ゲーム冒頭の時計台の事件はなぜ起こったのでしょうか?
何者かに突き落とされたかのように思えますが、
それも『誤解』です。
この謎を解く鍵は『悟が時計台に登った理由』その動機にあります。
年表にもありますが、
計画を起こす前の2011年の黒髪の悟(以後『俺悟』と表記)は、
2012年のSPHIAからテラバイトディスクを持ち帰ったゆにと接触し、
ゆにとディスクからSPHIAの情報を得ています。
彼は2012年の未来の自分が時計台に登ったことで、
記憶を失ったことを知っているのです。
だから計画失敗エンドで主人公の金髪の悟(以後『オレ悟』と表記)と
榎本(俺悟)が出会った際、榎本はこう漏らした。
「アイツの記憶を移植されてるとはいえ、ここまでなんにも理解できてないとは……」
「我ながら情けないぜ」
転移発生直前に起こるあまりに不自然な記憶障害を、
俺悟は『セルフ』の仕業だと認識している。
だから、俺悟はオレ悟に攻撃的な口調だったのです。
彼はセルフの記憶を移植されたもう一人の自分を、
妹殺しの仇と同一視していた。
オレ悟が善良でお人好しであるにも関わらず、
俺悟が非情で冷徹に見えたのは、
彼のセルフに対する敵意ゆえだったのです。
そして、この言葉こそが、彼が時計台に登った理由――
本来なら計画を開始した途端記憶を失うなど、
絶対にあってはならないことであり、
最優先で回避するべきことでしょう。
しかし彼は記憶障害が起こることを承知の上で時計台に登った。それはなぜか?
それは、ユウキドウ計画を成功させるため。
セルフの影響により記憶障害が起きたと確信している悟は、
自身の記憶さえも生贄に、セルフと接触し、計画を成功させることを選んだ。
だから記憶障害を知りながらも時計台に登ったのです。
――では、時計台で悟の前に現れた影はセルフ?
TIPS(用語解説)にその正体のヒントが書かれています。
・ブロッケンの妖怪
日の出や日没時の高山で、前面に霧がたちこめているとき、
太陽の光を背に受けて立つと自分の影が霧に投影されて虹の輪がうかびあがる。
これをブロッケン現象と言う。
濃い雪煙がたちこめていたSPHIAの時計台に、
午後4時という日没の条件が揃ったことで雪煙に投影された悟の影
それが時計台の影の正体です。
『セルフと接触するため』に時計台に登った悟は、
そこに現れた異常な影をセルフだと思い込み、
妹を殺した危険極まる存在におびえた。
影がまるで意思を持つかのように悟に迫ったのは、
セルフを恐れた悟が後ずさりしたからです。
実体が光源に近づけばその影は大きくなります。
太陽側にジリジリ後ずさりしていた悟には、
影が少しずつ近づいているように見えたわけです。
そして雷が落ち、光源が太陽から雷に変わったことで、
その正体が自分の影であることに気づいたが、時計台から落下、
記憶を失い『俺』から『オレ』になってしまった。
この時計台の事件も『誤解』によって起こった事件だったのです。