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短編140 - (2010/11/19 (金) 13:07:28) のソース
投稿日:2010/09/23(木) 23:22:08 「ポッキーゲーム、しようか」 晩秋のとある休日、私の部屋で律は言った。 恥ずかしい、なんて言っても無駄なんだろうな。 「…ん」 上気する顔を見せまいと、少しだけ視線を逸らして頷く。 「どっちかが負けるまでやるからな」 少しだけ硬い笑顔で律は言う。 ああ、分かってるよ律。 私たちのポッキーゲームはきっとポッキーが無くなるまで終わらない。 だから、それが何を意味するかぐらい…分かるんだよ。 だからさ、律。 そんなに緊張していて欲しくないな。 固まって何も出来なくなったら、私だって惜しい気持ちになる。 「よし、準備完了」 そんなことを考えていると、律が私に向かってポッキーを差し出してきた。 チョコレートのついた部分を向けてくれるなんて、律はやっぱり優しい。 律が持ちやすいように持った結果、なんて野暮な考えはいらないんだ。 「スタート!」 律が言い、二人で一斉にかじり始める。 二人だけの勝負。 二人だけの世界。 なんて甘いんだろう。 きっとこの甘さは、チョコレートに含まれる糖分だとか開発スタッフの努力なんかとは無縁のものなんだ。 私はその甘さを貪り続けた。 やがて、勝負は終わる。 いや、終わったように見えるだろう。 けれどお互い、始めから勝負がつくなんて思っていない私たちはポッキーゲームの更なる深みに向かう。 私たちはお互いの口の中に残るポッキーまでもを求め続けた。 ――歯ブラシなんていらないよ。 だって今強く、深く、吸い尽くしてるから。 「まだ、ゲーム続ける…?」 口を離し、少しだけ息の荒くなった律が朱く染まった顔で言う。 …ごめんな、律。 「当たり前だろ?…勝負がつくまで、な」 でもさ、生殺しはお互い様なんだ。 「うん…」 隠してはいるけど、隠しきれていない残念そうな表情。 それを読み取れたのは私だから、だったら嬉しいな。 そしていつまでもそんな律の表情を見ていたくはない私は言うんだ。 「いくぞ律、第二ラウンドだ」 私たちのゲームは続く。 そしてゲーム続行不可能になった後、私たちにとってはそこからが本番なんだ。 私たちにとっての本番、それは…(省略されました) おわり #comment