※注意

ここより先は小説版Remember11の重大なネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小説版Remember11は、一見ゲームと同じ世界に見えて、
多くの部分がゲームと違い、小説の作者さんもあとがきで
『ゲームとは別の世界』
と言っている作品です。

それゆえゲームとは違う終わり方を迎えており、
小説版の結末は、ゲーム中にはない、
『ハッピーエンド』と言っても良いでしょう。

ゲームが『未完成』だと言われることすらあるように、
小説も『ゲームの設定が確定する前に作られた作品』
と言われてしまうこともあるほど、
別の世界になっていますが、
それもゲームと同じく『誤解』であり、
しっかりとした理由と設定ありきで作られた作品だと思います。

このゲームが『謎が解けなければ未完成に思えた』のと同じように、
この小説も『ゲームの謎が解けなければ不完全に思える』作品。
それゆえに、ゲームの謎が解けると、小説も別の顔を見せる。
ゲームの謎と小説の内容を照らし合わせてみましょう。


・01.時計台事件
ゲーム冒頭の事件ですが、小説では
時計台から落ちて記憶障害が起きた
という事実に変わりないものの
その時計台のシーンはカットされています。
(理由は後述)


・02.新聞記事
新聞記事自体はゲームと小説に大きな差異はありません。
しかし、小説のゆには
「歴史の違いは少ないほうがいい」と
歴史をある程度なぞりながらも、
歴史の矛盾が起きることを承知の上で、
こころ達を救い出そうとしています。


・03.真犯人
ここがゲームと小説の一番大きな違いだと思いますが、
小説ではこのような記述があります。

「沙也香の身体は原子に還った」

小説の沙也香は『身体』ごと死んでいる。

つまり、小説の悟は『沙也香を殺していない』のです。


・04.優希堂沙也香
沙也香の身体が死んでいるということは、
『小説の沙也香と犬伏は別人』ということ
だから小説の犬伏は人格転移をしておらず、
その別人格の中に穂鳥という名の人格があったのです。


・05.セルフ
小説の悟は沙也香を殺していない。
つまりセルフも悟ではない。
ゆえに小説では『沙也香を見殺しにしたアイツ』
という存在はいても、セルフの名は出てきません。
時計台のシーンがカットされていたのも、
セルフが存在しないため、悟が影におびえることもなく、
ゲームの反応と大きく違うものになるからでしょう。


・06.記憶障害
小説の悟は沙也香を殺したセルフではない
つまり記憶障害の真相もゲームと別

小説の悟の記憶障害は、
単純に時計台から落ちたショックで起こったのでしょう
だから小説の悟は、作中で沙也香の記憶を思い出すのです。


・07.エピローグ

小説の悟の記憶障害は、単なる事故によって起こったため、
彼の精神は安定しており、
ゲームのオレ悟のような不安定さがありません。

つまり、黛に「あなたは悟じゃない」と否定されても死なない。

ですが、小説にはそんな否定シーンは存在しません。

小説の悟の姿は榎本と入れ替わっていないのです。

榎本も登場しますが、
ハゲていてライプリヒの手先で悪人。という
完全な別人として登場していました。

『小説の悟の本当の姿は金髪の悟なのです。』

おまけに黛は悟を愛しておらず、
気持ちの整理をつけるために一発殴りたかった。
というとんでもない理由で飛行機に乗っており、
悟も黛を愛していないため、
助けた相手にひっぱたかれたことに不満を持ちつつも、
それを受け入れ、こころといい雰囲気になり終わります。

その後の
08.俺とオレ から 11.Remember11 までの
謎の部分は、小説には存在しないため、
小説とゲームの謎の比較はここまでとなります。


というわけで、小説はゲームとは完全に別世界
『真相につながる謎の部分が別の世界』になっています。


では、なぜ小説は別世界になってしまったのか?


それは、『ゲーム世界を小説で描けなかった』からだと思われます。


このゲームは、主人公の意識とプレイヤーの視点がリンクしており、
主人公が死ぬとその先の世界をプレイヤーは見られない。
というルールをトリックに利用し、
エピローグの主人公の死を隠蔽しています。
だから、そのルールが適用されない小説でゲーム世界を描けば
その死が明るみになってしまう。
ゆえにゲーム世界とは違う、別の世界を小説で描いた。

そしてその別世界のゲームとは違う別の部分を、
ゲームの真相に関わる部分にしたことで、
別世界でありながら、ゲームの謎解きのヒントや、
謎解きの答え合わせが出来るようになっていたのです。

ゲームの謎がある程度解けなければ、
小説の別世界の真意もわからないため、
そのことに気づけた人はいなかったように思いますが、
小説もしっかりと考えられ、実によく出来た作品だったのだと思います。

最終更新:2023年10月29日 23:38