マイア(MtG)

登録日:2025/10/20 Mon 11:44:00
更新日:2025/10/22 Wed 22:04:06
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マイアは空僻地のようなものだ。
それは素晴らしい創造を成すための真っ白なキャンバスなのだ。

                      パラジウムのマイア フレイバーテキスト


『マイア/Myr』は、TCG『マジック:ザ・ギャザリング』におけるクリーチャー・タイプ。
スリヴァーやルアゴイフなどと同様に、MtGオリジナルの種族である。



概要

メムナークがマイアを作ったとき、三つの機能を念頭においていた。すなわち、信頼性、操縦性、破棄性である。

                        マイアの月帯び フレイバーテキスト

 金属次元ミラディン、およびその変容した新ファイレクシアに生息している固有種。
その正体は、ミラディンの管理者メムナークが、他種族を監視するために生み出した、いうなれば生きた監視カメラである。
 さらにほかの役割を担うものも多く、例を挙げると

  • 《マイアの苦役者》…他のマイアの修復
  • 《マイアの溶接工》…地ならし屋の修復
  • 《磁石マイア》…他の人工物の制御
  • 《地殻絞り》…エネルギー運搬

などなど。
また監視についても、他のマイアを監視する《マイアの処罰者》もいる。さぼり防止だろうか?
 しかし、ミラディンがメムナークから解き放たれたことで野生化。
かつての主からもらった本能的な役職を繰り返したりしながらのびのびと生きている。
この役職本能に基づいた行動を現地ミラディン人が生活の知恵として利用するケースもあるようだ。
ミラディンが新ファイレクシアに汚染された後は、あるものはミラディンのために戦い、あるものは新ファイレクシアの軍門に下っているが、そのそれぞれがどんなつもりで戦っているのかは、マイアたち本人にしかわからないだろう。
 現在、新ファイレクシアは最終決戦の末、漂流していた次元ザルファーと次元そのものの位置を入れ替えられ、封印されてしまっている。
この結果マイアたちがどうなってしまったかは言及されていない。少なくともミラディン陣営の個体たちはザルファーに避難していることを祈ろう。

 マイアはメムナークによって生み出された機能を持った生物である。そのため、通常の生き物とは生まれ方も異なり、

  • 施設を経由する…《マイアのマトリックス》《マイアのタービン》《起源室》など
  • 他のマイアが生産する…《マイアの繁殖者》《マイアの種夫》*1
  • 呪文爆弾から生まれる…《起源の呪文爆弾》
  • ミラディン人が作る…《マイア鍛冶》

 ……最後のひとつは何だろうか?さらにこれについてはメムナークが実権を失ってからの誕生方法である。何のために作ってるんだろうか?趣味かな?
 生み出されてからは、前述のとおりそれぞれの役割を全うし、あるいは自由気ままに生を謳歌する。
 ……が、死ぬときはあっさり死ぬ。というよりかなり命が軽い。
よくある死に方が現地のゴブリンの一族、クラーク族におもちゃにされる死に方であり、バラバラにされて修復される様子を見て喜ばれたり*2、鉄工所にぶち込まれたり*3と悲惨。
さらに特筆すべきは《四足マイア》のフレイバーテキスト。

マイアはそれぞれ特定の役割をもって作られている。
例えばこれは、他のマイアを踏み潰すのが役割だ。

 ……なんで?
サボりを《マイアの処罰者》に見つかったらこいつに踏まれるのだろうか?
メムナーク解放後もこの本能を維持していた場合、必要なく同族を踏みつぶし続ける殺戮機械となっているだろう。

 元が監視生物だったためだろうが、新ファイレクシア侵攻まではあまり他種族との関わりは多くないようである。各種族からの評価は

•レオニン…お告げをする生き物
•ヴィダルケン…玩具
•モリオック…ゴミ漁り
•ゴブリン…気にもとめない*4
•エルフ…ちょっとした脅威

 と、エルフ以外特に脅威にも感じていない。戦闘もほとんどないようである。
 しかし、いざ戦闘になると武器を構えて戦うなど、攻撃性を完全に放棄した生き物ではない。極めつけは《マイアの戦闘球》のイラストだろう。塊魂よろしく、多数のマイアが合体?することで、文字通りひとつとなって戦うのだ。
 このように、今日も増える、働く、死ぬを繰り返している。まるでピクミンか重ちーのハーベストである。

外見

かわいい。


 これに尽きる。大半のマイアの外見として、
『鳥類のような外見の頭部*5』『小さく瞳のない眼』『ジョイントのついた関節』『猫背』『低めの頭身』などがあり、これがかわいらしい。
また、これはものによるが、多くの手のひらは親指以外がくっついたミトンタイプである。かわいい。
 大型のものになると、《マイアの超越種》や《ダークスティールのマイア》のように頭身が上がってひょろ長くなるか、《マイアの処罰者》や《磁石マイア》のように関取体形になり、それもユーモラスな感じでかわいいのである。
 ファイレクシアによって完成化すると、元の外見を維持している者もいるが、《マイアの改宗者》や《胆液爪のマイア》のように『眼がなくツルンとした頭部』『鋭いかぎ爪』『針のようにとがった足』などの特徴に変異することもある。

 そもそも、カードデザインの面においてマイアが生まれた理由は、マロー*6が、ミラディンの小型クリーチャーとしてノーム*7を採用しようとしていたところに、ブレイディ*8

「来月またここに来て下さい。本物の愛されアーティファクトクリーチャーをお見せしますよ」

 と、マイアの初期デザインを持ってきたことに端を発する*9
つまり、その誕生の時点から公式愛されゆるかわクリーチャーなのだ。その影響なのか、プレインズウォーカー以外では非常に珍しい、WotC社公認のフィギュアができている。

 かわいさ以外の外見に着目すると……またしてもわけわからないポイントが。《マイア鍛冶》や《疫病のマイア》のイラストを確認すると、脊髄がある。そう、彼らには骨格があるのだ。機械生物なのに。

ゲームにおいて

 様々な役割を持つという設定にたがわず、カードデザインは多岐にわたる。
 あえてマイアらしさを挙げるとすればマナ能力だろう。マナを生み出すマイアは俗に「マナマイア」と呼ばれる。
  • …《金のマイア》
  • …《銀のマイア》
  • 黒…《鉛のマイア》
  • …《鉄のマイア》
  • …《銅のマイア》
 の5種類が「ミラディン」で登場し、後にミラディン次元を舞台にしたセットで
  • 無色…《疫病のマイア》(1マナ)、《パラジウムのマイア》(2マナ)
  • 全色…《合金のマイア》
  • ファイレクシアマナ…《マイアの改宗者》
 が登場した。
 アーティファクトクリーチャーであることが一番の強みで、その大半がコモンということもあり、リミテッドではお手軽なマナ加速やマナ基盤の安定に貢献してくれる。
 リミテッドにおいてはこのマナマイアの使い方に慣れることが必要不可欠である。集めすぎても弱いが、あれば便利なことに変わりはないからだ。
 しかしMTGにおいて1マナしか生み出せないマナクリが2マナというのは非常に遅い。マイアが部族デッキとしてカジュアルでさえ大成しなかった理由がここにある。
 「2マナ1/1で遅いマナ加速能力しか持たないカードが5枚以上、それでいてハマれば強いという爆発力*10があるわけでもない」というのはいくらなんでも厳しかった。そもそも「ミラディン」の頃ならまだしも、「ミラディンの傷跡」の頃はカジュアルMTGが相当見下されていた時代だったし……。

 また、現在では普通の存在になった「有色アーティファクト」の端緒を切り拓いたのも実はマイア。

Sarcomite Myr / サルコマイトのマイア (2)(青)
アーティファクト クリーチャー — ファイレクシアン(Phyrexian) マイア(Myr)
(2):サルコマイトのマイアはターン終了時まで飛行を得る。
(2),サルコマイトのマイアを生け贄に捧げる:カードを1枚引く。
2/1

 「未来予知」でフューチャーシフトとして登場したカードで、アーティファクトでありながら色マナが含まれている初のカード。
 リミテッドでも使いたい性能ではないのだが、それまでの「アーティファクトは無色マナのみで唱えられることが当然」という常識を変えたのがこのカード。設定的には「有機的な部分を部品に持っている機械」であり、当時の設定がしのばれる。
 後に「アラーラの断片」のエスパー次元でもフィーチャーされた他、このカードのFTに登場する《テルカーの技師、ブルーディクラッド》がカード化されたり、手掛かりのカード・タイプを持つカードとしてリメイクされたりもしたというMTGのマイルストーン。

 トーナメントシーンにおいては《マイアの処罰者》の活躍を特筆すべきだろう。

Myr Enforcer / マイアの処罰者 (7)
アーティファクト クリーチャー — マイア(Myr)
親和(アーティファクト)(この呪文を唱えるためのコストは、あなたがコントロールするアーティファクト1つにつき(1)少なくなる。)
4/4

 歴史に残るぶっ壊れ能力として名高い「親和」を持つ最初期のクリーチャーであり、つまりはぶっ壊れ組の一員である。7マナを払って登場することはほぼありえず、何ならマナを一切払わず出てくること多数。各時代ごとにほかのクリーチャーが優先されることこそあれど、使えるフォーマットすべてでちゃんと戦力として採用された実績のあるクリーチャーである。
 これ以外では、《マイアの回収者》《マイアの苦役者》《マイアの月帯び》などがコンボデッキのパーツとして活躍している。

 しかしマイアの活躍は、何も親和のコモンフィニッシャーだけじゃない。地味ではあるが環境内でとても大きな存在感を持っていたカードも割かしある。

Myr Battlesphere / マイアの戦闘球 (7)
アーティファクト クリーチャー — マイア(Myr) 構築物(Construct)
マイアの戦闘球が戦場に出たとき、無色の1/1のマイア(Myr)・アーティファクト・クリーチャー・トークンを4体生成する。
マイアの戦闘球が攻撃するたび、あなたはあなたがコントロールするアンタップ状態のマイアをX体タップしてもよい。そうしたなら、ターン終了時までマイアの戦闘球は+X/+0の修整を受けるとともに、それが攻撃しているプレイヤーかプレインズウォーカーにX点のダメージを与える。
4/7

 「ミラディンの傷跡」のレア。戦場に出すだけで打点が合計8点分に加え、攻撃時の誘発型能力によってダメージがすごい勢いで加速する。というより出した時点でアーティファクトが4つも増えるため「金属術」などのサポートにも向いている。
 タフネスが7で、当時のタフネスを参照するタイプの除去を受け付けないのも強かった。戦場に出た時点でトークンをばらまけるため、単体除去にもある程度耐性がある。
 当時は様々なデッキに1枚挿しされ、特に《カルドーサの鍛冶場主》との相性が抜群。鍛冶場主のサーチで出すこともできるし、生み出したトークンを鍛冶場主のコストにあてがうこともできた。《大建築家》との相性もよく、《ワームとぐろエンジン》とは軸をずらしたフィニッシャーとして採用される。《歪んだ世界》との相性も良く、踏み倒しもできればパーマネントの水増しも可能。
 他のフィニッシャーの後塵を拝しがちだが独自の利点が多かったという、知る人ぞ知る名カード。《マイアの貯蔵庫》《マイアのタービン》などと組むことも提唱されていた。


Perilous Myr / 危険なマイア (2)
アーティファクト クリーチャー — ファイレクシアン(Phyrexian) マイア(Myr)
危険なマイアが死亡したとき、クリーチャー1体かプレインズウォーカー1体かプレイヤー1人を対象とする。危険なマイアはそれに2点のダメージを与える。
1/1

 死亡誘発で2点のダメージをどこかに飛ばせるというカード。「機械兵団の進軍」の頃にファイレクシアンが追加された。
 アーティファクトをコストにするカードと組み合わせると2点のダメージがオマケでついてくるのでそこそこ強いのだが、あんまり採用したい性能ではない。
 それでも当時の赤単(ゴブナイト)でたびたび用いられた。このカードは無色のダメージ源であり、プロテクション(赤)を持つ憎い憎い憎い憎い色対策カード《コーの火歩き》に対して現実的に対処できるカードがこれしかなかったのだ。
 そんなわけで、当時のスタンダードの赤単のリストを見るとだいたい何枚か入っている。
 このカードが出た「ミラディンの傷跡」の頃(2010年)は、ニコニコ動画で「危険な○○シリーズ」という音MADが流行っていた頃であり、それにちなんでこのカードのイラストとともに原曲を流すという一発ネタ動画が投稿された。当時他TCGのやらかしなども手伝って急激に増えたプレイヤーに喜ばれ、それなりに再生されたようである。


Myr Superion / マイアの超越種 (2)
アーティファクト クリーチャー — マイア(Myr)
この呪文を唱えるためには、クリーチャーから生み出されたマナのみで支払える。
5/6

 2マナ5/6にしてデメリット一切なし。ただ唱えるときにちょっと制限があるだけ。そのぶっ壊れたスペックから当時はジョニーからスパイクに至るまで熱心に研究したカード。
 「クリーチャーから生み出されたマナ」というのは、素直に考えるとマナマイア、特に《パラジウムのマイア》から出すべきなのだがそれでは遅い。なんとか《ラノワールのエルフ》や《大建築家》のようなマナクリから出そうと多くのプレイヤーが挑戦し、そして挫折した。
 たとえばエルフデッキではかなり簡単に出せるのだが、このカードは5/6のバニラにすぎない。部族シナジーも一切共有できない。そのため別に無理に入れる必要はどこにもない。
 一応《出産の殻》《ミミックの大桶》など、唱えずに戦場に出す手段と併用することでデメリットを完全に消すことが考えられたが、大成はしなかった。
 つまりこのカード、ポテンシャルはあるのだがそれを生かそうとするとデッキの方がアンバランスになってしまい、わざわざ入れるだけの理由がないというピーキーすぎるカードだったのだ。
 転機が訪れたのは「イニストラード」に登場した《心無き召喚》という、「クリーチャー呪文は2マナ軽くなるが、-1/-1修正を受ける」というピーキーなコスト軽減カードが登場してから。
 《心無き召喚》があれば《マイアの超越種》は0マナ4/5という《虚ろな者》も真っ青なスペックになる。そのため「ハートレス」と呼ばれるデッキでは序盤から攻めっ気を強くするカードとして活躍し、同デッキが単なるファンデッキでとどまらないポテンシャルを与えたのである。



 統率者戦では長らく部族デッキ向きの統率者が登場しなかったが、『ファイレクシア:完全なる統一』において伝説のマイア《メムナークの残滓、ウルテト》が満を持して登場。

Urtet, Remnant of Memnarch / メムナークの残滓、ウルテト (3)
伝説のアーティファクト クリーチャー — マイア(Myr)
あなたがマイア(Myr)呪文を唱えるたび、無色の1/1のマイア・アーティファクト・クリーチャー・トークン1体を生成する。
あなたのターンの戦闘の開始時に、あなたがコントロールしているすべてのマイアをアンタップする。
(白)(青)(黒)(赤)(緑),(T):あなたがコントロールしている各マイアの上にそれぞれ+1/+1カウンター3個を置く。あなたのターン中にしか起動できない。
2/2

 アンタップ能力や5色を要求するところなどから、マナ・マイアを意識したデザインとなっており、いっぱいマナ出していっぱいマイアを唱えていっぱいカウンターを乗っけましょう!みたいなわかりやすいデザインである。戦場をマイアで埋め尽くしてやろう。
 また、アンタップ能力はほかのタップ能力と併用もできる。例えば搭乗を持つ機体などと相性がよく、《領事の旗艦、スカイソブリン》あたりに乗り込ませて、攻撃時にアンタップさせれば、まるでマイアが乗り込んだうえで自動操縦に切り替えさせてるようでフレイバー的にもかっこかわいくていい感じ。
 ちなみにしゃべる。(《マイアの守衛》のFT)


見る者がいようといまいと、アニヲタは誰も読まないような項目に追記・修正を続けるのだ。

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最終更新:2025年10月22日 22:04

*1 前者は空僻地のタイルのような地盤を引っぺがして、後者はファイレクシア側らしく腹腔で新しいマイアを生産する

*2 《マイアの苦役者》FTより

*3 《クラーク族の鉄工所》イラストより

*4 もっとも、バラバラにして楽しんでるあたりヴィダルケン同様に玩具だと思っていると考える方が自然だろう

*5 オオハシに似たものが多いが、ウズラのような個体もちょこちょこいる。

*6 カードデザインのお偉いさん

*7 一般的には大地の精霊として扱われるノームだが、なぜかMtGにおいてはアーティファクトの小型クリーチャーという扱いがされている。

*8 クリエイティブチームのお偉いさん

*9 公式コラム 任務完成化 その2 より

*10 分かりやすい例だとスリヴァー、ずべら、同盟者などが該当する。