カステイラ

登録日:2009/05/28 Thu 17:00:36
更新日:2025/08/30 Sat 21:57:11
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…想像して欲しい


表面にあるザラメがほどよく焦げて甘さとほろ苦い味が口のなかでとろけ合う
そしてすかさず牛乳をゴクリ…


至福の時である



ちなみにレンジでチンするとフカフカで美味い
そしてそこにすかさずホットミルクをゴクリ…


至福の時である



急いで食べようとして紙ごとガブリ…
そしてすかさず牛乳をゴクリ…


至福の時である



夏は冷蔵庫で冷やすと程よい固さでしっとりとして美味い
そしてすかさず冷えた牛乳をゴクリ…


至福の時である



ただでさえ美味しいにもかかわらずチョコチップが入っているものがあるらしい
それを当然牛乳と一緒にゴクリ…


至福の時である



なんと抹茶味のものまであるらしい
甘さと茶葉の渋い味が口のなかでとろけ合う
そしてすかさず牛乳をゴクリ…


至福の時である



時には趣向を変えてシュークリームを食してみよう

芳醇なヴァニラの香りと新鮮な卵の風味が心地よいカスタードと、それを包む軽い歯触りのシュー生地とが溶け合い、えも言われぬハーモニーを奏でる


…美味い


シュークリームとはこれほど美味い物であったか

初めての経験に衝撃を覚えつつカステイラをガブリ
そしてすかさず牛乳をゴクリ…


至福の時である






我々を幸福にさせてくれる合法ドラッグ、カステラの古風かつ優雅な呼び方。

その歴史は古く、室町時代ポルトガルからの宣教師により長崎周辺に広められたとされている。
その為、分類上は和菓子(明治以降に伝えられた菓子を洋菓子とする)。

材料は基本的に卵、小麦粉、砂糖。

このシンプルさが日本でも淘汰されなかった主因である。
ただし日本のカステイラはルーツとされているポルトガル製菓のパォン・デ・ローと違う点もあり、
砂糖の配合が多く*1、使用する砂糖も上白糖がメインで、水飴か蜂蜜も加えているので、食感は異なっている。
また、カステイラもパォン・デ・ローも製法は共立て法と別立て法に大別されるが、カステイラは共立て法が一般的になっているという*2
ちなみに台湾カステラ(現地呼称:古早味蛋糕/現烤蛋糕/布丁蛋糕)は、卵、小麦粉、砂糖に加えて植物油も必ず使用していて、
薄力粉と植物油を混ぜてから黄身やメレンゲと合わせて湯煎焼きすることで、独特なふっくら感を生み出している。

洋菓子では牛乳が多く用いられるが、カステイラでは使われないことも牛乳との絶妙な組み合わせが成立する要因だろうか。
もっとも今日ではカステイラに少量の牛乳を加える例は珍しくなく、台湾カステラは砂糖類ないし小麦粉と同量の牛乳を混ぜ込むレシピもある。
また、カステイラはしっとり感を高める目的で少量の油脂類を足す場合もある。植物油は生地の膨化を阻害し難く、バターは風味も良くするので、お好みで使い分ける。

この菓子を作り上げた先人達と日本に広めた宣教師達には全力で敬意を表すべきである。


実はカステイラというのは現在私たちが「カステラ」と呼んでいるものが乗っていた皿に描いてあった「城」(castle→castilla)のことだったようだ。
伝道者は皿の模様を指さし、翻訳役は乗っていた菓子をカステラだと思ったらしい。
ポルトガル本国において日本へ伝来した経緯は知られておらず、カステラ自体を知らない人もいたという。
なお、スペインのビスコチョが原型であるという説も存在する。
余談だが、2010年や2020年の頃にブームとなった半熟カステラについては、パォン・デ・ローを参考にしている*3
半熟タイプのパォン・デ・ローは1990年代後半にポルトガルで広まっていた経緯があり、日本でもその存在は知られて2000年前後に商品化が試みられている。

勘違いからカステイラという素晴らしき言葉が生まれたのだった……
もっともこれは諸説のひとつに過ぎず、真相は不明である。

余談だが「カステイラ」と言えば、老舗・文明堂の
「カステラ1番、電話は2番、3時のおやつは文明堂」~♪
のCMを思い出す。

実は全国的に有名な上記のフレーズ。

長崎と兵庫では流れなかった為、知らない人も結構多かったりする。

ちなみに長崎で同様のものは「♪間もなく3時~カステラタイム(ママおやつ)カステラ一番、電話は二番 文明堂のカステ~ラ」

というもので、

兵庫では「カステラ一番、電話は二番、神戸のカステラ文明堂」

とナレーションが入るものだった。


余談

  • ぐりとぐら
さて、カステラといえばこの絵本を思い出した人も多いのではなかろうか?

ぐりぐら である。

大きなたまごを見つけて、巨大ななべでつくるふわふわの黄色いカステラ
幼心においしそうに見えたものである。

福音館書店の特設サイトでレシピを公開しているので、サイズは小振りながら再現可能である。

  • 5月3日と11月1日
5月3日は五三焼カステラの日として、2017年に和泉屋と日本記念日協会が制定・登録した。
五三焼は卵黄5:卵白3と通常の製法よりも卵黄の比率が高く、卵黄由来の油脂分を多く含むことでしっとり感とコクが増している。
砂糖類を増やして小麦粉を減らす配合で口溶けも良くしているが、焼き上げるのは難しくなるため、職人の腕が試されるという。

2024年には、11月1日が井村屋カステラの日として制定・登録された。
一切れを上から覗いたら1に見えるほか、横から眺めれば焦げ目の付いた上面・下面と黄色の層で111に見えることが由来とされる。
また紅茶とも相性が良いので、紅茶の日に合わせた形でもある。


カステイラが好きなキャラクター





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最終更新:2025年08月30日 21:57

*1 例外もあるが、日本のカステイラが卵1:小麦粉0.5:砂糖1に対して、中世のパォン・デ・ロー・デ・ポルトは卵1:小麦粉1:砂糖0.55という配合である。

*2 文明堂や松翁軒は共立て法、福砂屋や上野凮月堂は別立て法を採用している。卵の風味は共立て法、ふっくら感は別立て法が勝る傾向にある。

*3 半熟タイプのパォン・デ・ローは数種類存在するが、オヴァール地方のレシピが特に有名である。