コルト M16

登録日:2016/03/17 Thu 19:33:54
更新日:2025/08/15 Fri 14:47:58
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性能(M16A1)

全長:990mm
重量:2.86kg(弾倉、弾を除く)
銃身長:508mm(20インチ)
口径:5.56x45mm
装弾数:20/30 +1発
連射速度:900発/分
作動方式:DI式(ダイレクトインピンジメント/直噴式) ターンロックボルト


概要

米アーマライト社所属の設計士、ユージーン・ストーナー氏によって1960年に開発された突撃銃
製品名はAR-15。コルト社へ製造権が売却され、1962年以降M16として段階的に軍に制式採用された。
現在ではAK-47FN FALH&K G3と並んで「世界4大アサルトライフル」のひとつとして数えられている。
本項目では派生モデルに関しても解説する。



構造

1950年代、ストーナー氏は7.62x51mm口径のAR-10を開発した。
AR-10では発砲した弾丸の発射ガスを直接機関部にあるピストンに吹き付けるDI式を採用。DI式は他の方式に比べ部品数減少、軽量化、ボルトグループの作動による重心変動が少なく反動が軽い という長所がある。
材質もアルミ合金(超々ジェラルミン)製パーツを用い、軽量化と低反動化に重きを置いていた。
ただしアーマライト社上層部が銃身までアルミ合金に変えて無駄な軽量化をしており、試験では銃身破裂により脱落しM14が採用されることとなった。
またこの段階ではキャリングハンドルの内側にレシプロのコッキングハンドルが存在する。M16を大口径化したのちのAR-10系統(SR-25等)とは毛並みが異なる点に留意。
それ以外ではボルトキャッチ、マグキャッチ等を自然に操作できる位置に配置しており、アンビでこそ無いものの操作性は良い。

AR-15はAR-10を小口径にダウンサイジングする形で開発された。
さらなる軽量化のためグラスファイバー製部品を排除して放熱板を仕込んだプラスチックを多用。現代のカービン銃と比べても遜色のない軽さを保持している(無論銃身は破裂しない普通の材質である)。

また、開口部の低減などを目的としてアッパーレシーバー後部にチャージングハンドルを別途追加し、ノンレシプロとなっている。

マガジンは長めのマグウェルにより気密が比較的高く、排莢部にはボルト後退と連動して開くダストカバーが装備されている。ボルトキャリアもアッパーレシーバーとかなり密接しており、ダストカバーが開いていても異物混入をある程度防ぐ。
上記の構造により機関部への異物の混入を概ね防いでおり泥や水に数刻浸かった程度でなら十分動作する。

異物の混入に対しても、DI式特有の機関部に吹き付けるガスによって吹き飛ばすことができ、対砂塵性能もそこそこ有している。

AR-15は反動軽減、軽量、対異物能力により開発当時/現在においてもかなり安定感のある突撃銃であるといえる。

歴史

M16が初めて戦場に投入されたのはベトナム戦争
当初は小口径弾を信用していなかったりSALVO計画が進行中であった陸軍の反発によりM2カービンなどと同種の兵器として空軍などの後方部隊へ配備が始まった。
しかし、当時の米軍主力小銃であったM14ジャングルの接近戦に不向きであり、更に前線の特殊部隊によるテストではM14よりあらゆる点で優れていると評価を受けた。
国防省長官ロバート・マクナマラの支持による比較テストののち、陸軍でも全面的にM14からの置き換えが始まった。
現場では樹脂の多用により「ブラック・ライフル」「マテルのおもちゃ」と言われていた。M14からいきなり未来的なデザインに変化した点も大きいだろう。

しかし、初期型の無印M16が一般兵の手に渡ると問題が多発。大きいのはふたつ。
  • 弾薬の装薬が不適切(M14用の火薬を無断で流用したといわれる)。そこからくるススだまりと腐食。
  • 未来的なデザインから「整備がいらない」と誤解され手入れの不徹底が発生。そこからくる銃の動作不良、腐食。
動かないM16に悩まされた兵士達がM1/M2カービン、敵から奪ったAK-47などで戦うという事態となり、それらの問題が連邦議会の上院で取り上げられるほど。
一時は欠陥銃扱いを受けていた(制式採用初期ではよくあることである…が戦時中なので大問題である)。

その後XM16E1を経て数多の改修点を盛り込んだM16A1が誕生。
問題についても取り扱いマニュアルの完備や訓練方法の見直し、兵站の改善なども行い問題をほぼ全て解決し、兵士達からの信頼を取り戻した。
結局ベトナム戦争からは敗退するも湾岸戦争など数々の紛争で使用され、名実ともにアメリカを象徴する銃となっていった。

同時多発テロ以降のイラク・アフガン戦争でも使用された。
この時期になると長年の使用により改修が進み、M16A4や短縮版のM4/M4A1カービンへと置き換わっている。これらのモデルはピカティニ―レールに対応。
ドットサイトやスコープ、ハンドガードがRIS(レールインターフェースシステム)対応であればバーティカルフォアグリップ、フラッシュライトやレーザーサイトを取り付け可能である。
特殊部隊向けのSOPMODシステムが有名。兵士各個人による位置調整や特殊部隊員によるカスタマイズに対応した。

XM8やHK-416、FN SCARなど次期主力小銃の座に就こうとする者もあらわれたが、軍内で「わざわざM16を置き換えるほどでもない」「M16と同じ操作ができないと次期小銃として採用しない!」という意見が強かった。
M16採用時の苦労をまたしたくない…という考えが大きいのかもしれない。(そしてロシアもAK-12に同様の駄々をこねている)
コルト社の熱心なロビー活動もありM16シリーズが存続するようになった(が、その後コルト社はFN社にM4カービンの調達権が移ったり倒産してチェコCz社傘下になったりしたのは内緒)。
2023年にはSIG MCX SpearがXM7としてようやく次期主力小銃に採用されたが、一応平時ということもありまだM4A1は現役継続中である。



バリエーション

コルト社純正。カッコ内は社内モデルナンバー。

M16シリーズ

AR-15(601~602)
制式採用前のモデル。フラッシュハイダーがチューリップ型でボルトフォアードアシストがない。三角形左右分割型のハンドガード。
XM16E1(603)
ボルトフォアードアシストが追加。
M16(604)
初期型。AR-15と同じ。
M16A1(603)
  • 閉鎖不良を直しやすくするためのボルトフォアードアシストを追加。
  • 銃身内部にクロムメッキ処理を追加
  • 草木に引っかからない鳥かご型フラッシュハイダーに変更。
  • M203アンダーバレルグレネードランチャーの装着能力。
M16A2(645)
大量の変更点がある。総じてレールシルテム非対応な点以外は現行モデルに近い外観となった。
  • これまでの.223レミントン弾から、同寸法だがより威力の高いFN製のNATO制式弾へ更新。
  • フルオートから3点バーストへ変更。
  • ハンドガードを円形上下分割形状に。
  • 照準器の形状変更。
  • カートディフレクターの追加。
  • ストックの材質と長さを変更。
  • フラッシュハイダーの下面を埋め、発射ガスが跳ね上がりを抑える役割を負うように変更。
M16A3(646)
M16A2のフルオートモデル。特徴的なキャリングハンドルが取り外し可能となり、上面にピカティニーレールを採用。
M16A4(945)
M4カービン側の利点をA2、A3に反映させたもの。4面レールハンドガードに交換されたものが多い。

カービン

M607(607)、XM177(609、610、619、620、629、630、639、649、653、654)
M727(727、725、723、733)
M4(777、920)
M727からの派生。試作型のモデル777を除きトップレールを搭載。M3カービンの後の久々のカービンとして制式採用された。3点バースト。
M4A1(921、933、935)
フルオートモデル。途中からヘビーバレルに換装された。
Mk18(CQBR)
M733の知見を活かしたM933等を基にしてさらに10インチほどまで短縮したコンパクトモデル。

その他

コルト 9mm短機関銃(633、634、635、639、991、992)
9x19mm弾を用いる短機関銃モデル。
SPR Mk12/SAM-R/SDM-R
陸軍特殊部隊/海兵隊/陸軍がM16系統をもとに改造し制作したDMR。
M231 FPW
ブラッドレー装甲車の車内から発射する為の簡易型。現在は使用されていない。

ライセンス生産品

前述の通りFNハースタルとコルトカナダ社はコルト社に代わりM4A1とM16A4を米軍に納品している。

C7 C8(711、725)

カナダ ディマゴ社(現コルトカナダ社)

T65/T91

台湾

AR-15クローン

商標が切れる前後からクローンモデルや改良モデルがコルト社以外からも発売されている。アッパー/ロアレシーバーの互換性が高めで、HK416のアッパーにM4A1のロアなどはポピュラー。
その他イギリス、イスラエル、イタリア、チェコ、ウクライナと一応パキスタンなどでもクローンが製造されている。
ベトナム、アフガニスタン(タリバン)等でも撤退した米軍が残したM16/M4を鹵獲し運用可能な体制を整える過程で新造しているとされる。

M5

コルト社直々の改良モデル

SR-16

ナイツアーマメント製 ストーナー氏の愛弟子謹製の一作

Noveske M4

Noveske製

M&P 15

S&W製 M&P拳銃などと同じブランド。.22LR弾仕様のバリエーションであるM&P 15-22を練習用小銃として使用する観光射撃場がある。

R4/R4C/R5

レミントン製

HK416

AR556

スタームルガー製

POF P416

POF製。同社はAR-15スタイルのPCCであるPOF-9なども製造している。

SIG MCX

米SIG Sauer製

CQ311

中国ノリンコ製。イランやスーダンにてライセンス生産されている。

HPE140/ADAR2-15

露モロト製。

603K/K1/K2

韓国製。ライセンス生産から始まり韓国独自の進化を遂げている。

ハニーバジャー

AAC社製 .330AACブラックアウト弾に対応している。

SR-47

ナイツ製。下記Mk47以前に試作された、AK-47と同じマガジンを使用可能な7.62x39mm弾仕様。

Mk47ミュータント

CMMG製でAK-47と同じマガジンを使用可能な7.62x39mm弾仕様。

AR-15Beowulf

AlexanderArms社製 50口径の独自弾を使用(.458 SOCOM弾など小改造だけで大口径弾に対応できる寸法の弾と対応したAR-15が他にもある)

SR-25

ナイツ製。7.62×51mm弾のセミオート射撃に対応しM16系統との部品の互換性もある程度担保されている。改修型がMk11、M110などとして米軍で運用されている。


カスタマイズ

上で述べた通り、商標が切れたことでクローンや改良型が多数存在する。
パーツメーカーとしてマグプルやガイズリーなどが良質なカスタムパーツを生産。当該社製のハンドガードやマガジンは米軍や自衛隊でも採用されるほどの信頼性がある。
別々の会社のパーツを買って組み上げればオリジナルのAR-15が誕生!比較するには難しいが、自作PCかそれ以上のカスタマイズ性がある。
それらの需要を見込んでハンドガードなどを省いたカスタム専用モデルも販売されている。いやintelのF番(GPUの搭載を前提にCPU側のグラフィック処理能力を省いたモデル)かよ。

主に行われるカスタマイズは以下の通り。
  • 機関部の強化
 チタンやステンレス製のボルト、シューター向けトリガーへの組み替えなど
  • ハンドガード/ストックの交換
 アッパーレシーバーと強化に接合しフラットトップ化*6したりライト、フォアグリップなどを取り付けるプラットフォームにしたりなど。
ただし純正ではバッファーチューブが後端に迫り出しており、折りたたみ機能を望むならその点を解消したMCXなどに乗り換える必要がある。
  • 操作系のアンビ化
 左右両方からの操作に対応するパーツを後付けする。しかしかなり後付感が増すので必要に応じて。
  • バレル交換
 各社精密なヘビーバレルや軽量なバレル、ピストル/SBR向けの短銃身などを販売している。
 ヘビーバレルと弾薬次第ではサブMOAを狙うことも十分可能。その際にはハンドガードをガスブロックに触れないフリーフロートのものに交換することがある。
  • マズル交換
 基本的にはA2の鳥籠ハイダーに近いもので済ませるが、より反動を軽減するためにコンペンセイターなどを取り付ける場合がある。
自治体によって許可されている場合はサプレッサーも候補か*7

しかし銃規制によりフォアグリップやストック、銃身を変更しただけで銃種が変わってしまい追加徴税が発生したり州法に違反してしまうことに…。
以下AR-15系列に特に関係のある者の例。規制に適合したり逆に規制の穴をかいくぐったりと銃器メーカーの涙ぐましい努力を感じる。
  • バンプストック(疑似フルオート体験用パーツ)
  • アングルグリップ(銃に対して垂直ではないのでバーティカルフォアグリップ扱いされない)
  • サプレッサー風フラッシュハイダー(消音機能はなく、銃身に溶接してある。合計16インチ以上の長さとなり、合法的に短銃身のカスタマイズ風のものが作成できる)
  • スタビライザー/アームブレイス(肘位のところに固定するためのパーツだからストックじゃないと主張できる)
  • カリフォルニア対応クリップ(マガジンが着脱できないような規制があるけどチャンバーからならいいよね?オラッ即時クリップ給弾ッ!)
  • カリフォルニア対応銃(グリップが独立型だけど親指が通らないように板を追加)

また、上記銃規制対応以前に正真正銘のゲテモノも多い。
  • ベルト給弾(これ自体はカナダ軍などで実際に試験された)
  • FN P90のマガジン対応(当然薬莢は下から出る)
  • レバーアクション/ボルトアクション
  • 50口径対応(ベオウルフのような口径だけの変種とか弾頭だけを流用した12ゲージスラッグ弾ではない。ガチの.50BMGである。)
  • ブルパップ式
  • 横につなげた連装式
  • 前装砲のように銃身に前から缶を詰めて空砲で飛ばすライフル(?)グレネード
  • リボルバーショットガン(形を似せただけなので周辺パーツのみ互換)

そしてどんな銃にでもM4のストック部分にあるバッファーチューブを生やす改造が流行っている。
  • AK各種(AK-12だけは一応互換性がない)
  • FN FAL/FNC/SCAR
  • H&K MP5/G3/G36
  • M870など数多のショットガン
  • M700やM14の近代化キット
  • RONIなど拳銃用カービンキット
グリップなども互換性を持たせることがあり、SCARやGL40、前述の近代化キットで採用されている。

さあ、あなたのエアガン…FNCやAKM達にもバッファーチューブを生やしてあげよう。



配備国

M16シリーズはアメリカだけでなく親米国の多くに配備されている。

イスラエル軍では支援を受け入手したM16が制式採用され、IMIガリルやタボールと共に使用されている。
また冷戦時代共産ゲリラが暗躍していた中南米の反共政府軍にも多く導入された。

また、その供給量故かゲリラやテロリストの手にも渡る場合がある。

フィリピンやインドネシアなど東南アジアでは、ブラックマーケットに流れたM16などが反政府軍に使われ、イギリスのIRA暫定派やスペインのETA(バスク祖国と自由)もカンパなどでM16を調達。
かの悪名高きISILもイラク軍から鹵獲したM16とM4を少数ながら使用している。

日本では国産小銃があったためかM16は自衛隊・警察・海上保安庁いずれも採用しておらず、規制強化前に民生版AR-15を狩猟用に改造したものが少量あるのみ。
既存の所有者は免許更新で所有認められているが、新規の所有は認められていないため何れ全て廃銃になる。
逆にM4は自衛隊(特殊作戦群)・警察(銃器対策部隊)・海上保安庁(特殊警備隊)など様々な特殊部隊の隊員が装備している写真が存在する。


フィクション

M16

コルトコマンドー


恐らくM727が最も活躍する映画。フート一等軍曹を初めDボーイズ(デルタフォース隊員)が使用。

レームがM727を好んで使用。恐らくM727がry 特に5巻での活躍が目覚ましい。しかし7巻の武器統一に伴いマグプル MASADAへ。MASADAェ…
でも回想で9巻の序盤大活躍。ヤッタネ!

  • HEAT(映画)
M733が登場。マグチェンジをするシーンは米海兵隊の教練用ビデオでも用いられたと言われる。

M4カービン

  • ザ・シューター/極大射程:M4カービンをスワガーおよび敵兵が使用。

HK416



その他、映画に出てくるほとんどの兵士が使用する他、FPSなど大半の近現代戦シューティングゲームに登場する。



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最終更新:2025年08月15日 14:47

*1 XM149アンダーバレルグレネードランチャーに対応

*2 排莢した薬莢を前に弾き飛ばす突起

*3 M16A2ではハンドガード内はA1と同じ細身となっている

*4 また、M203側もカービン系に装着出来る様に改良されM203A1になっている

*5 特に2011年のDEVGRUによるアルカイダのボスであったウサマ・ビンラディン殺害を目的とした「オペレーション・ネプチューン・スピア」で使われた例が有名。

*6 載せられる照準器のレパートリーが増える

*7 耳栓をしていなくても射撃ができる