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短編58 - (2010/11/19 (金) 12:41:03) のソース
投稿日:2009/12/23(水) 21:20:38 「みお~お腹減ったぁ」 「こら、抱きつくな。危ないぞ」 突然背後から抱きつかれて、私はジュージューと音を立てるフライパンを持ち上げる。 今日の晩御飯はしょうが焼き。 お手軽なうえに律も喜んで食べてくれるので結構な頻度で作っていたりする。 「おー、良い匂い」 「もうちょっとで出来るよ。ほら、テーブル拭いといて」 右手を伸ばして布巾を律に渡す。 けれど律はそれを受け取らず、ちらりとこちらを見上げると、 「ねー、澪。今日泊まっていけば?」 「……だめ。昨日も泊まっただろ。今日はご飯食べたら帰る」 「えー! いいじゃん[[もっと]]一緒にいよーよ」 「そ、そんな目で見てもダメ」 「ちぇー。もうさ、こっちに住んじゃえばいいのに」 「……だ、だめ」 「なんで」 「なんでも」 ただでさえずるずるとここに入り浸ってしまっているのだ。 一緒になんて住んだら……なんだかものすごくダメ人間になってしまう気がする。 「一緒に住んだら絶対楽しいのになー」 ぎゅう、と律の手に力がこもって体が密着する。 柔らかい。……じゃなくて、我慢がまん。 「ほ、ほら、早く離れろ。お肉焦げちゃうから!」 「……澪しゃん」 「? なんだよ、早く……んぐ」 ちょん、とついばむように唇に触れられる感触。 「な、なに、いきなり」 ふいうちのキスに頬を染めながらそう言うと、律はにっこりと笑い、 「澪、今日泊まっていく?」 そんなことを言ってくる。 ……こんなの、反則だ。 「…………今日だけだからな」 それは今週に入って既に三回目のセリフだった。 #comment