ショゴス(Shoggoth)

登録日:2025/03/13 Thu 05:50:47
更新日:2025/03/26 Wed 23:45:29
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ショゴス(Shoggoth)は、クトゥルフ神話に登場する生物。
初出はハワード・フィリップス・ラヴクラフトの小説『狂気の山脈にて』*1

以下の解説は、特筆無ければ『狂気の山脈にて』を参照としたものである。


■概要


黒いが虹色の光沢を帯びた、水泡の凝りのような粘着質のゼラチン状の不定形な肉体を持つ。眼は緑がかったイボ状で体表に無数に存在する。
狂気山脈で目撃された個体は、直径15フィートの洞窟を埋め尽くしながら移動する機関車に例えられる程の巨体だった。

自らの組織を、様々な器官に変化させる性質を持つ。
医療技術が発達した現代では、どんな器官でも造れるショゴスの細胞こそが万能細胞と解釈されることもある(『うちのメイドは不定形』)。

肉体的には不死身(『アルハザードの放浪』、『深淵への降下』、『ショゴス開花』)だが、細切れにして破片を遠く彼方に分散させることで再生を妨害して無力化はできる。炎には不快感を覚えるようだが、炎でショゴスを殺害できるかは不明。
獲得した知識は決して忘れずに一度体験した過ちは二度と繰り返さない。
獲物の肉体だけで無く、その本質をも溶解して自らの一部として取り込む性質を持つ(『アルハザードの放浪』)。
「古きもの」達はショゴスの調伏に分子撹拌装置を使用していた。
その他、電撃を使い拷問していた痕跡が確認されている(『古きものたちの墓』)。

笛に似た「テケリ・リ!」という特徴的な声で鳴くが、これはかつての主である「古きもの」の声を模倣したもの。


現在は「古きもの」の幽閉地となった南極地下遺跡の他、ニトクリスの鏡に映る地獄の如き世界(『タイタス・クロウ』)、トゥク山脈の地下に存在する穢れた湖(『ユゴスよりの真菌』)などで棲息が確認されている。

出自的にクトゥルフとは敵対関係にあったはずだが、一部の個体が寝返ったのか、
深きものどもの海底都市イハンス=レイ(『インスマスを覆う影』)やインスマス出身の魔女アセナス・ウェイトのサバト(『戸口に現れたもの』)でも目撃されている。

アブドゥル・アルハザードは、その存在を疑い『ネクロノミコン』でも麻薬中毒者が幻覚に見ただけで地球上には実在しないと断言していた。


■出自


地球に降り立った「古きもの」が海中に都市を築く際に労働力として創造。催眠術で支配し、形質変化能力を活用して様々な状況下に併せて活用していた。
食物としても利用する(『暗黒の知識のパピルス』)。

魔導書「エイボンの書」には、ウボ=サスラから生まれた原初の細胞集合体を素材に培養された(『暗黒の知識のパピルス』)と記述される一方、ウボ=サスラとは無関係な生き物(『深淵への降下』)とも伝えられる。

地球に降り立つ以前にも「古きもの」達は様々な惑星で、同様の手段で生命創造を行っており、
月のヌグ=ヤーの深みで蠢くものが原初のショゴスとされる(『ネクロノミコン』)一方で、ハイパーボリアのヴーアミタドレス山の地下洞窟に住むクトゥッグオルが最初に創られたショゴスともされる(『深淵への降下』)。


時代を経て「古きもの」は生命創造技術を喪失し、ショゴスの形質変化頼りになるのだが、
過去に変化した形態に勝手に変化するようになり、安定した脳と知性を偶然にも獲得。
1億5千万年前、ショゴス達は「古きもの」に対して反逆し、大規模な戦争となるが敗北し再び奴隷となる。

100〜50万年前、氷河期が始まった頃にはショゴスは大型化し知性も高まり、催眠術ではなく会話で「古きもの」に従うようになる。
寒波により陸上の家畜が死滅したため、一部のショゴスが地上に連れ出されて、陸上生活に順応するように進化する。

その後の経緯は不明だが再び「古きもの」に反逆したようで、1930年にウィリアム・ダイアーとダンフォースが南極の山脈地下遺跡で遭遇した個体は「古きもの」を殺害している。


■亜種


  • ショゴス・ロード
マイクル・シェイの『Fat Face』に登場。
狂気山脈での人類との遭遇以降、より小さくより柔軟に進化し人間社会に溶け込んだ種族。ゴム製スーツで肉体を人型に偽装し頭部だけを人間に擬態させている*2
ほとんどの個体は、不自然にヨタヨタ歩く肥満体で人外とはバレていないものの周囲から障害・疾病者と認識され失笑を買っている。
ファット・フェイスの名で動物保護事業とハイドロセラピーの医院経営を行い社会的地位を得た個体を、中心にハリウッド近郊で活動。動物保護の名目で獲物を集め、医院内のプールに集まり人間に擬態させた頭部以外を融合させて巨大な塊となり丸呑みにする食事を行っている。
『クトゥルフ神話TRPG』では、ゴムスーツ設定は省かれ精神集中で肉体を人型にしている設定。ミスター・シャイニーという個体が設定された。

  • 海棲ショゴス
ブライアン・ラムレイの『タイタス・クロウ・サーガ』シリーズでは、海中に棲息するものは、ショゴスに似た海棲ショゴスとされている。

  • クトゥッグオル
リン・カーターの『深淵への降下』で語られる個体。
「大いなるショゴス」、「粘体怪物」の異名で伝えられる最初に創造され、最も恐怖されているショゴス。
作中に登場するウボ=サスラを師匠と仰ぎ仕えているショゴスが、この個体ではないかと推測されている。

  • 最初のショゴス
リン・カーターの『ネクロノミコン』に登場。
一般的なショゴスと異なり白いゼリー状の塊のような姿をしている。
このショゴスが蠢くヌグ=ヤーの深みで黒い蓮の花が育つ。

  • オラクポダ・ホリビリス
エリザベス・ベアの『ショゴス開花』に登場。
『ショゴス開花』は、ショゴス種が人類に認知されており学名も付けられている珍しい動物扱いな世界観。ホリビリスは「コモン・サーフ・ショゴス」の通称で知られている。
現存するショゴスの中で最大種。成体は体長4.5〜6m。推定重量8t。
胴体は深海のような緑色で、巻きヒゲと子嚢は藍色とスミレ色。
海中に棲息しているが晩秋になると岩場に上陸し、開花し繁殖と推測される行為を行う。

  • オラクポダ・アンテディルヴィウス
『ショゴス開花』で語られる。
化石で発見された、先カンブリア時代の絶滅種。ホリビリスの3倍以上の巨体を誇る。

  • オラクポダ・デルマデンタタ
『ショゴス開花』で語られる。
通称「ブラック・エイドリアティックショゴス」。
生息域の限られる希少種。

  • 原ショゴス
『クトゥルフ神話TRPG』でデータが作られた。
異界の科学や古代の秘儀で創造されたと考えられるショゴスもどき。
容姿は人間の肉片で、人間と同じ構造の体組織を持ち自由に作り変えることが可能。

■主な登場作品


海外作品

登場作品
  • 『狂気の山脈にて』
著者:ハワード・フィリップス・ラヴクラフト

  • 『無人の家で発見された手記』※後述の余談参照
著者:ロバート・ブロック

  • 『暗黒の知識のパピルス』
  • 『深淵への降下』
  • 『ネクロノミコン』
著者:リン・カーター

  • 『古きものたちの墓』
著者:コリン・ウィルソン

  • 『タイタス・クロウ・サーガ』シリーズ
著者:ブライアン・ラムレイ

  • 『ネクロノミコン アルハザードの放浪』
著者:ドナルド・タイスン

  • 『残存者たち』
著者:フレッド・チャペル

  • 『ショゴス開花』
著者:エリザベス・ベア

  • 『Fat Face』
著者:マイクル・シェイ


日本の作品

  • 『うちのメイドは不定形』
著者: 静川龍宗&森瀬繚

  • 『ショグゴス』
著者:小林泰三

  • 『邪神退治24時 クトゥルフ・ブラッド伝』
著者:毒島伊豆守

  • 『伴天連XX』
原作:猪原賽 作画:横島一

著者:KAKERU

著者:ムクロメ


■余談


ロバート・ブロックの『無人の家で発見された手記』では、蹄を持つロープの塊のような怪物がショゴスとして登場するが、
容姿の相違点もあり後年『クトゥルフ神話TRPG』では、ショゴスではなくシュブ=ニグラスの黒い仔山羊と設定されている。


今やショゴスの代名詞となった「テケリ・リ!」という鳴き声だが、元々はエドガー・アラン・ポーの小説『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』で使用されていたもの。


「生まれながらの奉仕種族」という点から、モンスター娘界では人型スライム様または全身から触手を伸ばせるメイドさんと解釈されることが多い。


なお、海外でも美少女に変身させてラブドール代わりにしたり、無数の触手ペニスを生やさせて擬似乱交の相手にしたりと、そっちの奉仕目的に利用する小説も存在する。


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最終更新:2025年03月26日 23:45

*1 本作以前に詩『ユゴスよりの菌類』で名前だけは言及されていた。

*2 やろうと思えば体も変化できるが、精神集中が必要で疲れるのでスーツを使った方が楽だと語っている