壊れゆく常識 ◆LuuKRM2PEg



「こんな設備がこの警察署にあったとは……」

 警察署の一室で沖一也は瞠目している。
 蒼乃美希から手渡された『D-BOY FILE』という謎のカードを解析する為の機械を使う為、孤門一輝の案内でこの部屋にやってきたのだ。
 ここには、あのアメリカ国際宇宙開発研究所で使われているようなスーパーコンピューターは勿論のこと、一也にとって未知のマシンが存在感を放っている。
 しかし、ただの警察署にこんな設備が必要とは思えない。殺し合いの役に立つとも思えないし、何の為に用意したのかが理解できなかった。チェックマシンのように、特定の参加者に向けて意図的に作り出したのかもしれないが、情報が足りないので断定はできない。
 今は、この機械達を使ってファイルの解析をするしかなかった。

「ええ、ヴィヴィオちゃんと一緒にいる間に見つけました。ここなら、きっと解析もできるはずです」

 案内人である孤門は、近未来の技術が凝縮された部屋に足を踏み入れる。
 見た所、この部屋に罠が仕掛けられているようには見えない。自分達以外の誰かが潜入した形跡も感じられなかった。

「確かに、こんなに設備が整っているのならできるかもしれない……やってみるか」
「わかりました」

 孤門が頷いたのを合図にするように、タイル状の床を踏み締める。ガラスのように綺麗で、数分前に誰かが掃除をしたと言われても信じてしまいそうだった。
 かつ、かつ、かつ……二つの足音を響かせながら、部屋の中を確認する。すると、すぐにカードが挿入できそうな四角い穴があったので、そこに差し込む。
 すると、部屋に設置されているスピーカーから男の声が発せられてきた。



 このファイルを残した男の名前はハインリッヒ・フォン・フリーマン。地球の侵略を企む悪質な知的生命体・ラダムと戦うスペースナイツという集団のチーフだった。
 ラダムは他の生命体に寄生して、脳を支配することで生態系を保っているらしい。
 相羽家やその知人が乗ったアルゴス号はラダムと接触して、悲劇が起こった。ラダム達はアルゴス号の乗務員達を支配して、テックシステムと呼ばれる生体兵器を生み出す。しかし相羽タカヤは相羽孝三の働きにより支配から逃れて、そして地球に帰還した。
 それから相羽タカヤはスペースナイツと共に戦うようになったが、あまりにも無茶な行動を繰り返すせいで「Dボウイ」と呼ばれてしまう。Dボウイはテッカマンブレードとなってラダムと戦えるが、不完全なテックシステムの影響で三十分以上の戦闘を続けると、ラダムに精神を支配されるデメリットを持っていた。
 スペースナイツの働きによってDボウイは正気に戻る。そして、ブレードのシステムを元に、人間達もソルテッカマンと呼ばれるパワードスーツを生み出した……しかし、その一方でラダム側に所属するテッカマン達が現れる。
 テッカマンエビルとテッカマンレイピア。相羽タカヤの双子の弟・相羽シンヤが変身するエビルはラダムに支配されていて、相羽タカヤの妹・相羽ミユキが変身するレイピアは精神支配から逃れていた。しかしミユキはテックセットをする度に肉体崩壊を起こすデメリットがあり、最期はタカヤを守る為にラダムテッカマン達と戦い……散ってしまった。



『……地球の、未来を信じる者に』

 フリーマンという男が残したメッセージが告げられて、そこで止まった。
 沖と孤門は何も言えなかった。相羽の名字を持つ参加者達がそんな壮絶な運命を背負っていたなんて、夢にも思わない。身体を弄られてしまい、そして自分の意志を奪われたまま殺戮を強いられてしまう……ドグマやジンドクマの悪行を聞いているようになってしまい、ラダムに対する憤りが湧きあがった。

「……なんということだ」

 今の沖には、胸に湧き上がる感情を言葉に込めることしかできない。
 相羽家の人間達に対する同情をしても、彼らはもうこの世にいなかった。だから、もう彼らを救うことだってできない。もう少し早く知っていたら、彼らのことも助けられたはず……そんな可能性が芽生えてしまい、今度は無念の苛立ちが広がってしまう。
 だが、今となってはどうにもできなかった。相羽家の人間がどこでどんな風に死んだのかもわからない以上、弔うことすらできない。せめて、仮面ライダーとして人間をラダムから守りたかった。

「俺は、彼らの為に何かをすることもできないのか……」
「沖さん……」
「孤門。確か、美希ちゃんはマイクロレコーダーを持っていたね。それは、相羽シンヤのだったな」
「はい……子どもの頃に、シンヤが残したのだと思います。その頃はまだ、二人は普通の人間だったのでしょう」
「……くそっ」

 表情を曇らせている孤門の言葉を聞いて、沖の中で遣り切れない気持ちが更に強くなる。
 きっと、相羽タカヤと相羽シンヤは仲のいい兄弟だったはずだ。ミユキも含めて、家族全員で幸せに暮らしていたはずなのに、ラダムによってぶち壊されている。
 変わり果てた家族と戦わされてしまい、そして妹の死を目前で見せられてしまったタカヤの心境を考えただけでも、胸が張り裂けそうになってしまう。


「孤門。この話は、子ども達には内緒にしておこう……彼女達が知ってしまったら、きっと相羽タカヤ達の世界に行って、戦いに向かうはずだ。ラダム達と戦うのは、仮面ライダーの仕事だからな。翔太郎君にも、後で話しておかないとな」
「……わかりました。でも、その時は僕も一緒に行きます。僕だって、タカヤさん達が生きた世界の人々を守りたいですから」
「そうか……なら、その時は頼むぞ」
「はい!」


 孤門が頷くのを目にした後、沖はカードをケースの中に戻した。
 こんな残酷な話は未来ある子ども達が知る必要はない。これからを頑張ろうとしている少女達に、余計な絶望を植えつける訳にはいかなかった。残酷な現実を知らなければいけない時は確かにあるだろうが、それは今ではない。
 仮にタカヤ達のことを教えるにしても、殺し合いを終わらせてからだ。それまでは、このファイルのことは秘匿にして、信頼できる大人達の間に留めるべきだった。
 例え、タカヤが自分の世界のことを翔太郎や杏子に教えたとしても、このファイルの内容は限られた大人だけにした方がいいかもしれない。どうか、詳しい所まで話していないことを願う。
 首輪の解析などもしたいが、今は仲間の元に戻ってこれからのことを話し合うのが最優先だ。






「なるほど。これは見事に参加者のスタンスが纏められているな……」

 冴島鋼牙は手元に握っている一丁の名簿を眺めながら、感心したように呟いた。
 魔導輪ザルバと再会してから、鋼牙は警察署にいる三人の少女達を見守っていた。今、この場には沖一也と孤門一輝の二人はいない。
 沖は支給のファイルを解析する為に研究室へ向かい、孤門はその案内をしたことによって、大人は鋼牙だけになった。二人が戻るまでの間だけ、鋼牙は子ども達を守ることになった。
 子守りは鋼牙の柄ではないし、一刻も早くみんなを捜さなければならない。だけど、ここにいる少女達にはザルバを守って貰った恩があるのだから、その分だけ守るべきだった。

『そういえば、鋼牙。お前、本当にまたバラゴを倒したのか?』
「ああ。奴はこの地でも人を二人も殺した……同じ魔戒騎士として、奴の凶行を止めなければならなかった」
『それは当然だな……それにしても、キバの鎧だけじゃなくバラゴ自身もかなりしぶといな。もう、出て来ないことを祈りたいぜ』

 ザルバがうんざりしたようにぼやく。
 バラゴ。そして、バラゴの邪心から生まれた暗黒騎士キバとはかつて何度か戦った。この世界でも戦うことになるのは、何らかの運命かもしれない。
 いつかまた、キバの鎧は蘇る可能性もあるかもしれないが、そうなったら倒せばいいだけ。いない者のことを考えても仕方がなかった。

(涼村暁か……この男も、何者なんだ?)

 名簿を見るうちに、ある男の名前が目に飛び込んでくる。
 暁。参加者の中には涼村暁という名前がある。その人物に関する情報は書かれていなかったが、どうか危険人物でないことを願った。

『美希の嬢ちゃん、ヴィヴィオの嬢ちゃん、それにアンコ……どうか、仲良くやってくれないかねぇ』

 ザルバの目には、三人の少女の姿が見えているようだった。
 蒼乃美希と、高町ヴィヴィオと、佐倉杏子。この地で出会った、花咲つぼみと同じくらいに若い少女達だ。
 蒼乃美希。見るからに真面目で、品行方正という言葉が似合う少女だった。キュアベリーに変身する彼女はつぼみの友達らしい。
 高町ヴィヴィオ。美希のように固くはないが、真面目な少女だ。彼女は魔導師という戦士に変身することができるらしい。プリキュアや仮面ライダーのように高い戦闘力を誇るようだ。
 佐倉杏子。やや言動は荒いが、根はいい奴だとザルバは言っている。魔法少女、そしてある人物からウルトラマンとプリキュアの力を受け継いだらしい。ザルバが認めているのなら、信頼できるだろう。
 しかし、それとこの三人が集まったらすぐに仲良くなれるかと言われたら、話は別だ。

「なあ、やっぱり今まで盗んできた分って、働いて返さないと駄目か?」
「それは当たり前でしょ。あなたが辛かったのはわかるけど、盗まれた人達には関係ないわ。生活が困った人だっているのだから」
「やっぱりか……やれやれ、昔のあたしはとんでもないことをしていたんだねぇ」
「他人事みたいに言わないの!」
「はいはい」

 美希の咎めに対して、杏子は軽い態度で流す。それが許せなかったのか、美希は更に表情を顰めさせた。

「え、えっと二人とも……今は喧嘩はやめましょうよ! さっき、孤門さんからも言われたじゃないですか!」

 そんな彼女達の間で、ヴィヴィオはおろおろしながらも喧嘩を止めようとしている。

(こくこくこく)
「にゃー」
「ほ、ほら! クリスとティオだって、二人には仲良くして欲しそうですし!」

 ヴィヴィオの周りには、うさぎのようなセイクリッド・ハートと猫のようなアスティオンというぬいぐるみが、それぞれ頷いていた。
 どちらのぬいぐるみも人の言葉を話さない。しかし、それでもヴィヴィオには意思疎通ができるようだ。目と目で、気持ちを伝えあっているのだろうか。

「えっ? ヴィヴィオ、あたしは別にそんなつもりじゃ……」
「そうそう。あたしだって、また孤門の兄ちゃんに殴られるのは御免だよ」
「そ、そうですか……それなら、よかった」

 ヴィヴィオはホッ、と溜息を吐く。
 彼女としても、仲間が喧嘩をする光景など見たくないのだろう。こんな状況で内輪揉めなどされては、その瞬間に空気が悪くなってしまう。
 だが、このままでは同じことが繰り返されてしまうかもしれないから、空気を変えなければならない。そう思った鋼牙は口を開こうとするが……

『……おい、お嬢ちゃん達。難しいのはわかるが、あんまりギスギスしていると俺様も悲しいぜ? 喧嘩をする程、仲がいいとは言うが限度がある』

 指の中に収まっているザルバに先を越されてしまった。

『アンコは今までのことを反省している。そして、美希もアンコのことを理解している……これで充分じゃねえか。これ以上、不安にさせるなよ』
「はぁ? あたし達は……」
『喧嘩はしていないってか? お前達はそうかもしれないが、傍からはそう見えないぞ? 尤も、いがみ合っているようにも見えないがな』
「ザルバ……どっちなんだよ!?」
『それは、これからのお前達にかかっている。俺様は見守りはするが、必要以上に干渉はしない……お前達の関係は、お前達で作るものだからな』

 そう語るザルバは、まるで教師のような態度だった。尤も、ザルバがそこまで面倒見がいいかは定かではないが。
 鋼牙は喧嘩の仲裁などあまり経験がないし、ましてや思春期の少女のメンタルケアなど専門外だった。涼邑零やゴンザなら何とかなるかもしれないが、鋼牙にそこまでの能力はない。
 冴島財閥のトップでもあるが、流石に女子中学生の面倒を見られるかと言われたら首を傾げるだろう。だが、逃げる訳にはいかない。

「杏子、そして美希……お前達が住む世界は違うだろう。そして、生きる道も違う。だが、それでも今は共に歩いている……それを忘れるな」
「鋼牙さん……?」
「つぼみは言っていた。最初はある少女と敵対していたが、それでも気持ちをぶつけあったことで友達になったと……俺が言えるのは、ここまでだ」

 美希の疑問に答えるように、鋼牙は答えた。
 なるべく暗くならないようにしたかったが、元々こういうのは得意な性格ではない。なので、もしかしたら余計に不穏になってしまう恐れもあった。

「気持ちをぶつけあう、ね……まあ、そういうのも悪くはないかな」

 頭をポリポリと掻く杏子は、納得をしたかのように呟く。

「さっきは喧嘩をしたけど、あたしは別に美希のことが憎い訳じゃない……美希のことだって、知りたいと思っている」
「……杏子?」
「せつなからも頼まれた。あんたや、ラブって奴のことをお願いって……せつなは、最期まであんた達のことを考えていた」
「……」
「あんたの堅物さにはイラついたことはあった。でも、あんたのことは決して嫌いじゃない……これだけは本当だ」

 杏子はどこかバツの悪そうな表情を浮かべながら、美希から視線を逸らしていた。
 ザルバが言うには、この二人で何やら一悶着があったらしい。美希が警察署に戻る前、杏子の素行の悪さに怒ったようだ。彼女からすれば、ルールを破る杏子は許せないのだろう。
 美希の気持ちは理解できるが、ザルバが言うように杏子は反省をしている。無論、反省をすれば全てが許されると言う訳ではないが、それでも変われるきっかけになるはずだった。

「杏子。あなたの気持ちはわかったわ……あたしも、昔のあなたの振舞いは許すことができない。誰かを助けられるはずの力で、誰かを不幸にしてきたのだから」
「わかってるよ……あたしだって」
「でも、杏子はせつなのことを守ってくれた。そして、せつなの想いを伝えてくれた。だから、あたしはあなたを信じることに決めたわ」

 そう言いながら美希は前に出て、杏子の手を握り締める。
 呆気にとられる一方で、美希は言葉を続けた。

「せつなのことを守ってくれて、ありがとう……ブッキーのリンクルンも守ってくれて、本当にありがとう……!」
「……どうしたしまして」

 美希と杏子は笑っていた。ぎこちなかったが、そこには確かな絆があった。
 そんな二人を見て、ヴィヴィオも表情を明るくする。ザルバも表情は動かないが、したり顔になっているはずだった。
 どうやら、この二人はもう心配する必要はないだろう。無論、完全に仲が良くなった訳ではないだろうが、前進はしている。

『……俺様が助言をして、正解だったな』

 そんな中、蚊の鳴くような声でザルバはぽつりと呟いた。

「すまないな、ザルバ」
『何。ここはこの俺様が出なければ、不穏になるだろうからな……鋼牙では力不足だろう?』
「ムッ……」

 皮肉とも取れるザルバの言葉だが、否定することはできない。鋼牙では刺々しくなる可能性があるからだ。ザルバはそれを見通したからこそ、出てきたのだろう。
 しかし、鋼牙は怒るつもりはない。むしろその逆で、気配りをしてくれた相棒に感謝をしなければならなかった。

「……待たせたね、みんな」

 そして、ドアが開くのと同時に沖一也が姿を現す。隣には孤門一輝も立っていた。
 その手には『D-BOY FILE』というケースが握られている。つまり、解析が終わったのだろう。

「終わったのか?」
「ああ……この中には、相羽タカヤの戦いに関するデータが纏められていた。そして、相羽シンヤと相羽ミユキについても」
「……そうか」

 沖の言葉に鋼牙は何も返せない。
 ファイルの名前に『Dボウイ』が付けられているので、相羽タカヤと何らかの関係があるのではと推測していたら案の定だ。しかし、相羽タカヤはもうこの世にいない。
 鋼牙自身が、タカヤの遺体を埋葬したのだから。

「冴島さん、これからあなたはどうしますか?」
「俺は仲間達を捜しに行くつもりだ。彼らはまだ、森のどこかにいるのだから」
「そうですか……あなたを一人にさせたくはないですが、無理に止めることもできません」
「合流をしたら、お前達のことも話す……そうすれば、また会えるだろう」
「わかりました。どうか、気を付けてください」
「ああ」

 鋼牙は沖に頷く。
 時計を見てみると、針はもうすぐ21時になろうとしている。ここにいるメンバーを責めるつもりはないが、大分時間が経ってしまったようだ。 
 ここに来るまでにつぼみ、一条、良牙の三人を見つけられていない。入れ違いになったのか、それとも三人はまだ森の中にいるのかはわからないが、捜さなければならなかった。

「そういえば、沖の兄ちゃん。もうすぐ、あのゴハットって野郎が言っていた時間になりそうだけど……本当に何かがあるのか?」

 佐倉杏子は疑問を口にする。
 第三回放送の担当者であるゴハットが言っていたボーナスの時間まで、もうすぐだった。ゴハットが言うには三十分もの間、誰にも見られないように単独行動を続けなければいけないらしい。
 もしもそれが本当ならば、これからの戦いの役に立つかもしれないが、安易にそれを鵜呑みにするのは危険だった。

「恐らく、可能性はあるかもしれないが、奴の言葉が真実であるという確証もない」

 沖の言葉は尤もだと、鋼牙は思う。
 それに、この島にはまだ危険人物が残っている。血祭ドウコクや天道あかねがその代表例だ。 数人で固まっているならまだしも、一人で戦って勝つのは難しいかもしれない。

『なら、心当たりのある奴だけがどっかの部屋で待っていればいいんじゃないか? 何かがあったら急いで変身をして、助けを呼べばいい……そうすれば、簡単には殺されないはずだろ?』

 その思案を払拭するかのように、ザルバが提案をする。

『ないと思う奴らだけが固まって、あると思うならこの部屋で静かに待つ……これでいいんじゃないか? その後に、休憩を取ればいい』
「それもそうだが……」
『もしも何か便利な力があるのなら、さっさと使えるようにした方がいいだろ? 出し惜しみをしたせいで死んだら、情けねえぞ?』

 ザルバの言うことは尤もだった。技が使えなかったせいで危機に陥るようになっては意味がない。

『鋼牙。お前も何か制限とやらがかかっているはずだ。確か、轟天が呼びだせなかっただろう? もしかしたら、敵さんのボーナスとやらで呼べるようになるかもしれない……お前の仲間と再会した後なら、試す価値はあるだろう』
「ああ……だが、俺はまだいいが、他のみんなはどうなんだ? 一也の言うように、敵は他にもいる」
『なら、交互に部屋に入ればいいだけだ。三十分ごとに二人ずつで待機をして、戻ってきたらまた別の二人が行動をする……時間はかかるが、一度に大勢が単独行動を取るよりはマシじゃないのか?』
「それなら、あたしからやるよ」

 鋼牙の指で提案を続けるザルバに頷いたのは、杏子だった。

「代わりばんこなら、後回しにするのは面倒だ。さっさと済ませてやるよ」
「杏子、あなた……!」
「おっと、説教ならなしだ。三十分くらい、すぐに過ぎるだろ? ちょっとくらい、心配するなって……何かあったら、すぐに戻るからさ。それとザルバ、色々とありがとな……あんたも気を付けろよ」

 美希は止めようとするが、杏子はそれに構わず背を向ける。そのまま軽く手を振りながら廊下に去っていった。
 今から呼んだとしても、絶対に戻ってこないだろう。

「全く……」
『やれやれ、性急なこった……で、美希のお嬢ちゃんはどうするんだい?』
「あたしは……大丈夫。さっきも言ったように、特に心当たりはないから」
『了解。それなら、俺達も行くとするか』
「ああ」

 ザルバの言葉に鋼牙は頷いた。
 そのまま、部屋を後にしようとするが、その前にザルバは言葉を続ける。

『それと、沖の兄ちゃんもやってみたらどうだ。何かあるかもしれないぜ?』
「そうですよ。ここは僕に任せてください」

 ザルバの提案を進言したのは孤門だった。
 辺りを見渡すと、特に誰も不満を抱いているようには見えない。

「……わかった。だが、もしも何かあったらすぐに叫んでくれ」
「当然ですよ。でも、ここは僕達に任せてください」
「頼んだぞ」

 孤門の言葉に頷いた後、沖は鋼牙の方に振り向いて来る。

「それと、冴島さん……結城さんやゼクロスの力になってくれて、ありがとうございます」
「そういえば、お前も仮面ライダーの一人だったな」

 沖一也という男は、村雨良や結城丈二と同じ仮面ライダーの一人だ。その名を、仮面ライダースーパー1。
 聞いた話によると結城の後輩であり、村雨にとっては先輩らしい。しかし、彼もまた零のように、村雨のことを知らない時間から連れて来られたようだ。

「はい。俺は村雨良のことを知りませんでしたが、やはり俺達と同じように人の夢や想いを守ってくれたのですね」
「ああ……あいつは最期まで戦っていた。お前達と同じように……そして、大道克己も救った」
「大道克己……確か、仮面ライダーエターナルのことでしたね」
「彼は殺し合いに乗っていたが、同時にこの殺し合いを打ち破ろうとしていた。あいつも、あいつなりの信念を持っていたんだ」

 大道克己の最期は今でも脳裏に焼き付いている。
 仮面ライダーの名前を背負ったゼクロスと戦い、互いに想いや信念をぶつけあった。彼らは正真正銘の仮面ライダーだった。
 それを聞いた沖は、どこか安堵をしたような表情を浮かべる。

「そうですか……色々と教えてくれて、本当にありがとうございます」
「ああ……俺はもう行くぞ。仲間が待っているからな」
「どうか、気を付けてください」

 そう言い残して、冴島鋼牙と沖一也は会議室から去っていく。
 孤門一輝、蒼乃美希、高町ヴィヴィオの視線を感じながら、仲間を求めて歩み始めた。


【1日目 夜中】
【F-9 警察署 会議室】


【蒼乃美希@フレッシュプリキュア!】
[状態]:ダメージ(中)、祈里やせつなの死に怒り 、精神的疲労
[装備]:リンクルン(ベリー)@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式((食料と水を少し消費+ペットボトル一本消費)、シンヤのマイクロレコーダー@宇宙の騎士テッカマンブレード、双ディスク@侍戦隊シンケンジャー、リンクルン(パイン)@フレッシュプリキュア!、ガイアメモリに関するポスター、杏子からの500円硬貨
[思考]
基本:こんな馬鹿げた戦いに乗るつもりはない。
1:今はここで沖さんと杏子を待つ。
2:警察署内では予定通りに行動する。
3:プリキュアのみんな(特にラブが)が心配。
[備考]
※プリキュアオールスターズDX3冒頭で、ファッションショーを見ているシーンからの参戦です。
※その為、ブラックホールに関する出来事は知りませんが、いつきから聞きました。
※放送を聞いたときに戦闘したため、第二回放送をおぼろげにしか聞いていません。
※聞き逃した第二回放送についてや、乱馬関連の出来事を知りました。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※霊安室での殺人に関して、幽霊の仕業であるかもしれないと思い込んでいます。


【高町ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:上半身火傷、左腕骨折(手当て済)、誰かに首を絞められた跡、決意、臨死体験による心情の感覚の変化
[装備]:セイクリッド・ハート@魔法少女リリカルなのはシリーズ、稲妻電光剣@仮面ライダーSPIRITS
[道具]:支給品一式(アインハルト(食料と水を少し消費))、アスティオン@魔法少女リリカルなのはシリーズ、ほむらの制服の袖
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
1:生きる。
2:警察署内では予定通りに行動する。
[備考]
※参戦時期はvivid、アインハルトと仲良くなって以降のどこか(少なくてもMemory;21以降)です
※乱馬の嘘に薄々気付いているものの、その事を責めるつもりは全くありません。
※ガドルの呼びかけを聞いていません。
※警察署の屋上で魔法陣、トレーニングルームでパワードスーツ(ソルテッカマン2号機)を発見しました。
※第二回放送のボーナス関連の話は一切聞いておらず、とりあえず孤門から「警察署は危険」と教わっただけです。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※霊安室での殺人に関して、幽霊の仕業であるかもしれないと思い込んでいます。
※一度心肺停止状態になりましたが、孤門の心肺蘇生法とAEDによって生存。臨死体験をしました。それにより、少し考え方や価値観がプラス思考に変わり、精神面でも落ち着いています。


【孤門一輝@ウルトラマンネクサス】
[状態]:ダメージ(中)、ナイトレイダーの制服を着用 、精神的疲労
[装備]:ディバイトランチャー@ウルトラマンネクサス
[道具]:支給品一式(食料と水を少し消費)、ランダム支給品0~2(戦闘に使えるものがない)、リコちゃん人形@仮面ライダーW、ガイアメモリに関するポスター×3、ガンバルクイナ君@ウルトラマンネクサス
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
1:みんなを何としてでも保護し、この島から脱出する。
2:警察署内では予定通りに行動する。
3:副隊長、石堀さん、美希ちゃんの友達と一刻も早く合流したい。
4:溝呂木眞也が殺し合いに乗っていたのなら、何としてでも止める。
[備考]
※溝呂木が死亡した後からの参戦です(石堀の正体がダークザギであることは知りません)。
※パラレルワールドの存在を聞いたことで、溝呂木がまだダークメフィストであった頃の世界から来ていると推測しています。
※警察署の屋上で魔法陣、トレーニングルームでパワードスーツ(ソルテッカマン2号機)を発見しました。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※霊安室での殺人に関して、幽霊の仕業であるかもしれないと思い込んでいます。


【冴島鋼牙@牙狼─GARO─】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)
[装備]:魔戒剣、魔導火のライター、魔導輪ザルバ
[道具]:支給品一式×2(食料一食分消費)、ランダム支給品1~3、村雨のランダム支給品0~1個
[思考]
基本:護りし者としての使命を果たす
1:みんなの所に戻る
2:首輪とホラーに対し、疑問を抱く。
3:加頭を倒し、殺し合いを終わらせ、生還する
4:良牙、一条、つぼみとはまたいずれ会いたい
5:未確認生命体であろうと人間として守る
6:後で制限解除の為に、どこかの部屋で単独行動をする。
[備考]
※参戦時期は最終回後(SP、劇場版などを経験しているかは不明)。
※ズ・ゴオマ・グとゴ・ガドル・バの人間態と怪人態の外見を知りました。
※殺し合いの参加者は異世界から集められていると考えています。
※この殺し合いは、何らかの目的がある『儀式』の様なものだと推測しています。
※首輪には、参加者を弱体化させる制限をかける仕組みがあると知りました。
また、首輪にはモラックスか或いはそれに類似したホラーが憑依しているのではないかと考えています
※零の参戦時期を知りました。
※主催陣営人物の所属組織が財団XとBADAN、砂漠の使徒であることを知りました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを全て知りました。
※つぼみ、一条、良牙と125話までの情報を交換し合いました。



【特記事項】
※21時を過ぎているので、制限に心当たりのある者だけが単独行動をして、それ以外の参加者は一ヶ所に固まる方針です。
※また、一度に行動するのは二人までで、交代で単独行動をする予定です。
※それらが終わったら、休憩をする予定です。




 沖一也は仮面ライダースーパー1に変身しながら、誰もいない部屋の中で構えている。先程、ファイルを解析した部屋を確認したが、やはり何の異常もなかった。
 敵意のある人物や罠は存在しないが、油断はできない。忍者のように闇の中に潜みながらも、気配を消す参加者が現れてもおかしくなかった。
 この警察署には悪の気配は存在しないが、殺し合いの会場だ。誰も知らない所から猛毒のガスが噴き出すと言われても、充分に納得できてしまう。ここも、敵地といっても過言ではないのだから。

(やはり、この首輪は解体自体はできそうだが……ここには普通の工具しかない。下手に解体などしたら、爆発する危険がある)

 スーパー1はボーナスの制限解除が訪れるまでの三十分間で、首輪の解析を選んでいる。ただ待つよりも、少しでも進めた方が建設的だからだ。
 巨大なリングにも見える首輪には、目を凝らすと一本の線がある。そこを辿れば解体の道筋が見えるかもしれないが……必要な道具が手元にはなかった。
 結城丈二が変身するライダーマンの持つオペレーションアームのような装備がない。それに加えて、この警察署にはドライバーやスパナを始めとする工具しか見つけられなかった。それだけで精密な機械の解体ができるわけがない。
 沖自身も技術者として高い技能と知恵を持っているが、だからといって道具もない状態での解体作業は不可能だ。小さな機械の内部構造を調べられる機械さえあれば別だろうが、そんなのはここにはない。そこまで都合よくはなかった。
 しかし、それを抜きにしてもこの部屋に結集された設備は凄まじかった。

(やはりこの部屋は異常だ……ただの警察署に、これだけの機械が必要とも思えない。何故、奴らはこんな場所を用意したんだ?)

 とある世界には未確認生命体対策本部という場所があるのなら、ここはそれを模したのかもしれない。未確認生命体とは、鋼牙が言うには人間を襲う怪物らしい。要するに、ドグマやジンドグマのような連中だろう。
 それをわざわざ、この殺し合いに持ってきても何の意味があるのか? もしや、どこかにいる未確認生命体を倒す為のヒントにするのだろうか? だが、それでは殺し合いのバランスが崩れかねない。
 どれだけ考えても答えは見つからない。真実を知るのは主催者だけだ。
 ふと、スーパー1は近くにある時計を見つめる。気が付いたら、約束の時間まで五秒もなかった。

『こんばんは、沖一也……いいえ、仮面ライダースーパー1と呼ぶべきでしょうか』

 闇の中より、聞き覚えのある男の声が聞こえる。
 それを察したスーパー1は意識を覚醒させて、周りを見渡す。すると、目の前には第二回放送で現れたニードルが、薄気味悪い笑みを浮かべながら立っていた。
 反射的に構えを取るが、目の前にいるニードルは何かを仕掛けて来ない。放送と同じ、ホログラフだと一瞬で察した。

「キサマは……ニードル!」
『数時間ぶりですね。また会えて光栄ですよ……こうして、貴方と話が出来るのですから』
「何……目的は何だ!?」
『目的? そんなの、決まっているじゃありませんか……貴方の制限解除ですよ。レーダーハンドとパワーハンドの解放です』
「……やはり、キサマらの仕業だったか」
『当然の処置ではありませんか。レーダーハンドを使われてしまっては、他の皆様との公平さを欠く結果になってしまいます。それにパワーハンドだって、普通に使うには危険な威力を持っていますから……でも、これからは自由に使えますから、安心してください』

 ニードルは吐き気を促すような笑みを浮かべながら、語り続ける。例え映像でも、不愉快になるには充分だった。
 その言葉が真実であると証明するように、身体の奥底に力が宿るのを感じる。
 この島に転送されてからレーダーハンドを使おうとしたが、使えなかった。また、ノーザとの戦いでもメガトンパンチを放っても倒せなかったのだから、威力が落ちていると言われても頷ける話だ。
 しかし、だからといってニードルに感謝をすることなどしない。奴は、嘲笑うような表情で参加者達を見下しているのだから。

『それでは、私の役目は終わりです……健闘を祈りますよ』
「待て!」

 スーパー1はニードルに手を伸ばすが、触れようとした直前に消えてしまう。もう、この部屋にはスーパー1しかいなかった。
 心の中で憤りが渦巻いていく。こんな奴らに多くの命が弄ばれて、そして本郷や一文字達が死んだ……どれだけ考えてもやりきれない。
 しかし、今はもうどうにもならない。この手で守れる命を取りこぼさないよう、力を尽くすしかなかった。

(奴は俺が行っていた首輪の調査について何も言わなかった……どういうことだ?)

 そして、スーパー1の中である疑問が芽生える。ニードルが、首輪の調査をしていたことに対して何も口にしてこなかったことだ。
 一応、首輪を調べている最中は何も言わなかったが、それだけで主催者の目を誤魔化すことはできない。死体から首輪を確保した時から、解体を企んでいると主催者から警戒されてもおかしくなかった。
 しかしニードルは何も言及していない。やはり、この首輪には何か罠が仕掛けられているから、あえて見逃したのか。それとも見くびられているのか、何かもっと別の理由があるのか。
 今の段階では答えを見つけられない。

「……とにかく、今はみんなの所に戻らないと。話はそれからだ」

 首を振りながらスーパー1は部屋から出る。この三十分間で外から騒ぎの音は聞こえなかったが、それでも早く戻らなければならない。
 皆を心配させる訳にはいかなかった。首輪の解析の続きは、それからだ。


【1日目 夜中】
【F-9 警察署 研究室】

※研究室には様々な設備が搭載されています。


【沖一也@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、強い決意
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料と水を少し消費)、ランダム支給品0~2、首輪(祈里)、ガイアメモリに関するポスター、お菓子・薬・飲み物少々、D-BOY FILE@宇宙の騎士テッカマンブレード
[思考]
基本:殺し合いを防ぎ、加頭を倒す
0:今は皆の元に戻る。
1:本郷猛の遺志を継いで、仮面ライダーとして人類を護る。
2:警察署内では予定通りに行動する。
3:この命に代えてもいつき達を守る。
4:先輩ライダーを捜す。結城と合流したい。
5:仮面ライダーZXか…
6:ダークプリキュアについてはいつきに任せる。
[備考]
※参戦時期は第1部最終話(3巻終了後)終了直後です。
※一文字からBADANや村雨についての説明を簡単に聞きました
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました
※18時に市街地で一文字と合流する話になっています。
※ノーザが死んだ理由は本郷猛と相打ちになったかアクマロが裏切ったか、そのどちらかの可能性を推測しています。
※第二回放送のニードルのなぞなぞを解きました。そのため、警察署が危険であることを理解しています。
※警察署内での大規模な情報交換により、あらゆる参加者の詳細情報や禁止エリア、ボーナスに関する話を知りました。該当話(146話)の表を参照してください。
※ダークプリキュアは仮面ライダーエターナルと会っていると思っています。
※霊安室での殺人に関して、幽霊の呪いである可能性を聞きましたが、流石に信じていません。
※第三回放送指定の制限解除を受けました。彼の制限はレーダーハンドの使用と、パワーハンドの威力向上です。




 佐倉杏子は警察署のとある部屋に入った後、魔法少女に変身していた。沖達には強気でいたが、万が一の時を考えて戦える準備だけはした方がいい。
 周りに人気はないが、油断はできなかった。この警察署には幽霊とやらが出て、そのせいで梅盛源太とアインハルト・ストラトスの二人が死んでしまったのだから。
 常日頃、幽霊なんかよりもよっぽど恐ろしい魔女や使い魔と戦っている杏子には子供騙しにしか思えなかったが、警戒だけは忘れない。少しの油断が死に繋がるなんて、これまでの戦いで何度も経験したのだから。
 魔法で生み出された槍を握りながら、杏子は時計の針が動くのをぼんやりと眺めていた。

『佐倉杏子……初めましてと言うべきかしら?』

 その時、どこからともなく声が聞こえる。それに意識を覚醒させた杏子が振り向くと、見知らぬ少女が立っていた。
 ドレスのように煌びやかな純白の衣装を纏い、まるでおとぎ話に出てくるお姫様のような雰囲気を放っている。フランス人形のように整った顔立ちも、そんな印象を更に強くさせた。
 しかし、その瞳は氷のように冷たい光を放っていて、友好的に見えない。それだけでも、杏子は反射的に槍を構えた。

「てめえ……何者だ!?」
『私の名前は美国織莉子。貴女と同じ、魔法少女の一人よ』
「魔法少女……?」

 美国織莉子と名乗った謎の少女の言葉に、杏子は思わず槍を握る力を緩めてしまう。
 よく見ると、目の前の織莉子からは気配が感じられない。立体映像であると杏子は理解した。
 つまり、この魔法少女は主催陣営の一人……それを察してから、力を込めなおした。

「……なるほどね。あんた、あのいけ好かない連中に加担しているってわけか。あたしと同じ、魔法少女の面汚しだな」
『否定はしないわ……貴女からすれば、私も元凶の一人なのだから』
「へっ。認めたってわけか!」
『そうね……でも、私はそんな口論をする為に現れたのではないわ。私は、貴女に真実を伝える為にやってきたの』
「はっ、あんたらが何を教えてくださるってんだ!」
『魔女……私達の同胞の、なれの果てについてよ』
「……は?」

 織莉子の口から出てきた言葉により、杏子は怪訝な表情を浮かべてしまう。
 しかし、そんな杏子のことなどお構いなしに織莉子は言葉を続ける。

『私達魔法少女はインキュベーター……いえ、キュウべぇと契約をして、願いを叶える対価として魔法少女になって、魔女と戦う存在になる……それは、貴女も知っているわね』
「そんなの、当たり前だろ!」
『でも、貴女は疑問に思ったことがない? 私達が戦っている魔女が、どこから現れるのかを……』
「え……結界の中から……だろ?」
『それは間違いないわ。でも、結界はあくまでも魔女が作り出しているだけ……その魔女が、どうやったら誕生するのかを、貴女は知っているの?』
「それは……」

 淡々とした織莉子の問いかけに杏子は口籠ってしまう。
 今まで倒してきた魔女がどうやって生まれるのか。そんなのは知らないし、今まで考えたこともない。グリーフシードを目当てに戦っていたのだから、気にかけたこともなかった。
 何も答えられなくなる一方で、織莉子は言葉を続ける。

『私達、魔法少女の魂とも呼べる……ソウルジェムからよ』
「……何、言っているんだよ」
『魔法を使うことでソウルジェムが穢れていき、それが限界に達すると私達は変わってしまうわ……呪いと絶望を撒き散らすだけの魔女に』
「な……!?」
『既に美樹さやかと巴マミもソウルジェムが穢れきったことで、魔女へと変わったわ。そして、四度目の放送が終わると同時に……この島に君臨して貴女達に牙を向ける』
「……なんだよ、それ」
『これは私と貴女も例外ではないわ。魔法の過度や使用や、絶望を背負うことで魔女になって絶望を齎す……私はそれを伝える為に、貴女の元に現れたの。鹿目まどかと暁美ほむらはその条件から外れているけれど』

 織莉子から告げられるあらゆる事実が、杏子の心に突き刺さっていく。
 マミとさやかが既に魔女になっている?
 あたし達は、今まで同じ魔法少女すらも食い物にしていたのか?
 ゾンビにされただけじゃなく、人々を傷付ける化け物にもされてしまったのか?
 キュウべぇに騙されたのか? キュウべぇは何の為に、あたし達にこんな仕打ちをしたのか?
 様々な疑問が生まれて、杏子の脳裏で爆発していく。まともな思考が働かなかった。

『貴女も殺し合いを止めようとしているのなら、気を付けることね……迂闊に戦ったりしたら、周りの人達も絶望に巻き込まれるのだから』

 そう言い残した瞬間、美国織莉子の姿が部屋から消えていった。それに対して、杏子は何も言うことができない。
 今はそれどころではなく、疑問が増えていくだけだった。

「……ふざけるなよ」

 杏子はただ憤るしかできない。
 自分達をこんな身体にしたキュウべぇに対して。そんな事実を何でもないかのように話した織莉子に対して。そして、変わろうとしていたのに叶えられそうにない現実に対して。
 こんなのはボーナスではない。むしろ、最悪の罰ゲームだ。
 どうして、いつもこうなのか。一緒にいた人達が次々と死んでいき、同じ魔法少女は魔女になり、そして自分自身すらも魔女になろうとしている。
 せつなや姫矢の意志を継いで正義の味方になろうとしたのに、結局は呪いと絶望を撒き散らすだけの存在にしかなれない。
 もう、何が何だかわからなかった。

「なんでだよ……なんでだよ……なんでだよ……!」

 嘘だと切り捨ててしまいたかったが、本能がそれをしてくれなかった。織莉子の言葉からは一切の嘘が感じられなかった。
 みんなの為に戦うことすらも許されないのか。みんなに絶望を齎すことしか、自分にはできないのか。
 何も知らないまま、殺し合いを終わらせることができたのなら……楽だったのに。

「何でだよおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 残酷な運命に対して、佐倉杏子は叫ぶことしかできない。
 しかし、それで何かが変わることはなかった。殺し合いも、魔法少女の真実も、呪われた存在である自分自身も……そのままの形を保っていた。
 これまでの常識は壊れてしまい、代わりに告げられたのは惨すぎる真実。それを前に、ただ嘆くしかできない。
 その叫びは、彼女しかいない部屋の中で空しく響いていた……


【1日目 夜中】
【F-9 警察署 とある部屋】


【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(大)、ソウルジェムの濁り(小)、腹部・胸部に赤い斬り痕(出血などはしていません)、ユーノとフェイトを見捨てた事に対して複雑な感情、マミの死への怒り、せつなの死への悲しみ、ネクサスの光継承、ドウコクへの怒り、真実を知ったことによるショック。
[装備]:ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ、エボルトラスター@ウルトラマンネクサス、ブラストショット@ウルトラマンネクサス
[道具]:基本支給品一式×3(杏子、せつな、姫矢)、リンクルン(パッション)@フレッシュプリキュア!、乱馬の左腕、ランダム支給品0~1(せつな) 、美希からのシュークリーム
[思考]
基本:姫矢の力を継ぎ、翔太郎とともに人の助けになる。
1:?????????
[備考]
※参戦時期は6話終了後です。
※首輪は首にではなくソウルジェムに巻かれています。
※左翔太郎、フェイト・テスタロッサ、ユーノ・スクライアの姿を、かつての自分自身と被らせています。
※殺し合いの裏にキュゥべえがいる可能性を考えています。
※アカルンに認められました。プリキュアへの変身はできるかわかりませんが、少なくとも瞬間移動は使えるようです。
※瞬間移動は、1人の限界が1キロ以内です。2人だとその半分、3人だと1/3…と減少します(参加者以外は数に入りません)。短距離での連続移動は問題ありませんが、長距離での連続移動はだんだん距離が短くなります。
※彼女のジュネッスは、パッションレッドのジュネッスです。技はほぼ姫矢のジュネッスと変わらず、ジュネッスキックを応用した一人ジョーカーエクストリームなどを自力で学習しています。
※第三回放送指定のボーナスにより、魔女化の真実について知りました。



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最終更新:2014年05月08日 09:20