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SCP-2712-JP

登録日:2026/07/22 Wed 14:01:33
更新日:2026/07/25 Sat 15:47:02
所要時間:約 14 分で読めます



SCP-2712-JPとは、怪異創作コミュニティサイト『SCP Foundation』に登場するオブジェクトの一つである。
項目名は「どんなに貧しくとも、供え物に手を出すほど財団は非倫理的ではない」。
オブジェクトクラスSafe

ネタ振りのようなメタタイトルの時点で薄々察したアニヲタ諸兄もいるかもしれないが財団が極端に貧しい世界線という前提の元で書かれるカノン『まずしいざいだん』に属する作品の一つ。


+ 『まずしいざいだん』を知らない人に向けてザックリ解説
『まずしいざいだん』とはその名の通り財力が極限まで枯渇したド級の貧乏財団を描くシリーズである。
「なぜここまで貧しくなったのか」についての公式設定はなく、いつもの財団に対するIFシリーズ的な立ち位置の作品群と思ってもらいたい。

どれくらい貧乏かと言うと
  • 光熱費はマトモに払えない
  • 金稼ぎのためにオブジェクトは積極利用、なんなら売却もする
  • 有能な職員は大抵既に再就職しているためプロ意識の欠けた言動を取る者も
といった有様で、サイト上では
  • カラーコピーは金がかかるので報告書は全てモノクロ
  • ページ上部の本来『確保(Secure)収容(Contain)保護(Protect)』と書いてあるロゴ部分が『Su()Can(かん)Pin(ぴん)』の言葉に変えられ切れかけの電球のように点滅している
といったネタまでしこまれている。

概要

SCP-2712-JPは埼玉県川口市坂下町に設置されている特定の電柱の周囲1m範囲で、飲料が多数出現する異常現象である。この異常現象は毎日19時34分17秒キッカリに発動し最小42本、最大で78本もの飲料の出現が記録されている。

飲料の内容はと言うと様々なようで「ごく飲みメロンソーダ」というどこかで聞いたような炭酸飲料を始めとする市販品6種類が記録されており、全て出現日時から見て妥当な賞味期限が記載されているとのこと。

説明は以上だがついでに補遺1として書かれている発見経緯も述べておこう。

SCP-2712-JPは1992年4月18日に発生した普通乗用車と歩行者との交通死亡事故をキッカケとして発生するようになったとされている。交通事故そのものに不審な点は無いものの当時12歳だった熊谷君が犠牲となっており、事故現場近辺の電柱には民間人によって花や飲料など多数の供え物が供えられたという。

そんな痛ましい現場にていつからか「供え物の中で500mLペットボトルの『ごく飲みメロンソーダ』が極端に多い」という噂が立ち始めた。無論SCP-2712-JPの仕業である。
噂を受けた財団はSCP-2712-JPの存在を認知し、後の調査にて熊谷君が生前『ごく飲みメロンソーダ』を愛飲していたこと、異常性が発動する19時34分17秒は熊谷君が事故に遭った時刻であることなどを突き止めている。

表面的に見るならば『若くして亡くなった少年の供え物として毎日彼が愛飲した飲み物が大量に出現している』といった感じだろう。

というわけで特別収容プロトコルの説明に移るが、元記事では現行の特別収容プロトコルに加えて旧版の特別収容プロトコルの説明も付け加えられている。

それぞれ旧版が
  • カバーストーリー「道路工事」を流布した上で周囲をフェンスと遮蔽シートで隠蔽するよ
  • 監視カメラで民間人が侵入してこないか確認してね
  • 出てきた飲料は担当職員が回収・廃棄してね
というものなのに対し現行版は
  • 発生地点をブルーシートで覆ってね
  • 出てきた飲料は担当職員が回収してね
といった形でかなり簡略化されている。
カメラやらフェンスやらの廃止はお金が掛かるからまあ分かるとして、ここで気になるのは『出てきた飲料の回収・廃棄』が『出てきた飲料の回収』に留まっているところ。なぜわざわざ『廃棄』の文言を取り除いたのだろうか。その謎には以下の経緯がある。


プロジェクト・リフレッシュ

このパートでは報告書における財団が████年に発生した嘆きの給料日事件というインシデントをキッカケとして「まずしいざいだん」墜ちしたことが最初に語られている。

財政難から来る職員の給料削減や士気の低下が業務に支障をきたすと判断した財団はSCP-2712-JPが毎日出現させる飲料たちに目をつけた。それこそが先述の「プロジェクト・リフレッシュ」である。

内容自体は単純なもので
  • 出現した飲料の中から無作為に1本選んで安全検査する
  • 検査完了後、SCP-2712-JPによって出現した飲料をリスト化して各サイトに届ける
  • 職員たちはリストから好きな飲料を1本えらんで受け取ることができる
という要するに「好きな飲み物1本プレゼントキャンペーン」。

プロジェクト・リフレッシュは全部で3人しかいない担当職員の全会一致で採択され実行。多くの職員から好評を得ており、士気の向上に一定数の効果を見せたため継続していくことが決定されたようだ。

なおお供え物を掠め取って職員に横流しするという行為についてプロジェクト・リフレッシュ担当職員は
無論、出現する飲料の背景については、察するべき事情もある。しかし、職員の士気は収容業務の安定に直結する。メロンソーダ1本が、それに貢献するならば、これは立派な福利厚生施策であろう。
と答えている。

子供に供えられた物を大の大人が横領するというとなんとも意地汚いというか情けないように思えるが、放っておいたところで賞味期限切れのペットボトルが増えるだけだし、他の「まずしいざいだん」が『虚偽申請してまでAnomalousアイテムを独占する職員』『ビジネスパートナーとの約束を破って取引場をメチャクチャにする』といった有様なことを考えるとまだマシな方かもしれない。


出現する飲料たち

SCP-2712-JPの発生から5年後の1997年10月23日、初めて「ごく飲みメロンソーダ」以外の飲料の出現が確認された。

この変化は一時的なモノではなく以後も断続的に出現する飲料の種類に差異が発生したため、財団はお供え物をありがたくいただきつつ変化を記録していった。

1997/10/23の事例

  • 「ごく飲みメロンソーダ」×56本
  • 「深煎りブラック」×2本
メロンソーダに加えて初めて缶コーヒーが出現した事例。深煎りブラックについては財団世界で一般的に流通している缶コーヒーの一つとのこと。

2000/04/02の事例

  • 「ごく飲みメロンソーダ」×49本
  • 「深煎りブラック」×7本
  • 「夜風サワー」×1本
夜風サワーは財団世界で一般的に流通している缶チューハイの一種とのこと。この事例はSCP-2712-JPにおいて初めてアルコール飲料が出現した例である。

2002/07/11の事例

  • 「ごく飲みメロンソーダ」×42本
  • 「深煎りブラック」×5本
  • 「夜風サワー」×13本
  • 「TOKU缶ハイボール6」×2本
メロンソーダ、缶コーヒー、缶チューハイに加えラインナップに新たにアルコール類が増え始めている。

2005/10/21

  • 「ごく飲みメロンソーダ」×29本
  • 「夜風サワー」×8本
  • 「TOKU缶ハイボール」×15本
  • 「轟ビール」×1本
とうとうビールまで追加され始め逆に缶コーヒーがリストラされた。

2018/09/07

  • 「ごく飲みメロンソーダ」×18本
  • 「TOKU缶ハイボール」×7本
  • 「轟ビール」×21本
  • 「白鷺」×1本
「白鷺」は財団世界で一般に流通している日本酒の一つらしい。そして缶コーヒーに続き缶チューハイがリストラを食らっている。

メロンソーダ、缶コーヒー、缶チューハイ、缶ハイボール、缶ビール、日本酒と出現する飲料がどんどん酒飲みセレクションのように変化していっていることが見て取れるが、これについて担当職員は『被害者である熊谷 ███氏が生存していた場合の嗜好の変化と飲料のラインナップの変化が一致するのではないか』との仮説を立てた。

例えば缶コーヒーが出始めた1997年は熊谷君が17歳になる年、コーヒーに挑戦し初めてもおかしくない時期であるし、缶チューハイが出現し始めた2000年は熊谷君が20歳になる年である。
このように照らし合わせていくと熊谷君はチューハイから始めてハイボールを経由し25歳でビール好きに行き着いた、と見ることができるし私生活にこだわり始める30代後半の2018年辺りで日本酒に目覚めたと言うのもそう無理のある発想ではない。

原因不明のラインナップ変更にある程度見通しが経ったところで問題はプロジェクト・リフレッシュであるが、
  • 確かに異常性の変化は慎重に扱うべきだよね
  • でも実際のところ変化の傾向はある程度把握できてるし実害も出てないじゃん?
  • なんならアルコール類の出現やラインナップ増加で職員たちも喜んでるし……
  • そもそも経営不振の待遇悪化を誤魔化すための運用なんだから止めるほうがデメリットだよ!
というわけで3人しかいない担当職員の全会一致により今後もこのプロジェクトは継続していくことが決定したらしい。
まあ毎日50本前後出てくる飲み物をそのままゴミ箱送りにするのもそれはそれで資源の無駄と考えられるし出現した飲料を一般社会に向けて転売し始めないだけまだマシであろう。


さて報告書はプロジェクト・リフレッシュの継続が決定されたところで一旦終わりのようだが、数行空けた先にまだ『(1)件の更新があります!』と題された折り畳みが残っている。もうしばらくお付き合いいただこう。

(1)件の更新

2058年7月12日、突如SCP-2712-JPの挙動が変化し『水の入ったお椀』しか出現しなくなってしまった。これまでも出現する飲料に多少の変化が発生することはあったが、今回の変化はプロジェクト・リフレッシュの根幹を揺るがすものである。
それにしても2058年といえば熊谷さんは78歳、これまでの飲料趣向の変化を考えてみても突然ただの水を好み始めるとは考えにくいが何があったのだろうか。
これに対し財団は『水の入ったお椀』が仏教において死者に供えるお供え物『五供』の1つである「浄水」ではないかと考え
熊谷さんは無事に生きていたとしても78歳で死ぬ運命にあり熊谷さんの生涯に連動する形で飲料を出していたSCP-2712-JPもそれに伴って供養としての浄水しか出さなくなった
という仮説を立てている。

プロジェクト・リフレッシュの根幹であったSCP-2712-JPが「ただの水の入ったお椀」の湧きどころに変わってしまった以上、もうこのプロジェクトもやっていけない。そういうわけで担当職員の全会一致によりプロジェクト・リフレッシュは終了することが決定したそうだ。

最後に担当職員からの声明があるためここに全文引用しよう。
審議の結果、本プロジェクトの運用を終了することとした。

理由は明快である。五供における浄水とは、故人への供物として捧げられる性質のものである。それを財団職員が享受することは、倫理的に問題があると判断したためである。SCP-2712-JPの異常性およびこれまでの経過を踏まえれば、これ以上の説明は不要であろう。断じて、「当該飲料に対する関心の低下」が本決定に影響を与えた事実は存在しない。
……………。
SCP-2712-JPの生成物は最初から故人への供物以外の何物でもなかった気がするが、彼らは今さら何に対し弁明しているのだろうか。
非倫理的云々を言い出すには遅すぎる気もするが元よりSCP-2712-JPは財団のことなど眼中になさそうだし一から十まで財団の独り相撲でしかないだろう。


余談

この記事は、第6回新人コンテストであるビギナーズコンテストの参加作。
そして、ビギニング・ブロック SCP部門で銀賞を獲得した記事である。
つまり、ほとんど記事を書いたことがない人が書いたSCP記事の中で2位を獲ったということであり、偉業であるといえよう。



追記・修整はお供え物に手を出すような性根を克服してからお願いします。



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最終更新:2026年07月25日 15:47