海賊

登録日:2011/12/08 Thu 13:44:25
更新日:2025/03/07 Fri 12:57:47
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■概要

『海賊』とは、主に海上を猟場とする海の略奪者である。
航海しながら陸地へ略奪や国盗りなどをしているような場合も海賊扱いになったりする。

古代より、船舶や航海の技術が発達すると同時に、自然発生的に生まれた。
日本においては村上水軍や倭寇が有名。

盗賊ではあるが、イギリスにおいて、国家公認で敵国船から略奪を許された私掠船の船長、キャプテン・ドレイクが『sir』の称号をいただくなど、
海の英雄的な見方をされることもある。

比較的穏便な海賊は自分達の縄張を航行する商船から通行料を徴収する代わりに、真水及び食料の販売や水先案内人・港湾の貸し出しを行い、航海の安全を図っていた。
此処の処は陸の遊牧民や山賊も同様であり、輸送路の地元民である彼等の協力が無ければ商売が成立しない一面も有った
海賊の鎮定が通行料兼案内賃の取り立てのスムーズ化と相場の案内賃を超える取り立てを行ったり、通行者に危害を加えたりする悪徳地元民の排除という形で行われる事が多かった。
平清盛による厳島神社の整備も海賊達を合法範囲内での通行料徴収に留める為に話し合いの場を提供したと言う一面も大きい。

現代でも存在し、小型の高速艇を駆り、身の代金目的で船舶を襲う。ソマリアでは主要産業になっている。

例外もあるが、主に国家などの権力公認の海賊であるプライベーティアと自営業のバッカニアの二種類が存在している。

◆プライベーティア

フランス語のコルセアとも呼ばれる。
とにかく船という物は作るのに時間も金も掛かる上に、主任務が沿岸警備や兵員輸送だった時代から外洋警備や海上戦闘に移り変わると膨大な時間と予算が必要になってしまうので、
国家公認の海賊で私掠船免許なる許可を得て敵国の船を襲撃する海賊を持つことで海軍の代用とした。ワンピースで言うところの「王下七武海」みたいな存在。
この私掠による利益は非常に大きく、国家による課税対象にもなったが航路や船によっては莫大な利益をもたらした。
税率は時代や国で多少変わるが概ね3割から5割、国家にとっては船を作る負担が減り敵国に被害を与えられ、海賊にとっては一攫千金はもちろん魅力だが、私掠船や海難事故の被害者で有る事もあったのでいわば傭兵業を兼ねた海上保険の代用でもあった。
もちろん危険と隣り合わせだが、この時代は平時の航路でも危険だったことに変わりはないし、バックに領主がいるということでもあり、組織の肥大化や時代の移り変わりで暴走するまではむやみやたらに被害を出すこともあまりないため、まだ真っ当とも言える。

◆バッカニア

政府の犬国家公認のプライベーティアに対してバッカニアはどの国にも属さず、自らの船と実力のみで海賊稼業を生業とした、完全無法状態の海賊達のこと。だから襲う対象は基本的に全て。自由万歳。
…と言いつつも、当然ながら勝てる相手しか襲わないので基本的に弱い者いじめをすることとなる。主に漁師や小さな商船とか。
完全な自由を得た海賊バッカニアは、自分たち以外は全員敵という過酷な状況でもあるため、(あまりないが)時には海賊同士でも略奪や戦いが行われることも。
また、余程大規模になれば武装組織となるので話は変わってくるが、基本的には生活に困窮したという理由でなりがち。
ワンピースだと「麦わらの一味」とかも含め、七武海以外は全部バッカニア。

◆ヴァイキング

現在の北欧人のご先祖様。
海賊として名高いヴァイキングだが、本当のところは海賊ではなく部族*1というべき存在であり、海賊の一種ではない。
西欧へ侵略を行い、敵地や僻地での略奪もしていたが同時に交易もよくしていたとのこと。
正義の集団という訳ではないだろうが、よく海賊扱いされているのはヴァイキングの侵略を受けた西欧人の主観によるところが大きいだけで侵略のきっかけは現在不明。単純に富を求めたというものからカール大帝(キリスト教)脅威論由来とするものなどさまざまな説があり善悪の二元論で語るのは実は難しい。
ワンピースだと「アマゾン・リリー(九蛇海賊団)」が近いか。

◆倭寇

日本史でおなじみの日本の海賊。
元々は、元寇における高麗軍による略奪・虐殺・女性の拉致等の非道の被害を被った壱岐・対馬周辺の住民が、その報復行為として始めたという説もあり。
周辺国の歴代の権力者を悩ませるほどの猛威を振るったが、実は16世紀頃の後期倭寇では、実際の構成員は8割ぐらいが中国人だったそうな。

■創作物における海賊

敵役として登場する事も多いが、しばしば主人公サイドのキャラクターだったり、主役を張ったりなどもする。

近世や近代の海賊のイメージの他、SF作品では宇宙海賊なんてのも存在する。
その際には、か弱い者からの略奪などを行う事は少なく、悪辣な金持ちや国家などを敵に回して活躍するなど、
日本では「弱きを救い、強きを挫く」と言った義賊的な扱いも多い。

また、財宝を求めるなど、略奪者よりもトレジャーハンターや「海の冒険者」の側面が強い場合もしばしばである。

国家権力により懸賞金が懸かっているのもよくある。
海を自由に駆け巡ることができるというところに魅力を感じる故の英雄視だろうが、なんにしろ、ここまで美化される悪党も他には例を見ない。
ほとんどの作品で粗野な無法者という扱いを受ける山賊とは対照的である。

しかし、特別クラスを設けられたりするなど、強さはキャラクターによってまちまち。


■アイテム類

ステレオタイプの海賊を象徴するものを、史実、創作おり交ぜて記す。

接近戦用の武器。

・サーベル(セイバー)

片刃の曲刀で騎兵刀・軍刀の代名詞。鍔が大きかったり護拳が付いていて、手元が堅い。
中世の西洋ではポピュラーな剣だったので入手性が良かった。
マスト上での戦いは二次元限定だが男のロマン。

・カットラス

サーベルより幅広で刀身が短めな片刃の曲刀。
船上での取り回しがしやすく、海賊に限らず船乗りが愛用していた事から「舶刀」と訳される。船乗りに限らず使っている部族も居た。
例をあげるとゴーカイサーベルとかビームザンバーとか…
使い手の中には振り下ろしたときに床に刺さって抜けなくなるワニ海賊もいる。

・レイピア

細身の剣。高貴なイメージがあるため、よりスマートなイメージが出る。
元々実戦や乱戦や屋内ではあまり好まれない武器(決闘向き)だからか創作でも使い手は意外なほど少ないが、有名なフック船長が使い手だったりする。

こちらも接近戦用の武器。
ヴァイキングの武器としてのイメージが強い。
実際には、両手持ちの 戦斧 としてデーンアックス等を、片手持ちの手斧として髭斧(ビアード・アックス)等を用いていた。

また固有名こそ無いものの、普通の手斧はヴァイキングに限らず道具兼サブ武器として重宝していたであろうと思われる。

◆銃

遠距離戦の武器。

・フリントロックピストル

火打石式の先込め式単発拳銃
リボルバーやマガジンどころか、一体型の弾薬等も存在しない時代の銃である。
戦闘中は実質1発限りになるこの銃を何丁も持って戦っていたイメージを持たれやすいが戦闘ではあまり使われず、警告や督戦、処刑といった用途が多かった。
しかしやはり海賊の銃と言えばピストルというイメージは強く、ワンピースなど創作ではよく使われる。ゴーカイジャーのゴーカイガンのモチーフでもある。

マスケット

先込め式単発長銃。戦列歩兵とか某魔法少女とかが持ってるアレ。
厳密には上記のフリントロックピストルもマスケットの一種になるか。
デカいことを除けばピストルより優秀なので実際の戦闘ではこちらが使われることが多かった。

◆大砲

銃よりも巨大な遠距離武器。
砲弾は主に丸い無垢の球形弾。他にも、ぶどう弾と呼ばれる散弾的な弾などもあった。
戦闘よりも破壊工作や威嚇射撃で用いられる。

◆海賊旗(ジョリー・ロジャー)

ドクロマークの旗。死を想起させるデザインで相手を脅迫する意図があるが厳密な起源は曖昧。
襲う場合に掲げて接近し、相手の船が白旗を上げて従う意思を見せたら乗員には手を出さずに略奪だけを行って去るのが一部例外はあれど、昔の海賊達の暗黙のルールであった。
いつまで経っても白旗が上げられない、または抵抗される等従わない意思を見せられた場合は海賊旗は降ろされて代わりに赤一色の旗が掲げられ、これは乗員皆殺しの後の略奪を示される。
もちろん普段から掲げるなんてことは基本的に無いと思われる。

なお現代では見つからないよう忍び寄って制圧するというのが基本的なスタイルなので、本物の海賊が海賊旗を掲げるなんて事態はほぼないと思われる。
ただ海賊(=犯罪者・敵)のシンボルとしてはわかりやすいので、警察や軍が演習をする際、敵役が掲げることがある。
単にデザインを気に入られてエンブレムにする例もあり、例えばアメリカ海軍には伝統的に"ジョリーロジャース"をニックネームとする、部隊章が海賊旗の部隊が存在する。

義手・義足

腕は無骨なカギツメ、足は単なる棒であることが多い。
義手に関しては恐らくピーターパンのフック船長が有名となったことで、この様な描写の海賊が劇的に増えた。

眼帯

怪我などで失った目を隠すためのもの。
わざと片目を塞いで、暗い船内に慣れさせるためという説もある。

◆帽子・被り物

・三角帽子

船長御用達。人によっては海賊旗と同じマークが付いている。
両脇と後ろを折り返しており、上から見ると三角(トリコーン)に見えるのが名前の由来。
間違ってもクリスマスパーティー等で被る三角錐ではない。

史実では18世紀に、海賊に限らず官民に広く流行した。
後の時代には、ナポレオンもかぶる二角帽子(バイコーン)へと変わっていった。

・スカルキャップ

つば無し帽子。骸骨帽子ではない
史実では一般水兵の帽子であった(後につば有り帽子が使われるようになった)。

・バンダナ

頭に被せたり巻きつけたりする大きめの布。手下の証。実は船長も帽子の下に被ってる事が多い。
これは船上だと散髪するのが難しく、ボサボサに伸びきった髪が作業の邪魔にならないようにまとめる必要があるため。

◆コート

船長御用達。海上は寒いのだろう。
動き易く、かつすぐに着れるよう、マントのように肩に装着可能。
時々とんでもない防御アイテムになったり。

マント

やっぱり寒いのだろう。かっこいいから良し。

◆酒

海賊に限らず、船乗りは船内に大量に酒を積む。これは当時の諸々の技術からただの水だと腐ってしまうため。
つまり下戸だと船乗りにはなれなかった。安価なラム酒が主。
費用節約のために水で割ったり、壊血病防止のためにレモン入りである事も。
400以上の船から略奪したとされるバーソロミュー・ロバーツはそれだけでも伝説的だが、健康などのために茶を飲んでいたらしくそちらでも伝説的になった(部下にも酒に関しては節度を持たせようとしたが失敗)。

◆肉料理

海にいるのに、何故か魚より肉食ってるイメージがある。
まあ事情はどうあれ海賊やるような奴なら奪った食材を食べたり金品で買うので、魚を地道に捕るなんてことは少ないだろう。
当時の保存技術の関係で塩漬け肉が食べられていた。

・骨付き肉

創作物では塩漬け肉よりも何故かこれを食べてるイメージがある。こんなイメージがついた理由は謎だが、航行の間で贅沢な食事は陸地以上に貴重ということもあり、量はともかく好みに関しては矛盾のある描写ではない。
大きな船であれば家畜を育成することも不可能ではないので、その気になれば骨付き肉にありつけるが……基本的には大スポンサーがついて目的も世界一周など大掛かりだったマゼランの様な限られた存在だろう。
飼育スペース・騒音・手間・費用などを考えると、事情はどうあれ海賊やるような奴なら奪った食材を食べたり金品で(中略)
なお、ステレオタイプの海賊の間でよく食されているのが鶏肉。ディズニー映画ピーターパン2では実際に食している描写こそはないが、船内から鶏が飛び出してくるシーンがあるのは、これに基づいているからだと思われる。

・人肉

恐ろしい事に食糧難が続くと、人肉を食べる事がある。山賊でもあまり見かけない描写。
尤も、海の上は山と違って獣が極端に少ないので仕方ないが。

ナイフ

サブウェポンだが、メインに使う海賊もいる。生活にも重宝するのだろう。
モブは荒々しく使うが、名ありの主要キャラは曲芸のごとく華麗に扱う。
二刀流になる事も。

◆コンパス(羅針盤)

方角を確認する為の品。磁石の針が常に北を指し示す。
某ふらつき船長のせいで知名度を上げた感のあるアイテム。


■海賊がメインの作品

ONE PIECE

海賊漫画の金字塔。現ジャンプの大黒柱。
ただし、現在進行形で海賊(現代)に悩まされている国家が多いためか、海外において規制が厳しい作品でもある。

◆宇宙海賊キャプテンハーロック

松本ロマン全開。
漫画版は例によって例のごとく(松本作品ではよくあること)打ち切りだが、アニメ版は文字通りの大成功。
その後のSF作品に多大なる影響を及ぼした。

海賊戦隊ゴーカイジャー

異色のスーパー戦隊。戦隊版ディケイド。
「宇宙帝国に反逆するため敢えて海賊の汚名を被った」としているが、その割に堂々と名乗っている。

機動戦士クロスボーン・ガンダム

異色の海賊ガンダム。裏で木製帝国の野望を阻止すべく奮闘する。

ゼルダの伝説 風のタクト

世界の大半が海。拐われた妹を探しに主人公は海賊の仲間になって冒険に出るが――

ヴィンランド・サガ

アフタヌーンで連載中。北欧のヴァイキングの生き様と戦いを描く。

◆フルアヘッド!ココ

週刊少年チャンピオンにて連載された海賊漫画。

◆アサシン クリード IV ブラック フラッグ

海賊エドワード・ケンウェイとしてオープンワールドのカリブ海を冒険する。
海戦から移乗攻撃、白兵戦へシームレスに移行するゲーム性は評価が高い。

■有名な海賊

◆黒髭

世界一有名な「実在の」海賊にして、「海賊=無法者」というイメージといった感じの色々な意味で凄い海賊。なお、現在知られている「本名」は実際には偽名だとされており、地味に本名不詳。
異名の由来である黒い髭に導火線を編み込み、時には着火までするというキテレツなファッションでも知られた。
ちなみに最期はズタズタの状態で晒し首にされたため、某危機一発のような樽詰めにはされていない。

◆フランシス・ドレイク

上記通り国から敵国の船の襲撃を認可された私掠船船長でありスペイン絶対殺すマン。
スペイン海軍の奇襲で船団を失ったことで復讐鬼となり、当時世界中に点在していたスペインの植民地を片っ端から襲撃していたら世界一周を果たしてしまった。
彼が持ち帰った財宝はイギリスの国庫数年分に相当し、財政を一気に立て直したことから騎士の称号を与えられ、海軍中将に任命されるとアルマダの海戦においてスペインの無敵艦隊を粉砕し、復讐を果たした。

◆アン・ボニー&メアリ・リード

特に有名な女海賊。
2人とも男装していた(ただし仲間は女性と知っていた)が、メアリはアンが誘惑するくらい美ショタに見えたとか。
なお勘違いされがちだが、船長はジョン・ラカムという男性。こちらも海賊界隈ではそこそこの有名人で、「キャリコのジャック」の別名で知られる。ちなみにアンの彼氏(の一人)。

◆ジョン・シルバー

スティーブンソンの『宝島』の名悪役である松葉杖をついた片足のコック*2。後の海賊キャラに深い影響を与えた。
なんとなく偉い海賊は片足が棒になっているイメージがあるのはだいたいコイツのせい。

◆海賊男 ※番外枠

1987年にアントニオ猪木とマサ斉藤の試合に乱入したアイスホッケーのマスクを被り海賊の衣装をまとった謎の男。映画などに登場する海賊を思わせる衣装から、この人物は関係者やファンから「海賊男」と呼ばれた。正体は永遠の謎。

■創作由来の有名な海賊

◆フック船長

『ピーター・パン』の名悪役である義手の海賊。ディズニー版が特にイメージとしては有名。
なんとなく偉い海賊は片手がフックになっているイメージがあるのはだいたいコイツのせい。

モンキー・D・ルフィ

二次元海賊の金字塔。

ゴーカイレッド/キャプテン・マーベラス

宇宙最強の帝国を敵にしている宇宙海賊の船長。賞金額は上限無し!

ジャック・スパロウ

カリブの海賊。立川在住のメシアもファン。



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最終更新:2025年03月07日 12:57

*1 更に言えば単一部族ではなく、北欧の複数の部族をまとめてヴァイキングと称している

*2 後の海賊のイメージから義足と勘違いされるが、義足は付けていない