登録日:2025/08/30 Sat 20:51:00
更新日:2025/09/02 Tue 20:51:35
所要時間:約 7 分で読めます
かいぞくポケットは、寺村輝夫(作)、永井郁子(絵)による児童文学シリーズ。1989年から1998年までに全20巻があかね書房より刊行された。
【概要】
ある日突然
海賊となった子供が、大人3人の手下、そして不思議な力を持った
ネコと共に海賊船で世界中の海を股にかけ、摩訶不思議な世界を巡る海洋冒険記。
寺村にとっては『
王さまシリーズ』に次ぐヒットシリーズとなった。
初期は小学校中学年が読むことを想定して執筆されていたが、幼児からの支持率が高いことがわかると、それ以降はより低年齢層向けを意識した作風へと変化していった。
【特徴】
中世風の海賊を題材にしているが、テレビやラジオ、自動車など現代の事物も登場するため、明確な時代設定はないらしい。
ストーリーは基本的に1話完結式であるものの、時々前回までの出来事に紐付けられた展開もあったり、物語の終盤でポケットらが手に入れた宝物が次作でひとつの伏線回収や重要な役割を果たす形式が採られていたりするため、順に読んでいくのが望ましい。
ちなみに宝物は基本的に次の回で使用したり交換して失われ、そして次の宝物を入手するのでいつまでたってもポケット号の宝の蔵は埋まらず
そもそも宝が収納しておくほどのものでないことも多いため「ロボット人間ポン」では全然使われてない部屋として牢屋の代わりにされていた。
他の寺村作品でも見られる独自の表現が多用されているのも本作の特徴。
特に、各巻の冒頭で読者に「物語を始めるための呪文」を唱和させるくだりや、各章の終わりにある
「もしきみが○○できたら次を読んでよろしい」という様々なフリは印象的。
毎回従っていた律儀な読者もいるのではないだろうか。
中でも『竜王のたからもの』は実験的な手法がかなり多く見られ、ある道具を使わないと読み解けない文章など
ゲームブック的特色が強い。
毎回様々な超常現象や呪い、奇妙な世界観がポケットらを幾度となく惑わし苦しめるのだが、事件解決後も多くの謎が解明されないまま締め括られるパターンが多い。このような読者に不思議な読後感を与えるのも本作の印象的な特徴のひとつと言える。
見返しにはポケット号の内装や間取り図が描かれており、仕掛けだらけの海賊船の秘密を紐解きながらポケットたちの船内での暮らしぶりを想像させるワクワク感をストーリーの本筋に添えてくれる。
【登場人物】
ゲストキャラクターを除くと、レギュラーキャラクターは以下の通り。
◆ポケット
本作の主人公。「ポケット号」の船長である男の子。
ある日不思議な呪文を聞いてから、突然自身が海賊の格好になって海賊船に乗っていたところから物語は始まる。なぜ海賊になったかは本人にもわからない。
手下からは「おかしら」と呼ばれている。
最年少であることや知識もないまま海賊の頭になったことから船長としての未熟さも目立つが、時にはキャプテンらしい勇敢さやリーダーシップを発揮し、回を重ねるごとに冷静な分析力をもって困難や謎に挑む姿も顕著に見られるようになる。
ピストルを携行しており、ジャンには劣るが射撃技術も持ち合わせている。
嫌いな食べ物はニンジン。(ただしポンが料理したものは普通に食べれる)
各巻で歌われる歌や体操は第1巻でポケットが即興で考えたもので、体操の振り付けもデタラメ。回ごとに歌詞の内容も少し異なる。
よし、次はおまえたちの自己紹介だ!
はい。 ほい。 へい。
◆ジャン
手下の1人で砲撃手。(実際はケンがさぼることが多いので雑用も多い)
瓶底眼鏡をかけており近眼だが、砲術の腕は一流。彼の射撃能力によって危機を脱した回は数知れず。目が悪い分、聴覚や嗅覚に優れる。
彼の砲術の腕がすごすぎて砲撃するとほぼ一発で相手をしとめるので、本編で「弾幕を張る」ような展開になったことがほぼなく、
ジャンが真っ先に使用する船首の1門以外ポケット号の大砲はほとんど使われていない。(見返しの見取り図でもいつの間にか舷側の砲に「(あまり使わない)」と書かれている)
じゃんけんでいつもチョキを出す癖がある。
◆ケン
手下の1人で水夫。
長い髭を生やした大男。帽子を目深に被っているため
目が常に隠れている。
性格はぐうたらで粗暴。ポケット号のマスト畳みや自慢の怪力を活かした荷物の積み込みが仕事だが、暇さえあれば甲板で寝てばかりいる。
じゃんけんでいつもグーを出す癖がある。
◆ポン
手下の1人で
コック。
鼻が大きくポケット並みの小柄だが、性格は3人組の中では一番しっかり者。料理の腕は抜群。読書家で料理以外の知識にも富む。
じゃんけんでいつもパーを出す癖がある。
3人ともポケットとは歳が大きく離れたオッサンだが、子供であっても船長の肩書きを持ったポケットへの忠誠心は高い。しかし『はねのあるキリン』では1日に何度も体操をやらされることに嫌気が差し、ちょっとした反乱を起こした。
◆アイコ
人語を話すメスの白いネコ。ポケットを海賊の世界に連れて来た。ピンクのリボンを首につけている。
魔法を操ることができる他、邪悪な気配を察知する力に長けている。
また、「ポケット、ケポット、トッポケト」という呪文で幾度もポケットたちの危機を救っている。
こう書くと最強な気もするが、「はねのあるキリン」では魔法を使ってはいけないとこの回のゲストキャラから言われ問答無用で魔法を封じられたこともある。
(この状況でも会話はできたので猫なのにしゃべれるのは魔法と無関係)
普段はポケットたちに協力的だが、時折彼らと別行動を取ったり彼らの目的や意志に反する行動に及んだりすることもある他、対立もしがちである。特にジャンはアイコの気まぐれさを快く思っておらずしばしば悪態をついている。
普段は船のイカリ付近にある隠し部屋に身を潜めている。ポケットを含めメンバーは誰もその存在を知らない。
ポケットには特別な感情を寄せており、ポケットが別の女性に恋をすると嫉妬することがある。
なお、ポケットを除く仲間たちの鉄板ネタに
「お菓子などの最後の1つをめぐってジャン・ケン・ポンがじゃんけん勝負」
↓
「全員チョキ・グー・パーで勝負が延々つかない」
↓
「アイコが『アイコでしょ』と言って横取り」
というものがある。
【余談】
- 寺村が当初考案した第一作は「歯医者へ行くのを嫌がる少年が、気がつくと海賊になっていた」という導入だったのだが、寺村が教授を務めていた文京女子大学の学生たちからの評判が芳しくなかったため、「ポケットといういつの間にか海賊になった少年が初めから登場する」という出だしに変更された。
- 同じ寺村・永井による『わかったさんのおかしシリーズ』の主人公・わかったさんがカメオ出演したことがある。一方、ポケットも『わかったさん』や『わたし魔女ですマヤイです』に登場しており、『わたし魔女になりたい!』ではアイコの呪文が登場する。
- 現在のところアニメ化や映画化はされていないものの、NHK Eテレ『おはなしのくに』で語り聞かせという形で映像化されたことがある。また、人形劇やミュージカルなど舞台化された例もいくつか存在する。
もしきみがこの項目をみていて、かいぞくポケットがよみたくなったら、
いますぐちかくの本屋さんへ行って全巻を買ってこよう。
すべてよみきったら、追記・修正をしてよろしい。
- 随分懐かしいものを…ギリ平成のそんな昔からあったのか… -- 名無しさん (2025-08-30 21:50:05)
- 小学生の頃に学校の図書室でよく借りて読んでたなぁ。あと唯一買ってもらった「アイコのじゅもん」の表紙が子供心に怖かったのが印象に残ってる。 -- 名無しさん (2025-08-30 22:54:25)
- 『わかったさんのアイスクリーム』にポケットたちが出演した他、アイコの呪文も登場した記憶が -- 名無しさん (2025-08-30 23:57:31)
- なつかしいめっちゃ読んだ。…これ完結してたの…? -- 名無しさん (2025-08-31 01:03:03)
- おそらく平成キッズの学校図書室や教室隅の本棚に高確率で置かれていた名作 -- 名無しさん (2025-08-31 02:26:20)
- 見た事あるけど読んだ事は全く無いな… -- 名無しさん (2025-08-31 08:49:31)
- 家の前にトラックが通り過ぎたら次を読んでよいとか割と無茶ぶりもあったな。あとやっぱり20巻で終わりだったのか -- 名無しさん (2025-08-31 17:53:58)
- 書店向けのあらすじで、ポケットは歯医者での治療中に虫歯ドリルのキュイーンという音を聞いて思わず目をつぶったらいつの間にか海賊船にいた…的なのを読んだ事があったわ -- 名無しさん (2025-08-31 20:52:17)
- どこまで読んだか記憶が怪しいが小学生時代に読んでたのは覚えてる -- 名無しさん (2025-09-01 01:57:41)
- こういった海賊系の児童文学でクマのファというキャラクターが出てきたと思ってたけど記憶古すぎて別の作品と混濁してるかも… -- 名無しさん (2025-09-01 10:16:13)
- 王様のまほうつかいチョモチョモでも次の章に進むための課題があったな。そこから継承されたのかな? -- 名無しさん (2025-09-01 21:39:01)
- まさかと思ったら本当にアレで懐かしすぎる。透明人間ジャンと宇宙人間ケンが面白かったなぁ。ロボット人間ポンは……子供には怖かったんよ -- 名無しさん (2025-09-02 12:11:55)
- 最後の方でアイコがイカリに住んでいるのばれるけど、次の巻で結局アイツどこ行った?みたいになってた記憶がある -- 名無しさん (2025-09-02 12:31:27)
最終更新:2025年09月02日 20:51