悟がユウキドウ計画によって幽閉しようとしていた『セルフ』
沙也香を殺した犯人は本当に超越的な存在なのでしょうか?
その正体は、この先の謎全てに関わってくる
・・いえ、もうはっきり言ってしまいましょう。
その正体を知らない限り、これ以降の謎は、一切解けない。
このゲームの根幹であり、最重要の存在です。
しかし、その謎を解く鍵は、その正体を暴く鍵は、
厄介なことに、そうだとわかる形をしていない。
その鍵は『オーストラリア行きのチケット』です。
悟の部屋の雑誌に挟んであった
1月18日発のオーストラリア行きチケット
彼はオーストラリアに何をしにいこうとしていたのでしょうか?
それは、転移装置の実験。
年表にはこうあります。
2011年
月日不明――
悟 18便が東北地方で行方不明になっていることをニュースで知る。
乗客の名前も放送中に読み上げられたが、悟は時空間転移の実験場探しに集中していたため、
黛の名前を聞き逃す。
悟らの導き出した仮説上、時空間転移の転移時間(タイムスリップする時間)の長さは、
転移空間(テレポートする距離)の長さに比例する。
長い時間を転移するためには広大な敷地が必要なため、
日本のように国土の狭い場所では不可能であると判断。
よって、実験場はオーストラリアに決定する。
オーストラリア行きの航空機を手配と共に、長期滞在の準備を行う。出発日は01月18日。
この後、墜落した飛行機に黛が乗っていたことを知った悟は予定を変更、
オーストラリア行きと実験は中止となり、使われなかったチケットが
悟の部屋にあったチケットというわけですが、
年表の『転移時間と転移距離は比例する』という部分に注目してください。
今回の舞台となったSPHIAから山小屋までの距離は約500km、
SPHIAからオーストラリアまでだと距離は約7000kmです。
500kmの距離で1年という時間を越えており、
それをそのままSPHIAオーストラリア間に当てはめると14年になります。
(SPHIAが実験場になるとは限りませんので、その距離と時間は前後すると思われます)
実験なら日本国内で行えば面倒が少なくすむところを、
『長い時間を転移するため』に
わざわざ遠く離れた海外を選んだのはなぜか?
それは『沙也香の救出』を前提としていたから。
気づいてみれば納得でしょう。
黛達を救おうと転移装置を使用した悟が、
妹を救おうとしないはずが無いのです。
俺悟はユウキドウ計画が終了次第、
沙也香を救い出す行動を開始するはずです。
では、俺悟は妹を救うために、何をしなければいけないのか?
まず必要な時間を遡れるだけの土地を選定し、
日本とオーストラリアが転移するように時空間転移装置を設置、
沙也香の存命時である2001年まで時を遡る。
そして、沙也香を2012年の未来に攫う・・?
TIPSや年表では沙也香の死は明確であり、行方不明とはなっていません。
彼女そのものを未来に連れ去れば、その死に矛盾が生じ、
タイムパラドックスを引き起こすことになるでしょう。
あの新聞記事の謎と同じことです。安易に救い出せば歴史が変わってしまう。
だからゆには苦心して山小屋の歴史をなぞって死体を入れ替えた。
ですが、沙也香の死はこころ達のような
死体のすり替えができる特殊な死ではないはずです。
そうなると残る手段は――たった一つ。
そう、人格交換現象を使った救助です。
沙也香の肉体は過去においてきたまま、人格だけを未来に連れ去る。
歴史をなぞりながら彼女を救い出す手段は、おそらくそれしかないのです。
・・・お気づきでしょうか?
『未来において沙也香を救う』
それは――
『過去の沙也香の人格を殺す』
と同義になるということを。
悟には沙也香を助けたいという強い思いと、
それを可能とする転移装置がある。
それはすなわち――
沙也香を殺す動機であり、凶器となる。
俺悟は沙也香を救うために行動を開始し気づくでしょう。
彼が追い求めていた妹殺しの犯人
『セルフ』と命名したそれは、
皮肉極まることに、文字通りの『自分自身』であったのだ。と――
SPHIAで起きた重大事件は、双子の人格が『オレの身体』で起こした事件でした。
時計台の事件も『悟自身の影』をセルフだと誤解し起きた事件。
悟が愛した妹を殺した真犯人すらも『悟自身』だったのです。