この人を見よ(フレスコ画)

登録日:2012/09/23 Sun 02:27:33
更新日:2025/02/03 Mon 18:33:04
所要時間:約 4 分で読めます




この人を見よ(ecce homo)とは、
スペイン北東部ボルハの教会にある、19世紀の画家エリアス・ガルシア・マルティネスによって描かれたフレスコ画だったものである


【元作品の概要】
スペインアラゴン州サラゴサ県ボルハ市によく休養にきていた縁で、作者がそこの教会の柱に描き寄贈したものである。
モチーフはイバラの冠をかぶったイエス・キリスト

120年前に描かれたせいで、湿気でボロボロになってしまっていたが、教会に修復する金がなく、そのままになっていた。


【あるお婆さんによる修復】

そんなところに、ある信心深いお婆さんがいた。名前はセシリア・ヒメネス。80歳。

彼女はフレスコ画に関して知識は全くなかったが、このキリスト画の無残な姿を嘆き、教会に無断で修復を行うことにした。
作業は堂々とやっており、ほかの信者たちも見ていたが、誰も止めようとしなかったという。止めろよ。
その結果がこれだ。↓
ワンツー↑スリー↓












どうしてこうなった



【全世界へ発信、そして】

そのあまりにも元の絵とは違うフレスコ画は、インターネットによって全世界へ発信された。
あるBBCのヨーロッパ特派員は「似合っていない外衣を着た毛むくじゃらの猿のスケッチ」に変わってしまったとコメントした。言い得て妙である。
それがどういうわけか爆発的な人気をはくし、このフレスコ画をみるため、全世界の人がスペインのこの教会に訪れるようになった。
関連してさまざまなこのフレスコ画のグッズが生まれている。

余談だがキリスト教に明るくない人のために解説するとそもそもこの絵の題材とされている「この人を見よ」とは
これから処刑されるキリストを侮蔑・嘲笑するために集まった大勢の群衆に向かって、処刑を命じたピラトスが「この人物を見よ」とキリストを引き出した場面であり「キリストの受難」の象徴である。
今回のケースは侮蔑や嘲笑のためではたぶんないが、このキリストを見に大勢の人が集まったことになる。


教会は、途中から見学料を徴収するようになり、四日で2万ユーロ集まったそうである。
この見学料(お婆さんからすると著作権料)を巡って、お婆さんと教会のもめ事が生じていたが、現在は市長が仲介となって権利の分配は済んでいる。
ただし前述の通り、この絵の元の作者は死亡しているとはいえ描かれてからほんの100年も経っておらず
作者の子孫(というか時期的にまだ孫世代)は先祖の力作を 汚された 上に本来の姿に復元される見込みがないということで不満なのだがこちらも仲介と交渉が進められている。


【再修復】 
すっかり生まれ変わってしまったフレスコ画だが、表面の絵の具を落とし(今の絵を消し)再び修復することが可能と見られている。
しかし今や観光資源となっているのでこのままで良いという市民の声があったり『面白いからこのままにしとけよ』という世界中からの署名が集まったりしている。
だが月日がたつほど再修復を望む市民もまた増えている。

このまま直さない方が、教会にも、(ネタ的にも)いいような気もするのだが…。

だがあまり時間がたつと絵の具がなじんでしまい、再修復が不可能になる。
世間に飽きられて価値がなくなってから元に戻そうとしても遅い…

この人の明日はどっちだ。

【余談】
この一件は当初、面白おかしく報じられてしまい、上記のように老女が勝手に修復した、彼女は教会で掃除をしていただけの素人だなどと言うフェイクニュースが流れ、彼女は心無い人々によって激しく非難された。
彼女はフレスコ画の修復を行うための専門知識は持ち合わせていなかったが、個展を開くほどの実力持つ画家であり、
以下は地元の醸造所で作られたワインボトルにも使用された”この人を見よ”である。


出典:セシリアヒメネスファンクラブhttps://www.facebook.com/CeciliaGimenezFanClub


教会に無断で修復を行ったとされているが、本人曰く「教会関係者に依頼された」との事である。
また本人の名誉のために言うならば、例の修復後の状態は、下地を塗っている段階で、まだまだ作業は序盤の状態であり、これから手直しをしていくつもりだったようである。
そしてよりにもよって、その序盤の状態で世間の目に触れることになってしまったため、騒動になってしまったのである。

もし彼女に十分な時間が与えられていれば、もっとマシな状態になったと考えられ、彼女は不当に貶められたと言えよう。

しかし彼女は専門のフレスコ画修復師ではない事を考えると、あのような状態だったからこそ話題になったとも言える。


ちなみにアニヲタ的なことを言うなら、
アニメ「じょしらく」の第十話Cパート「虫歯浜」にて明らかにこの改修されたフレスコ画を真似たものがさりげなく登場している。
そして最終回にも登場した。エビゾーと並ぶスタッフのお気に入り。

暗殺教室にも出現。全国のジャンプ読者の腹筋が崩壊した…はず。


追記・修復お願いします。



この項目が面白かったなら……\ポチッと/

+ タグ編集
  • タグ:
  • 絵画
  • フレスコ画
  • 修復
  • 教会
  • キリスト
  • キリスト?
  • スペイン
  • 誰だお前
  • どうしてこうなった
  • 大人気
  • 台無しの先生
  • 暗殺教室
  • 訴訟
  • この人を見よ
  • クソ(褒め言葉)
  • ジレンマ
  • 秀逸な項目
最終更新:2025年02月03日 18:33