突撃銃

登録日:2009/05/28 Thu 00:20:00
更新日:2025/07/01 Tue 18:43:36
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突撃銃(英 Assault Rifle(アサルト ライフル)/ Sturm gewehr(シュトゥルム ゲヴェーア))とは銃器の一種である。
ドイツ語が語源となっているが、大人の事情からドイツでは呼称を避けられるケースが多い*1



【概要】

ライフル弾(7.92x57mm弾)と拳銃弾(9x19mmルガー弾)の間をとった中間弾薬を使用し、連射(フルオート・バースト)も可能となった歩兵用自動小銃である。
設計思想は必要十分な距離で圧倒的火力を個人単位で発揮することとされており、短機関銃では足りずライフル弾では過剰な距離(300~600m)のニーズに対応するものである。

このコンセプトに沿った最初期の物は第二次大戦末期のドイツで設計、運用されたStG44。Strum Gewehrという名称もこの銃の有用性を認めた際に時のヒトラーが名付けたものである。

これ以前にも1人で持ち歩けるフルオート可能な歩兵用自動小銃としてはアメリカのBAR、ドイツのFG42、ソ連のAVS-36などが存在するが、それらは当時のフルサイズのライフル弾を用いており分隊支援火器や空挺用など局所的な面が強かった(これ以前にも1人で持ち運べる小銃はあるが彼はマシン・ライフル)。

WW2後に同様のコンセプトで制作されたソ連のAK-47がベストセラーとなり、ベトナム戦争以降は東西両陣営で突撃銃というカテゴリが本格的に普及していった。
現在の歩兵用自動小銃は基本的に突撃銃として使うのが前提の設計であり、例外はほぼ「専門職の兵員によるスナイパーライフル」「儀礼銃」のようなまったく別の用途を想定しているものである。

現代の突撃銃はカテゴリとしては上記の定義通りだが、3点バースト機能のみを備えたものや、スコープを標準装備し中距離の狙撃に対応したものなど幅広い銃が存在する。
汎用性を高める工夫も多く行われており、豊富なアクセサリーパーツによって様々な戦場に対応させたり、マークスマンライフルとして採用することもある。


尚、ロシアのフェドロフM1916が突撃銃の始祖として話題に上がる事がある。
この銃が使う6.5×50mmSRは日本製で、フルサイズ弾ではあるが他の弾に比べると低威力・軽反動になっている*2
故に中間弾薬に該当するのでは?という説である。
しかし、上記コンセプトを意図したものではなく、軽機関銃に近い設計と運用をなされた。

また、アメリカのM2カービン(M1カービンにフルオートを付け加えた物)も突撃銃に近い銃ではある。
しかし.30カービン弾はのちの5.45x39mm弾(1300J)にも届かない(1100J)比較的低威力の弾である。そしてこちらも意図した結果ではなかった*3



分類

現代における突撃銃には基本となるもの以外にも様々な派生型がある。

従来型

口径は5.45~5.8mm程度か7.62mmが主流で弾数は20~30+1発。
有効射程は300~600m程度となる。
全長は1m以下、弾倉を含まない重量は4kg以下の物が多い。
7.62mmNATO弾を採用した初期の突撃銃は、反動が強くフルオートを交えた運用が難しい。これは第二次世界大戦までの戦訓を踏襲して比較的遠い間合い(600m以遠)での使用を前提としていたためで、ベトナム戦争以降は近距離戦の必要性が増えたことにより小口径高速の5.56mmNATO弾などに移り変わっていった。
運用としては「フルオートもできるセミオート歩兵銃」。弾幕による支援や制圧効果は汎用機関銃に任せるが、いざというときには代打ができる…という形で各兵士の対応可能範囲を広げる。

主な銃器

  • Stg44 : 短縮弾をいち早く用いた実質的な突撃銃第一号
  • AK-47 : 戦後ソ連製。Stg44の運用思想とM1ガーランドの構造を引き継いだ突撃銃
  • M14 : 戦後標準化された7.62x51mmNATO弾に対応した、ダウンサイジングしたM1ガーランドといった銃。
  • FN FAL/G3/SIG SG510/64式小銃 : 7.62x51mmNATO弾の使用に適合した各国の突撃銃。
  • M16 : ベトナム戦争でジャングルでの接近戦の必要性が増えたことから更新された5.56x45mm弾を用いた突撃銃。後からNATO弾に対応。
  • FN FNC : FALが優秀すぎて大規模な採用はされなかったものの、開発したSS109弾が5.56x45mmNATO弾として標準化された。
  • G36/SIG SG550/K2/89式小銃 : 5.56x45mmNATO弾の使用に適合した各国の突撃銃。
  • AK-74 : 5.56x45mm弾に感化されたソ連が開発した5.45x39mm弾対応の突撃銃。
  • 95式自動歩槍 : 5.56x45mm弾やAK-74に感化された中国が開発した5.8x42mm弾対応の突撃銃。
  • SCAR : 米軍の次期主力小銃として開発されたもので、バリアントとして通常サイズの銃身が存在する。


カービン

銃身を通常より短縮化した銃の総称(突撃銃では概ね20インチから14.5インチへ短縮)。取り回しが良いが、弾速その他の短銃身ゆえの問題が発生する。
射程の面では十二分なことから、従来型の歩兵銃を更新する場合がある。
初期には短機関銃として分類されることがあった。

主な銃器

  • コルトコマンドー(XM177等):M16をより短縮した特殊部隊向け短機関銃/カービン。短銃身のノウハウがまだ足りずマズルブラストなどに苦心した跡がみられる。
  • K1短機関銃 : M3グリースガンの後継として開発された短機関銃。運用としては特殊部隊向けで上記と共通点も多い。
  • AKS-74U : ソ連製のカービン。特殊部隊や戦車兵の自衛用などとして用いられた。
  • M4カービン : コルトコマンドーの改良発展型。M16を置き換え、現状の米軍の主力小銃。
  • G36C/SIG552/HK416/20式小銃 : カービンとして短縮化された各国の突撃銃。欧州ではHK416の採用が増えたことで実質的にカービンが主力になりつつある。


ブルパップ

機関部が引き金より後部に位置する形式。詳細はブルパップの頁にて。
70年代に多く採用されたが、独特の形状のせいで更新の際に全く異なる訓練が必要であるため、2025年現在では従来式かカービンに再更新している場合もある。
『機動戦士ガンダムシリーズ』宇宙世紀OVA三部作でジム系のMSが持ってたあれのことである。『1st』『08小隊』ビーム・ライフルや『0083』ロング・ライフルと比べれば小型化されているのが理解できるだろう。

主な銃器



システムウェポン

基本となる機関部を中心に、銃身やストック等のパーツの組み替えで突撃銃のみならず分隊支援火器(機関銃やマークスマンライフル)として使用出来る、というシステム。
部品の共通率が高くなることにより、生産やメンテナンス面が改善される利点がある。

欠点は拡張性をもたせたことによるパーツ点数の多さとコスト。
また部品に求められる耐久性の問題から帯に短し襷に長い中途半端な性能になることも多い。
エッセンスを引き継いだ方式として、現在は既存の突撃銃に連射向けの改造を行った汎用機関銃が採用される(RPKやL86など)。

主な銃器

  • M63(アメリカ)
  • XM8(ドイツ)


モジュラーライフル

システムウェポンと近い概念だが、パーツの交換で複数の弾種に対応するシステム。バレル、ボルト、マガジンとそのハウジングをモジュールとして交換できる。
場合によっては弾の寸法を合わせることでマガジン回りまで共有することさえできる。
AR-15などアフターマーケットが充実している場合、サードパーティーによって後付けで能力を獲得することも。

主な銃器

  • G3:厳密には当てはまらないが、コスト削減を狙ってMP5やHK33など別口径間である程度の部品の共有化を行っており、先駆者といえなくもない
  • FN SCAR(5.56x45mm/7.62x51mm):7.62x51mmのH型は5.56x45mmにも対応しているため、米軍ではH型のみをMk17として採用している。
  • SIG Sauer MCX(5.56x45mm/.300BLK/7.62x39mm):AR-15クローン。5.56x45mmと.300BLKとではマガジンまで互換性がある。



フィクションにおける突撃銃

ゲーム

FPS・TPSでは冷戦以降を描いた作品で初期装備としてよく登場する。
全武器種の中では威力・射程・連射速度・弾数などが全てがそこそこのバランス型武器であることが多い。

各国で多くの銃が採用される一方、弾やマガジン容量などが統一されており性能の棲み分けがしづらいらしく、各国のステレオタイプなアレンジがなされることがある。
  • オプションでしかないバースト射撃能力がフォーカスされるFA-MAS
  • 安定動作を意識して(そしてバランス調整のため)弾数を少し減らされるL85その他
  • 反動が強いが威力も高いAK(AK-74以降はむしろ小口径高速弾のなかで最弱クラスの弾と優秀なコンペンセイターによるマイルドな反動が特徴なはずであるがAK-74でも踏襲される)
  • ほぼ唯一の戦中突撃銃だが周りのボルトアクションライフルに合わせて癖をつけられるStg44(もしくは対抗馬として前述のフェドロフM1916やM2カービンを突撃銃として祭り上げる)
上記のイメージがある人もいるのではないだろうか。
一方で拳銃などが主武装になるサバイバルホラーでは、散弾銃と並んで弾が貴重だが強力な上位の武器として登場する場合がある。

漫画

こちらも軍隊や殺し屋などを描いた作品への登場が多い。
ゴルゴ13では戦後を代表する突撃銃としてゴルゴのM16とAK-100シリーズとの対決が描かれた。

映像作品

漫画同様。ただし近年ではプロップガンではなくエアガンにVFXを追加する形での撮影形態が増えており、エアガン特有の造形やアレンジが含まれてしまうことがある。

遊戯銃

古くからモデルガンとして親しまれ、エアガンとしてもガスガンや電動ガンとして販売されることが多い。
サバイバルゲームに使用するには少し大きい為、最適化するために実銃では連射が不可能となるカスタマイズが施されることも。



余談

7.62mmNATO弾を採用した初期の突撃銃をバトルライフルと称する場合がある。
軍用として発達した銃器ではあるが、民間市場でもライフルとして人気で規制に合致させたAR-15やAKなどを自衛やスポーツに使用することも。
最近では警察や湾岸警備隊出身者が軍の教本に縛られない新しく実用的な射撃方法を確立しており、特にCクランプは米軍に取り入れられている。


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最終更新:2025年07月01日 18:43

*1 Gewehr(小銃)のみで呼ばれる

*2 大体BARが使う.30-06と、M14が使う7.62×51mmNATO弾の中間あたりになる。

*3 運用思想と弾の威力はむしろPDWに近いのでそちらで祭り上げられることもある