登録日:2025-03-11 Tue 17:06:40
更新日:2025/04/11 Fri 10:44:19
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監督評議会命令
下記のファイルはレベル5/1857-JPの機密事項に指定されています。
不正なアクセスは如何なる場合に於いても終了処分の対象となります。
説明
SCP-1857-JPとは愛知県豊田市の山林地帯にある桜の木である。
このオブジェクトの異常性は周囲の環境から熱エネルギーを吸収することにある。エネルギーの吸収は太陽の反射光から生物の発するエネルギーまで全てのエネルギーを吸収する。
吸収されたエネルギーはオブジェクト内に移動して成長のために使われる。この成長能力によって1週間に50cmのペースで成長する。
そしてオブジェクトのエダ部分にある蕾を生成して常に満開状態になる。
SCP-1857-JPを中心とした直径1.6kmはSCP-1857-JP-1に指定されている。SCP-1857-JP-1はSCP-1857-JPの成長と共に拡大しているため相関関係になることが判明している。
SCP-1857-JP-1内は常に一定の気温に保たれていて、日本の3月後半から4月前半の気温と一致している。SCP-1857-JP-1内は様々な桜の木や生物が生息している。
そして内部に存在する樹木は種類問わず常に葉や花が確認されている。吸収された膨大な熱エネルギーが植物の成長に異常に作用していると推測されている。
SCP-1857-JPが吸収しているエネルギーの総量は約152PWとされていて、成長と共に増大し続けている。今後このペースで吸収量が増え続けた場合、12年後には全ての熱エネルギーを吸収して、地球は全球凍結状態になることが確定している。
このような状況になった場合、吸収するエネルギーが限られてくるため、影響範囲が地球の内核に達すると推測されている。
ざっくりまとめると
- オブジェクトは桜の木とその一帯です。
- 全ての熱エネルギーを吸収して成長しています。
- オブジェクトを中心とした直径1.6kmは常に気温が保たれています。
- このオブジェクトはそのうち地球中の熱エネルギー全てを吸収して全球凍結を引き起こします。
ということである。
特別収容プロトコル
SCP-1857-JPが存在する愛知県豊田市の山林地帯の一帯は調査か緊急時の時以外立ち入ってはいけない。担当職員は1日に一度、SCP−1857-JP-1の調査をするために立ち入りを許可されており、長期間人間に害となるようであれば、即座に上層部に報告しなければならない。
Agt染井はSCP−1857-JP-1内における長期生存のため、内部に用意された簡易居住スペースを拠点とした半径500m以内に拘留される。
SCP-1857の破壊などをする試みは全てSCP-1857が収集する莫大なエネルギーにより即時に修復されること、また吸収されるエネルギーが一時増大したことから同様の試みは評議会によって禁止されている。
現在全ての発電所を稼働して遅延を試みているが、これにより得られる猶予は3時間ほどしかなく無意味だ。
このオブジェクトの大規模の情報流布への対策として使用されていたものは、これらが急速な成長、拡大を続けていることから効果が薄いと判断され、2021年2月時点における対抗策はカバストーリーのみだ。
一言で言えば
無意味だから諦めろ
発見経緯
SCP-1857-JPは1993年に、蒐集院によって発見されている。
資料によると発見地域の住民に「春でもないのに桜が咲いている」という報告をもとに蒐集院が発見。この時にSCP-1857-JPの樹根は3m前後であり、「季節に関わらず咲き続ける桜」として管理されていた。
その財団に委譲され管理されていたが、成長速度が逸脱しているなどを担当職員が報告し調査が開始される。結果、SCP-1857-JP内部に熱エネルギーが凝縮されていたことが発覚。
また発見以降平均気温が想定外の低下をしていることに関連していると判断した担当職員が焼却実験を許可のもと行い、それによって即時再生の力が発見した同時刻に、全世界での気温低下や生命凍結などが報告されたことから熱エネルギーの遠隔吸収する異常性が発見した。
補遺1:
2023年11月15日に、O5は人類存続のために最終手段として以下のプロトコルを策定している。
監督評議会決定事項
プロトコル・ギムレー
当プロトコルはSCP-1857-JP-1内に人間が超長期間生存するに足る居住区を作成し、選別された100人の人間を収容する事で人類を存続させる事を目的とするものである。
SCP-1857-JP-1内部は人類の生存に適した気温・湿度・大気成分が保たれており、空間内に存在する湖によって水の循環や雲や雨などの気象現象も発生している事、均衡の取れた動植物の生態系が確立している事などから、人類が長期間に渡って生存するに足る環境が整っているとの判断が為され、当プロトコルは策定された。
SCP-1857-JP内部に収容する人間の内50人は、
持病やDNAの欠陥等がない健康体である事。
知能指数検査によって一定水準以上のIQを有すると認められる事。
精神診断によって疾患や異常な思想等が認められず、長期の閉鎖空間内での生活に耐えうる精神性を有する事。
の3点を選考材料として各国から無作為に選出された人物とする。
またそれ以外の50人はSCP-1857-JPの担当職員5人を始め、財団に所属する植物学や物理学・地学の権威、桜に関連するアノマリーに関わっていた職員によって構成される。
居住区内には原子炉による発電装置を始め、水の濾過装置や医療機器、研究施設、製鉄所等の人類文明継続に必要と判断された設備を搭載し、収容される人間は全てにおいてその使用法、修繕法を会得しなければならないものとする。
また、収容される人員の精神面でのケアの為、SCP-1857-JP-1内部の素材で代替可能な娯楽用品を多量に用意し、軽微な記憶処理材は用意できる範囲で補填していくものとする。万が一人員が極度の精神状態に陥った場合に際して、記憶処理施設を各施設とともに敷設する。
我等の使命は数える程にまで減ってしまった。
人類にこれ以上の繁栄はもはや約束される事は無く、残るは衰退の道に他ならないだろう。
しかし、如何に多くが滅ぼうと、人類は守られなければならない。
たとえ、この事態の元凶に縋ろうとも。
確保・収容・保護
O5評議会一同
プロトコル・ギムレーは終わりゆく世界の最後の抵抗として財団が策定したプロトコルである。
もはや財団は敗北しており、最後の手段に出たものと思われる。
補遺2:
以下に「プロトコル・ギムレー」の始動までに発生した出来事のタイムラインを記載する。
発生年 |
詳細 |
2023年 |
南アメリカ大陸全域で1年の平均気温が10度を下回る。 エージェント・染井の長期生存実験によりSCP-1857-JP-1が人類の生存に適した環境である事が実証される。 これを以て「プロトコル・ギムレー」が策定される。 |
この時に「プロトコル・ギムレー」が策定されている。
2025年 |
北極の面積が10%増大。また南極大陸の氷がオーストラリア大陸に侵食。 |
北と南で氷が増大している。またその影響でオーストラリアが侵食を受けている。
参考までに、現実でのオーストラリア、タスマニア島から南極沿岸まではおよそ2600kmほどある。この範囲はもはや氷漬けなのだろう。
2026年 |
アメリカ北部地域が完全に凍結。一帯の生命体は例外なく氷結していた。 インフラの停止により世界経済に混乱が生じ、ドルが急激に下落する。 またアメリカ北部に存在した財団所有の施設も機能を喪失し、冷気に耐性を有する一部のアノマリーが収容違反。その後収容される。 |
超大国であるアメリカが凍結の影響を受けている。その影響か財団施設も影響を受けまくっている。
SCP-682含めこのままではアノマリーどころか財団本部が滅びかねない。
2027年 |
大西洋全域に氷塊が大量発生。自然に発生したものと思われる。 世界各国緊急会議が行われ、被害が最も少ないとされた日本に表面的な対策総本部が設立される。 |
発生とあるからには、流氷ではなく海水そのものが凍結、氷山と化したのだろう。
大西洋が凍り始めている。そして日本に対策本部が設立されている。
2028年 |
赤道付近の複数の国で大規模な積雪が確認される。O5評議会の決議により「プロトコル・イザヴェル」が発動される。 財団の上層部メンバー及び研究チームがSCP-████-JPを用いた並行時間軸移動に成功、現地の財団に酷似した団体と接触し、協力を仰ぐ事に成功。 |
地球で一番暖かいはずの赤道で雪が降り始めている。また財団が並行世界の財団と協力を仰ぐことに成功している。
2029年 |
南アメリカ大陸・アフリカ大陸全域並びに大西洋が完全凍結、一部の避難者は日本に移送される。 「プロトコル・ギムレー」におけるSCP-1857-JP-1内部に収容する人物が確定、同時に全員の移送を完了。 |
地球の大部分が凍り始めている。また収容する人物が確定、同時に全員の移送に成功している。
2030年 |
ヨーロッパ全域及び北アジア、北アメリカ大陸が完全凍結。太平洋上に多量の氷塊が出現。 凍結地域の収容施設の調査に赴いた財団の調査チームが冷気に耐性を有するアノマリーの凍結を確認。SCP-1857-JPの影響によるものと思われる。 調査チームは帰路の途中で音信不通となった。以降の凍結地域の調査は無人探査機を用いて行う事が決定される。 |
世界の収容な国は壊滅。太平洋上に氷塊が生成され始めている。またアノマリーですら凍結の影響に耐えきれず凍結してしまっている。
2031年 |
SCP-1857-JPの周囲100km圏内を除く全ての地上が凍結。財団の全管理権限がSCP-1857-JP担当職員長である松村管理官に移譲される。 |
財団ですら凍結の影響で壊滅してしまった。そして財団の全管理権限が松村管理官に移譲されている。
2032年 |
非凍結地域がSCP-1857-JPの周囲50kmに縮小。 非凍結地域から地下を掘削して判明した事実として、域外の凍結の影響は地下2000mにまで達していた。 |
もはや凍結の影響は地球の地下2000mにまで達している。
星の核がどうなっているかは不明だが、この様子ではそう長くは持たないだろう。
2033年 |
SCP-1857-JP-1と指定される直径3.1kmの空間を除く地上の完全凍結を確認。 地球は事実上、全球凍結状態となる。「プロトコル・ギムレー」始動。 |
オブジェクトの周辺のわずかな地域を残し、地球は全球凍結状態になってしまった。そして、「プロトコル・ギムレー」が始動した。
文書
+
|
以下は松村管理官の文書である。 |
2038年12月13日
これは私が公的文書に残す最後のメッセージとなるだろう。
私は松村春信。SCP-1857-JPの担当管理官であり、滅びゆくこの星の霊長の代表者でもある存在だ。
端的に言って、この世界は終末を迎えた。
正確に言えば、我等100人の人類と安住の地とするSCP-1857-JP-1があるので、いささか表現が正しくないのかもしれないが、それでもこの領域外には悉くを凍てつかせる地獄ばかりが広がっている。
恐らくこの状態はもう人類にどうこうできるものでは無いだろうと、最近は強く感じるようになった。
プロトコルの始動から5年ほどが経過したが、並行時間軸に移動した研究チームとはもう2年ほど連絡が取れていない。研究に没頭しているあまり定期報告の事を忘れているのか、それとも通信機器の調子が悪いのか。
いや、恐らくはもう彼ら彼女らは死に絶えてしまったのかもしれないな。そう考える方が何より自然なのだ。
周りは一歩でも外に出るだけで即座に死んでしまう極寒の大地、地球環境修復の見通しも無く僅かな希望さえ氷の様に打ち砕かれた。人類に残されたのはたった3kmほどの居住可能な空間だけ。これでは人類の進歩はおろか文明の復興さえ望むべくもない。
言葉にしてみればこれほど絶望的な事は無いだろう。
しかし何故だろうか、私はこの箱庭の様な世界を嫌いになる事は出来なかった。
ここは私が見てきた何よりも美しかった。見上げるほどに大きなSCP-1857-JPは太陽と月の明かりに照らされ、花びらがひらりひらりと舞い落ち、空は澄み、水は清く、人々は人種を超えて争う事もなく生を謳歌している。
我等財団側の人間もまた、憎き桜の調査を進めつつも心持ちは穏やかなものだった。これは桜の未知の異常性によるものか、それともこの美しい情景がそうさせているのか定かではないが、それはこの世界が滅んでいるという恐ろしい事実から残された人々を優しく遠ざけてくれた事に違いはない。何にせよ精神面で不安定になる人間が想定よりも少なかった事は我々としては好都合だった。
財団の研究チームとの交信が途絶えた今、我等の使命を仲間と共に話し合い、そしてそれは「地球の修復」から「人類の存続」へと変更する事となった。
つい先日、この地上に残された楽園で初めて新たな人間が産声を上げた。アジアとヨーロッパの血を継ぐ元気な赤ん坊だ。
これから生まれ行く彼ら彼女らには、この桜に絶望ではなく、希望を持って生きていく事を教えていった方が良いのだろう。財団の理念には反するかもしれんが、人類の存続には希望が必要なのだ。
その為、私は残された30年程度の人生を使っていこうと思う。人類が遺した叡智を、文化を我らの中から生まれた子供たちに次いでゆくのだ。
そうしていけば遥かな未来、人類は何かしらの打開策をみつけてくれるかもしれない。
なんとやりがいのある任務であろうか。
あぁ、本当に
悔しい限りだが
今日も桜は美しい。
松村春信
|
財団は最後まで抗い続けた。例え元凶に縋ろうとも、人類の存続に全てを尽くしたのである。
追記、修正は美しさを感じてからお願いします。
- この報告書の世界はSCP-073カインが存在しない平行世界だと思われる(カインの異常性ならSCP-1857-JPも無力化出来るため) -- ゼルクレア (2025-03-11 20:58:33)
- JPなのに翻訳噛ませたような怪しいところがちょくちょくあってもSCP関連だと何かの仕掛けの可能性があるので修正し辛いのよな・・・許可されなけれており、カバストーリーのみだ、オブジェクトのエバ部分、力が発見した、等々 -- 名無しさん (2025-03-11 22:06:14)
- ↑2この桜がカインが近寄っても問題無い破壊耐性がある可能性も。まあヘッドカノンによるが -- 名無しさん (2025-03-11 23:12:57)
- だから何でもかんでもタイトル落ちすりゃいい訳じゃないってんだよ -- 名無しさん (2025-03-11 23:27:23)
- ↑3このSCPはテキスト的な仕掛けは無さそうだから普通に誤記だと思うけど、何て書きたかったのか分かりにくいのがあるな… -- 名無しさん (2025-03-11 23:56:13)
- 要約するのが仕掛けかと思ったらそんなことはなくフォーマットミス? -- 名無しさん (2025-03-11 23:59:49)
- 小原の四季桜かと思ったら足助だった -- 名無しさん (2025-03-12 00:08:05)
- 熱エネルギーを吸収…よっしゃ永久カイロを桜に添えたろ!! -- 名無しさん (2025-03-12 01:00:18)
- 宇宙の熱的死を克服するはるか未来の切り札には…あんまりならなそうだな。 -- 名無しさん (2025-03-12 03:59:18)
- この中ならトイレットペーパー使い放題ダァカラカラカラ!(プロトコルギムレー始動 -- 名無しさん (2025-03-12 09:48:43)
- 今までこの凶悪SCPの項目なかったんだ… -- 名無しさん (2025-03-12 10:54:35)
- この横にスライドするやつ、機種によっては見にくいんだよなぁ…。反対意見がなければ編集します -- 名無しさん (2025-03-12 11:24:57)
- 大した長さでないのに「こんな長い説明よりも要約が欲しい人もいると思う」と言っちゃうあたり、投稿者はよほど長文が読めない子なんだろうか -- 名無しさん (2025-03-12 11:47:44)
- 世界に存在するあらゆる“力”をありとあらゆる場所から奪い取って未来永劫咲き誇り、側の僅かな地のみに平穏を約束する桜……桜モチーフの必殺技としてまた違った意味でアリそうだな。十中八九「術者自身にすら制御できない」「術者の死でしか止められない」強制暴走・自爆系必殺技になりそうだけど -- 名無しさん (2025-03-12 12:45:19)
- おそらくこの桜はメタになり得る存在がいるとこうはならないと考えられる(この報告書の世界線ではカインがいないと明言されているため)から、apollyonの中でも割と良心的なオブジェクトの可能性があるよね -- 名無しさん (2025-04-11 10:44:19)
最終更新:2025年04月11日 10:44