サボテン

登録日:2012/04/15 Sun 04:57:29
更新日:2025/07/23 Wed 18:45:54
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サボテンとはサボテン科に属する植物の総称。英名は「cactus(カクタス)」。


概要

名の由来は、日本に渡来した南蛮人達がウチワサボテンの切り口で服の汚れを拭き取ったり、
石鹸(シャボン)をつくっていた為、石鹸体(シャボンテイ)と呼ばれたのがはじまり。
あまり知られていないが、これ以外にも複数の呼び方がある。
  • トウナツ、たうなつ、唐茄子、他胡奈紫
和爾雅(1694)
庶物類纂(1715)
  • イロヘロ、いろへろ、伊侶倍呂
大倭本艸(1709)
  • サンポテ、さんほてい、佐牟保天
増補地錦抄(1710)
  • サツホウサチラ、ささらさっぽう、佐々良佐豆保宇
合類大節用集(1698)
倭漢三才図絵(1713)

何故このような名前が生まれたのかは諸説あるが、
当時のサボテンの学名「Opuntia tuna」のtunaをトゥナと発音して訛ったという説、
丸い茎節で伸びる姿かたちを七福神の布袋さまの丸い顔に見立て「三布袋」として訛った説。
これら2つが分かれば相当なマニアと言えるだろう。知ってる世代が寿命を迎え始めている。

現在でもおじいちゃんおばあちゃんにはシャボテンという人がいるし、静岡県にはサボテンが多い動植物園・伊豆シャボテン公園なんてものもある。
もっぱら戦前や戦後初期はシャボテン、40~50年代にサボテンという呼び方が主流となった。
これは当時の名人、伊藤芳夫の著作、また愛好家グループの栽培本による影響が大きい。


種類

砂漠や荒野にポツンと生えるイメージのあるサボテンだが、その生息地は多種多様。
森林地帯や高山、はては寒冷地に生えているのもある。
例えばブラジルの熱帯雨林、アンデス山脈の森林限界、果てはガラパゴス諸島の海辺まで。

何故これほど分布域が広いのか?それはサボテンの祖先が関係している。
今は昔、3000万年前から3500万年前に、中央アンデス地域にサボテンは生まれた。
それはサボテンでありながら、普通の葉をもつ、ちょっと刺があるだけの低木であった。

しかし、アンデス山脈の造山運動により、サボテンが生えていた地面が動き出した。
サボテンは動かず、大地が動いた。
標高5000mから海抜0m、森林限界から熱帯雨林まで、幅広い環境が突如生まれた。
その多様な環境に適応するため、サボテンも多種多様に進化していく。

  • レウエンベルギア亜科
もっとも祖先的な系統とされる低木のサボテン。
木の葉があり、かつてはコノハサボテン亜科に含まれていた。
  • コノハサボテン亜科
ぺレスキア属とロドカクタス属からなり、これも木の葉をもつ。
前者はキリンウチワとして万能台木になり、後者は観葉植物として人気がある。
  • マイフエニア亜科
アンデス山脈の山間部、標高3000m以下に適応したサボテン。退化した葉をもつ。
ちなみにウチワサボテン亜科には収斂進化し標高5000mに適応したPunotia lagopusがある。
こちらの方が高地に適応したと言ってはいけない。

  • ウチワサボテン亜科
サボテンの語源となった文字通り団扇のような形が特徴の団扇サボテン。
−50℃の極寒に耐えるほど適応力があり、ときに侵略的外来種として駆除される。
台木として用いると比類なき野性味のある姿に成長するが、数年で台木の寿命が尽きる。

  • カクタス亜科
マラカスもった陽気なオッサンの後ろに描かれたり、サボテンダーのような
サボテンをイメージしたキャラデザでおなじみ柱サボテン。
またガーデニングや観葉植物として人気の高い玉サボテンでもある。
ヒトによる品種改良が最も進んだもので、日本の園芸種が世界で珍重されている。
150年以上の長命種から10年以下の短命種まであり、最も多様性に溢れている。
美人薄命の代名詞月下美人もクジャクサボテンというサボテンの一種。

  • ブロスフェルディア亜科
昭和の名人、輸入商であった龍胆寺雄により売り出された「世界最小のサボテン」。
野生下では直径1センチの可愛らしい姿だが、接ぎ木するとブクブクに肥え太ってしまう。

これら6亜科、151属、1855種からなる分類群までサボテン科は適応放散した。
しかしこの分類群も変化し続けている。
10年前の分類が今では時代遅れ、学術的に間違っていることすらある。
サボテンの分類は1897年の「Gesamtbeschreibung der Kakteen」から本格化したが、
それを含めて100年はアナログな形態的・地理的なデータに依存し、正確性に欠けていた。
だが...今は違う!
進化を直接辿ることができるDNAの発見により、事情が変わった。
現在、2000年代から実用化した、分子系統解析による再分類が行われている。
詳細が知りたいアニヲタ諸氏はJoël Lodé氏の「TAXONOMY of the CACTACEAE」、
サボテン科ひいてはナデシコ目の分類学者によるネットワーク「caryophyllales.org」、
これらを参照して頂きたい。

因みにトウダイグサ科等の多肉植物の中には、サボテンに似た形になるものがあり、
これをサボテンとして販売する店もある。杜撰とは言ってはいけない。

生態

茎が大きく発達している一方で葉は退化してしまい針状だったり場合によっては無かったりする。葉を針みたいにすることで、大事な大事な水分が葉から飛んでいくと言う事態を避けているともいわれている。凄く痛い。

また、アメリカの育種家バーハンクはトゲ をいちいち処理するのが面倒だからと、トゲの少ないサボテン同士を交配させたり、
トゲをひっこぬく作業をしたりというたゆまぬ努力の結果、トゲナシサボテンという品種の開発に成功している。

乾燥地帯に生えているイメージからかサボテンは水を遣らなくても大丈夫なんて誤解されがちだが、実際はお水大好き。
乾燥地帯というのはのまったく降らない乾季、バカみたいに雨の降る雨季があり、この雨季の間にそのでっぷりとした幹に水を溜め込んでいるだけなのだ。

といっても逆に毎日水を沢山やってしまうと「らめぇ! もうはいらないよぉ……」となってしまうので注意。


また、その瑞々しい果肉から食用にもされる。
メキシコでは食材として使われており、ウチワサボテンのステーキやサラダ、スープジャムなんてものも。
ステーキは味としてはやたらバカでかいオクラ。ネバネバだし。その他に噛み切れる昆布という感想もある。ジャムはイチゴのそれと見まがうほど鮮やかな赤色をしている。
また果実も食用され、赤々しい色合いで有名なドラゴンフルーツも実は紐サボテンの果実である。


和名について

さて、そんなサボテンであるが。和名がやたら厨二くさ…かっこよすぎる事で知られる

サボテンという字を入力してみよう。
覇王樹仙人掌という漢字が御降臨なされるはずだ。

またサボテンの種類をあらわす和名も兎に角厨二くさ……かっこよすぎるものばかりである。




以下サボテンの和名羅列。
(※全部れっきとした名前です)



般若    白獅子    金鯱

緋牡丹   翠晃冠   鬼雲丸

紫太陽   上帝閣   白桃扇

白蛇丸   麗蛇丸   金赤竜

猩々丸   月笛丸    玉翁

鸞鳳玉   竜神木  金鳥帽子


等々。
お前らは斬魄刀か。


更に更に、



福禄竜神木

刺無王冠竜

碧瑠璃鸞鳳玉


と完全に卍解に到達してる隊長格もいる。

中には珍宝閣(英名:penis cactus、通称:なるほど柱)なる優雅にして卑猥なものもある。


因みに前述した多肉植物のトウダイグサ科にも降魔の剣蜘蛛切丸暗黒王魔針地獄螺髪竜閻魔キリン
逆鱗竜とサボテンのようなやたらかっこよすぎる名前のものがある。





追記・修正せよ!
卍・解!碧瑠璃鸞鳳玉!!

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最終更新:2025年07月23日 18:45