ウマ娘 シンデレラグレイ

登録日:2020/03/28 Sun 11:33:00
更新日:2025/04/23 Wed 12:54:49
所要時間:約 17 分で読めます





世界の競馬史を見渡したとしても、これほどに描きたいと思う馬がいるでしょうか?
あるいは世界のスポーツ史全体という規模でも、比肩するもののないドラマ・物語のひとつだと思います。物語として完成されていますよね。

『ウマ娘』というコンテンツにおいて、その枠組みの中でこのオグリキャップという超名馬を物語として扱うのは、ある意味必然だったと思っています。

───伊藤隼之介(QROUT)




解き放たれる―――



怪物(オグリキャップ)




『ウマ娘 シンデレラグレイ』は、週刊ヤングジャンプ(集英社刊)にて連載されている漫画作品。

漫画:久住太陽
脚本:杉浦理史&Pita*1
漫画企画構成:伊藤隼之介
原作:Cygames


■概要

2020年28号より連載を開始した、オグリキャップを主人公に据えた『ウマ娘 プリティーダービー』のスピンオフ作品である。
主にサイコミ連載のweb漫画だったこれまでのコミカライズとは異なり、初めての雑誌掲載作となった。ところでセイウンスカイの漫画は…
単行本は2025年3月時点で既刊18巻。

タイトルに「プリティーダービー」がついていないことからわかる通り(?)*2、漫画のカラーもかわいいよりスポ根・バトルモノ寄り。通称「シングレ作画」。
それはもう作画担当が『リボンの武者』と『はねバド!』読んでから吹っ切れて『刃牙』と『HELLSING』読みながら連載開始しました」と漏らすほどに。
レース中の作画は鬼気迫るものとなっており、アニメやアプリとは異なる「かっこいいウマ娘」たちが織りなす真剣勝負に唸った競馬ファンも多い。
その反面日常パートでは可愛らしい描写も多く、特にちょくちょく挟まれるオグリの食べっぷりデフォルメ顔は「可愛い」と評判。

登場するウマ娘は史実に忠実だが、ちゃんとキャラとして採用されているウマ娘はその中の一部なので、その他は実名ではなくもじった名前を使用している。
アニメでも同様の手法は使っているものの、そちらではモブキャラ程度の扱いに留まっているが、本作では普通にキャラ立ちして話に絡んでくる者が多い。
一方で、本作にて実名つきで初登場し後に仲間入りしているウマ娘も何人かいる。
ちなみにレースモデル自体は昭和末期だが、作中の風俗や全国レース場一覧はスマホが一般的になっている21世紀現在のもの、かつ映像ソフト媒体としてVHSが現役だったり等、1巻後書きによると時代設定はあえてあやふやにしているそうな。

序章とはいえ、他メディアでほぼ描かれていない「地方(ローカル・シリーズ)」を舞台とした物語が描かれるのも特徴である*3
「序章カサマツ篇」は16R(コミックス2巻分)で完結し、17R(3巻)から舞台は中央トレセン学園に移る。
単行本1巻は2021年1月に発売。
なにせ主役が超有名なスターホースであったため、当初からソシャゲ界隈を中心として話題になってはいたのだが、本家たるアプリがなかなか配信されなかったこともあり、
人気は局地的なものに留まっていた。
それでもアプリ配信前に重版が決定する程度には人気があったようで、「ゲームもアニメも知らないけどオグリの漫画は読んでる」という競馬ファンの声も聞かれた。

その後アニメ2期の放映に合わせ、満を持してアプリの配信が決定。
アニメは1期以上の大好評を博し、アプリも出だしから絶好調だったことで、本作にも注目が集まり各地で売り切れ続出という事態が起こってしまった。

結果3巻発売後の6/10時点で累計100万部を記録。
これは同じ雑誌連載漫画では『キングダム』『ゴールデンカムイ』などのヒット作に並び、スピンオフ作品としては異例ともいえるヒットとなっている。
本作は「オグリキャップの物語はデビューから引退までドラマが多く、アニメなら数クールは必要」という判断で漫画媒体での展開が決まったという経緯があるのだが、予想以上の大ヒットになったことから、今後のアニメ化も夢ではないかもしれない。
作者は50万部突破した際に100万部突破したら洗濯機を買うと公言していたが1ヶ月程度で達成、200万部突破したら掃除機を買い替えると公言している
なお、14巻現在ではDLも合わせて累計600万オーバー。作者の家、もうオール電化くらいになってるかも

ヤングジャンプ公式youtubeチャンネル「ヤンジャンTV」で2021年1月にコミックス1巻を発売記念に第1話を用いた声付き動画が公開。
11月に「日本ダービー入門編」として第3巻を用いた声付き動画を公開。
あの「中央を無礼(なめ)るなよ」が聞ける。

そして2024年8月23日の『ぱかライブTV』にて、とうとうTVアニメ化決定が発表された。
2025年4月よりTBS系列にて分割2クールで放送開始。
アニメーション制作は『ROAD TO THE TOP』や劇場版アニメ『新時代の扉』といったウマ娘関連作を手掛けているCygames Pictures。
特筆すべきは放送時間帯が日曜16:30からということ。
まさかの日曜夕方、というだけでなくウマ娘ならではの事情として日曜競馬を終えて競馬ファンが悲喜こもごもを終えた頃に始まるという意味を持っているのだ。
OP曲もこれまで鉄板だったウマ娘たちの歌唱曲ではなく[Alexandros]を招き、男性ボーカルのロックサウンドをバックにウマ娘が駆ける新鮮な画が見られたり。


■あらすじ

寂れたカサマツの地に現れた、ひとりの灰被りの少女。後に"怪物"と呼ばれるその少女は、どこを目指して疾るのか───。
地方から中央の伝説へ。青春"駆ける"シンデレラストーリー、遂に出走!!


■主な登場キャラクター

CVはボイコミ版/TVアニメ版。
登場するウマ娘の詳細はウマ娘の一覧オリジナルウマ娘の一覧、トレーナーに関してはトレーナー(ウマ娘 プリティーダービー)の項目も参照。

以下の他にも、ゲームでおなじみの駿川たづなさん*4やレースの実況担当の赤坂さんもいる。
そしてトレセン学園料理主任のオバちゃんはオグリキャップの食欲に打ち勝つ事ができるのか……?

オグリキャップ

CV:高柳知葉
走ることと食べること以外には無頓着なカサマツトレセン学園の新入生。
パッと見クールな雰囲気を漂わせた美少女だが、ややズレた感性のマイペース天然ボケ。
北原から熱心なスカウトを受けて彼のチームへの所属を決め、共に「東海ダービー*5」を目指すことになる。
だがその活躍から中央のトレセン学園への移籍話が持ち上がり、葛藤しながらも最終的に中央行きを決め、移籍後思わぬ障害にぶつかりながらも中央で頭角を現すことになる。
シングレでのオグリについては個別記事でも扱っているためそちらも参照のこと。

ベルノライト

CV:根本京里*6/瀬戸桃子
本作のみで登場するオリジナルウマ娘で、転校してきたオグリのクラスメイト。
実家はウマ娘専門スポーツ用品店で*7、オグリとの付き合いやデビュー時に自らの「足りない面」を自覚した事等から、オグリのサポートスタッフへの転身を決意することになる。
アプリ、アニメ等も含めて主要な登場ウマ娘としては現状唯一と言える、競走ウマ娘以外となることを描かれたウマ娘。

そのため、トレセン学園にはスカウトされたオグリキャップとは違い、編入試験に合格して入学している。
なお結構な難関のようで、シンボリルドルフから「大したものだ」とお褒めに与っている。
実際に能力は高く、ジャパンカップ時には銀次郎の指示で出走ウマ娘に単独で取材を行った*8
カサマツの座学2位はミニーザレディとはっきりしているが、主席が誰かははっきりと描かれてはいない。
が、これらの事からベルノライトが首席だっただろう事が推測できる。

なお、とある部分は作中のキャラクター内でも屈指の戦闘力を持っている。何がとは言わないが充分足りてます。

フジマサマーチ

CV:伊瀬茉莉也
カサマツに特待入学した期待の新星で、オグリキャップの最初のライバルとなったウマ娘。
カサマツ時代のオグリキャップに勝った唯一のウマ娘*9

東海ダービー制覇を目標に掲げ、走ることに対して非常にストイック。
ぬるいカサマツの環境に満足しておらず、周囲とも温度差がある。むしろ初期は他のウマ娘を見下してもいた。
デビュー戦ではオグリとの対決を制し勝利を収める。*10

オグリキャップがカサマツから転出する際には「お前より永くレース場に立って見せる」と誓いを立て、
念願の東海ダービーでは4着に沈むなど挫折を味わいながらも互いに励まし合う関係が続いている。
また、三バカとも交流を持つようになり、食事をしたり東京観光に同行するなど性格も変わっていっている。

モデルは史実で笠松時代のオグリキャップに唯一勝利したマーチトウショウ(1985年4月5日~ ? )と思われる。
単行本内にてマルゼンスキーがフジマサマーチを気にかける1コマがあるが、
これは史実側でマーチトウショウの父がプレストウコウ(マルゼンスキーが対戦経験あり)のため。
ぶっちゃけ、競馬ファンじゃないとわからん
また前述の誓いの内容から、一部では1988年岐阜王冠賞時マーチトウショウで勝利し、2025年現在も園田競馬場でオグリキャップ号の中央での馬主の勝負服を色違いにしたような勝負服を装備し現役騎手として活動する川原正一騎手の要素も指摘する声がある。

タマモクロス

CV:大空直美
元気な関西のちびっ娘にして「白い稲妻」な中央の強豪ウマ娘。
覚醒直前ひょんなことからカサマツを訪れオグリのレースを観戦しており、中央に移籍したオグリのライバル的立ち位置となる。

シンボリルドルフ

CV:田所あずさ
最早説明不要な我らがカイチョー‥だが、そこはやはりシングレワールド、威厳と威圧感は半端ない。ここではとてもカナ表記は‥

この世界線ではモデル馬と同じくカツラギエースに次ぐ2人目のジャパンカップ勝利日本ウマ娘でもあり、本編では一線を退いてまだそう日が経っておらず、次代のスター不在を嘆いていた。
そこに現れた中京盃覇者、オグリキャップを中央にスカウトした。
が、そのシーンは結構唐突で、恐らくは数ある視察、スカウト活動の中の一つであったのだろうと思われる*11

ヤエノムテキ

中央に転校したオグリキャップのクラスメイトの一人。
剛毅木訥武道少女」なる紹介のとおりにトレーナーを「師範代」と呼び、武術とレースの鍛錬に勤しむ堅物ウマ娘。
ちなみにクラスではメジロ家の令嬢メジロアルダンやG1ウマ娘サクラチヨノオーと仲が良く、他にも他メディアで先行登場していた同期スーパークリークもクラスメイト。
(ちなみにもう一人の他メディア先行登場同期組バンブーメモリーも、時々他クラスメイトと一緒に映っているシーンがある)。
……しかし、皐月賞参戦のため出走した毎日杯でオグリキャップに完敗したこと、そしてその後のクラシック戦線本番にオグリキャップが出走できず、対決できなかったことが、皐月賞を勝利した彼女の軌跡に暗い影を落としてしまう。
シニア期でもオグリの前に度々苦渋をなめさせられる事に……。



三バカ

カサマツトレセン学園の悪ガキ新入生。地元で有名なノルンエース(CV:渋谷彩乃)、字はウマいルディレモーノ(CV:大地葉)、座学カサマツ二位のミニーザレディ(CV:井澤詩織)を指す。
悪目立ちするオグリキャップを快く思わず様々な嫌がらせ*12を行うが、オグリが鈍感過ぎて全く意に介さず失敗。
オグリの圧倒的な走りを目の当たりにしてからはタ〇ヤもビックリな掌モーターを作動し、厄介な古参(ミニーザ談)と言われる程のファンと化す。

オグリの中央移籍後も付き合いは続いており、マーチ共々良い友人となっている。
本作ではアプリ版等のように地元愛に対する想いの描写がやや薄い感じではあるが、それを補完する存在とも言える。



北原(きたはら)(じょう)

CV:中村章吾/小西克幸
カサマツトレセン学園のトレーナー。模様入りのハンチング帽がトレードマーク。
周囲からは「ジョー(さん)」と呼ばれる事が多いが、オグリキャップのみ「キタハラ*13」と呼ぶ。
ローカルの熱気の無さをスターウマ娘の不在が原因と考える冴えないおじさん。夢は東海ダービー制覇。
オグリの才能を見い出し共に歩き出すが、彼女の秘めた潜在能力は「東海ダービーも夢じゃない」という北原の認識さえ大きく超えていて……。

トレーナー業に就く前の腐っていた時期で25歳、そこから更にカサマツで長い間仕事をしていた*14ようなのであんまり若くはない。
地方のトレーナーは安月給なのか、オグリのレース用具一式を新調した際にはカードの請求金額に呆然としていた。(なお、税込み82005円)
初期のみではあるものの、オグリのことを「キャップ」と呼んだ数少ない人物。



笠松時代のオグリキャップの関係者複数名がモデルになっていると目されており、
「オグリキャップの将来を鑑みて泣く泣く手放す」のは最初の馬主の小栗孝一氏、
「中央移籍を目指すも一度目の試験は落ちる」のは主戦騎手の安藤勝己氏*15
「オグリキャップで東海ダービー制覇を目指すも中央移籍でご破算になる」のは調教師の鷲見昌勇師のエピソードがそれぞれ元になっている。
また、「穣」が「ゆたか」とも読めることや17巻以降の展開から、オグリとも因縁浅からぬウマ娘にめっちゃ詳しい解説の人こと武豊氏や1990年宝塚記念時にオグリキャップに騎乗した岡潤一郎氏をも意識している可能性があるが、
後にその武氏本人をモチーフとしたキャラが別途登場しているため、これに関しては偶然の一致かもしれない。

またアニメに登場した名ありチームトレーナーと同じく、方角が含まれる苗字と麻雀の役「嶺上開花」の「上」に当たる名前という命名法となっている。

柴崎宏壱(しばさきこういち)

CV:柴崎哲志/浪川大輔
北原の後輩でフジマサマーチの担当トレーナー。
当初は自身に対して不遜な態度をとるマーチに頭を悩ませていたが、彼女が丸くなって以降は関係も良好になったようで、戦績芳しくないマーチのリベンジマッチを組むなど優秀な一面も見せている。
密かに中央のライセンス取得を目論んでいるらしいが…?
ちなみに一部読者の間では、同じく笠松競馬場出身の柴山雄一騎手がモデルと噂されている。

川村日和(かわむらひより)

CV:生天目仁美
3バカの担当トレーナー。そばかす顔の女性。
男性陣の不作法や不真面目な教え子たちに悩まされ、しかめっ面をしていることが多い。
最初はフジマサマーチを自分のチームに加えようと勧誘したが失敗し、半ば消去法でノルンエース達3人をスカウト。
彼女たちの性根を叩き直すべく日々奮闘している。
長らく名前不詳だったが単行本第2巻にて名前が判明し、柴崎とは幼馴染で元ヤンキーだったという設定も追加されている。

六平銀次郎(むさかぎんじろう)

CV:大塚芳忠
中央トレセン学園所属のトレーナーで、北原の叔父に当たる。腐っていた北原をカサマツに口利きして就職させた恩人。
北原がいつも被っている模様入りのハンチング帽は元々は六平が被っていたもの。
北原には「ろっぺいさん*16」と呼ばれ、その度に訂正している。

険しい顔立ちとサングラス、ぶっきらぼうな口調など一見近寄りがたく映るが、実際には優しく、また責任感の強い性格で、ウマ娘達からも信頼されている名トレーナー。
若い頃はもはやその筋の人にしか見えない風貌をしており、北原に面と向かって泣かれた際にはさすがに凹んだ模様。
ついた異名は「フェアリーゴッドファーザー」。本人的にはとっても不本意らしい。
奈瀬「カッコイイと思いますが」

休暇中の帰省ついでにカサマツのジュニアクラウンを観戦しに訪れるが、その際北原に「"東海ダービーを目指すなら"オグリキャップを中京盃に出すのはやめろ」と忠告する。
しかし北原はそれを受け入れず(北原としてはオグリに経験を積ませた方がいいと判断)、ベルノライトと共に入念な芝対策を講じたうえでオグリを中京盃に出走登録。*17
オグリもその期待に応え、後続に2バ身差をつけての圧勝を飾る。
……そして六平の言った通り、芝で結果を出してしまったオグリは中央にスカウトされ、東海ダービーを目指すことはできなくなった

中央篇ではオグリの担当トレーナーとなる。
六平本人は「北原が中央に来るまでの面倒を見るだけ(意訳)」と言っているが、指導自体は真面目かつ的確にこなしている。
「ふわっと走れ」「わかった」「わかったの!?」
‥まあこれはともかくとして、領域を「都市伝説のような物」と言いつつも蔑ろにはせず、引き出すヒントを得るために
中山競バ場を貸し切ったり、カサマツ時代の仲間とスクーリングをさせるなど「実」とメンタル面も考慮したケアもばっちりである。

モチーフは中央におけるオグリキャップ号の管理調教師であった瀬戸口勉氏。

奈瀬(なせ)文乃(ふみの)

中央トレセン学園所属の若手女性トレーナー。
「偉大」と称されるトレーナー奈瀬英人を父に持ち、自身も若き天才トレーナーとして世間の耳目を集める。
しかし自らの出自を鼻にかけることはなく…どころか事ある度に著名な父と比較される事をかなり嫌っており、この世界の主役はウマ娘と主張する誠実な性格。
凛とした容姿も手伝って、女性ファンのおっかけが多数ついている。僕っ娘。
そのイメージとは違い、描く絵はかわいらしい。
六平は彼女の父親に散々煮え湯を飲まされた模様*18。「ライバルなのか」と問うベルノライトに対して「ライバルじゃねえ、敵だ」と返すほど。
もっとも、彼女と六平の関係は(彼が自分を「父とは関係ない個人」として扱ってくれる事もあり)割と良好であり、大レースを前に談笑する光景も見られた。
例の渾名をカッコいいと言い放ったあたり、センスの方はだいぶ怪しい

脚回りの不調でまともに走れなかったスーパークリークを見出し、自らのチームにスカウト。
菊花賞は回避待ちの状況だったが、奇跡を信じるのもトレーナーの役目と語る。
―――そして、その通りに1人が出走回避。見事に奇跡を起こし、最後のクラシックに愛バを送り出す。

前述の経緯もあって、クリークとは強固な絆で結ばれている。
彼女自身クリークには特別な思い入れがあるようで、「私を見つけ、信じてくれたことが奇跡」と感謝の言葉を贈られた際には尊みに打ち震えていた。
親愛の情を超えてでちゅね遊びが近づく

ちなみに公式Twitter掲載の4コマ(単行本9巻にも収録)によると好きなのは寿司とレース観戦、苦手なのはニンジンと注射だそうな。

モチーフは競馬界のレジェンド、武豊氏。*19
スーパークリーク号を見初め、弱冠19歳にして菊花賞を制覇。その後の活躍はもはや説明不要だろう。ニンジンと注射が嫌いなのもその通り。
界隈では「武豊の擬人化」*20なるパワーワードが飛び交い、大きな注目を集めた。
ただし武豊氏が史実で1989年天皇賞・春時に騎乗したイナリワンとは特に接点がなく、1989年マイルCS時に騎乗したバンブーメモリーのトレーナーが漫画では父親の方、オグリキャップに騎乗した1990年安田記念に当たるレースで深く関わったりもしない事を踏まえると、
(少なくとも今の所は)「スーパークリークに騎乗した武豊」がモチーフと言えるか。

小宮山(こみやま)勝美(まさみ)

中央トレセン学園所属のトレーナーで、自称六平の一番弟子
タマモクロスを担当しており、ツナギの上半分を腰で結んだ服装や耳元を彩る複数のピアスなど活動的なルックスが特徴。
また175cmと女性としてはかなりの長身、かつ胸も大きめと担当とは正反対な体躯であり、小宮山本人は無自覚ながら時折その格差にタマモクロスを歯噛みさせている模様。
管理栄養士の資格を持ち、食の細いタマモクロスを献身的にサポートしている。

タマモクロスとは互いに「タマちゃん」「コミちゃん」と呼び合う仲で、その溺愛ぶりはかなりのもの。
屈辱のスモックなどタマモクロスをコスプレさせて撮影する趣味があり、作者曰く写真フォルダの9割はタマモクロスの写真らしい。
一方メンタル面はまだ未熟なところが目立ち、タマモクロスが独断で先行策を取った際には激しく動揺していた。

名前の由来は恐らく、タマモクロス号の管理調教師であった小原伊佐美氏と主戦騎手を務めた南井克己氏。
ちなみに南井氏は史実では1989年にオグリキャップの主戦騎手を務めたのだが、本作では六平がトレーナーのため、彼にオグリキャップに役立つような情報の提供を行うに留まっている。

オグリキャップの母親

CV:皆口裕子
かつてはレースに出ていたウマ娘。オグリの特徴的な髪飾りは彼女が現役時代に使っていたものである。
膝が悪く立ち上がることすらままならなかったオグリの脚を毎日懸命にマッサージし、カサマツトレセンに入学できるまでに回復させた。
安アパートで見るからに貧乏な暮らしをしており、親ひとり子ひとりの生活は決して楽なものではなかったと思われる。
そうした苦労をも飲み込み、カサマツの学費でさえも「アンタの食費に比べればたいしたことない」と一笑に付してみせる肝っ玉お母さんである。
オグリの側も母親のことが大好きで、送られてくる手紙を読んでは顔をほころばせる。

勘違いされがちだが、オグリのカサマツ入り時点で元気にご存命である(一方、タマモクロスの母は……)。
また、基本的に登場人(ウマ?)物以外は顔は出てこないのだが、回想シーンで顔の全体が出て来た事がある*21

モチーフはオグリキャップの母馬であるホワイトナルビー。*22
自身は活躍できなかったものの、繁殖牝馬として15頭の産駒を残し、しかもそれが地方中心とはいえすべて勝ち上がりを果たしている*23
G1馬も2頭輩出*24しており、産駒の累計勝利数は実に133勝という歴史的名繁殖である。

藤井泉助(ふじいせんすけ)

中央のレースを取材している記者で、コテコテの関西弁を操るコミカルな男。
煽るような見出しの記事を書くなど一見不真面目にすら見えるが、内に秘める熱意は本物。
オグリの走りに惚れ込み、クラシック登録のない彼女をダービーに出すため記者なりのやり方で奔走する。なお、リアルの走り方がマンガ走りそのもの

語学堪能であり、作中ではトニビアンカ(伊語)とムーンライトルナシー・ミシェルマイベイビー(英語)に通訳なしでインタビューしている。
作者曰く「世界中のウマ娘に取材できる程度には喋れる」とのこと。パネェ。

記者としての能力やモラルもしっかりしており、海外選手相手でも日本国内向けの会見であれば上記の語学力をひけらかさず敢えて日本語で質問したり、
奈瀬英人の付き人(サブトレーナー?)からはレース直前にも関わらず無遠慮に詰めかけたマスコミと対比して「マスコミが全員藤井くんだったらいいのに…」とまで言わしめている。

名前の由来は競馬界屈指の論客として恐れられ、オグリのクラシック参戦不可に異を唱えた事でも知られるクイズダービー司会でお馴染みのタレント、評論家の故大橋巨泉氏と思われるが、設定や役回りは独自の要素が強い。
外見で言えば特徴的な黒眼鏡などは受け継いでいるが、それ以外は似ても似つかぬイケメンである
巨泉氏個人がモチーフというよりは、「(氏を含め)『オグリキャップブーム』を盛り上げたマスメディア全体」の代表、擬人化とも言えるか。

遊佐(ゆさ)よし()

藤井の後輩の新人女性記者。第三章のジャパンカップ編から登場。
元々ファッション部門志望であったことからウマ娘に対しては不勉強な部分が多く、藤井には「素人」扱い。
一方で取材を続ける内にオグリのファンになったようで、藤井からはイジられている。

「元々レースに興味は無かったがオグリを通じてファンになる女性」という描写から、所謂「オグリギャル*25」がモチーフかもしれない。

■用語集

クラシック登録

クラシックレース*26への出走を志すウマ娘が予め済ませておかねばならない特別な登録。
作中では「書類審査のようなもの」といわれているが、詳細は不明。
ジュニア期をカサマツで過ごしたオグリキャップはこの登録を行っておらず、クラシックレースへの出走が叶わなかった。
しかし彼女の奮闘と周囲の尽力がURAを動かし、追加登録の制度が整備された。

現実の競馬においても同様の制度が存在する。
1レースあたり40万円という高額の登録料を支払う必要があり、短距離馬や仕上がりに時間のかかる大型馬については登録を見送ることも多い。
前述の通りオグリキャップの無念の後、1992年から追加登録も可能となっているが、その場合の登録料は200万円にまで跳ね上がる。
もっとも、クラシックレースは関係者にとって一世一代の晴れ舞台であり、それなりの順位に入るだけでも高額の賞金が得られることもあって、追加登録料を支払い出走した競走馬は多数存在し、栄光を掴んだ事例も複数存在している。
登録料のかからないだろうトゥインクルシリーズで登録を見送る理由があるのかどうかは永遠の謎


領域(ゾーン)

時代を創るウマ娘が必ず入るとされる「限界の先の先」
「領域」に入ったウマ娘は本人すら知らない豪脚を解放し、圧倒的なパフォーマンスで他バをちぎり捨てる。
要するにゲーム版の固有スキル*27

作中ではマルゼンスキー・シンボリルドルフ・ミスターシービーが「領域」に到達済み。
また、タマモクロスが秋の天皇賞において「領域」に入り、追いすがるオグリキャップを突き放して勝利を収めた。
曰く「世界が自分1人になったような感覚」とのことで、極限の集中によって限界を超えた能力が発揮されるものと推測される。
ルドルフ曰く「領域(ゾーン)状態ではパフォーマンス向上などのメリットと引き換えに体力の消耗が激しく、長期戦には不向き」との事だが、
有馬記念におけるタマモクロスは「領域」状態を意識的に制御する事で過度に体力を消耗する事なく長時間のパフォーマンス向上を実現させるという芸当を見せ、
向こう正面からの驚異の追い上げで観衆のみならずライバルウマ娘たちをも戦慄させた。アプリ版ゴルシの固有スキルかな?
一方で先行からのスタミナ勝負を旨とするスーパークリークは上記のルドルフの言にも見られるスタミナ問題に直面した際、
掴みかけた「領域」を意図的に手放す事で自身のレーススタイルを組み上げており、脚質との相性などによっては「敢えて使わない」というのも選択肢に入ってくる。

極度の没入(フロー)によって過剰な集中状態に突入する「ゾーン状態」や、運動の継続により多幸感がもたらされる「ランナーズハイ」など、
現実のスポーツでも類似の概念は報告されている。
特にフローに関しては、「周囲が見えなくなるほどの集中により高いパフォーマンスを発揮する」という点でかなり近い描写が見られる。


永世三強

オグリキャップ(カサマツ出身)・スーパークリーク(中央生え抜き)・イナリワン(大井出身)の3人を括った総称。
作中においては「熱狂をもたらす綺羅星たち」と称され、トゥインクル・シリーズの黄金時代を牽引するトップランナーとして絶大な人気を集めている。
元号が永世ということではない、多分
第三章のタイトルとしても採用された。

元ネタは「平成三強」。
平成初頭の競馬界において覇を競った上記3頭を讃えたもので、それぞれがGⅠ級レースを3勝以上するという目覚ましい活躍を見せた。
なお、武豊は3頭すべてに乗って合計7勝
後には93年クラシック世代のトップホースたちが「新・平成三強」と呼ばれたが、こちらは実質ビワハヤヒデの一強体制に帰着したため、今ではウマ娘でも多用されているBNWという呼び名の方が一般的かもしれない。

谷間の世代

18巻第162Rであるキャラクターが言及した、オグリキャップらの1つ下の世代を指した蔑称
上の世代に永世三強をはじめとした強豪ウマ娘たちが集い、下の世代にもメジロ家のウマ娘達等デビュー前から注目を集める有望な素材が揃ってしまった結果、
誰にも関心を持たれず世代丸ごと無視されるという悲惨な扱いを受けている。
作中では「頑張っても誰も見てくれない」との理由で退学する娘が描かれ、大きな反響を呼んだ。

元ネタはそのまま、史実における89年クラシック世代(86年生まれ)のこと。
牡馬クラシックの上位勢が故障・出来落ちで古馬戦線を満足に戦えなかったこと、そして上の世代も下の世代も歴史に名を遺す名馬が揃っていたことにより、
古馬王道路線のGⅠ級レース勝ち数がわずか1つという残念な結果に終わっている。
繁殖に入っての実績も芳しくなく、日本競馬史上屈指の弱卒との評価を覆す材料は未だ得られていないのが現状である。
また「ウマ娘プロジェクト」においても、2024年10月現在実名での実装馬が皆無(本作でオグリキャップと対戦し名前が出たこの世代のキャラもすべてオリジナルウマ娘)という寂しい状況となっている。


■余談

作画担当の久住太陽氏のTwitterには本作の書下ろしが多数掲載されている。登場人物の日常や舞台裏・パロディイラストを見る事ができるので気になる方はチェックしてみよう。
いくつか未公開になったもののあるが単行本化された際に扉絵として掲載されている。

作中に登場するレースは、基本的に現代ベースとなるアニメやゲームとは異なり
当時は「朝日杯FS」ではなく「朝日杯3歳S*28」なので(ウマ娘変換を加えて)「朝日杯ジュニアS」になっているなど史実の同時代に準じた設定になっているが、
東海ダービーが88年当時には存在しない現行の格付け「SP1」で紹介される等細かな違いもある。

ちなみに現実の笠松競馬場では本作の単行本発売を記念した協賛レースが開かれる予定だったが、
同競馬場の馬券購入を巡る競馬法違反行為に関する新たな報道がよりにもよってレース当日に朝日新聞によって報じられた為、急遽中止。この件は笠松競馬場自体の廃止の可能性も取り沙汰されるほどの事件であった。
その後、単行本第7巻発売の迫った2022年4月29日に改めて「シンデレラグレイ賞」が無事に開催されたが、事件を理由にした批判も根強い。
2023年にも開催されているが、この年は笠松町長選挙*29が近かった為、選挙を目の前にした町長の政治的アピールの疑いも持たれていたり……
2024年に至っては4月29日にコラボ企画が行われ、第4競走で3連単122万円の配当が出た。


追記・修正は、ウイニングライブでカサマツ音頭を踊ってからお願いします。

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  • 川井憲次
最終更新:2025年04月23日 12:54

*1 当初の脚本担当は杉浦単独だったが、第77R(単行本9巻収録分)以降はPitaとの連名となっている。

*2 この部分はメディアミックスでもご丁寧についていることの方が多く、「ウマ娘」だけなのは『ウマ娘 ピスピス☆スピスピ ゴルシちゃん』くらいである。

*3 オグリキャップの生涯を1クールアニメにしたらたぶん1話で消化されるくらいカサマツは序章。

*4 オグリキャップは彼女から不思議な感覚を受けた。ちなみに手腕だけでなく脚力も一級品らしい。

*5 ウマ娘関連では一時交流競走認定されていた2000年に、史実のアグネスデジタル号が中央から遠征して勝利した事で知られる。

*6 後にサムソンビッグを担当。

*7 日本各地に支店を持つチェーン店とのこと。メジロ家などには流石に劣るものの十分な資産家の出自でもある。

*8 「最低でも」英語、イタリア語、フランス語が話せないとムリィー

*9 だが、後にカサマツで8連勝、中央で6連勝で14連勝中だった事がノルンエースの口から出ている。とするとオグリはデビュー戦と4戦目で負けた事になるが、その2敗目が非常に曖昧ではある。

*10 但し、勝因はオグリキャップの靴が破損したためであり、本人は全く納得できない勝利だった

*11 中央でのデビュー戦など、気にかけている様子はあるが

*12 部屋を追い出して物置に押し込める、出走前に靴紐を解く、走行中に後ろから踵を踏もうとする。特に後者二つは相当に悪質

*13 中央移籍決定後は漢字表記で「北原」に変わった。

*14 少なくともカサマツのトレーナーが全員北原の後輩になるくらいの年月はある模様。

*15 後に中央競馬へと移籍しダイワスカーレット号等に騎乗した。このため、北原も後々ダイワスカーレットと組むのでは?という予想も。

*16 若いころは「ろっぺい叔父さん」

*17 この時のオグリは本当に楽しそうで、晴れ晴れとした表情だった。後のことを考えると何とも切ない。

*18 モデルと思われる瀬戸口勉氏と武邦彦氏は1936,1938年生まれと世代が近い。

*19 「たけ」を50音で左に一文字移すと「なせ」。また、豊と書いて「ぶんの」と読む苗字が実在する。

*20 言うまでもなく、武豊はもとから人間である。残している実績は人外の極みだが。

*21 但し、目はつぶっていた

*22 マルゼンスキーと同年産まれ。その関係か、2巻でマルゼンスキーが「どこかで見た事がある」と何かを察したような発言がある が、そんなのコミックのみ勢のどれだけがわかるんだとか言ってはいけない

*23 大雑把に言うと、産んだ半分も勝ち上がらせれば十分大当たりである。そもそも15頭もいたら全頭無事にデビューすることすら容易ではない。

*24 オグリキャップと、1994年桜花賞馬のオグリローマン。

*25 オグリキャップを追いかけ競馬場に詰めかけた女性ファンの総称。競馬ファン以外の層をも巻き込んだ「オグリキャップブームの象徴」の一つと言える。

*26 皐月賞・日本ダービー・菊花賞・桜花賞・オークスの5レース。勘違いされがちだが、4歳限定時代のエリザベス女王杯及び秋華賞はクラシックレースではない。

*27 特にオグリは、領域を能動的に発動するトリガーとして「残り200mに入る瞬間」を用いるという、固有スキルの条件を連想させる設定が成されている。

*28 これは旧年齢の3歳なので、現在で言う2歳ステークス。

*29 結局、現職以外に対立候補が現れず無投票当選。