SCP-3939-JP

登録日:2025/04/30 Wed 23:46:22
更新日:2025/05/01 Thu 18:03:42NEW!
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SCP-3939-JPとは、怪異創作コミュニティサイト『SCP Foundation』に登場するオブジェクトの一つである。
項目名は「質より量」。
オブジェクトクラスは「Euclid」。

概要

SCP-3939-JPはモンゴロイド系の少女である。どの現存民俗にも合致しない不明の文化を持っていて現在は財団にて言語や技術のギャップを埋めるための専用トレーニングを受けている。

その最大の異常性は群を抜いた耐久性。酸欠や絶食への抵抗はもちろん耐眠性や老化耐性、果ては高低温に高低圧への耐性と財団が調べただけでも18項目の基準に対して高い耐久性を見せており財団基準で言うところのクラスBの耐性評価を貰っているようだ。年端もいかない幼女の耐久テストをする財団というのも絵面的に中々マズイ

こんなスーパー耐性幼女を財団はどこから拾ってきたのかというと薩摩硫黄島近辺に位置する海底とのこと。どうやら発見されたときSCP-3939-JPは半身が海底に埋まった状態で意識はあるものの呆然自失だったらしい。

SCP-3939-JPは先ほど述べた通りどの現存民俗にも合致しない不明の文化を持っており当然母語も未知の言語である。しかし調査の結果、上代日本語と部分的に類する点があったためソレを足がかりに研究が重ねられた。言語学部門による訓練により今では簡易ながらも意思疎通が可能になっており、本人曰く自分の名前を現代の日本語で発音すると『ヒイコ』となるようだ。


インタビューログ

異常存在との意思疎通ができるようになったとなれば次に待っているのはインタビュー。というわけでここからはSCP-3939-JPへのインタビューログを見ていこう。


[記録開始]

相模研究員: 大丈夫でしょうか、ヒイコさん。ゆっくりでいいので、あなたが海の底に埋まった経緯を教えてください。

SCP-3939-JP: [暫しの沈黙] にえ。怒り。

相模研究員: にえ、生贄……ですか?何に対する?

SCP-3939-JP: アカボッコ。

相模研究員: アカボッコ。神様のようなものでしょうか。

SCP-3939-JP: 雨、強い。魚、取れない。クニ、腹減った。アカボッコ、怒ってる。

SCP-3939-JP: 私、強い。すごく、強い。みな、言った。私、美味しい。アカボッコ、気にいる、きっと。

相模研究員: それで……生贄に捧げられたのですね。

SCP-3939-JP: 私、船乗った。水の中、降りた。大きな石、抱いて。

どうやらSCP-3939-JPは昔から極度の耐性を持っていたようで、その異常性を認められて生贄に抜擢されたようだ。会話に登場する『アカボッコ』というのは別の異常存在だろうか。


SCP-3939-JP: 私、口の中、入った。アカボッコ、笑った。舐めて、吸って、噛んだ。

SCP-3939-JP: 噛んで、噛んで、噛んだ。

SCP-3939-JP: 噛んで、噛んで、噛んだ。

相模研究員: うん……?

SCP-3939-JP: 噛んで、噛んで…… [次第に小声になり、沈黙]

相模研究員: ヒイコさん?

SCP-3939-JP: [目を伏せる] アカボッコ、噛み切る、なかった。

相模研究員: それは……

SCP-3939-JP: アカボッコ、怒った。すごい怒った。アカボッコ、舌出した。舐めて、取った。たくさんたくさん。クニ、なくなった。

相模研究員: [沈黙] まさか、他の人を……?

SCP-3939-JP: [頷く]

思い出して欲しい、SCP-3939-JPの異常性はその凄まじいほどの耐久性。生きたまま海中に沈められたSCP-3939-JPは酸欠耐性により当然生きていたが、なんと高低圧耐性により『アカボッコ』の咀嚼すらもモノともしなかった。
食べ物としての生贄を望んだ『アカボッコ』からすれば噛んでも噛んでも噛み切れない子供を一人送られるなんてたまったものではない。業を煮やした『アカボッコ』はSCP-3939-JPを無視し地上へ侵攻。SCP-3939-JPが所属していたクニの人々を根こそぎ食べてしまったのだ。まさにメタタイトルの通り『質より量』である。
(『マトモに食べれない生贄』という点で考えると『アカボッコ』からすればそもそもSCP-3939-JP自体が生贄として最下級の質かもしれないが)


SCP-3939-JP: アカボッコ、満ちて、寝た。私、吐かれた。水、底、落ちてった。

SCP-3939-JP: [困惑した表情で] 私、石みたい、だった。邪魔な、貝の、小石。

[記録終了]

結局アカボッコはSCP-3939-JPのクニの人々をたいらげて満足した。SCP-3939-JPは、我々が身に混じって口の中に入ってきた魚の骨を吐き出すように『アカボッコ』に一人吐き出され海中に沈んだ。
彼女が陸へ戻らなかったのはまだ幼女の身体能力ゆえ水面まで泳ぐのが不可能だったからだろうか。それとも生贄に抜擢されたにも関わらず『アカボッコ』には無視されクニの人々も守れなかったがゆえの無念さからだろうか。幼女の尊い命が失われずに済んだとはいえなんとも後味の悪い話である。


補遺

しんみりとした空気で話を終わらせようとしたがこの報告書にはまだ補遺が残っている。

SCP-3939-JPの埋まっていた辺りの堆積物を調査したところなんと7300年前に形成されたものであることが判明した。どれくらい前かと言うと単純計算で紀元前5000年、いわゆる縄文時代だ。つまりSCP-3939-JPは7300年もの間一人ぼっちで水底に沈んでいたことになる。どんな酸欠耐性だよ
インタビューが出来ていることからも分かる通り精神がイカれてしまっているわけでもないようなので、もしかしたら精神面でも強い耐性を持っているのかもしれない。

形成年代や周辺地理、SCP-3939-JPの言い分を合わせて考察された結果、このオブジェクトには縄文時代早期に発生し南九州一帯を壊滅させた超大規模火砕流噴火、いわゆる鬼界-アカホヤ噴火*1との関連があると見られている。

実は大規模災害の現場にて高耐性の人型オブジェクトが見つかる例は他にもあり
  • SCP-5B61-IN - インドネシア・トバ湖
  • SCP-2S12-IT - イタリア・フレグレイ平野
  • SCP-3A56-US - アメリカ・クレーターレイク国立公園
  • SCP-8K39-JP - 日本・箱根カルデラ
とナンバリングもされている*2。いずれの事例でも人型オブジェクトは自然崇拝および人身御供思想の影響下にある点が概ね共通する特徴として存在しているとのこと。昔の地球はポケモンの色違いみたいなノリで高耐性人間が生まれてたのか…?


余談

ナンバーである『3939』の由来は作者曰く「サクサクして美味しそうだったので」とのこと。サクサクどころかガチガチだったせいで吐き出されてるんだよなぁ




追記・修正は要求者が満足するような生贄を用意してからお願いします。


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最終更新:2025年05月01日 18:03

*1 さすがにSCP-3939-JPの存在はフィクションだが鬼界-アカホヤ噴火は実際に現実世界に実在したとされている。 Wikipediaへのリンクはコチラ

*2 話すのも野暮であるがナンバーを見ても分かる通りコレら4つのオブジェクトは非正規オブジェクト、つまりこの報告書限定のオリジナルSCPである