情報収集衛星

ていさつえいせい

情報収集衛星(Information Gathering Satellite)は、日本国内閣官房内閣情報調査室内閣衛星情報センターが運用する事実上の偵察衛星。実在する。作中では「偵察衛星」と呼ばれている。

概要


情報収集衛星導入のきっかけは、こんごう型護衛艦のBMD改修やPAC-3と同じく1998年8月31日に発生したテポドン発射事件である。
当時としては政府の動きは早く、3か月も経たない12月22日に導入決定、事件から4年半ほど後の2003年3月28日に最初の情報収集衛星として「光学1号機」と「レーダ1号機*1」がH-2A 5号機で打ち上げられている。
因みに、情報収集衛星の運用目的は「我が国の安全の確保、大規模災害への対応その他の内閣の重要政策に関する画像情報の収集」である。

情報収集衛星は地球1周を約90分で回り、4日後に同じ位置に戻る軌道にいるため、毎日最低1回は同じ地点を観測するには最低でも4機の衛星が必要になる。
また、光学衛星は撮影精度は高いが夜間や悪天候では撮影できず、レーダー衛星は夜間や悪天候でも撮影できるが精度が低いという特性を持つため、光学衛星とレーダー衛星を1組にして運用される。
このため、当初は光学衛星2機、レーダー衛星2機を打ち上げ、光学衛星とレーダー衛星を1組として運用する「2組4機」の構築が目標とされていた。

最初の打ち上げから8か月後の2003年11月29日に光学2号機とレーダ2号機がH-2A 6号機で打ち上げられる。
成功していればこの時点で2組4機体制が構築できたのだが、事故*2によりH-2A 6号機は打ち上げ途中で衛星もろとも爆破処理されている。
この事故後、複数の衛星喪失を避けるために情報収集衛星の同時打ち上げは避けられるようになり、さらに初期の衛星に故障による運用停止が多かったため、なかなか運用中の情報収集衛星が増えず、目標とされた2組4機体制が構築されたのは、情報収集衛星の運用開始から10年後の2013年4月のことである*3

転移した2015年1月の時点では、光学3号機、レーダ3号機、レーダ4号機、光学4号機が運用中だった*4

2024年1月現在、2015年1月以降に現実世界において打ち上げられた情報収集衛星は以下の通り。
開発時期から考えて、転移後に打ち上げられた情報収集衛星はこれらと思われる。

衛星名 打上げ日時 打上げロケット 分解能 開発開始 開発費 備考
レーダ予備機 2015年2月1日10時21分 H-2A 27号機 100cm級 2010年度 228億円 レーダ3・4号機と同型
光学5号機 2015年3月26日10時21分 H-2A 28号機 30cmまたは40cm級 ? 320億円? アメリカ軍の偵察衛星と同等の性能と言われる
レーダ5号機 2017年3月17日10時20分 H-2A 33号機 50cm級 2010年度 371億円
光学6号機 2018年2月27日13時34分 H-2A 38号機 30cm級 2010年度 307億円
レーダ6号機 2018年6月12日13時20分 H-2A 39号機 50cm級 2011年度 242億円
光学7号機 2020年2月9日10時34分 H-2A 41号機 30cmより高性能 2013年度 343億円 以降の衛星はデータ中継衛星との通信機能追加
データ中継衛星1号機 2020年11月29日16時25分 H-2A 43号機 2015年度 JAXA呼称光データ中継衛星
レーダ7号機 2023年1月26日10時50分 H-2A 46号機 50cmより高性能 2015年度 発信電波の増強により画質向上、受信アンテナの複数搭載により撮像幅を拡大
光学8号機 2024年1月14日13時44分 H-2A 48号機 25cmより高性能 2015年度 光学センサ主鏡の大口径化、高精細検出器の採用により画質を大幅に向上。大型姿勢駆動装置を採用
レーダ8号機 2024年9月26日10時50分 H-2A 49号機 50cmより高性能 2016年度 レーダ7号機の同型機

光学衛星は地球観測衛星「だいち」をベースに開発されており、3号機以降は太陽電池パネルを傾斜させて取り付ける事でパネルを小型化しつつ発電量を確保するといった改良が行われている。
情報収集衛星において最も重視される分解能については、レーダー衛星は4号機までは建物や航空機の種類と車の判別が可能な100cm級、5号機以降は車種の区別が可能な50cm級、光学衛星は5号機以降人間の判別が可能な30cm級になっており、偵察の実施にあたって十分な性能と考えられる*5
光学6号機とレーダ7号機以降の設計寿命は、当初の設計寿命である5年から6年に延長されているが、光学衛星は2号機以降、レーダー衛星は3号機以降7~9年運用されている。

将来の運用


2015年12月に従来の2組4機体制から従来通りの運用を行う「基幹衛星」4機、基幹衛星とは異なる軌道で運用し、基幹衛星が発見した目標の追尾を行う「時間軸多様化衛星」4機、撮影した画像データを地上に送信する「データ中継衛星」2機からなる10機体制への移行が決定されている。
この計画に従い、まずデータ中継衛星1号機*6が2020年11月29日に打ち上げられており、2026年度に光学多様化1号機、2027年度に光学多様化2号機、2028年度にレーダ多様化1号機、2029年にレーダ多様化2号機が打ち上げられる予定である*7
基幹衛星についても、性能向上を図った代替の光学衛星とレーダー衛星が順次打ち上げられる予定*8

弾道ミサイル発射の探知に用いられる早期警戒衛星の導入についても検討されており、ミサイル探知能力を検証するために防衛省が開発した二波長赤外線センサー(中赤外線と遠赤外線)を搭載した先進光学衛星ALOS-3「だいち3号」が2023年3月7日にH-3ロケット1号機で打ち上げられた*9が、第2段エンジンの点火失敗のため爆破処理されてロケット共々失われている*10

作中での活躍


中央暦1640年(2016年)1月21日に、種子島宇宙センターから強化型H-2Bロケット*11で光学衛星とレーダー衛星が打ち上げられる。
この時打ち上げたのはレーダ予備機と光学5号機と思われ、パーパルディア皇国の主要基地の位置や規模、戦力の把握に用いられた他、RF-4Eと共同でエストシラントの海軍司令部を発見している。
アルタラス島の戦いの直前にムー大使ユウヒが外務省の柳田から見せられたルバイル空港の写真は、光学5号機が撮影したものと考えられる。
新世界全体の地理把握にも用いられており、無人の地と考えられていたグラメウス大陸エスペラント王国を発見した他、グラ・バルカス帝国が機密にしている帝国本土の位置やアニュンリール皇国の文明水準偽装を看破している。

中央暦1642年(2018年)4月25日時点で4機体制に強化されている。
これは、レーダ5号機(2017年3月17日打ち上げ)と光学6号機(2018年2月27日打ち上げ)が打ち上げられたためと思われる。
2組4機体制が整ったこともあり、先進11ヵ国会議開催中のカルトアルパスを目指すグラ・バルカス帝国東部方面艦隊やバルチスタ海域に向けて出撃した直後の空中戦艦パル・キマイラバルチスタ沖大海戦のどさくさに紛れてオタハイトとマイカルへの襲撃を目論んでムー大陸南部を進撃中のイシュタム艦隊等を発見する等、日本の情報優位を支える原動力になっている。
また、グラ・バルカス帝国本土やレイフォルリーム王国に展開する帝国軍部隊の動向や戦力の把握も行っている。
日本と敵対関係にあるグラ・バルカス帝国やアニュンリール皇国は情報収集衛星を始めとする人工衛星の存在を感知していないが、日本と国交のあるムーや神聖ミリシアル帝国の政府上層部ではある程度その存在は知られており、皇帝を含むミリシアル人は、「人工衛星は魔帝が運用していた僕の星と同じ性質のもの」と理解している。

現実世界と同様に運用停止になった衛星がなく、かつ現実日本とほぼ同じスケジュールで打ち上げられていると仮定*12した場合、6巻終了時点(中央暦1643年(2019年)7月9日)で5機体制*13になっていると推定される。

作中では「防衛省が運用」とされているが、軌道制御等の衛星そのものの運用場面は今のところなく、軍事に関する画像の分析を行っている描写のみである。


随時加筆願います。

関連項目
兵器日本国人工衛星(日本)

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〔最終更新日:2024年12月30日〕

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最終更新:2024年12月30日 11:03

*1 公式では「ー」が省略されるためこの表記になる

*2 燃焼を終えた補助ブースターが分離せず、ブースターの分だけ空気抵抗が増えるため、そのまま飛行させても衛星軌道到達に必要な速度に達しないと判断された

*3 光学2号機、光学3号機、レーダ3号機、レーダ4号機の体制。この他に光学3号実証機と光学5号実証機が運用中だったが、2013年11月に光学2号機と光学3号実証機が運用停止し、光学5号実証機も設計寿命の2年を超えたため運用停止している

*4 光学3号機は2017年9月に、光学4号機は2018年8月に運用停止したが、レーダ3号機、レーダ4号機は2023年現在も運用中

*5 一時的に軌道を下げれば分解能を高められるが、燃料を消耗するので運用期間が短縮してしまう

*6 衛星間通信に電波では無くレーザー光を用いる事で、高速大容量通信と多目標同時通信を可能としている。レーザー光は電波ほど拡散しないため傍受が難しく、秘匿性にも優れている。情報収集衛星以外の観測衛星とのデータ中継にも使用される

*7 転移により衛星運用地上設備が国内のものを除いて失われているため、召喚世界におけるデータ中継衛星の必要性は現実世界よりも高いと言える。観測の幅を広げる時間軸多様衛星については、言うまでもない

*8 2027年度に光学9号機、2029年度に光学10号機、2031年にレーダ9号機、2033年に光学11号機とレーダ10号機をそれぞれ打ち上げる計画

*9 当初は2021年度打ち上げの予定だったが、H-3ロケットの1段目新型エンジンLE-9の燃焼試験で問題が発見されて設計変更される事になったため、打ち上げを2022年度に延期している。先述したデータ中継衛星1号機との通信機能を持つ。開発費379億円

*10 H-3 2号機以降の打ち上げは成功しており、防衛関係では2024年11月4日にXバンド防衛通信衛星DSN-3「きらめき3号」がH-3 4号機で打ち上げられている(きらめき2号は2017年1月24日にH-2A32号機で打ち上げ)

*11 現実では2015年8月19日にこうのとり5号機を打ち上げたH-2B 5号機を転用・改修したものと推定

*12 3、4機目の情報収集衛星の打ち上げ時期が、現実世界とあまり差がないと推定されるため

*13 レーダ予備機、光学5号機、レーダ5号機、光学6号機、レーダ6号機