Bragamas は
詩百篇第8巻78番に一度だけ登場する語。
DALF には、「長剣および短剣」を意味する Braquemart の綴りの揺れとして Bragamas が挙げられている。
ただし、この読みを採る論者はほとんどおらず、以下のように諸説入り乱れる状態となっている。
- テオフィル・ド・ガランシエールは、「我々がBragadocio と呼んでいるのと同じもの」としていた。Bragadocio は現代語の Braggadocio (尊大すぎるように見える態度) だろう。
- ヘンリー・C・ロバーツは Braggard を意味するとした。手許の辞書には該当する語はないが、英語の Braggart (ほら吹き、自慢屋) のことか、後述する中期フランス語の bragard のことだろう。
- エドガー・レオニは古フランス語で「刃の広い剣」(broadsword) の意味としつつも、プロヴァンス語の Braimanso からとし、英訳では a soldier of fortune (傭兵、冒険家) を採用した。
- ロジェ・プレヴォは語源的説明を全くつけずに「雄弁家」(beau parleur)、「風の起こし手」(faiseur de vent ; faire du vent で「尊大に振舞う」)と注記している。中期フランス語の braguer (尊大に振舞う)及びその派生形の bragard あたりからの連想であろうか。
- ピーター・ラメジャラーは疑問符つきで bragueur からとし、glib-talker と英訳していた。現代語には bragueur という語はないが、上述の braguer に -eur (~する人)をつけた派生形であろうことは容易に推測できる。
- マリニー・ローズは、おそらくイタリアの都市ベルガモの住民を指す語 Bergamasque からだろうとした。
- ジャン=ポール・クレベールはプロヴァンス語の braga (がなり立てる、騒ぎ立てる) に軽蔑を意味する接尾辞 -asse が付いた Braganasse であろうとした。
当「大事典」としては、古語辞典(DALF)に忠実な「長剣ないし短剣」の意味を採用しておきたい。もちろん、そこにプロヴァンス語の braga などとの言葉遊びを織り交ぜている可能性まで否定するものではない。
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最終更新:2016年05月10日 02:37