以下では、ラブレイの思想を端的に述べる。事前にファイクレオネ史レヴェン主義イェスカ主義、またアース連邦のヘーゲル、アルセチュール、レヴィナスあたりを薄っぺらく読んでおくと分かりやすいだろう。


独裁制批判 ― 人称化が転倒し得ない現実としての独裁

デヘルはイェスカ哲学における「従属化=人称化=主体化」の構造を展開し、独裁制を分析した。
独裁制は市民の自己決定権を奪うことによる従属化によって、市民の個人を人称化しようとする試みであり、その内では市民は自由を獲得する。しかしながら、その頂点に立つ従属先のゆらぎは近代以降の社会に顕著なものとして現れるのであり、グラデーション的に展開する非人称化の働きは頂点で転倒して、指導者が非人称化されなければならない。だが、実際にはそんなことは不可能であり、ギャッコー主義のような手法でも厳密には実現し得ないのである。微妙に人称化された指導者は結果的に市民との間に人称化の闘争を開始する。この闘争の末が、暴力的統治・暴力的認識・暴力的政治に繋がるのである。

レシュト主義再考 ― クロノリアリティックなものとして思想へ

デヘルはクロノリアリティック(有―時間―現実―的)なものとしての思想への意識を求める。これはレヴェン学派第三世代における無時間的理想法制批判理論の影響も見られる。
人々を導く思想はどんなものでも「書」かれるのである。口伝で言い伝えられるものも言語記号としては「書」かれた物である。書くもの(Kranteerl)から書かれたもの(Kranteerl vel)への変遷、それは無―時間―夢想―的(nef-liest-e-r-neciluki'e)なものとしての思想を展開する。しかし、無―時間的なものは夢想―的なものである。そのような思想、「書かれた思想」は現実的なものではない。思想は、有時間的であり、現実的な思想――クロノリアリティックでなければならない。現実的な思想は書物の鵜呑みではありえない。それは現実に時間化され、新たに再生産され、二度と無い固有の思想となる。これこそがレシュトなのである。

自由の非自由 ― 何故ヴァルエルクは批判され得るのか

ラブレイはヴァルエルクの国際批判に対しての考察を述べている。
ヴァルエルクによる自由の思想、それは人間の目の前に引き出された不自由の思想である。イェスカによって既に表された通り、従属化=人称化=主体化の鎖から人間は解き放たれない。自由は妄想によって実現している。完全なる自由を求める命令は確実に鎖である。「自由になりなさい」という命令は「自由でないこと」の自由を奪っている。この作為は偽善なのだ。それならば正義、道徳、倫理とはこれまで考えてこられた在り方とは変質していってしまう。ヴァルエルクが批判される時代、それは自ら道徳の在り方を問い直す時代である。名前と戦闘するだけはゆめゆめ終わらない人間性の格闘へと向かう。

制度的恋愛の批判 ― 自由からの遁走≒自由への進撃:構造の破壊へ

デヘルは世間には「制度的恋愛」を価値とする錯覚がまかり通っていることを分析し、そこから更にイェスカ哲学の「従属化=人称化=主体化」構造へ回帰する。しかしながら、これを破ることで新たな局面を創造しようとするのである。
ユエスレオネ革命後に興った恋愛共産主義はイェスカに禁止されたが、今一度我々が恋愛において制度的なものを持っていないか注意しなければならない。自己の対象への愛の分析に制度的価値を見出すのであれば、それは愛ではない。それは既に好選(texterfallerrgo)である。公的な社会構造が人を好選することを嫌うくせに恋愛においてメディアがそれを促進させようとするのは何故なのだろうか。思春期における「彼氏」「彼女」の制度化は人間の自然を映しているようにも見える。すなわち、自由からの遁走≒自由への進撃≒「従属化=人称化=主体化」構造であり、我々はこの対立概念を俯瞰して破らなければならない。そうすることで、恋愛の哲学は新たなる局面を映し出すことが出来るだろう。

文字的認識 ― 本質の志向性とクハとしての現象

デヘルは本質を志向性であると説き、現象をその志向性の痕跡としてのクハ(アンハルティア・ド・ヴェアンの概念)であるとした。
私たちは文字を一文字ずつ読むわけではなく、それを塊として認識している。これは現象と本質の対応関係に類似するものである。****は本質は理念的にただ理想的な本質であるとしたが、文字的認識における現象が塊としての認識であるならば、本質は文字自体である。文字は更に構造を分化して捉えることが出来る。つまり、本質の終点は人間には認識不可能である。それを考えるならば、本質は存在ではなく志向性であると考えるのが妥当である。現象は志向性の痕跡――クハとして稼働しているのではないか。

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最終更新:2022年06月27日 01:20