名古屋鉄道6000系電車

登録日:2025/04/03 Thu 17:08:27
更新日:2025/04/27 Sun 14:57:09NEW!
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名古屋鉄道6000系は、名古屋鉄道(名鉄)が保有する通勤型電車である。
名鉄社内では増備車グループの6500・6800系を含めた本系列を「6R車」と呼んでいることから、本項では6500系・6800系についても解説する。

概要

名鉄の戦後の新車では初となる本格的♂通勤車であり、外観や内装のマイナーチェンジを繰り返しながら1992年まで増備された。
名鉄は東京・大阪に比べ都市部の小さい名古屋圏、しかもトヨタ自動車のお膝元ということもあって1951年以降に導入された車両は新造車・更新車含め一貫して2扉のクロスシート車を増備し続けていた。

しかし、1973年に発生したオイルショックの影響で鉄道通勤に切り替える人が急増し、詰込みの利かない2ドア車では毎朝の遅延が日常茶飯事と化していた。
名鉄上層部は「着席通勤」を前提とし通勤型車両の導入を不経済と拒んでいたが現実はもはや限界な状況となり、緊急策として1975年に東急電鉄から3扉ロングシート車の3880系を譲受*1
これで遅延が大幅に緩和されたこともあり、名鉄では本格的な通勤車の開発・導入が決定した。

車両解説

本項では1~5次車までの内容を解説し、6500系以降の変更点については別項で記す。

19m車体の3扉車で、側面はパノラマカーに似た大形の固定窓が設置されたが、5次車以降は側窓が扉間3つで開閉可能な一段下降式に変更されている。
また、側扉窓も当初は営団地下鉄車両のような小窓だったが、増備車では一般的なサイズとなっている。
前面は7700系をベースにした貫通型で、前面窓も7700系と同じパノラミックウィンドウを採用している。
灯火類の構成も7700系と同じ前面窓上に前照灯2灯、後部灯・急行灯を兼ねる標識灯が裾部に設置され、車体中央上部には半自動式の行先表示器が設置された。

塗装はパノラマカーやSR車と同じくスカーレット一色となっているが、6500系導入から2005年までは、3扉車を示すために瀬戸線転属編成を除いた全車の乗降扉上部がグレーに塗装されていたこともあった。
また、2022年からはワンマン対応車で黒歴史扱いのライトパープルを除く歴代名鉄車両の塗装を復刻させた編成も登場している。

座席は当初ロングシートを希望していたが、上層部からはクロスシートの設置を求められ、扉間は集団離反式のクロスシート、車端部はロングシートというセミクロス式となった。
このクロスシートは従来車よりも路線バスのそれに近いもので、座席幅は825mmと二人用としては狭かったせいか1985年からロングシート化されている。
勿論冷房は落成当初から装備済み。

機器類は出力150kWの直流直巻モーターを使用し、SR車と合わせられているが、電動車と付随車を1組とするMTユニット式を初めて採用した。

こうした新機軸が認められ、1977年には通勤車では初となるブルーリボン賞を受賞している。

特別整備・重整備

初期車を対象に1997年から特別整備が行われた。特別整備では化粧板や床面の交換、車椅子スペースや扉開閉チャイムの設置、側面行先表示器の設置が行われた。

中期車のワンマン対応の2両編成は2014年から重整備が行われた。
初期車の特別整備でも行われた化粧板や床面の交換、車椅子スペースの新設、扉開閉チャイムの変更(2両編成も重整備に際して交換)、側面行先表示器の設置に加え、座席表生地の張替やスタンションポールの新設、表示灯のLED化、行先表示器のLED化など現行のVVVF通勤車と遜色ないレベルに仕上がっている。

6500系・6800系も2021年から同種の工事を実施している。

増備車

車体形状も制御方式も全く異なるのだが、以下の2形式については商業誌では「6000系ファミリー」として紹介される例がほとんど。
そのため、ここで解説を行う。

  • 6500系
1984年に登場。
直流複巻電動機に界磁チョッパ制御を採用した2M2Tの4両編成となっており、最高速度も110km/hに向上した。
最大の違いは前面形状で、非貫通で前面窓回りはグレーになり、正面窓下部にステンレスの飾り帯が取り付けられた。この顔は「鉄仮面」の俗称がある。
当初は標識灯が急行灯、後部灯で別れたものを採用していたが、1985年以降の増備車は急行灯・後部灯を兼ねるものに変更された(後に初期車も廃車発生品を流用して仕様を統一している)。
6000系も同年以降導入された2両編成がこの顔となり、1985年まで増備が続いた。
また、この形式からクロスシートの居住性改善が行われ、現在もロングシート化改造を受けずに残っている。

  • 6800系
1987年に登場。1M1Tユニットで、界磁添加励磁制御を採用した2両編成である。
当初は6500系と同じデザインだったが、1989年の増備車から車体がビッグマイナーチェンジ。
前面窓に大型の曲面ガラスを採用し、前照灯も前面窓の下に後部・急行兼用の標識灯と横並びで配置する通称「金魚鉢」顔に変更。側窓も3連続窓式というもはや別モノの車体形状となる。
この車体形状は同時期に登場した6500系には勿論のこと、1993年に登場した3500系にも引き継がれた。
1991年の製造分からはロングシートで落成している(6500系も同様)。

派生形式

  • 100系
名古屋市営地下鉄鶴舞線乗り入れ用に開発された。
基本設計は6000系だが、鶴舞線の規格に合わせて名鉄では戦後すぐに割りあてられた初代3700形*2以来となる20m4扉車となった。
前面形状も6000系に近いものとなっているが、目の下にできたクマのようなステンレス製の飾り帯*3が取り付けられており、急行灯と後部灯は別々になっている。

車内は「通勤型でも乗り心地は特急列車並み」を目標に設計され、オールロングシートだが通勤形では珍しい横引式のカーテンが設置されている。

制御方式は初期車は抵抗制御、1989年~1991年の導入編成は界磁添加励磁制御、1993年の導入車(中間車のみ)は名鉄初となるVVVFインバータ制御となり、形式も200系となった(名鉄では100系200番台としている)。
1994年には200系が編成単位で増備されている。
なお、抵抗制御車は2011年から重整備が実施され、IGBT-VVVF制御へ換装されている。

1991年からは1993年までは混雑緩和対策として犬山線のほか名古屋本線常滑線・広見線でも運用されており、平成に入ったにもかかわらず行先はサボを掲示して運行していた。

1980年鉄道友の会ローレル賞受賞。

  • 6600系
1978年の瀬戸線1500Vへ昇圧及び栄町駅乗り入れ開始に合わせて登場。
瀬戸線への新車導入は戦前のガソリンカー以来ということで話題を呼んだ。
2両編成6本が導入され、4両編成のみの運用となった後年は事実上2+2の半固定編成を組んで運用された。

内外の基本設計は6000系だが、前面にスカートがついているのに側窓は田の字窓で非冷房という一見するとバッタもんのような独特のビジュアルが特徴。
非冷房だったのは駅間の短さを勘案したものだが、1985年から冷房改造を実施。
名鉄は早くから新車で車両冷房の設置を実施していた為、冷房改造を実施した形式はこれと3400系しかなかったりする。
車内もセミクロスだったが、1988年にロングシート化された。
後継車両の4000系の導入に伴い、2013年3月3日のさよなら運転を最後に引退した。

また、AL車の車体を更新した3300系(2代目)・6750系(1次車)も本形式とほぼ同じ車体を採用している。

運用

名鉄の1500V路線のほぼ全線。
本線の急行から閑散区間のワンマン列車までありとあらゆる運用をこなし、ときには特急運用に就くことも。
先述したワンマン運転対応編成も時折しれっと本線運用に入っていたりする。
そうとしか言いようがないくらい汎用性に優れていたのだ。
特筆すべきは瀬戸線で、1995年からHL車の置き換えを目的に導入され、2014年まで使用された。
瀬戸線は工場の都合上水性塗料しか使用できず、水性塗料特有の色あせも目立っていたのが特徴。

前述した重整備が進められている一方、対象外になった編成については9100・9500系に置き換えられ廃車も進められている。



追記・修正は復刻カラーを全部撮ってからお願いします。

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最終更新:2025年04月27日 14:57

*1 なぜこんな荒業が可能だったのかというと、同車は戦後すぐに導入された運輸省規格型電車であり、名鉄が自社発注した3800系とモーター類が同じで扱いに慣れていたのが理由である。

*2 大型のため枇杷島分岐点のカーブが通過できず、運用が限定されたため小田急電鉄と東武鉄道に売却されている。

*3 当初は名鉄の社紋も取り付けられていたが、現行のCI制定後となる1994年に増備された編成は省略されている。