予兆詩第86番(旧76番) 1562年10月について
原文
Par le 
legat1 du terrestre & marin
2
La grande 
cape3 à tout s'accommoder,
Estre à l'escoute tacite 
Lorvarin4,
Qu'à son advis ne voudra accorder. 
異文
(1) 
legat : Legat 1594JF
(2) marin : matin 1649Ca 1650Le 1668
(3) cape 
conj.(BC) : cappe 1562LN, Cape 
T.A.Eds.
(4) Lorvarin 1589Rec : loruarin 1562LN, LORVARIN 
T.A.Eds.
日本語訳
陸と海の教皇特使によって、
大いなるケープはすべてに満足する。
ロルヴァランは黙して耳を傾ける、
その意見に同意したくないであろう者の言うことに。
訳について
 1行目の terrestre と marin はいずれも形容詞。単に「陸と海」と言いたかったのなら、terre & mer とすればよかったはずだが、この場合は
エドガー・レオニが単純に「海と陸」と訳していることに従った。
 2行目の s'accommoder à... は、現代フランス語では「~に順応・一致する」という意味だが、中期フランス語では「~に満足する」(s'accommoder de...)の意味でも使われた。
信奉者側の見解
 ジャン=エメ・ド・シャヴィニーは、トリエント公会議と関連付けた。「教皇特使」はフランス王の名代だったアルノー・フェリエを、「大いなるケープ」はローマ教皇を、「ロルヴァラン」はロレーヌ枢機卿シャルル・ド・ギーズを指すと解釈し、後半は、ロレーヌ枢機卿が公会議においてスペインに賛同したがらなかったことを指すとした。
 
 アナトール・ル・ペルチエは、Cape をカペー(Capet)と理解し、偉大なカペーは
アンリ4世のことで、1593年にアンリ4世がカトリックに改宗した際に、プロテスタント側の有力者で友人でもあったマイエンヌ公は同意したがらなかったことと解釈した。
 
同時代的な視点
 ノストラダムスの他の詩や散文から推して、「大いなるケープ」がローマ教皇なのは疑いないところである。「ロルヴァラン」については、他の用例が全くないのでロレーヌと判断してよいかは難しい。
 トリエント公会議(1545年-1563年)と見ること自体はひとつの可能性として認められるだろう。ただし、ノストラダムスがこれを執筆していた1561年前半の時点ではまだ中断(1552年-1562年)している最中だった。
 
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最終更新:2010年03月12日 23:08