登録日:2012/06/14(木) 02:02:01
更新日:2023/02/14 Tue 18:17:23
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勝負の世界は何が起こるか分からない。
神のいたずらとでも言うべきか――
時に人知の及ばぬ結末がもたらされるものである。
格下が強豪を打ち破る、伯仲した宿命の
ライバル同士が一歩も譲らぬ攻防を繰り広げる…
そんな名勝負の数々に胸を熱くした経験は、誰しもが少なからずあることだろう。
ここで紹介する一局もそのひとつ。
将棋史上稀に見る激闘の記録である。
ぜひとも刮目し、その顛末を見届けてほしい。
【激闘のあらまし ー接触篇ー】
時は2007年4月――
第15期大山名人杯 倉敷藤花戦。
花も恥じらう女流棋士たちが、王座を目指して鎬を削っていた。
ことが起きたのはその二回戦。
挑みしは、一回戦で島井初段を破った『関根 紀代子』四段。
段位からも分かるように、紛れもない実力者である。
迎え撃つは、シード権により今大会初戦の『甲斐 智美』二段。
格上相手にどう戦うか。
かくして盤を挟み相対するふたり。
事ここに至って、両者の纏う闘気はもはや「女」のそれではなく「戦乙女」の域にまで昇華されたいたと言っても過言ではない。
振り駒によって決まった先手は、甲斐。
「絶対に勝つ」「いい一局にしよう」…そんな言葉はもう要らない。全霊を賭すこと――それのみが戦士にとって唯一の不文律であるが故。
あとはただ、己が力と技を以て相手を屈服せしめるのみ。
総てのお膳立てが整い、ここに決戦の火蓋が切って落とされた――!!
【激闘のあらまし ー発動篇ー】
例えるならば早朝の湖面の如き静謐。
両者の集中力は最高の戦略を形と成すため、極限まで研ぎ澄まされていた。
古のサムライがそうであったように。
彼女たちもまた初手の前、対面したその瞬間からすでに不可視の攻防を繰り広げていたに違いない。
切り込むべきか、固めるか。阻むべきか、受け流すか――
これまで出会った師や好敵手、すべての戦い。それら余さず血肉となりて、勝利への方程式(エクエイション)を導き出す。
――答えは得た。ならばもはや迷うまい。
己を鍛え、導いてくれた総てに。そして何よりも、それらを背負う己が矜持に懸けて。
かくて彼女は手を伸ばし
いざ踏み出さん、勝利への第一歩。
己が手足たる駒を
この関根紀代子の覇道の行軍、
果たして貴様に阻めるか――!
盤上に打ち込んだ――
静寂を破る駒音。
瞬間、会場に衝撃疾走(はし)る――!
だれが予想し得ただろう。
この一手。
一見何の変哲もないような手によって、この一局の勝敗が決したのである。
何? イミフ?
だが安心してほしい。
こんなこともあろうかと、ちょっとしたタイムマシンを用意しておいた。
自力でこの謎を解明したい方は遠慮なく使って呉れ給え。
それでは…
ハイパークロックアップ!
以下、重大なヒント
ネェクストコナンズヒィーーントッッ!!
「振り駒」
関根さん、アンタ後手だろ。
文句なしの初手反則負けです本当にありがとうございました。
【余談】
将棋史上稀に見る失態を犯した関根ちゃんだが、実はこれ以前にもやらかしている。
とある冬場の対局にて、厚手のセーターに引っ掛かって駒台に落ちた香車を持ち駒と勘違いして使用し、反則負けを喫してしまったのである。
関根たんマジドジッ娘。
しかも女流棋士の公式戦では初めての反則負けだったのだとか。
関根ちんマジ前代未聞。
ちなみに、何もせず勝ってしまった甲斐さんはその後順調に勝利を重ね、準決勝まで駒を進めている。
関根ぴょんマジ無念。
追記・修正はうっかりの無いようにお願いします。
ちなみに関根っちは当時65歳である。
- 二歩やらかして負けた人もいたよねたしか -- 名無しさん (2014-04-19 23:05:48)
- オチがいいなw -- 名無しさん (2017-07-10 13:31:59)
- 2022年にコレをやらかした人が現れたとか -- 名無しさん (2023-02-14 18:17:23)
最終更新:2023年02月14日 18:17