ、地元住民マリオン家の16歳の息子であるデズモンド・マリオンを「標的」に定めた。これ以前にSCP-6096がどこに居たのか、というかそもそも世界に存在していたのかは不明。
マリオン家の自宅周辺には複数の監視カメラが設置されており、何が起きたのか一部始終が記録されている。
地元のタクシー運転手、ドレイク・エレンに送られたSCP-6096を家に招き入れたサミュエルとアマンダの夫妻。二人は怯えながら息子デズモンドの両腕をキツく掴んだ。
両親の突然の凶行と化け物に驚き、暴れる息子を両親は泣きながらカウチの上に抑えつけた。そうこうしているうちにSCP-6096はデズモンドの身体をシーツの中に包み込み、その姿が完全に見えなくなってしまった。
デズモンドの叫び声と荒々しく殴打するような音が家中に響き渡る。この間夫妻は大きく口を開けていたが、悲鳴は上がらなかった。恐らく悲鳴を上げて近所の人が駆け付ければ、SCP-6096の邪魔になるからだろう。
それから36分後。デズモンドの姿がシーツの下から消え、大人しくなったSCP-6096がカーペットの上に座り込む。
不本意にも息子を化け物の生贄に捧げてしまった夫妻。サミュエルはその場に崩れ落ちてうずくまり、アマンダは壁によろけながら何とか警察と救急隊を呼んだ。
やがて警察が到着してもまだSCP-6096は家の中に居た。
シーツに包まった不審者には恐らく警察もさぞかし驚いただろうが、やはりシーツを剥がしたり危害を加えたりする事は出来なかったようである。
結局、地方自治体に潜入していたエージェントがその存在を知り、エージェントからの警告を受けた財団によってSCP-6096は収容下へと連行された。
そして目撃者全員に記憶処理が行われた後、デズモンドの失踪にカバーストーリーが作られる運びとなったのだ。
特別収容プロトコル
現在SCP-6096はサイト-19にある標準ヒト型生物収容室に拘留されており、その収容は機動部隊ゼータ-29 (血盟の友)が直接担っている。
だが上記の異常性のために、こいつを収容室に閉じ込め続ける事は出来ない。何故ならばこいつが出たいと思えばゼータ-29は何時でもこいつを収容室から解放し、それどころか目的地まで護送してしまえるからだ。
同時に、護送班より先行する第2班はあらかじめ「標的」に鎮静剤を打ち、SCP-6096が確実に襲えるよう下準備まで済ませておく。意識を失わせる事でSCP-6096に殺される苦痛を感じさせないようにする……という意味もあるかもしれない。
そしてSCP-6096が標的を殺し終えるまで待ち続け、全てが終わったら再びサイト-19まで護送して収容室へと迎え入れる。
以上、一連の流れが特別収容プロトコルとして報告書に組み込まれている。
……これで何故「許容」と表現したのかお分かり頂けただろう。
御覧の通り、全然SCP-6096を収容出来ていないのだ。何せこのシーツの化け物にとって収容室は収容室ではなく、ただの居心地の良いホテルの部屋でしかないのだから。
補遺
報告書はゼータ-29の隊長にして収容主任、チャーリー・サイマンスキーから新人隊員への歓迎通告で〆られている。
チャーリーは報告書を読み終えた新人に「俺たちがSCP-6096に対してできる事は一切無い」と断言し、酒を勧める。どうせプロ意識など持ち続けたところで何の意味も無いのだから。
チャーリー曰く、例え上層部がその態度を問題視したところで彼を降格させることは出来ないのだそうだ。何故なら「優秀」なエージェントであるチャーリーを収容主任から外す事そのものがSCP-6096に対する危害と解釈されてしまうから。
俺はツイてる、とチャーリーは半ば自棄になって言う。
もちろん、チャーリー自身も現状を受け入れているわけではない。
SCP-6096を直接射殺しようとした事もあるし、SCP-6096が終了されるシナリオだって幾つも考えた。
何も知らない
GOCが輸送機ごと6096を爆破してくれるのではないか。
人工知能、.aicが偶然6096の事を知り、何かの「事故」に巻き込まれるようお膳立てをしてくれるのではないか。
いつかのように何処かのガンマニアが「標的」になり、まぐれ当たりで6096を仕留めてくれるのではないか。
……所詮それは、シナリオとすらも呼べないようなファンタジーだ。到底期待出来るものではない。
だがそれでも待つしかない。全くの偶然がドミノ倒しのように重なり、いつの日かそれがSCP-6096の「収容失敗」に繋がる事を。悪夢から目覚められるその日がやって来る事を。
淡い希望を抱きながら、今日もゼータ-29は機動部隊としての仕事を全うし続ける。
彼らの
のために。
追記・修正はSCP-6096を偶然、確実に終了できた時にお願いします。
- タチの悪いゴールドエクスペリエンスレクイエムみたいなやつだな -- 名無しさん (2025-02-28 01:29:41)
- どちらかというとワンダーオブU -- 名無しさん (2025-02-28 03:37:36)
- 「結果的に将来こいつの妨害となる行為」もできないということなのかな。それができるのなら、標的まで移動させたくても物理的に不可能な場所に連れていくことで何とかなりそうだし。 -- 名無しさん (2025-02-28 08:16:00)
- 個人的にこのSCPは財団がお手上げすぎるのと、特性があまりにも強すぎるから美しくないんだよなぁ・・・「ぼくのかんがえたさいきょうのSCP」感が・・・ -- 名無しさん (2025-02-28 11:15:10)
- なにか本国で元ネタとなる都市伝説とかありそうなやつだけど完全な創作なのかな -- 名無しさん (2025-02-28 11:58:38)
- 執拗に意思の介在する行動を不可能って言ってるからそういう「設定」でトンチバトルとかも通じないんだろうな -- 名無しさん (2025-02-28 12:12:43)
- 重要なのはアノマリーの強さではなく「無作為に選ばれる」の部分だろう。つまり本質は「いつ自分に襲ってくるかわからない厄災」ということなんだと思う。 -- 名無しさん (2025-02-28 12:14:44)
- 無法さと「The 〇〇」って名前のせいで親衛隊の聖文字に思えてきた -- 名無しさん (2025-02-28 12:18:46)
- 某厄災は立ち向かわずに乗り越えるという選択を取ったんだがこっちはそれすらもできないという悪質さ -- 名無しさん (2025-02-28 12:26:34)
- ↑言うてその某厄災も漫画のラスボスとして倒されるために突然無限0回転設定生えてきただけで似たようなもんやろ -- 名無しさん (2025-02-28 12:39:20)
- 隊員が酒を飲んでるのって単なるヤケ酒なんだけど、「SCP-6096の護衛がマトモにできなくなるレベルまでベロベロに酔っぱらう」事もできないんだろうな、多分 -- 名無しさん (2025-02-28 16:33:10)
- 対処できませーん収容なんて見せかけもいいところでーすなんてSCPは682で十分じゃない?なんでこれが残っているのか -- 名無しさん (2025-03-01 01:13:04)
- 途中送信 -- 名無しさん (2025-03-01 01:13:13)
- わかるかい -- 名無しさん (2025-03-01 01:13:29)
- これの著者Soumyadeepになってるけどこれは画像著作者で実際の著作者はピエロのボブルとかどうして?とかで有名なTanhonyさんよ -- 名無しさん (2025-03-01 02:08:37)
- 残っているどころか本部+600超えで現状シーズンVIIの上位2%に入ってる超人気記事だぞ。まぁ真面目に答えると「認知バリアによって擬似的に無敵だが、本体は特別強くはなく、偶然の積み重ねで殺せるかもしれないという強さの塩梅」や「標的以外の人間を操れるシーツの化け物が地の果てまで追いかけてくるホラーとしての面白さ」、「補遺の歓迎通告から漂う機動部隊の哀愁」辺りが受けてるんじゃない?少なくとも「ただ強くて厄介なだけで他に語るところがないタイプのSCP」ではない(と大多数は思ってる)ので682で良いでーすとはならない -- 名無しさん (2025-03-01 05:38:01)
- 「標的」だけは6096の認知バリアの影響外にも見える……まあそれを利用して何かするのは「標的」以外には無理なんだが。 -- 名無しさん (2025-03-01 06:46:43)
- とっかかりがあるとしたら、標的のところまで他の人間を操って移動させている以上、ワープなどが可能な霊的存在ではなく一応物理的存在なんだよなあ。さとりが焚き火から爆ぜた火によって退散したように人間の意志が一切介在しない状態なら…しかしそんな幸運がチャーリーの定年前に起きてくれるかどうか…たまに「絶望感より徒労感の方が人に与えるダメージが大きい」と思う事があるがまさにそれ。 -- 名無しさん (2025-03-01 09:27:39)
- 例えば、それを毒と知らず(チョッパーの毒キノコスープのように薬だと信じきって)毒を食わせるとかできればいいんだが、財団の収容に紛いなりに入ってしまってるせいでそういうことも起きないんだろうな -- 名無しさん (2025-03-01 09:37:13)
- 真の恐怖はどうしようもない絶望よりも、なんとかなるかもしれないという希望があることかも -- 名無しさん (2025-03-01 09:40:33)
- こいつの一番の問題は財団が完全に共犯者になってしまってるからコイツを無力化しようとしたらまず財団を潰さなきゃいけないってことだと思う。 厄介な共犯者さえ居なければ腕っぷしの強い独居者を標的に選んだ時点で人知れず無力化されてそうな程度の力量なんだけど……。 -- 名無しさん (2025-03-01 16:11:48)
- あと、「こいつを害しようとする命令」自体が封じられるのも痛い。 それこそDクラスの中でも凶悪な奴ら(特に小児関連の殺人犯)を集めて世話係をさせれば簡単に事故死しそうなんだけど、そういう意図の人事発令ができなくなるのでは……。 -- 名無しさん (2025-03-01 16:15:07)
- ↑11 ヤケ酒じゃなくて飲酒運転や銃の暴発による事故死期待してるんだとしたら、切ない……実際、終了を願ったり銃口を向けたりは出来るのなら、無敵バリアは純粋に意識の問題っぽいから、「直接間接に危害を加える」の限界探りながら、プロバビリティの殺人仕掛けるしかないわけで。 -- 名無しさん (2025-03-01 21:12:22)
- 「結局のところ、俺たちはうんざりするほど仕事上手だからな。」という最後の言葉が絶望感を醸し出している -- 名無しさん (2025-03-01 21:21:12)
- 持つだけで神格並みのヒュームを獲得できる例の包丁は催眠をかけたDを何人も中継すれば破れたけどコイツはその辺の限界が無いのが厄介だな ホントに確率異常持ちのアノマリーと偶然エンカして事故死するのを祈るしかない -- 名無しさん (2025-03-01 22:48:02)
- 標的のいる場所に辿り着くのを助けるだけで、殺害現場まで帯同するわけじゃないなら(描写的に全員が着いてきてるわけではなさそう)、被害者が返り討ちにする余地はありそうではある。 -- 名無しさん (2025-03-02 18:34:26)
- ↑ちゃんと読めば分かるけどガッツリ殺害に直接協力するぞ ターゲットが銃で反撃したケースもあるけど機動部隊員が肉壁になって結局当たらなかった -- 名無しさん (2025-03-02 19:43:25)
- ↑しかもターゲットを隊員たちが取り押さえてる最中に、撃たれた隊員は失血死するという二重のクソっぷり。 まあ逆に言うと銃から自分を守らせるという事は「撃たれたら死ぬ」程度のスペックではあるという事だけど -- 名無しさん (2025-03-02 19:50:31)
- よくよく考えたら「強さ」と「怖さ」の両立って相当難しいよな。ご存知アベルやクソトカゲは一周回ってギャグになる強さだし。「強さ」と「怖さ」を両立しつつ、財団機動部隊の「辛さ」も描いたという意味ではなかなか良記事では。 -- 名無しさん (2025-03-02 21:39:31)
- コイツに危害が及ぶ因果が避けられるなら間接的に人類 -- 名無し (2025-03-03 05:05:49)
- (続き)文明への危害も避けられる(人類滅亡レベルのミスを無意識下で防げる)って感じでThaumielになったりして -- 名無し (2025-03-03 05:09:12)
- そこまで行くと本当にただチートなだけの化け物だし、dv一直線になりそう。こいつの高評価の所以は山程いる「どう足掻いても絶望」ではなく「攻略は99%不可能。残り1%はイカサマもチートも口プロレスも主人公補正もなしでひたすらガチャ回せ(天井もなし)」だと思うので。 ↑3そいつらは意思疎通可能なのが…… -- 名無しさん (2025-03-03 10:49:41)
- ↑2記号災害が猛威は振るうのはあくまで生物だけよ 全能クラスの現実歪曲者だろうが知性がある時点でコイツに手出しできないけど地震で住処が倒壊したとかなら普通に死ぬ 問題は財団という最高の警備員が付いてしまったせいでその程度の災害では殺せなくなってしまった事 -- 名無しさん (2025-03-04 22:17:44)
- 完全なる事故や災害なら死ぬのか -- 名無しさん (2025-03-07 21:07:34)
- GOCなら108の連合組織からあらゆる手を使ってどうにかしてくれそうな気もするが、今となっては財団との全面戦争になりかねないのが… -- 名無しさん (2025-03-07 21:38:03)
- ↑問題はこいつの味方をするという認識改変的なものをGOCに破ることができるのかだな -- 名無しさん (2025-04-11 14:25:23)
- 項目名はゲストだけどシーツを被った外見はガイスト(Geist、ドイツ語で「霊魂(=幽霊)」)とも引っ掛けてるんじゃないのって気がする -- 名無しさん (2025-04-11 16:07:55)
- ジェイソン・ステイサム(が演じるキャラ)みたいな、世界中を敵に回しても勝てるくらいの奴が標的になって返り討ちにするくらいしか -- 名無しさん (2025-04-11 16:33:58)
最終更新:2025年04月11日 16:33