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短編164 - (2010/11/19 (金) 13:13:45) のソース
投稿日:2010/11/16(火) 19:31:40 「ん…」 いけない、夢中になりすぎた。 だがしかし祭りはまだまだ中盤といったところ。 良い感じに盛り上がりを見せる祭の風景を遠目に確認した私は、浴衣の乱れを直しつつ澪を起こす。 「りつ…?」 「立てるか?ほら、浴衣ちゃんと着て」 「あ…うん」 まだ少し寝ぼけ気味の澪。 ところどころはだけた浴衣からは白い肌がのぞいている。 そしてそれを直す姿のなんと色っぽいことか。 しかしここで我慢しなければ今度こそ祭りは終わってしまう。 「変なとこないかな?」 やがて浴衣をしっかりと着直した澪が尋ねる。 うん、ばっちりだ。 「大丈夫。さ、行くぞ?」 「あ…律、手…」 「ん」 澪の手を引き、そのまま祭りの風景に溶け込んでゆく。 「さ、何する?」 「律がしたいのでいいよ」 「んー…食べ物は後でゆっくり行くとして…」 祭りといえば、やっぱり金魚すくいとかかな? そんなことを考えていると、突然澪が声をあげた。 「…あ!」 「ん?なんかあったのか?」 「うん。…あのぬいぐるみ、取って欲しいな」 澪が指差す方をみると、不機嫌そうなくまのぬいぐるみがあった。 どうやら射的の景品らしい。 それにしてもあのぬいぐるみ、どっかで…? …まぁいいか、スナイパーりっちゃんの実力見せてやる。 「よっし任せろ!おっちゃん、一回分ね!」 私はいささか頼りないライフルを手に、きっちりと標準をつける。 弾は4発。 一発目。命中精度をみるための捨て弾。 …うん、なるほど。 二発目。こっから本気だ。 少し甘かったかな。下の方に当たってしまった。 三発目。さっきより上向きに。 お、頭に当たった。揺れたぜボディ。 四発目。これで最後だ! 「あ、あれ?」 「りつぅ…」 外してしまった…。 欲を出して狙いすぎてしまったみたいだ。 「はぁ…、どうする?諦める?」 そう言って澪をみると、少し顔が曇っている。 え、そんなに欲しいのか、あれ。 「ムギには、とってあげたくせに…」 そうつぶやいて涙目で俯く澪。 あー…あの日ムギと二人きりで遊んだことまだ根に持ってるのか。 …ならそんなの気にならないぐらい 「ぃよーしっ澪!一つとは言わず二つでも三つでもとってやるぞ!」 澪が顔をあげる。 うん、その笑顔だ。 そして私は再挑戦の結果、結局一つだけぬいぐるみをプレゼントしたんだ。 #comment