コルト M16

登録日:2016/03/17 Thu 19:33:54
更新日:2025/06/26 Thu 23:12:05
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概要

米アーマライト社所属の設計士、ユージーン・ストーナー氏によって1960年に開発された突撃銃
製品名はAR-15。コルト社へ製造権が売却され、1962年以降段階的に軍に正式採用された。

ストーナーが開発した7.62x51mm口径のAR-10を原型に、小口径の5.56x45mm弾を使用する銃として開発された。
現在ではAK-47FN FALH&K G3と並んで「世界4大アサルトライフル」のひとつとして数えられている。

AR-10の段階でダイレクトインピンジメント(DI、ガス直噴)式やアルミ合金(超々ジェラルミン)製のパーツなど軽量化と低反動化に重きを置いていた。
M16ヘ改修するにあたり、5.56mmに対応するだけでなく木製部品を排除してプラスチックを多用。
このため現場では「ブラック・ライフル」「マテルのおもちゃ」と言われていた。
不適切な弾薬を使用したり定期的な整備を怠ると動作不良を起こす(これ自体は普通なことだが…)。



性能(M16A1)

全長:990mm
重量:2.86kg(弾倉、弾を除く)
銃身長:508mm(20インチ)
口径:5.56×45mm
装弾数:20or30 +1発
連射速度:900発/分



歴史

AR-15ことM16が初めて戦場に投入されたのはベトナム戦争
当初は5.56x45mm弾を信用していなかったりSALVO計画が進行中であった陸軍の反発により、M2カービンなどと同種の兵器として空軍などの後方部隊へ配備が始まった。
しかし、当時のアメリカ軍の採用小銃であったM14ジャングルの接近戦に不向きであり、
更に前線の特殊部隊が使用してみると、M14よりあらゆる点で優れていると評価を受けた。
国防省長官ロバート・マクナマラの支持による比較テストののち、陸軍でも全面的にM14からの置き換えが始まった。

しかし、初期型の無印M16が一般兵の手に渡ると問題が多発。

まず、弾薬の装薬が不適切(M14の7.62mm弾に使った火薬といわれる)であった。
更に、M14から未来的なデザインに変化したため「整備がいらない」という誤解と、それによる手入れの不徹底が発生。

本銃は戦時中であったがために、平時の数倍の速度(4~5年)での更新が行われた。
しかし直近の主力小銃の更新では
  • M1903→M1ガーランド(銃だけ交換して弾は同じ)
  • M1ガーランド→M14(弾は変わったが操作系統などはほぼ同じ)
と銃と弾が双方とも変わることが無かったのだ。
訓練も補給も異なるわけで、苦労するのは必至。
現在米軍が次期主力小銃について駄々をこねているのもこの時の苦労が原因…なのかもしれない(後述。そしてロシアもAK-12に同様の駄々をこねている)。

動かないM16に悩まされた兵士達がM14やM2カービン、敵から奪ったAK-47などで戦うという事態となり、それらの問題が連邦議会の上院で取り上げられるほど。
一時は欠陥銃扱いを受けていた(これも正式採用初期ではよくあることである…が戦時中なので大問題である)。

その後XM16E1を経て、
  • 閉鎖不良を直しやすくするためのボルトフォアードアシスト
  • 銃身のクロムメッキ処理
  • 引っ掛かりにくい新型のフラッシュハイダー
など数多の改修点を盛り込んだM16A1が誕生。
取り扱いマニュアルの完備や訓練方法の見直しに(弾薬製造などを含めた)兵站の改善なども行い問題のほとんどを解決し、兵士達からの信頼を取り戻した。
結局ベトナム戦争からは敗退するも湾岸戦争など数々の紛争で使用され、名実ともにアメリカを象徴する銃となっていった。

同時多発テロ以降のイラク・アフガン戦争でもM16A4や短縮版のM4/M4A1カービンが使用された。
これらのモデルはピカティニ―レールに対応。
ドットサイトやスコープ、ハンドガードがRIS(レールインターフェースシステム)対応であればバーティカルフォアグリップ、フラッシュライトやレーザーサイトを取り付け可能である。
特殊部隊向けのSOPMODシステムが有名。


XM8やHK-416、FN SCARなど次期主力小銃の座に就こうとする者もあらわれたが、軍内で「わざわざM16を置き換えるほどでもない」「M16と同じ操作ができないと次期小銃として採用しない!」という意見が強かった。
コルト社の熱心なロビー活動もありM16シリーズが存続するようになった(が、その後コルト社はFN社にM4カービンの調達権が移ったり倒産してチェコCz社傘下になったりしたのは内緒)。

SIG MCX SpearがXM7としてようやく次期主力小銃に採用されたが、一応平時ということもありまだM4A1は現役継続中である。



派生(カッコ内はコルト社内モデルナンバー)

AR-15(601~602):正式採用前のモデル。フラッシュハイダーがチューリップ型でボルトフォアードアシストがない。三角形左右分割型のハンドガード。
XM16E1(603):ボルトフォアードアシストが追加。
M16(604):初期型。AR-15と同じ。
M16A1(603):フラッシュハイダーが鳥かご型に変更。M203アンダーバレルグレネードランチャーが装着可能に。その他内部の表面処理などを改善。
M16A2(645):大量の変更点がある。総じてレールシルテム非対応な点以外は現行モデルに近い外観となった。
  • これまでの.223レミントン弾から、同寸法だがより威力の高いFN製のNATO制式弾へ更新。
  • フルオートから3点バーストへ変更。
  • ハンドガードを円形上下分割形状に。
  • 照準器の形状変更。
  • カートディフレクターの追加。
  • ストックの材質と長さを変更。
  • フラッシュハイダーの下面を埋め、発射ガスが跳ね上がりを抑える役割を負うように変更。
M16A3(646):M16A2のフルオートモデル。特徴的なキャリングハンドルが取り外し可能となり、上面にピカティニーレールを採用。
M16A4(945):M4カービン側の利点をA2、A3に反映させたもの。4面レールハンドガードに交換されたものが多い。
M607(607):ごく少数生産されたSEALs使用モデル。
XM177(609、610、619、620、629、630、639、649、653、654) :通称コルト・コマンドー。M16A1のカービンモデルで短縮した銃身に対応した巨大なフラッシュハイダーを搭載。この頃はカービンではなく短機関銃扱い。
M727(727、725、723、733):通称アブダビ・カービン。M16A2のカービンモデル。のちのM4カービンにつながる要素を備えている。
M4(777、920):M727からの派生。試作型のモデル777を除きトップレールを搭載。M3カービンの後の久々のカービンとして制式採用された。
M4A1(921、933、935):モデル921以降のフルオートモデル。途中からヘビーバレル(M203装着のための窪みがある14.5インチ銃身)に換装された。ヘビーバレルは民間仕様などでも(グレネードランチャーが法規制されているのに)再現されることがあるほど人気。

コルト 9mm短機関銃(633、634、635、639、991、992):9x19mm弾を用いる短機関銃モデル。
SPR Mk12/SAM-R/SDM-R:陸軍特殊部隊/海兵隊/陸軍がM16系統をもとに改造し制作したDMR。
Mk18(CQBR):10インチほどまで短縮したコンパクトモデル。
M231 FPW:ブラッドレー装甲車の車内から発射する為の実質簡易型。現在は使用されていない。

コルト社直々のモデル以外でもライセンス生産品が存在。
  • C7 C8(711、725):カナダ ディマゴ社(現コルト・カナダ社)
  • T65/T91:台湾
また、前述の通りFNハースタルとコルトカナダ社はコルト社に代わりM4A1とM16A4を米軍に納品している。

また、商標が切れる前後からクローンモデル(AR-15クローンと呼ばれる)や改良モデルがコルト社以外からも発売されている。割とアッパー/ロアレシーバーの互換性が高く、HK416のアッパーにM4A1のロアなどはポピュラー。
  • M5:コルト社直々の改良モデル
  • SR-16:ナイツ・アーマメント製 ストーナー氏の愛弟子謹製の一作
  • Noveske M4:Noveske製
  • M&P 15:S&W製 M&P拳銃などと同じブランド
  • R4/R4C/R5:レミントン製
  • HK416:ドイツ H&K製
  • AR556:スタームルガー製
  • POF P416:POF製。同社はAR-15スタイルのPCCであるPOF-9なども製造している。
  • SIG MCX:米SIG Sauer製
  • CQ311:中国ノリンコ製。イランやスーダンにてライセンス生産されている。
  • HPE140/ADAR2-15:露モロト製。
  • 603K/K1/K2:韓国製。ライセンス生産から始まり韓国独自の進化を遂げている。
その他イギリス、イスラエル、イタリア、チェコ、ウクライナと一応パキスタンなどでも製造されている。
ベトナム、アフガニスタン(タリバン)等でも撤退した米軍の残したM16/M4を鹵獲し運用可能な体制を整える過程で新造している。

口径違いのAR-15クローンも誕生しつつある。
  • ハニーバジャー:AAC社製
  • SR-47:ナイツ製 下記Mk47以前に試作された、AK-47と同じマガジンを使用可能な7.62x39mm弾仕様
  • Mk47ミュータント:CMMG製
  • SIG MCX Spear:MCXとは別もの
  • AR-15Beowulf:AlexanderArms社製 50口径の独自弾を使用(.458 SOCOM弾など小改造だけで大口径弾に対応できる寸法の弾と対応したAR-15が他にもある)



カスタマイズ

上で述べた通り、商標が切れたことでクローンや改良型が多数存在する。
パーツメーカーとしてマグプルやガイズリーなどが良質なカスタムパーツを生産。当該社製のハンドガードやマガジンは米軍や自衛隊でも採用されるほどの信頼性がある。
別々の会社のパーツを買って組み上げればオリジナルのAR-15が誕生!比較するには難しいが、自作PCかそれ以上のカスタマイズ性がある。
それらの需要を見込んでハンドガードなどを省いたカスタム専用モデルも販売されている。いやintelのF番(GPUの搭載を前提にCPU側のグラフィック処理能力を省いたモデル)かよ。

しかし銃規制によりフォアグリップやストック、バレルを変更しただけで銃種が変わってしまい追加徴税が発生したり州法に違反してしまうことに…。
以下AR-15系列に特に関係のある者の例。規制に適合したり逆に規制の穴をかいくぐったりと銃器メーカーの涙ぐましい努力を感じる。
  • バンプストック(疑似フルオート体験用パーツ)
  • アングルグリップ(銃に対して垂直ではないのでバーティカルフォアグリップ扱いされない)
  • サプレッサー風フラッシュハイダー(消音機能はなく、バレルに溶接してある。合計16インチ以上の長さとなり、合法的に短銃身のカスタマイズ風のものが作成できる)
  • スタビライザー/アームブレイス(肘位のところに固定するためのパーツだからストックじゃないと主張できる)
  • カリフォルニア対応クリップ(マガジンが着脱できないような規制があるけどチャンバーからならいいよね?オラッ即時クリップ給弾ッ!)
  • カリフォルニア対応銃(グリップが独立型だけど親指が通らないように板を追加)

また、上記銃規制対応以前に正真正銘のゲテモノも多い。
  • ベルト給弾(これ自体はカナダ軍などで実際に試験された)
  • FN P90のマガジン対応(当然薬莢は下から出る)
  • レバーアクション/ボルトアクション
  • 50口径対応(ベオウルフのような口径だけの変種とか弾頭だけを流用した12ゲージスラッグ弾ではない。ガチの.50BMGである。)
  • ブルパップ式
  • 横につなげた連装式
  • 砲のような銃身に前から缶を詰めて空砲で飛ばすライフル(?)グレネード
  • リボルバーショットガン(形を似せただけなので周辺パーツのみ互換)

そしてどんな銃にでもM4のストック部分にあるバッファーチューブを生やす改造が流行っている。
  • AK各種(AK-12だけは一応互換性がない)
  • FN FAL/FNC/SCAR
  • H&K MP5/G3/G36
  • M870など数多のショットガン
  • M700やM14の近代化キット
  • RONIなど拳銃用カービンキット
グリップなども互換性を持たせることがあり、SCARやGL40、前述の近代化キットで採用されている。

さあ、あなたのエアガン…FNCやAKM達にもバッファーチューブを生やしてあげよう。



配備国

M16はアメリカだけでなく親米国の多くに配備されている。

イスラエル軍では支援を受け入手したM16が制式採用され、IMIガリルやタボールと共に使用されている。
また冷戦時代共産ゲリラが暗躍していた中南米の反共政府軍にも多く導入された。

また、その供給量故かゲリラやテロリストの手にも渡る場合がある。

フィリピンやインドネシアなど東南アジアでは、ブラックマーケットに流れたM16などが反政府軍に使われ、
イギリスのIRA暫定派やスペインのETA(バスク祖国と自由)もカンパなどでM16を調達。
かの悪名高きISILもイラク軍から鹵獲したM16とM4を少数ながら使用している。

日本では国産小銃があったためかM16は自衛隊・警察・海上保安庁いずれも採用しておらず、規制強化前に民生版AR-15を狩猟用に改造したものが少量あるのみ。
既存の所有者は免許更新で所有認められているが、新規の所有は認められていないため何れ全て廃銃になる。
逆にM4は自衛隊(特殊作戦群)・警察(銃器対策部隊)・海上保安庁(特殊警備隊)など様々な特殊部隊の隊員が装備している写真が存在する。


登場作品


その他、映画に出てくるほとんどの米軍兵士が使用する他、
FPSやガンシューティングゲームの大半に登場する。





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最終更新:2025年06月26日 23:12