ハルウララ(競走馬)

登録日:2010/08/11(水) 08:32:18
更新日:2025/03/26 Wed 17:16:48
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99年クラシック世代 Haru Urara この惑星には、愛されるという勝ち方もある アイドルホース ウマ娘ネタ元項目 サラブレッド ニッポーテイオー産駒 ネタキャラ ノーザンダンサー系 ハルウララ ヒノデマキバオー マキバオーのモデル? 交通安全 作られたアイドル 偶像 全戦全敗 勝てないからこそ、愛された。 唯一抜きん出て並ぶものなし(連敗的な意味で) 地方競馬 天運に恵まれた馬 愛されることで伝説になった馬 日本のジッピーチッピー 最弱 武豊 武豊でも勝てず 無事之名馬 無冠のアイドル 牝馬 特異点 社会現象 競走馬 競馬 覇王世代(一応) 記録ではなく、記憶に残る馬 負けるが勝ち 負け組の星 頑丈さなら最強 高知競馬場 高知競馬場の救世主





一回ぐらい、勝とうな

2003年6月13日 高知新聞一面紙 ハルウララの特集記事より


ハルウララ(Haru Urara)とは、日本の元競走馬

その生涯戦績、なんと113戦0勝
しかしレースでの勝利こそかなわなかったものの、「ファンからの熱狂的な支持を勝ち取る」という形で多くの売り上げを呼び込み、いつ消えるかも分からなかった高知競馬、低迷していた地方競馬、そして中央までもを巻き込んだ競馬人気そのものを建て直した影の功労者。
通称「負け組の星」。


目次


【誕生】

父は、かつて「マイルの帝王」と呼ばれ天皇賞(秋)・安田記念も制したニッポーテイオー。
種牡馬としては初年度こそ悪くなかったが失速し、年に1頭重賞に絡む馬を出すかどうか程度に留まっており、数多いる平凡な種牡馬の1頭という感じであった。
1996年に母ヒロインが産み落としたその牝馬は、後に高知競馬場の人気者にして救世主となる。

生まれつき超小柄な体格に、臆病かつ暴れ癖のある難性格。
セリ市では誰にも買って貰えず、結局、牧場が引き取って競走馬登録をする事になった。
その登録名は『ハルウララ』。
余りに手が掛かる馬なので、調教師が「せめて名前は優しいものにしよう」と考案したものである。

が……。


【現役時代】

競走馬デビューしたは良いものの、全く勝てない……一着にならない日々が続いた。
デビュー後5年経過(2003年初春時)しても、結局勝ち鞍は無し。連敗数は80になっていた。
引退説の囁かれる中、世の中ではある動きがあった。

そう、突然のハルウララブームが巻き起こったのだ。

2000年代はあちこちの地方競馬場が廃止される地方競馬受難の年代で、それは高知競馬場も例外ではなかった。
廃止も囁かれていた高知競馬場は窮余の策と「高知の怪物イブキライズアップ*1、あとおまけで連戦連敗の割に引退せず走っているハルウララ」をマスコミに売り込んだのだ。

するとどうしたことか、このオマケが受けに受けた。
その負けっぷりが新聞、テレビで取り上げられ、その結果競馬ファン以外からも認知され、「負け組の星」として担ぎ上げられたのだ。
変なところで「持っている」ウマである。

廃止説の流れていた高知競馬場や、更には生産牧場にまで多くの観光客やファンが押し寄せた。
12月には100連敗を記録、その時の高知競馬場には5000人のファンが来場。
またハルウララの馬券が「当たらない」ことから、交通安全のお守りと称して買う人も現れた。
2004年には、中央との交流重賞「黒船賞」のため高知を訪れたあの天才ジョッキー・武豊が、本番のついでにハルウララにもゲスト騎乗し話題になった。

そして2006年に引退。
引退理由は「馬主と調教師サイドの仲たがい」である*2


【引退後】

最後は人間に振り回され、いつの間にか人々の話題から消えていったハルウララ。
廃止寸前の高知競馬を救い、本来の競走馬とは違う形ではあるが経済動物としての役割を果たした名馬であることは間違い無い。
そして、牡馬ならともかく牝馬ならたとえ未勝利だろうが繁殖牝馬としては使える……はずなのに何故かそうもならず*3、行方知らずの時期が長い間続いた。

そこそこの成績をあげた馬でも末路が判然としないことが珍しい事でもないのが競馬業界。
ましてやハルウララでは……と、残されたファンも諦めつつあった。

だが2012年頃、千葉県マーサファームにいることが突如明らかにされた。
そして同牧場ホームページには「牧場にハルウララを預けた馬主がその世話をするのに必要な預託料を突如払わなくなり、最終的に所有権を放棄した」ということと、「それによってハルウララの世話ができなくなり、殺処分寸前に追い込まれている」という衝撃的な内容が掲載されていた。
しかし、牧場側もハルウララの殺処分には否定的で、彼女の余生を支援する者を集めるべく、ファンクラブの「春うららの会」を設立したことも明らかにした。

この頃には既にハルウララブームは過去のものとなっており、牧場側も会員や寄付が集まるかどうか確信を持てずにいたようだった。
が、その不安は幸い杞憂に終わった。現役時代を知るファンから入会希望や寄付が殺到したのだ。
会員数はすぐに上限に達し、ハルウララを養うために必要な資金があっという間に牧場へ集まった。これで殺処分の話は取り消しとなり、彼女の余生は約束されたのである。
やはり「持っている」ウマなのだ。

また、2019年5月18日に行われたソフト競馬*4の第1回そふと女子会(GⅢ・16.00秒)で馬生初勝利を手にした模様。

ハルウララは2024年現在28歳になり、馬としては老齢の域になったが、ファンたちに支えられ、穏やかな余生を送っている。父ニッポーテイオーは2016年(33歳)まで生きた長寿馬だったのでまだまだ元気に過ごしてほしいものである。
ちなみにハルウララの前で「おばあちゃん」は禁句らしい。そう聞いた途端に壁を蹴って怒り出したとか……。

なお、その生涯成績ばかりが話題になるが、現役中ほぼ休む事なく年20回ものペースで合計3桁出走して一度も故障無し*5という地味にとんでもない実績も残している。
事実上の引退のきっかけとなった長期休養についても、実はわりと早い段階で獣医師が復帰しても大丈夫と太鼓判を押すぐらいには回復していたらしく、最終的には「高知競馬クラスなら勝てない方がおかしい」というレベルにまで仕上がっていたとか。
そのため、「勝ってしまうとハルウララの商品価値がなくなるから、(先述の三番目の馬主が)わざとレースに出さないで長期休養させ続けていたのではないか」という説まで飛び出したほど。


【創作作品への登場】

元々地方競馬が題材になる事が少ない作品ながら、第7回黒船賞回に登場。
中央から武豊を乗せノボジャックと一緒に出走しに来たノボトゥルーを高知銘菓「蔵出し」でもてなし、本回時点での異様な熱狂への複雑な想いを彼に語っていた。

走るのが大好きで、負けても負けても笑顔を絶やさない、みんなに愛される天真爛漫なウマ娘。
ゲームではチュートリアルガチャで入手可能な5人の中で唯一のダートA持ち・短距離~マイル向けのウマ娘。適性は差し・追い込みなのでやや事故率が高いが育成目標の条件・期間にかなり余裕があり、初心者でもゲームの進め方と「バ場適性」「距離適性」の重要性を覚えやすいのが特徴である。

ただし、サービス開始から5年以上経った今、フリオーソの登場まで全キャラ中唯一JRA非登録馬がモデル(=ウマ娘に登場する全てのキャラとモデルの方で関わりがない)である為か、強化に影響する因子継承の相性値がほとんどの相手と最低レベルという欠点を抱えており、ダート因子をハルウララから継承していきたいプレイヤーにとっては悩みの種となる。仮にもしハルウララと関わりのある馬を出すとしたら、史実のお父さんであるニッポーテイオーか、同じ高知に所属していた総大将くらいだろうか。

三冠馬はじめ選りすぐりの中央の名馬たち、最低でも準G1級くらいの馬たちと共に育成ウマ娘(モブとかではなくプレイアブルキャラクターということ)として登場しているのも、ハルウララの圧倒的ネームバリューの表れと言えるだろう。
ゲーム版ではその特異な立場を反映したストーリーや、一般的な競馬ゲームより自由度の高い育成により、ハルウララで有馬記念に勝つというとち狂った挑戦ifストーリーを推奨する隠し要素を搭載しているなどで初期から話題を集めた。
2022年の3月のANNnewsでは、現役時代を知らないが同ゲームでハルウララに触れた若いファンがマーサファームを訪れる様子が報道された。

主人公・ヒノデマキバオーのモデルはハルウララ。
そもそも作者が『たいようのマキバオー』を描き始めたきっかけが、ディープインパクトとハルウララの存在。
勝ち続ける馬と負け続ける馬が、どちらもヒーローとして扱われる。
同じ競走馬なのに「こんなにも住む世界が違うんだ!」という格差を描きたかったとか。
+ 但し……
作中のヒノデマキバオーは序盤で「勝つことの喜び」と「負ける事に自分が慣れてしまう恐怖」を実感し、彼の気持ちを受けた主戦騎手等の助力もあり立派な勝てる高知のエース馬に成長。
作品エンディングでちゃんと引退後の第2の馬生を見つけたこともありぶっちゃけウララとは最初の人気の理由(と親がG1馬)な事以外被っていない。
なのでファンの中にはむしろ、漫画連載中に彼女の後を受けて活躍したグランシュヴァリエの方が近いという意見もあるとか……。


【余談】

▲「無勝100連敗以上の競走馬」にはまだ上が多数おり、引退時点でも「ハクホークイン」(1984年~1992年、浦和競馬場)の161連敗という日本記録があった。
そしてそのワースト記録は彼女の引退後、門別競馬に所属していた牝馬ダンスセイバーが229連敗を記録して更新された。(2022年3月引退。最終出走は2021年10月26日)
またアメリカでもハルウララと同時期(世代的には5歳上)、無勝100連敗で2004年に引退した「ジッピーチッピー」なる馬が存在。
こっちもウララの様に人気になる一方(というかこっちをウララブームが参考にしたとか)、あまりにも勝てない事から、現役後半ではその出走を拒否する競馬場が増える等「目指せアメリカ馬連敗記録106敗更新!」的な人気に苦言を呈す者も多かった。
だが、それでもジッピーは馬主に愛され最後まで走り続け、ちゃっかり他種類の馬や人間とのハンデレースで非公式ながら勝ちを上げつつ引退。かつて出禁された競馬場での誘導馬を経て功労馬として余生を過ごし2022年4月に天寿を全うした。
なお、高知競馬には他にも日本競馬史上最多出走したサラブレッド「セニョールベスト」(1999~2014、元中央馬。409戦32勝)も所属しており、実は「負け数」だけだとそっちにも負けているのだった……。

△ハルウララ引退後の高知競馬は再び苦境に立たされる。話題の更新が無ければ、負け続ける馬のブームなど当然長く続くはずもないのだから。

そもそも高知競馬は一度負債を県が肩代わりし、次に赤字が出た場合は即廃止という条件で存続した前歴があった。レースの賞金や出走料を極限まで削ったり、職員が競馬場の掃除その他の雑務を行ったりすることで経費を節減し、それでも出た赤字はハルウララブームの貯蓄を取り崩して補填した。座して死を待っていたわけでは決してなく、地道なキャンペーンを張ったりネット利用の馬券販売に向けた体制整備を積極的に進め、残り少ないハルウララ資金を投じてナイター設備を導入した。
耐えに耐え、持てる手を出し尽くして生き残りを図った高知競馬は、中央を落伍した競走馬「グランシュヴァリエ」とともに復活していくこととなるが、それはまた別のお話。詳しくはグランシュヴァリエの項目を参照。

▲ハルウララには妹と弟がいる。*6妹のミツイシフラワーは高知競馬、弟のオノゾミドオリは兵庫競馬にそれぞれ所属し、ハルウララと揃って3頭一緒に走ったことがある。


負け続けても負け続けても、追記・修正をお願いします。

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最終更新:2025年03月26日 17:16

*1 中央から転厩してきた馬で父は中央重賞馬イブキマイカグラ。高知で18連勝を記録したが、2005年にレース開始直後骨折し数日後安楽死を余儀なくされた。

*2 仲違いした馬主は3番目にハルウララを所有した人で、負け続けても長く走らせていた2番目の馬主とは別人である。だがこの3番目の馬主は様々な点で『言動が胡散臭い』と当初から言われており、「ハルウララの知名度で儲けたかっただけではないか」という見方が根強い。

*3 知名度を生かしてあのディープインパクトと交配する計画もあったが、馬主が超高額の種付け料を払えないことから頓挫している。

*4 引退馬中心を中心としてコースを既定のタイム「以上」で走る競技。タイムが規定以内だと失格で、2番目に速い馬が勝利となる

*5 休んだのは蹄の病気を患って出走を取りやめた1回のみ。

*6 競走馬の兄弟姉妹関係は母親が共通の場合のみ兄弟姉妹として扱われる。両親ともに共通の場合を全兄弟/姉妹、母親のみが共通の場合を半兄弟/姉妹と呼ぶ。