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SS83 - (2010/11/19 (金) 11:49:42) のソース
投稿日:2010/05/15(土) 04:21:34 「あ、澪ちゃん一人っ?」 こんにちは、平沢唯です 軽音楽部の部室、音楽準備室の扉を開けて最初に私の目に入ったのは、長くて綺麗な黒髪でした いつもの席で私に背を向けて座っているのは、我らが軽音部のベーシスト、秋山澪ちゃん 澪ちゃんは私の声に気付いて振り返ります、流れる髪の毛は本当に綺麗です 「ああ唯、お疲れ様。見てのとおり、唯が来るのを待ってたところ。ムギは掃除当番で遅くなるみたいだし、律は……」 そう言って、ちょうど向かいのりっちゃん専用席を見る澪ちゃん 私からは顔は見えないけど、なんだかとっても寂しそうです 私もいつもの席に座って、途切れた澪ちゃんの言葉を引き継いでみます 「りっちゃん、風邪でお休みなんだっけ?」 「……うん、昨日の夜から熱出したって。ここんとこ暑かったからって、ちょっと油断し過ぎたみたい。そんなに酷くは無いけど、大事をとって一日休みだってさ」 「昨日の帰りも、なんだか調子悪そうだったもんね」 「まったく、自業自得だ。律ったらいっつもヘソ出して寝るんだから。あの馬鹿っ」 「あぁ、なんだか目に浮かぶねっ」 私がヘソ出しりっちゃんを想像して笑っていると、澪ちゃんが珍しくやんちゃな微笑みをみせました いつも澪ちゃんをからかう時のりっちゃんに、ちょっと似てます 「ひょっとしたら、律は新人類かも」 「……新、人類?」 「そう。風邪をひく馬鹿なんて希少だよ。きっと新人類に違いない」 「………ぷっ、ふふ、あははっ!澪ちゃんひっど~いっ!!」 真面目な口調で冗談を言う澪ちゃんが珍しくて可笑しくて、思わず笑ってしまいました りっちゃんごめんね、悪気は無いよほんとだよ なんとか私の笑いもおさまるころ、机の上に置いてあった澪ちゃんの携帯が震えだします 「メール?」 「うん、唯が来る前から。慣れない体調不良でへこたれてる新人類を慰めてたところ」 そう言って携帯を開く澪ちゃん、また微笑んでます でもい悪戯っ子はもういません、とっても嬉しそうな笑顔です * 「ねえねえ澪ちゃん!りっちゃんに電話してみようよ、私もりっちゃんとお話したい!」 「……そうだな、そっちの方が手っ取り早いし、電話が出来ないくらい悪いわけもないしな」 メール画面を閉じた澪ちゃん、慣れた手付きでりっちゃんへ電話をかけます でも、押したボタンは一つ、リダイヤルボタンだけです 「律?」 三秒と掛からずに、りっちゃんに繋がったみたいです 澪ちゃんのリダイヤルボタンは、りっちゃん直通です 「……そう、今、唯が来たとこ。律の声が聞きたいってさ。……え?そんな話してないって、うん、ほんと」 りっちゃんはこの場に居ないのに、なんだか急に部室が賑やかになったような気がします 澪ちゃんも凄く楽しそう、ちょっとだけ悔しいけど、やっぱりりっちゃんは凄いです 「嘘じゃない。……うん、それじゃ、唯に代わるからな」 澪ちゃんから携帯電話を受け取ります ずっとメールしてたのかな、少し温かいです 「もしもーし、りっちゃん大丈夫?」 『唯っ、澪のヤツ“馬鹿は風邪ひかないなんて迷信だ~”とか言ってなかったか……?』 「へ?……あ、あぁ」 『やっぱり言ってたか』 私が澪ちゃんの顔を見ると、澪ちゃんは“どうした?”と首を傾げます 「………ううん、言ってなかったよ」 『本当に?他にはなんか言ってた?』 「えっと、あのね、りっちゃんは新人類さんなんだってさ。とっても珍しくて凄いんだって」 『新人類……?なんだそ、あああっ!?』 りっちゃんの叫び声が聞こえたみたいで、澪ちゃんが笑い出します * 『ぐぬぬ、澪のやつぅ!今すぐ成敗に行ってくれるう!』 「まあまありっちゃん、しっかり治して明日おいでよ」 『人を新種の馬鹿呼ばわりして~!わかったよ、明日は見てろよ澪め!』 「そうそう、明日は必ずね。澪ちゃん、りっちゃんが居なくて寂しがってるよ?」 「……なっ!?ゆ、唯、いきなり何言って……!」 澪ちゃん、顔が真っ赤です 『ほほう、澪がね~』 「罪な人ですな、りっちゃん殿う。じゃ、澪ちゃんに代わるね」 『うむ、くるしゅうない』 私が返すより早く、澪ちゃんは携帯を手に取ります 「ち、違うからな!別に寂しくなんか……、本当だってば!ああもう!だからあ、違うって!」 いつも部室で聞くのと同じ、とっても賑やかな二人のお話 ボタン一つでこんなに楽しい電話が繋がる澪ちゃん達が、ちょっぴり羨ましいです 私もたまには誰かに電話、してみようかな 放課後の軽音部室から、平沢唯がお送りしました! #comment