登録日:2026/04/22 Wed 12:06:50
更新日:2026/07/29 Wed 17:58:14
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「Sold」という見慣れないオブジェクトクラスが出てきたがその意味は読んで字のごとく「
売却済」であり他では
SCP-2534-JPなどがこのオブジェクトクラスに割り当てられている。
この時点で薄々察したアニヲタ諸兄もいるかもしれないが財団が極端に貧しい世界線という前提の元で書かれるカノン『
まずしいざいだん』に属する作品の一つ。
特別収容プロトコル
SCP-4599-JPの特別収容プロトコルは
の一文のみに留められている。あまりにも簡素すぎる気がするが、オブジェクトクラスの項目で説明した通り「このオブジェクトは既に他者の元へ渡っている」ということを考えれば収容プロトコルなんて書くことないしこれくらいに収められてもおかしくないかもしれない。
概要
というわけで本題に入っていこう。
SCP-4599-JPは宮城県仙台市に存在する直径3.4mのポータルである。ポータル内部は無限に広がるショッピングモールのような異次元空間につながっており、『赤い肌に角状の突起、白目部分が赤く人間と同程度の知能かつ発話能力がある』といういわゆる「悪魔」のような人型実体が跋扈している。
財団はこれに対しショッピングモールの方をSCP-4599-JP-1、悪魔たちの方をSCP-4599-JP-2と指定した。
悪魔たちは主に「人間相手の商売」を行っており、もっぱら金銭と引き換えに悪魔が働いたり逆に人間が差し出したモノを悪魔が買い取ったりしている様子。ショッピングモール内では一種の経済システムまで構築されているようだ。
補遺1
2024/03/23、エージェント・佐々木と杉田研究員によりショッピングモール内の初期調査が行われた。調査方法はエージェント・佐々木が周囲をスマホで録画撮影しながら杉田研究員と通話するという大学生の肝試しのようなもので、「まずしいざいだん」ゆえかかなり緊張感に欠けた会話ログとなっている。
会話ログだけで4000字弱あるものをそのままコピペしてくるわけにもいかないのでココからは内容を掻い摘みつつログを追っていこう。
というわけでショッピングモール、もといSCP-4599-JP-1内部に侵入したエージェント・佐々木だったがそこには天井が異様に高く、遠方にはネオン看板や看板文字が多数確認できる風景が広がっていた。
「ちゃんとした調査用カメラを用意できなかったのか」だの「自分の月収よりも高そうな物が並んでる」だのと雑談を繰り広げていた杉田研究員とエージェント・佐々木だったがその前に悪魔が一人現れる。
[人型実体が佐々木の進行方向から接近する。外見は人間に酷似しているが、赤い肌と角状の突起、赤色の強膜が確認でき、黒いスーツを着用している。以後、実体1と呼称。]
実体1: おや、新規のお客さまかな? ずいぶん軽装だね。
エージェント・佐々木: あ、どうも。
実体1: 今日が初めてかい?
エージェント・佐々木: そうですね。今日はちょっと調査というか、見学に来てて。
実体1: 見学も歓迎だよ、買う気がなくてもね。冷やかしだけでも価値はある。
エージェント・佐々木: ここってショッピングモールですか?
実体1: まあ、そんな感じだ。 ここは大量の金が動くような場所でね。いわば、ここの店は小さな国のようなものだ。店一つ一つが、それぞれの才能を生かして周りとは一味違う商売をしようとしている。大金で動く筐体、まさにユートピアさ! 客の欲が店の未来を操作する。どうだ、いい場所だろ?
エージェント・佐々木: なるほど、中々悪くないですね。
実体1: だろう?この辺は物が多い場所でね。でも、本当に価値のある商品は、もう少し奥だ。
エージェント・佐々木: 価値のある商品?
実体1: 君も持ってるだろう。生まれつきの癖とか、得意なこととか。まあついてきたまえ、案内は私がしよう。
現れた悪魔は商業施設"デモンズ"の営業部長マルクスを名乗りエージェント・佐々木を「この世界の一番"おいしい所"」と称する建物の一角へと案内し始めた。
案内された先は天井がさらに高く、発光する結晶体や、文字列が浮遊する板状物体などが確認できるコーナー。デモンズ曰くこのコーナーでは才能、能力、資質などの売り買いを行なっているようで「悪魔と契約してとてつもない力を手にして~」のノリで買い物ができるらしい。
しかし『まずしいざいだん』の職員であるエージェント・佐々木にそんな道楽に使える金はない。
実体1: [唸る]お前、本当に金がないのか……しかし、デモンズに来るからには金がないと何もできんぞ。
エージェント・佐々木: 少しくらい持ってくるべきだったか。
実体1: [閃いたように]そうだ、お前、名前は。
エージェント・佐々木: えっ、佐々木ですけど。
実体1: よし、ついてこい、佐々木。金に困ってるなら、いい手段がある。
エージェント・佐々木: ……行っていい?
杉田研究員: 調査のためだぞ。危なくなったらマジで帰って来い。グッドラック。
エージェント・佐々木: 無責任な……
エージェント・佐々木が連れて行かれた店は女性型の悪魔(財団は『実体2』と名付けた)が経営する店。ココでは先ほどの店とは逆に自らの能力を売り払う事が出来るらしく『痛くないし、少なくとも致命的なことは起きない』というデモンズの言葉に興味を引かれたエージェント・佐々木は杉田研究員の静止も聞かず才能の売却を承諾してしまった。
エージェント・佐々木: [唸る]金が手に入るなら、まあ少しくらいなら…
杉田研究員: おい佐々木! やめろよ、上への報告がめんどくさくなる。
エージェント・佐々木: それで、マルクスさん。俺ってどんな才能があるのさ?
杉田研究員: おい無視すんな!
実体1: じゃ、ちょっと失礼。
[実体1と実体2が佐々木を凝視する。2人の目が少し赤みを増す。]
実体1: うーむ、どう思う?
実体2: なんというか、全体的に平均的だねえ。あ、でも。
エージェント・佐々木: でも?
実体1: 音楽だな。
杉田研究員: あー。
エージェント・佐々木: どうした杉田?
杉田研究員: そういやお前、学生時代バンドやってたとか言ってたか?
エージェント・佐々木: おい、俺の黒歴史。
実体1: 音楽が平均よりも上だな。リズム感、音感、作曲、どれもちょっと上だ。
エージェント・佐々木: あー、趣味で3年くらいギターやってたのもあるのか?
実体2: で、売るの?
エージェント・佐々木: まあ、今更ギターで食ってくこともないだろうし、売るかな。
杉田研究員: おい! 上にどうやって報告すんだよ!
実体2: あいよ、じゃあ……[電卓を操作して]4380ドルね。
エージェント・佐々木: えっ、そんなに。
4380ドルとなるとだいたい日本円で70万円くらいの大金である。いまさら「音楽で食ってけば良かった!」と嘆くエージェント・佐々木をたしなめつつマルクスと実体2は儀式を実行し、その後のエージェント・佐々木には歌唱能力・演奏能力の著しい低下が確認された。
なお報告書によるとエージェント・佐々木の持ち帰った金の一部はサイト-8181のエアコンの復旧に利用されたらしい。
SCP-2534-JPの時といい『まずしいざいだん』のエアコンは壊れがち
補遺:2 プロジェクト・リセール
先述の調査後、SCP-4599-JPは財団にとって有用的で、かつ再現性が高いと判断され『プロジェクト・リセール』なるものが制定された。プロジェクト・リセール担当職員のシェルドン・カッツカツ氏はこのオブジェクトを
と表現しておりその内容は
- 終了間近なDクラスを選びSCP-4599-JP-1へ連れて行く
- Dクラスの持っている才能を悪魔たちに売り払い、代金を受け取る
- 手に入れた資金を財団の運用に用いる
というもの。プロジェクト・リセールは年間30人程のDクラス職員を利用して100万ドル超の利益を出しているとのことだ。
死に際のDクラスから才能を奪うという中々にあくどい内容だが、まあ財団のDクラスの扱いなんて金があろうとなかろうとこんな感じなので気にする事もないだろう。
なお報告書における「プロジェクト・リセール」の説明は
最後に付け加えておく。
このプロジェクトが「正しい」かどうかは、いずれ誰かが議論するだろう。だが我々の仕事は、正しさを決めることではない。
世界を維持するために、今日も電気を通し、空調を動かし、収容室の扉を閉めることだ。
そのための4380ドルであるならば、安いものだ。
という文言で締めくくられておりそれ相応の覚悟をもっての行動であることが察せられる。
補遺3
そんなコッチが利用してるんだか利用されてるんだか分からない共存関係は唐突に終わりを告げることとなる。
補遺3に記されたある日の映像記録ログが詳しい内容を教えてくれるため早速追っていこう。
[D-8190と監視役のエージェント・佐々木がSCP-4599-JPに侵入する。]
エージェント・佐々木: よし、じゃあついて来……
[2人をSCP-4599-JP-2実体たちが取り囲む。その最前列には実体1の姿がある。]
D-8190: [絶叫]なんだこいつら!
エージェント・佐々木: 一旦黙って。[実体1に向かって]一体何の用だよ、マルクス?
実体1: あー、今日はお前ら…財団だったか?に伝えたいことがあってな。
エージェント・佐々木: 伝えたいこと? 俺らが100万人目の客ってコトか? それとも、うん周年の感謝か?
実体1: ああ、そうであればよかったんだが……単刀直入に言うと、お前らは出禁になってな。
[沈黙]
少なくとも財団がショッピングモールに対し不利益を働いた様子は無かったがこれはどういうことなのだろう。
エージェント・佐々木: 出禁ってどういうことだよ。
実体1: [溜息]質だよ、質。
エージェント・佐々木: 質?
実体1: お前ら、もしかして重犯罪者の才能を売ってないだろうな?
エージェント・佐々木: ……いや
実体1: 図星だろ! お前らがいらないと言って余分な才能を大量に売ったせいで、犯罪の才能がデモンズの裏社会で取引されてるんだよ! そのせいでここの犯罪率がダダ上がりだ! 暴行、窃盗、先週は殺人だって起きたさ。 奴らはみんなお前らが供給源の犯罪の才能を買ってた、これは誰のせいだ?
エージェント・佐々木: ……重犯罪者のせい?
実体1: お前らのせいだよ! 何で売った俺らは関係ねえみたいな面してんだよ! いや重犯罪者も悪いけどよ!
思い出してほしい。Dクラスとは要するに重犯罪者の寄せ集め、つまりは『罪を実行する才能』を持つ者たちである。結局捕まってる時点でその才能は高が知れてるかもしれないが、それをいくつも併せ持てば完全犯罪だってできるかもしれない。なんで査定時に気付かなかったんだろう
そんなものが大量に出回ったせいでSCP-4599-JP-1内の治安は急速に悪化してしまった。結果として取引に関わった者と財団はまとめて出禁処分を喰らってしまいプロジェクト・リセールはあえなく終了、出禁の直前マルクスは「二度と来るんじゃねえ。」と吐き捨てておりSCP-4599-JPは機能停止してしまったそうだ。
この章はお荷物となった大量のポータルもといSCP-4599-JPの売却先を探す財団の姿を描いて終了している。
エピローグ
こうして財団はショッピングモールから出禁を喰らってしまったわけだが報告書の最下部にはメッセージの受信を示す報告が届いており、開いてみると差出人はマルクス・ホーキンス。自ら出禁を言い渡したあのマルクスである。メールの題名はなんと『助けて』。いったい何が起こったのだろうか。
To: シェルドン・カッツカツ
From: マルクス・ホーキンス
Subject: 助けて
財団よ助けてくれ戻ってきてくれ!俺だ、マルクスだ!
今さっき、ジーオーシーとかいう組織が入ってきて、俺らから全部奪っていったんだ
金も 市場も全部だ全部
今俺はジーオーシーから隠れているんだ、逃げようにも奴らはポータルをほとんど差し押さえてるし、新しいポータルを作る時間もないんだ、助けてくれ!こっちに来て俺たちをそっちに避難させてくれないか!?
出禁は解除だ、頼むからおれたちをたすけ
先ほど『財団はSCP-4599-JPの売却先を探している』と書いたが、ページ冒頭の特別収容プロトコルを見ても分かる通り結局のところこのオブジェクトは
世界オカルト連合(GOC)に売却されている。『まずしいざいだん』におけるGOCは別段弱体化してるわけではないのでポータルを手に入れれば当然侵攻に打って出るだろう。
そしてこのメールのすぐ下には
の文言。その内容は
To: マルクス・ホーキンス
From: シェルドン・カッツカツ
Subject: 🙃🙃🙃
そうか、そっちも楽しくやってそうだな。
ところで、こっちも楽しくやっているよ。何せ、あのポータルが高値で売れたんだからね、GOCに。
今頃そっちにGOC軍のみんなが遊びにいっているから、そいつらと商売でも楽しみなよ。
なにせ、彼らは俺らなんかよりも金持ちなんだからね。
自分から施設をめちゃくちゃにしておいて追放されたらこの居直り。貧すれば鈍するというがココまで来ると元から性格が悪かったのではとも思えてきてしまう対応である。
元記事ではご丁寧に『やる気たっぷりなGOCの皆さん』と説明のつけられたGOC部隊の写真もメールへ添付されており、題名のおちょくったような三連絵文字と併せて考えるとなんなら憂さ晴らしも兼ねての返答に見えてくる。
報告書はこのやりとりを以て締めくくられており、類推するにSCP-4599-JP-1は壊滅したのだろう。
悪魔たちのショッピングモールの結末は財団を受け入れた時点で決まっていたのかもしれない。財団は金のためならいくらでも冷酷になれる本物の悪魔と化しているのだから。
追記・修整は節度ある悪魔との取引を行ってからお願いします。
- ただでは転ばないというか他人の足を引っ張るのに長けてるというか。でも財団を運営していくためなら危険性の低い悪魔たちとの取引を奨励して資金確保したり無用の長物を売り払うのも合理的ではあるよね -- 名無しさん (2026-04-22 13:52:06)
- ぶっちゃけ出禁にしておいて自分たちに危機が訪れたら手のひら返すあっち側もあれじゃないか…? -- 名無しさん (2026-04-22 13:55:01)
- 才能を買う時にそれが犯罪の才能だと気づかないもんなのか…? あるいは犯罪の才能が独立したものなのではなく、音楽や美術などの才能を買った者には才能だけでなく元の持ち主の善悪の価値観なども伝染するのか…? -- 名無しさん (2026-04-22 19:08:20)
- 貧すれば鈍する過ぎるだろ、財団も貧しくなればこうもなるとは -- 名無しさん (2026-04-22 20:05:14)
- ↑↑一個一個はしょぼくても『窃盗の才能』を掛け持ちまくればルパンみたいな大泥棒に辿り着けるかもしれないし他人に買わせるよりは自分をバフるために使ってたんじゃない?コイツら悪魔だし -- 名無しさん (2026-04-22 20:07:09)
- 冷酷だけど残酷じゃなくて普通にこのハブの財団はただのカスだ!! -- 名無しさん (2026-04-22 21:59:40)
- ↑↑なお本記事では、実体2は犯罪の才能を買い取って裏社会に流していたため財団と一緒に追放されてます -- 名無しさん (2026-04-22 23:50:43)
- 財団運営に役立つ才能を買い取るとか資金運用の才能を買って財政再建に役立てるとか、WinWinnaやり方もあったろうに もうそんな余裕も無かったんかな かなしいなあ -- 名無しさん (2026-04-23 16:37:03)
- 別のSCPnoa -- 名無しさん (2026-04-23 23:56:45)
- ミス、別のSCPの悪魔に「お前達じゃ対価を払えねえよ」って言われて殺害拒否されたクソトカゲなら幾らで買い取ってもらえるんだろうかここ -- 名無しさん (2026-04-23 23:57:35)
- ↑ 金払ってお引取りされた後、ポータル停止 -- 名無しさん (2026-04-24 19:14:47)
- よし危険なscpの能力を売ってみよう! -- 名無しさん (2026-07-29 17:58:14)
最終更新:2026年07月29日 17:58