企画段階では存在したであろう『第3章』とはどんな内容だったのか
・・私には、たった一人しかいないように思えます。
『犬伏悟編』です。
当考察で後から追加した、E人格からの犬伏悟に関する話
これが第3章にあたるように思うのです。
沙也香の身体の中で人格と記憶を取り戻したであろう悟、
ココロ編やサトル編のように、犬伏悟と行動を共にし、
彼の心の声を聞くことで、大半の謎や疑問は解決する。
『第3章』『解答編』『真相編』『セルフ編』
これら全てに合致するのは犬伏悟しかいない、と思うのです。
グラサン榎本が言っていた『第3の眼』や『3つの輪』にも通じている。
『ふたつの目』(2人の主人公)では見ることのできないモノを視る『第3の眼』(3人目の主人公)
俺悟とオレ悟という『2人の悟』には見えないモノを視る『3人目の悟』
それが犬伏悟というわけです。
(第3章が無くなったことでその役割はプレイヤーにシフト。
ゲーム中に見えない部分を推測することが第3の眼になったのではないでしょうか。)
『主人公が1人多い』というトリックに心当たりがある方もいるでしょう。
気づいてしまえば、色々な意味で犬伏悟という存在が空いたピースに綺麗に収まるように思えます。
第3章を無くすなんてひねったことをしなくても、犬伏悟編採用で良かったんじゃないか?
と思われる方もいるかもしれませんが、それはそれで問題があるように思われます。
犬伏悟の物語は、悟と沙也香の為に罪のない人間を犠牲にする物語。
心を失くした悟(吾)の『ego』の物語です。
特に、赤子の人格を犠牲にして終わるであろうラストの後味は最悪と言っていい。
それもあって、第3章を無くしたかごめ歌のようなゲームになったのではないでしょうか。
TIPSのシュレディンガーの猫に関する話も、それに関係しているように思えます。
・箱の中に閉じ込められた猫
シュレディンガーの猫のこと。
ボーアやハイゼンベルグらコペンハーゲン学派の
確率論的世界観を批判した例え話。
放射性物質が崩壊すると猛毒ガスが放出される
箱の中に猫を入れるとする。
コペンハーゲン学派によれば、
放射線の放出というミクロの世界の現象は
確率的であるという。
ならば、それによって引き起こされる猫の死さえも
確率的になってしまう。
猫がピンピン生きていても、
例えば20%死んだ猫となる。
愛らしい猫のパラドックスとして、
量子力学の入門の格好のキーワードとなった。
『シュレディンガーの猫』というタイトル名でいいはずのTIPSを、
あえて『箱の中に閉じ込められた猫』というタイトルにしているのは、
穂樽日の箱の中に閉じ込められる猫(寝子)の暗示だったのではないでしょうか。
真相を知らないプレイヤーからすれば赤ん坊は生きているが、
全ての謎を解き明かすことで、双子の赤ん坊の死が見えてくる。
同時に、赤ん坊の身体は生きているが、人格が死ぬという未来も見える。
箱の中に閉じ込められる寝子は、「生きている」と「死んでいる」という
二つの状態が重なり合って共存しているのです。
沙也香のように。かごめ歌の主題のように。
第3章を無くすことで、犠牲になる寝子を謎の中に隠していたのです。
かごめ歌のようなこのゲームは、シュレディンガーの猫でもあったのです。