公衆電話

登録日:2025/03/11 Tue 19:44:38
更新日:2025/03/18 Tue 23:59:57
所要時間:約 4 分で読めます




公衆電話とは、料金を払えば誰でも自由に使える電話のこと。

概要


多くの場合、公共事業として公的機関およびそこから委託を受けた組織によって提供されている。

日本では電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第七条に基づき「国民生活に不可欠な基礎的電気通信役務」として国の義務にされている。
そのため旧日本電信電話公社の流れを汲む東日本電信電話(NTT東日本)および西日本電信電話(NTT西日本)が管理している。

基本的に人が集まる公共施設に設置されているが屋外にも公衆電話ボックスを介して提供されている。
設置場所については東西NTTのWebページで公開している。

かつては電話機自体が高価・個人所有する代物ではなかったので需要が高く、固定電話普及後も屋外からの連絡手段として広く使われていた。
しかし携帯電話の登場・普及により利用率は激減。2025年現在は赤字運営となっており設置台数は年々減少傾向にある。
そのため電気通信事業者法の規定に基づき1電話番号当たり2〜3円程度の「ユニバーサルサービス料」を徴収してNTTの公衆電話を含む固定電話サービスの維持費に充当することが定められている。
またNTT側の施策として収入増も兼ねて電話ボックスのスペース貸出サービスを行っており、実際に無線LANスポット等で利用されている。
只、災害時には公益性に基づき個人電話よりも通信が優先される*1。そのため有事は無料通話が認められる場合がある。

分類


第一種公衆電話


電気通信事業法施行規則(昭和六十年郵政省令第二十五号)第十四条に基づき設置が義務化されている物。
市街地(最近の国勢調査の結果に基づく人口集中地区)には概ね1㎞に1台、それ以外の地域(無人の地域は除く)には概ね2㎞に1台置くことが定められている。

NTTが独自に設置する公衆電話


NTTでは法的義務がある第一種とは別に「第二種公衆電話」と称して独自に公衆電話を配置している。
市街地向けの追加分や企業向けがこれに分類される。

委託公衆電話


駅や大型の商業施設等に置かれている物。管理はその施設の管理者に委託されている。
かつては赤色が多かったことから、そのまま「赤電話」と呼ばれていた。

特殊簡易公衆電話


主に飲食店向け。普通の一般加入電話に料金収受機能が追加された物で店舗の置き電話兼用な所もある。
かつては公衆電話不足が問題になっており、そこから自分が所有する電話機を客に貸す商売が誕生。これを電電公社が公認し公衆電話網に組み込んだのが誕生のきっかけ。
こちらはピンク色が多かったことから「ピンク電話」と呼ばれていた。

電話機の種類


アナログ公衆電話


最も一般的な公衆電話。2025年現在は基本的に緑色

ディジタル公衆電話


灰色に塗装されていることが多く「グレ電」と呼ばれることが多い。
通常のアナログ公衆電話の機能に加えて、有線LANやPCカードを用いてダイヤルアップ接続が可能。一部は赤外線通信やICテレホンカードにも対応していた。
屋外の電話ボックスにはアナログ機との区別のために「ISDN」と書かれている。
しかしより高速なインターネット共有サービスの普及と電話網IP化に合わせたISNネット(ISDN)廃止に合わせて2024年1月をもって終了。
そのためアナログ公衆電話への置き換えが進んでいる。

その他


  • 現金の場合だとお釣りが出てこない。日本では100円玉だと割高との指摘が出たため1982年からテレホンカードが導入された。
    日本国外だとクレジットカード・デビットカード払いが可能な物も存在している。

  • NTT docomoではSMSセンターに電話するとSMS機能がない電話機でもメッセージを送ることができる機能を提供しているが、これは公衆電話でも使用可能。
    文字入力はポケベルと同じやり方。ただし受信側がdocomo回線である必要がある。

  • KDDIとソフトバンクもそれぞれ前身が国際電信電話株式会社*2、日本国有鉄道(国鉄)の通信部門だったことから独自に公衆電話を提供していた時期があった。

  • 専用のカプラーを装着することでアナログ公衆電話でもネット接続が可能だった。只、周りの音・振動の影響を受けやすく通信速度は不安定だった。

  • 1993年には2025年時点の天皇陛下が皇太子時代ご成婚を祝ってパレード沿線の公衆電話を全て金色に塗り替えられた金色の公衆電話が存在した。
    『四谷の金色の公衆電話から昭和26年の10円玉硬貨で片思いの相手に電話すると恋が実る』という都市伝説にもなっていたが、現在は全て撤去されNTTも保管していないため現存しない。

作品における登場

1985年『コマンドー』では、元大統領のアリアスが当時最先端の携帯電話を使う一方で、部下のサリーやヒロインが使うのは公衆電話。主人公はサリーが逃げ込んだ電話ボックスごと持ち上げているので、これが初の筋肉式携帯電話だともいえる。

1992年『ゴジラvsモスラ』や1993年『ゴジラvsメカゴジラ』時点でも、携帯電話は大企業の社長が使用する高額な代物なので主人公が公衆電話に向かって全力疾走するシーンがあるが、1995年『ゴジラvsデストロイア』ではマスコミ関係者が使用しているシーンもあるので、普及率がかなり伸びたことがうかがえる*3

なお、作劇上役に立つのが、屋外空間の貴重な密室空間である「電話ボックス」。
世界一有名なアメコミヒーローの着替え場所になったり、通話中の何の罪のない一般人が追い出されたり、彼女との会話中に筋肉モリモリマッチョマンらが乱入して素手喧嘩を始めたりと、「災難の場」としても活躍していた。

2002年の映画『フォーン・ブース』では、鳴っている公衆電話に出たら愉快犯のスナイパーに狙いをつけられるという最悪の災難に見舞われる。
目前でチンピラを射殺されて冤罪を着せられたり、警察隊とマスコミが取り囲むなかで自分の浮気を暴露するように仕向けられたり、騒ぎを聞きつけてやってきた恋人と浮気相手にも銃口を向けられて「お前のためにどちらかを殺してやろうか?」と悪魔の如く囁かれたりと、主人公の浮気という罪に対してあまりにも重たすぎる制裁が加えられる作品である。


ある程度まで普及していた1999年の『マトリックス』でも、公衆電話が現実世界と仮想世界の往来手段として利用されたり、秘密結社の入り口にされたりしていたが、携帯電話が一般人に普及するとともに減少した。

ハリーポッターシリーズでは魔法省の外来用入り口として使われている。62242とダイヤルして名前と用件を伝えると入ることができる。普通の電話ボックスに偽装しているため、一人で入れるぐらいのスペースしかなく、付き添いなどで二人で入ろうとするととてもキツい。




追記修正は10円玉を山積みにした電話機の前で。

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最終更新:2025年03月18日 23:59

*1 災害時は電波が使えなくなることが多く、有線電話の方が安定して使えるという理由もある。

*2 国際電話業務を担うためにNTTから分離独立して誕生した企業。法令で国際電話の業務を独占していた。

*3 携帯電話普及率は、1992年6月で1.4%、1993年6月で1.7%、1995年6月で9.4%。