大学へ行く準備をしていると、お風呂から澪が出てきた。
貸してあげたタオルを体に巻いていた。そして頭にもタオルを被っている。
私は腕時計をはめながらその姿に衝撃を受けた。
「律、ドライヤーとかは……」
胸から下は全てタオルが隠してしまっているけれど、触れたら折れてしまいそうな細い肩や、鎖骨が妙に色っぽかった。
頭はタオルを被っていて表情しか見えないけれど、でもお風呂上がりの暖かい熱気が澪の顔を火照らしている。
「律?」
「……あ、えっ? な、何?」
「ドライヤーとか……くしとか、貸してくれないかな……?」
「あ、ああうん。わかった」
私はなんだか澪の体をジロジリ見ていた自分が恥ずかしくなって、逃げるようにドライヤーやくしが置いてある場所へ走った。
オーブンレンジのすぐ横だ。実家の部屋に置いておいた鏡もすぐ横に置いてあるので、いつもそこでセットしている。
ドライヤーをコンセントに繋げ澪に渡した。
「はい」
「あ、ありがと……」
「お風呂、どうだった?」
「うん。気持ちよかったよ」
澪は微笑んでくれた。
ドライヤーとくしを手渡した時、お風呂上がりのいい匂いが澪からした。
私が普段使ってるシャンプーとボディソープのはずなんだけど……どうして澪がそれを使うと自分と同じに感じないんだ?
澪の方が妙に色っぽいというか……なんか、ドキドキするのだけど。
「そっか、よかった」
「今、何時?」
「八時七分。ここから大学までは二十分だから、あと三十分は余裕はあるよ」
九時から講義開始である。準備や少しの余裕も考慮すると、八時三十分ぐらい出れば大丈夫そうだ。
「わかった……」
私は澪から離れて、部屋の中央のテーブルへ向かう。
鞄に講義で使う辞書や教材を詰め始めた。
しかし行動に頭が伴わなくて、実際チラチラと澪を見てしまっていた。
(……本当に、綺麗な髪だな)
澪の第一印象は、大体そんなものだったから。
とにかく、長くて綺麗な髪が目立つ。
そんな長い髪を、澪は丁寧に乾かしていく。
くしを使ったり、手で撫でるように。
私の準備の手が止まってしまっていた。
乾かしている最中の澪と、目が合う。
「律……?」
「な、なんでもない……」
昨日から、おかしい。
澪の体を意識する。
色っぽいだとか、体の線を見つめてる。
どうしたんだ私は。
「澪の髪って、すっごい綺麗だよな」
なんとなくそう言った。
これぐらいは別にいいかなと思った。
「えっ? そ、そうかな……」
澪は狼狽しながら髪を撫でた。ここから見ていても、指が髪に引っかからない。
さっと流れるような。
「でも長いと大変だよ」
「やっぱりいろいろやってるの? お手入れとか」
私は正直自分の髪なんてどうでも……と思いつつも、やっぱりどこか気になるのでシャンプーとリンスを丁寧にはしている。
まあ髪の毛なんてどうでもいいんだけど……なんて言って見せるけど、やっぱり私は女の子なのだ。
逆に澪は長いし綺麗だ。枝毛なんかも全然なさそうだし、手入れ大変なんだろうな。
「……まあそれなりに」
「へえー……いいなあ。私も伸ばそっかな」
全然髪なんてどうでもいいと思って生きてきたけど、澪の髪を見てからはどうもそれじゃ微妙なのかなと思い始めてきている私がいる。
澪は、女の子らしかった。
私が自分の長い横髪を触っていると、澪は私に言った。
「律は――それでも十分、可愛いと思う、けど……」
「えっ――」
ドキっとした。
言った澪は澪で、顔を真っ赤にさせていて。
私はきっとそれ以上に、顔を真っ赤にさせていただろう。
耳が情報を遮断して、音が聞こえなくなって。
代わりに、跳ねるように心拍数を上げていく心臓の音だけがいやに響いた。
「わ、私着替えてくる……」
澪は逃げるように、お風呂場に入って行った。
私は硬直から解き放たれ、はーっと息を吐いた。
なんだよ今の雰囲気。
私は、澪が着替えに行ってくれたことに少しだけ安堵した。
貸してあげたタオルを体に巻いていた。そして頭にもタオルを被っている。
私は腕時計をはめながらその姿に衝撃を受けた。
「律、ドライヤーとかは……」
胸から下は全てタオルが隠してしまっているけれど、触れたら折れてしまいそうな細い肩や、鎖骨が妙に色っぽかった。
頭はタオルを被っていて表情しか見えないけれど、でもお風呂上がりの暖かい熱気が澪の顔を火照らしている。
「律?」
「……あ、えっ? な、何?」
「ドライヤーとか……くしとか、貸してくれないかな……?」
「あ、ああうん。わかった」
私はなんだか澪の体をジロジリ見ていた自分が恥ずかしくなって、逃げるようにドライヤーやくしが置いてある場所へ走った。
オーブンレンジのすぐ横だ。実家の部屋に置いておいた鏡もすぐ横に置いてあるので、いつもそこでセットしている。
ドライヤーをコンセントに繋げ澪に渡した。
「はい」
「あ、ありがと……」
「お風呂、どうだった?」
「うん。気持ちよかったよ」
澪は微笑んでくれた。
ドライヤーとくしを手渡した時、お風呂上がりのいい匂いが澪からした。
私が普段使ってるシャンプーとボディソープのはずなんだけど……どうして澪がそれを使うと自分と同じに感じないんだ?
澪の方が妙に色っぽいというか……なんか、ドキドキするのだけど。
「そっか、よかった」
「今、何時?」
「八時七分。ここから大学までは二十分だから、あと三十分は余裕はあるよ」
九時から講義開始である。準備や少しの余裕も考慮すると、八時三十分ぐらい出れば大丈夫そうだ。
「わかった……」
私は澪から離れて、部屋の中央のテーブルへ向かう。
鞄に講義で使う辞書や教材を詰め始めた。
しかし行動に頭が伴わなくて、実際チラチラと澪を見てしまっていた。
(……本当に、綺麗な髪だな)
澪の第一印象は、大体そんなものだったから。
とにかく、長くて綺麗な髪が目立つ。
そんな長い髪を、澪は丁寧に乾かしていく。
くしを使ったり、手で撫でるように。
私の準備の手が止まってしまっていた。
乾かしている最中の澪と、目が合う。
「律……?」
「な、なんでもない……」
昨日から、おかしい。
澪の体を意識する。
色っぽいだとか、体の線を見つめてる。
どうしたんだ私は。
「澪の髪って、すっごい綺麗だよな」
なんとなくそう言った。
これぐらいは別にいいかなと思った。
「えっ? そ、そうかな……」
澪は狼狽しながら髪を撫でた。ここから見ていても、指が髪に引っかからない。
さっと流れるような。
「でも長いと大変だよ」
「やっぱりいろいろやってるの? お手入れとか」
私は正直自分の髪なんてどうでも……と思いつつも、やっぱりどこか気になるのでシャンプーとリンスを丁寧にはしている。
まあ髪の毛なんてどうでもいいんだけど……なんて言って見せるけど、やっぱり私は女の子なのだ。
逆に澪は長いし綺麗だ。枝毛なんかも全然なさそうだし、手入れ大変なんだろうな。
「……まあそれなりに」
「へえー……いいなあ。私も伸ばそっかな」
全然髪なんてどうでもいいと思って生きてきたけど、澪の髪を見てからはどうもそれじゃ微妙なのかなと思い始めてきている私がいる。
澪は、女の子らしかった。
私が自分の長い横髪を触っていると、澪は私に言った。
「律は――それでも十分、可愛いと思う、けど……」
「えっ――」
ドキっとした。
言った澪は澪で、顔を真っ赤にさせていて。
私はきっとそれ以上に、顔を真っ赤にさせていただろう。
耳が情報を遮断して、音が聞こえなくなって。
代わりに、跳ねるように心拍数を上げていく心臓の音だけがいやに響いた。
「わ、私着替えてくる……」
澪は逃げるように、お風呂場に入って行った。
私は硬直から解き放たれ、はーっと息を吐いた。
なんだよ今の雰囲気。
私は、澪が着替えに行ってくれたことに少しだけ安堵した。
●
お風呂にも入れてもらった。なんか申し訳なかった。
律が普段使ってるお風呂。他人のプライベートに踏み込んだ気がした。
やけにドキドキしたなあ。
律が普段使ってるお風呂。他人のプライベートに踏み込んだ気がした。
やけにドキドキしたなあ。
律は、私の髪を褒めてくれるけど、律の髪もとっても綺麗だと思う。
短いのも似合ってるし、触ったらサラサラしてるんだろうなって。
可愛いよと言ったら、律は照れていた。可愛かった。
私は恥ずかしくなって逃げた。
短いのも似合ってるし、触ったらサラサラしてるんだろうなって。
可愛いよと言ったら、律は照れていた。可愛かった。
私は恥ずかしくなって逃げた。
大学はいつもと同じだった。
でも、先週よりは律とよく話す気がする。
まだ恥ずかしさとか、緊張も抜けきれないけど。
誰かと話すって、こんなに楽しかったんだなあ。
でも、先週よりは律とよく話す気がする。
まだ恥ずかしさとか、緊張も抜けきれないけど。
誰かと話すって、こんなに楽しかったんだなあ。
律は言った――
●
それから大学に行った。
澪は講義の道具を丸ごと家に忘れているので、ほとんど私と共有で使った。
こういう時席が自由なのは助かった。
もし高校のように席が決められていたら澪は完全にアウトだっただろう。
少しだけ気まずかったけれど、でも私の持ち前の明るさはこういう時にきちんと役立ってくれていた。
何気なく話しかけることは、私の武器。
昨日の夜から朝にかけて、私たちは少しだけ相手に踏み入りすぎたのかもしれない。
おかげで、私はもう胸が痛くて仕方なかった。
褒められたことも、やっぱり澪を意識してしまうのも。どことなくドキドキするのも。
澪は講義の道具を丸ごと家に忘れているので、ほとんど私と共有で使った。
こういう時席が自由なのは助かった。
もし高校のように席が決められていたら澪は完全にアウトだっただろう。
少しだけ気まずかったけれど、でも私の持ち前の明るさはこういう時にきちんと役立ってくれていた。
何気なく話しかけることは、私の武器。
昨日の夜から朝にかけて、私たちは少しだけ相手に踏み入りすぎたのかもしれない。
おかげで、私はもう胸が痛くて仕方なかった。
褒められたことも、やっぱり澪を意識してしまうのも。どことなくドキドキするのも。
昼食で、また会話する。
私は懲りずに蕎麦を食べて、澪は日替わりランチセットを食べている。
私は何の気なしに質問した。
「澪は、どこの中学校?」
同じ県出身、さらに同じ高校出身だとわかったので、まあもし校区は違っても中学校名くらいはわかるだろう。
そんな軽い気持ちで訊いてみた。
「――中学校、だけど」
おいおい。
「本当か?」
「うん」
「……また同じじゃん」
そう言うと、澪も箸を止めた。最初に桜ケ丘高校出身であるということが一致した時よりも、澪は少しだけ表情を変えた。
あの時はもっと暗かったけど、今回は少しだけ明るくなっているような気がする。
澪は返してくれた。
「本当に? すごい!」
すごいけど。
なんだよ、この気持ち。
「すごいっていうか……じゃあ、小学校は?」
「えっと、――小学校」
「……私も同じ」
「じゃあ、幼稚園は……?」
今度は澪がそう聞いてきた。
冗談だろ。
いやまさかな。
私は自分の中のよくわからない高揚感を押さえつけるように、できるだけ冷静に、かつ笑いながら自分の通っていた幼稚園の名前を出した。
「――幼稚園」
「……同じ」
「じゃあ、何? えーと、幼稚園は四歳からだから……十六年は同じ学校や幼稚園に通ってたってことか?」
「まあ……そうなるんじゃないかな」
私は懲りずに蕎麦を食べて、澪は日替わりランチセットを食べている。
私は何の気なしに質問した。
「澪は、どこの中学校?」
同じ県出身、さらに同じ高校出身だとわかったので、まあもし校区は違っても中学校名くらいはわかるだろう。
そんな軽い気持ちで訊いてみた。
「――中学校、だけど」
おいおい。
「本当か?」
「うん」
「……また同じじゃん」
そう言うと、澪も箸を止めた。最初に桜ケ丘高校出身であるということが一致した時よりも、澪は少しだけ表情を変えた。
あの時はもっと暗かったけど、今回は少しだけ明るくなっているような気がする。
澪は返してくれた。
「本当に? すごい!」
すごいけど。
なんだよ、この気持ち。
「すごいっていうか……じゃあ、小学校は?」
「えっと、――小学校」
「……私も同じ」
「じゃあ、幼稚園は……?」
今度は澪がそう聞いてきた。
冗談だろ。
いやまさかな。
私は自分の中のよくわからない高揚感を押さえつけるように、できるだけ冷静に、かつ笑いながら自分の通っていた幼稚園の名前を出した。
「――幼稚園」
「……同じ」
「じゃあ、何? えーと、幼稚園は四歳からだから……十六年は同じ学校や幼稚園に通ってたってことか?」
「まあ……そうなるんじゃないかな」
幼稚園。
小学校。
中学校。
高校。
大学。
全部、澪と一緒か……。
小学校。
中学校。
高校。
大学。
全部、澪と一緒か……。
一緒なんだ……。
共通点が増えるのは、いいことだと私は語った。
好きな物や、趣味、出身が同じなのは話題になる。
ある意味で思い出を共有していることにも繋がるし、好きなものであればそれについて語って面白おかしく話だってできる。
趣味が同じなら、それを分かち合ったり、音楽なら一緒にやったり、スポーツだって一緒に高めあっていける。
そういう意味での共通点。
でも、私は――……私たちは。
共通点が確か、増えた。
それは喜ばしいことかもしれなかったけど。
好きな物や、趣味、出身が同じなのは話題になる。
ある意味で思い出を共有していることにも繋がるし、好きなものであればそれについて語って面白おかしく話だってできる。
趣味が同じなら、それを分かち合ったり、音楽なら一緒にやったり、スポーツだって一緒に高めあっていける。
そういう意味での共通点。
でも、私は――……私たちは。
共通点が確か、増えた。
それは喜ばしいことかもしれなかったけど。
どうしようもなく寂しかった。
私は、十五年の時を澪と一緒にいなかったんだ。
それがなんてもったいないって。
今、思うんだよ。
私は、十五年の時を澪と一緒にいなかったんだ。
それがなんてもったいないって。
今、思うんだよ。
タイムマシンがあったら、幼稚園か小学生の私を殴ってきて。
どうにかして澪と友達にする。
どうにかして澪と友達にする。
でも、それはもう叶わないんだよ。
私と澪が出会うのは、十九歳の春で。
幼稚園でも小学校でも、中学校でも高校でも。
出会わなかったんだ。
私と澪が出会うのは、十九歳の春で。
幼稚園でも小学校でも、中学校でも高校でも。
出会わなかったんだ。
それが、寂しい。
なんてもったいないことしたんだ。
澪と出会って一週間で、こんなこと言うのもなんだけれど。
なんてもったいないことしたんだ。
澪と出会って一週間で、こんなこと言うのもなんだけれど。
もっと澪と一緒に……。
文化祭だって、回りたかった。
受験勉強だって一緒にしたかったし。
一緒にバンド組んで、学園祭に出たり。
クリスマス会したり。
初詣一緒に行ったり……。
文化祭だって、回りたかった。
受験勉強だって一緒にしたかったし。
一緒にバンド組んで、学園祭に出たり。
クリスマス会したり。
初詣一緒に行ったり……。
「律……?」
私が黙ってしまったからか、澪が細い声で言った。
「澪……」
澪の表情は、心配そうに私を見つめていた。
今私は、どんな顔をしてるのだろう。
悲しんでるのかな。寂しい顔、してるのかな。
「澪……――」
私は、澪の名前を呼ぶしかなかった。
昼間の食堂で、人で溢れているけど。
誰も私なんか見てなんかいないだろって。
だから。
「……もっと、早くさ」
声が震えてるのが、自分でもわかる。
だけど、言葉は溢れた。
私が黙ってしまったからか、澪が細い声で言った。
「澪……」
澪の表情は、心配そうに私を見つめていた。
今私は、どんな顔をしてるのだろう。
悲しんでるのかな。寂しい顔、してるのかな。
「澪……――」
私は、澪の名前を呼ぶしかなかった。
昼間の食堂で、人で溢れているけど。
誰も私なんか見てなんかいないだろって。
だから。
「……もっと、早くさ」
声が震えてるのが、自分でもわかる。
だけど、言葉は溢れた。
「もっと早く、出会いたかったな……」
それだけだった。
もっと早く、出会いたかった。
私の視界が、歪んだ。
目元を服の袖で拭ったら、濡れていた。
私は、泣いていた。
目元を服の袖で拭ったら、濡れていた。
私は、泣いていた。
●
「それじゃ、澪。また明日な」
「うん。いろいろとごめん」
「私も、昼食の時泣いちゃって悪かったな」
「あ……いいよ、別に」
「また今度、ちゃんとお泊まり会しようぜ」
「……うん!」
バスに乗り込む澪。
「うん。いろいろとごめん」
「私も、昼食の時泣いちゃって悪かったな」
「あ……いいよ、別に」
「また今度、ちゃんとお泊まり会しようぜ」
「……うん!」
バスに乗り込む澪。
帰らないで。
一緒にいてよ。
一緒にいてよ。
そう言いたい気持ちをこらえて。
「じゃあな、澪……」
私は手を小さく振った。
無理やり笑って見せた。
「うん。明日……」
澪も、ちょっとだけ寂しそうに笑ってくれた。
私と別れることを、寂しく思ってくれてたらいいな。
そんなの、私だけかな……。
無理やり笑って見せた。
「うん。明日……」
澪も、ちょっとだけ寂しそうに笑ってくれた。
私と別れることを、寂しく思ってくれてたらいいな。
そんなの、私だけかな……。
私は無人島に取り残されたような気持ちで、走っていくバスを見送った。
明日、会えるんだから。
私は自分に言い聞かせて、全速力で夕焼けを走りだした。
明日、会えるんだから。
私は自分に言い聞かせて、全速力で夕焼けを走りだした。
●
律は言った。
もっと早く出会いたかったと。
私は、その言葉が悲しかった。
もっと早く出会いたかったと。
私は、その言葉が悲しかった。
律は泣いてた。
バスに乗り込む時、手を振ってくれた律。
その姿が、愛おしくて、別れたくなくて。
だけど私は笑って見せた。
その姿が、愛おしくて、別れたくなくて。
だけど私は笑って見せた。
また明日、律。
●
もっと早く出会っていたかった。
だから、もしパラレルワールドってものがあって。
田井中律と秋山澪が、もっと早く出会っている世界があるなら。
十五歳でも十歳でも……とにかく早く出会ってる世界があるなら。
田井中律と秋山澪が、もっと早く出会っている世界があるなら。
十五歳でも十歳でも……とにかく早く出会ってる世界があるなら。
一緒にいられる時間を大事にしてほしい。
私と澪は、それぞれの過去の思い出に存在しない。
澪の高校時代の思い出に、私――律は存在しない。
同じように、私の高校時代の思い出に、澪は存在しないんだ。
同じように、私の高校時代の思い出に、澪は存在しないんだ。
こっちはこっちで、楽しくやるよ。
いちいち悲しんでなんかいるつもりはない。
私は澪と、一緒にこれからやってくよ。
いちいち悲しんでなんかいるつもりはない。
私は澪と、一緒にこれからやってくよ。
だから、別の世界の律と澪へ。
仲良くやれよ。
私たちも仲良くやるぜ。